NTR系同人エロゲのサレ夫に転生した俺、幼馴染で婚約者のステータスをオープンしてみたら既に寝取られてたんだが   作:ぜんはいざ

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もう我慢しなくてもいいんだって。

「ぷげらっ!?」

「クズカスの汚いものを(くわ)えた臭い口で、これ以上話すのはやめてくれませんかー? ……このクソ女が」

 

 え、ええー……。

 レーアの奴、エマに平手打ちを食らって、部屋の端まで吹っ飛んでいったんだけど。

 

 しかもNTR系同人エロゲとはいえ、ヒロインとは到底思えないような汚ったない悲鳴を上げて。……あ、よく見ると、前歯が折れてる。

 

「な、何を……」

「何を? それはこっちの台詞(せりふ)なんですけどー。何を話すかと思ったら、まさかそんな頭に虫でも()いたかのようなことを(のたま)い出すから。……まあ、クソ女らしいけど」

「ク、クソ女ってさっきから……へぶうッッッ!?」

「だから臭いからしゃべるなって言いましたよねー? いい加減理解しろよ」

 

 今度は反対側の頬を叩かれ、同じく部屋の反対側の壁まで吹き飛ぶレーア。しかも今度は前歯どころか奥歯まで折れて宙を舞っているぞ。

 というか俺、目の前の光景に理解が追いつかないんだが。

 

 ただそれは俺だけじゃなく、ヨゼフィーネやフーゴ達も同じようで、ちらり、とみんなを見ると、全員口を半開きにしていた。

 

「クソ女、いいですかー?」

「ヒッ!? い、いた……っ」

「何ならここで、クズ男共々息の根を止めてあげてもいいんですよー? オマエみたいなゴミ、息をしてるだけで害悪なんだから」

「ヒイイイイイイイイイイイイイッッッ!?」

 

 髪を引っ張られて強引に顔を上げさせられたレーアは、三日月のように口の端を吊り上げて不気味に(わら)うエマを見て絶叫した。

 よほど恐ろしいんだろう。よく見ると、いつの間にか床に黄色い液体が広がっているんだが。

 

「おい、クズカス」

「っ!?」

 

 レーアに向けていた表情のまま、ぐりん、とおかしな角度に首を曲げ、ユリアンを見るエマ。

 ユリアンは息を呑み、身体を小刻みに震わせた。

 

「オマエが子供を作れないとか、知ったことじゃないですー。……ニコさんに迷惑かけるな。潰すぞ」

「あ……う……」

 

 エマにすごまれ、ユリアンが一歩後退(あとずさ)る。

 コイツも戦闘教練での魔物討伐の際に、エマの実力を目の当たりにしてるからな。ビビっちまう気持ちはよく分かる。

 

「ぼ、僕は、皇帝の兄の息子で、皇帝の弱みを握っていて……」

「なら助けを呼んでみたらどうですー? その父親の死の真相というのが詰まったブローチ、でしたっけ? それで自分の命が守れたらいいですねー」

「ヒッ!?」

 

 地上最強の生物の一撃を、あんなちっぽけなブローチで守れるはずないし。

 仮に誰かが助けに来たとしても、その前に始末されるか、あるいは助けに来た奴もろとも命を奪われるか。

 

 どちらにしても、星になる運命しか残ってないって切ないな。

 

「ぼ、僕……僕……」

「なんですかー? はっきりしゃべれよクズカスが」

 

 耳に手を当て、ドスの利いた声でゆっくりと迫るエマ。

 ユリアンはただ、うつむいて恐怖に震えるばかりである。

 

 とにかく、今度こそ終わり(・・・)ってことでいいかな。

 最後はエマに、全部持っていかれたけど。

 

「ありがとうエマ。もういいからさ」

「ニコさん……」

 

 エマの肩に手を置き微笑んでみせると、振り返った彼女は何かを言いたそうにしていたが、すぐにいつものニコニコ笑顔に戻った。

 うーん……地上最強の生物としての圧倒的な姿もなかなかではあるが、やっぱり俺はいつものこの顔のほうが好きだな。

 

「じゃあな」

「ニコさんの前に現れたら、その時こそオマエ等の最期ですからねー。……んふ♪ まあそんなこと、絶対にできないようにするけど」

 

 それこそ最後にとんでもない捨て台詞(せりふ)を吐いたエマと、茫然(ぼうぜん)となって完全に空気だったみんなを連れ、ようやく()きだめみたいな生徒会室を出ることができた。

 

 その時。

 

「わぷ!?」

「ニコさん……ニコさん……っ」

 

 いきなり俺の顔が、巨大な二つのHカップおっぱいに挟まれ、思わず窒息しそうになる。

 というか、このまま死んでも本望だ。

 

「ど、どうしたんだよエマ。いきなりこんな……」

「もう、我慢しなくてもいいじゃないですか……クソ女の浮気を知ってからずっとずっとつらかったはずなのに、周りに心配かけないようにって、わざと明るく振る舞って、気にしてないふりをして、無理ばかりして……っ」

 

 んー……無理、ねえ……。

 前世の記憶が蘇って、この世界が『ルミナスの壊れた日々Ⅲ』の世界だと知り、自分がサレ夫だと気づいたから、そもそもレーアが寝取られるのは決まっていたんだよなー。

 

 アイツのエロステータスを見た時も、結局は『ああ、やっぱりそうなんだなー』って妙に納得してさ。

 つまりこれは仕方のないことで、寝取られる前ならまだしも、寝取られた後じゃどうすることもできないのは分かっていたし。

 

 だから、俺は別に何とも思っていないし、無理なんてしてない。

 そのはず、なんだ。

 

 なのにさあ……。

 

「ニコさん……ニコさん……っ」

 

 なんでエマが、当事者の俺以上に悲しそうにしてるんだよ。

 なんでエマが、俺以上に泣いてるんだよ。

 

 こんなの……こんなの……っ。

 

「俺……俺……何がいけなかったのかなあ……っ」

「ニコさんは何も悪くないです! ニコさんは……ニコさんは、とっても優しくて、とっても温かくて、とっても素敵な人なんですから……っ!」

「う……うう……」

 

 俺はエマの胸にしがみつき、拳を握りしめる。

 

 そして。

 

「う……うあ……うわあああああああああああ……っ!」

 

 俺達以外誰もいない学院の廊下で、子供のように泣きじゃくった。

 

 そんな俺を、エマは同じく涙を(こぼ)しながら抱きしめてくれて、ヨゼフィーネ達も静かに見守ってくれていたんだ。

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