NTR系同人エロゲのサレ夫に転生した俺、幼馴染で婚約者のステータスをオープンしてみたら既に寝取られてたんだが   作:ぜんはいざ

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寝取られヒロインの托卵計画。

「ニコ!」

 

 悲痛な叫びが、背中越しに響く。

 

 ああ、振り返らなくても分かるさ。

 昔から散々、この声を聞いてきたんだ。

 

 そうだろう?

 俺の()幼馴染で、()婚約者――。

 

「お願い……ちゃんと、話をしよ?」

 

 ――レーア=クライネルト。

 

「生憎俺は、オマエと話をするつもりはないし、話をしたいとも思わない」

「そんなこと、言わないでよ……私達、婚約者で幼馴染じゃない」

「おい、()をつけ忘れてるぞ」

 

 こんな時だけ幼馴染だの婚約者だの、調子のいいことを言っているレーアに、俺は吐き捨てるように指摘する。

 俺達に証拠を握られて、ユリアンの奴はもう寝取ったことを隠すこともやめたんだぞ? つまり、全部認めたってことだ。

 

 どう取り(つくろ)っても、婚約破棄する未来は変えられないっていうのに。

 

「大体さあ。オマエ、このクズに身体許しておいて、なんでまだ俺と関係を続けられると思ってんの? さすがに無理だから」

 

 これまでの……前世の記憶が蘇る前の俺なら、レーアに対して絶対に吐かなかった言葉。

 それがスラスラと口から出てくるから、俺も驚きだよ。

 

「俺は忙しいんだ。これから実家に報告したり、学院に証拠を突きつけたりしなきゃいけないんだからな」

 

 今度こそ、これで終わり。

 俺は(きびす)を返すと、再び生徒会室を出ようとする……のだが。

 

「……離せよ」

「嫌」

 

 コイツ、俺の制服の(すそ)をつかんで引き留めてきやがった。気持ち悪い。

 

「いいから離せ」

「嫌だよ! なんで分かってくれないの? 私はニコじゃないと駄目なの!」

「知らねーよ。相手なら、俺なんかより身分も上で御大層な血を引いているそこの間男が……」

「駄目なの!」

「うおっ!?」

 

 いきなり叫んだかと思うと勢いよく俺の背中を突き押し、レーアが怒りの形相で俺を見下ろした。

 コイツがこんなに怒ったところ、何気に初めてみたかも。

 

 だけどこれ、ただの逆ギレじゃん。

 

「何が駄目なんだよ。つーか、駄目ならなんでこんな奴に寝取られた」

 

 結局はそういうこと。レーアはこのクズの間男に寝取られたんだ。

 ……ゲームと同様に、実家が借金まみれにされて、仕方なくって理由はあるかもしれないけどな。

 

 だけど、そんなの俺には関係ない。

 前世でゲームをプレイしていた時にはそこまで深く考えなかったけど、だったらなんで俺に相談しなかった。そうだろ?

 

 『助けて』って、ただそう言ってくれたなら、俺はオマエを助けるためになんだってしたっていうのに。

 

 でも。

 

(オマエはこの期に及んでも、俺に助けを求めないんだな)

 

 自分の都合だけで、自分の身勝手な考えで、幼馴染で婚約者だった俺を拒絶したんだ。

 それをこの場で吐き出してしまったら楽になるんだろうけど、せめて黙っておいてやる。

 

 それが今の俺にできる、オマエへの最期の情け……。

 

「だって……だって、可哀想(・・・)じゃない!」

「…………………………は?」

 

 え? 何言ってんだ、コイツ。

 可哀想(・・・)って、まさか俺のことを、そんなふうに思ってやがったのか……?

 

 自分で関係を壊しておいて、何を勝手なことを……っ!

 

「オマエなあ! ふざけ……っ!?」

「ユリアンはねえ! 君と違ってたった独りなの! 独りぼっちなんだよ!」

 

 レーアのその言葉に、俺は凍りつく。

 つまりコイツが言ってる可哀想(・・・)ってのは、そもそも寝取られた俺のことを言ってるんじゃなくて、最初から間男のこと……だったってこと?

 

「いい? ユリアンはお父様を皇帝に殺されて、周りが敵だらけの、味方なんて一人もいない環境で育ってきて、ずっとつらい思いをしてきたんだ」

「…………………………」

「ねえ分かる? 皇帝によってユリアンを薄汚いレッツェル侯爵に預けられて、いつ暗殺されるかも分からない状況で、彼が生き残るために何をしてきたか」

 

 俺の胸倉をつかみ、レーアは訴える。

 そんな必死な姿を、俺がコイツと知り合ってから一度も見たことがなかった。

 

「差し出したんだよ! 自分の身体を! 子供のことを性の()け口にしか思っていない、最低の……人間のクズに! ……そうしなきゃ、生きていけないから……っ」

 

 強く握りしめていた俺の胸襟(きょうきん)を力なく手を放し、レーアは涙を(こぼ)して項垂(うなだ)れる。

 

 ああ……そうか。そういうことか。

 

 『ルミナスの壊れた日々Ⅲ』はそれぞれの間男の寝取られエンドがメインシナリオだが、一つだけヒロインが救われるものがある。

 

 それが、間男との――

 

「ねえ! ニコ!」

 

 ――純愛、エンド。

 

「ちゃんと真剣に、私の話を聞いてよ!」

 

 自分がこれだけ訴えているにもかかわらずうわの空の俺に、腹を立てたんだろう。

 レーアは鬼の形相になり、拳で俺の胸を叩く。

 

「しかもね! ユリアンは、皇帝から子供を作ることも禁止されてるんだ! ……子供を作ったら、皇位継承問題で国が滅びかねないからって」

「………………………」

「酷いよね。空しいよね。これじゃ、何のためにユリアンは生まれてきたの? ねえ、教えてよ」

 

 この女は、どうしてそんなことを俺に話してるんだろう。……なんて、考えるまでもないよな。

 

 レーアはユリアンとの子供を、俺の子供として育てようと考えたんだ。

 つまりこの女は、托卵を企てていたってことかよ。

 

 ……ああ、なるほど。

 今ようやく、俺は好感度のステータスの意味について理解できたよ。

 

 『ルミナスの壊れた日々Ⅲ』は、女主人公であるレーアが寝取られていく姿をプレイヤーが眺めて楽しむ仕様。

 つまり――間男からの視点だったってことだ。

 

「だからね? ニコ、私と結婚しようよ。そして、たくさん子供を作って一緒に育てよ? 優しいニコならそうしてくれるよね……?」

 

 アクアマリンのように輝く水色の瞳を潤ませて、レーアが(すが)りつく。

 

 あーあ。なんで俺は、こんなこと聞かされなきゃいけないんだ。

 俺はただ、婚約破棄をして、楽になりたかっただけなのに……って。

 

 ――バキョッッッ!

 

「ぷげらっ!?」

「クズカスの汚いものを(くわ)えた臭い口で、これ以上話すのはやめてくれませんかー? ……このクソ女が」

 

 え、ええー……。

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