NTR系同人エロゲのサレ夫に転生した俺、幼馴染で婚約者のステータスをオープンしてみたら既に寝取られてたんだが   作:ぜんはいざ

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わたしを救ってくれた、たった一人の男の子 ※エマ=バルツァー視点

■エマ=バルツァー視点

 

 ――わたしは生まれた時から、最強になることを義務づけられました。

 

 ルミナス帝国の建国当時から東側を守護するバルツァー辺境伯家に生まれたわたしは、物心ついた頃から、父〝ゲッツ=バルツァー〟から戦闘についての英才教育を施されました。

 

 ……いいえ。正しくは、無理やりしごかれたと言ったほうが正しいですね。

 

 来る日も来る日も、ひたすら大人の兵士や騎士達と戦わされ続け、生傷がない日なんて一度もありません。

 気づけば全身に傷痕(きずあと)のない場所なんてどこにもなくて、顔にだって醜い(あと)が残っていて。

 

 嫌だって、つらいって何度も訴えても、ゲッツは聞く耳を持っていなくて。

 傷ついて倒れて、指一本動かすことすらできなくても、容赦なくゲッツはわたしのお腹に蹴りを入れて。

 

 そんな生活から抜け出すためには、強くなるか自ら死ぬか、二つに一つしかありませんでした。

 

 傷つきながらも、それでも何とか生き延び続けた七歳の頃。

 皇室主催で国内の貴族の子息令嬢をお披露目するパーティーが開催されることになりました。

 

 わたしはそのパーティーに参加することが、嫌で嫌で仕方なかったです。

 だって、わたしの顔も身体も生傷だらけで、きっと恥ずかしい思いをすることになるから。

 

 でもゲッツは許してくれなくて、わたしは強制的にパーティーに参加させられました。

 

 そして。

 

「うわー……なんだあれ」

「やだ……怖い……」

 

 同じくお披露目パーティーに参加していた同年代の子息令嬢達は、わたしを遠巻きに見て陰口を叩きました。

 当然ですよね。わたし、傷だらけで醜いですし。

 

 だけど、そんなの聞きたくなくても、ひそひそとした話し声が嫌でも耳に入ってくるんです。

 耳を(ふさ)いでも、周囲の視線が『醜い』と、『不気味』だと、語りかけてくるんです。

 

 逃げ出したかった。

 こんなところにいたくなかった。

 

 でも、逃げたりなんかしたら、またゲッツに酷い目に遭わされる。

 わたしに逃げ場なんて、どこにもなかったんです。

 

(どうしてこんなつらい思いをしなきゃいけないの……?)

 

 もうどうすればいいか分からず、わたしはその場でうずくまりました。

 当然ですけど、そんなわたしを見る人達は、誰も声をかけようとなんてしてくれません。

 

 その時でした。

 

「ねえ君、大丈夫?」

 

 わたしの背中を優しくさすり、声をかけてくれた一人の子息。

 その灰色に輝く綺麗な瞳で心配そうに見つめ、心から気遣ってくれた、たった一人の少年がいたんです。

 

「おいお前、よくそんな傷だらけの気持ち悪い女なんかに声をかけられるな」

「本当よね。あり得ないわ」

 

 だけど、今度はその子息が標的になって、色々と言われ始めました。

 きっとわたしに直接言うのは不気味だから嫌だけど、彼だったら言いやすいからだと思います。

 

「あ……わた、わたし……」

 

 優しい彼に迷惑をかけたくなくて、すぐに離れるように伝えようとしますけど、緊張してしまっているからなのか、戸惑ってしまい上手く話すことができません。

 ……ううん、違います。本当は、彼に離れてほしくなかったからです。

 

 だけど周囲の子息令嬢達は、お構いなしに遠慮なく心無い言葉を彼にぶつけます。

 

 ところが。

 

「ふん。オマエ等みたいな品性の欠片もない連中なんか相手してるほど、俺も暇じゃないんだよ。というか目障りだからどっか行け」

 

 鼻を鳴らし、彼は小馬鹿にするように子息令嬢達に言い放ったんです。

 わたしの前に堂々と立って、守るように。

 

 そんな彼の背中は、とても小さいはずなのに、とても大きく見えて。

 ここにいるどの子息令嬢よりも、大人よりも、それこそあのゲッツなんかよりも。

 

「な、何言ってんだ! そんな傷だらけの気持ち悪い女なんか(かば)って、馬鹿な奴!」

「そうよそうよ! というかお馬鹿なあなたと、とってもお似合いなんじゃない?」

 

 彼の言葉に怒った子息令嬢達は、これでもかと罵声を浴びせます。

 わたしは申し訳なくて、自分が(みじ)めで、今すぐ消えたくなりました。

 

 なのに。

 

「オマエ等なあ……自分の鏡を見てみろよ。気持ち悪い? どこが」

 

 子息令嬢達に対し、呆れながらそう言ったんです。

 そんなの、言わなくてもわたしのほうが醜いって、分かり切っているのに。

 

「何言ってるんだ? どっちが可愛いかなんて一目瞭然だろ」

「そうよ。そんなの鏡なんて見なくても、私達のほうが……」

「そうだよな。彼女のほうが可愛いよな」

「っ!?」

「「「「「はあ?」」」」」

 

 彼の言葉に、わたしは思わず息を呑み、周囲の子息令嬢達は一斉に呆けた声を漏らしました。

 その……き、聞き間違いでなかったら、わたしのほうが、可愛いって……。

 

「やっぱりオマエ、馬鹿だろ! そんな傷だらけの女、可愛いわけ……」

「いいや可愛いね。クッソ可愛い。むしろそんなことも分からないなんて、オマエ等の目、どうかしてるぞ」

「はあ!? いい加減にしなさいよ! そんな女より下なんて、あり得ないんだけど!」

「「「「そうよそうよ!」」」」

 

 彼とわたしを中心に、周囲から怒声がこれでもかと飛び交います。

 それでも彼は涼しい顔をしているというか、心底呆れているというか、そんな表情を浮かべていたかと思うと。

 

「ふえっ!?」

「んー……うん、やっぱりどこからどう見てもバチクソ可愛い」

 

 ものすごく顔を近づけてまじまじと見たかと思うと、彼はそう言ってにこり、と笑ったんです。

 

「で、でも、わたし……みんなの言うとおり、傷だらけで、全然可愛くなんて……」

「そんなことないよ。そんな傷ごときで、君の可愛さが隠し切れるわけないし」

「あ……」

 

 わたしがどれだけ違うって言っても、彼はそれを全部否定してくれました。

 傷だらけでも、わたしを可愛いって言ってくれたんです。

 

 その言葉に嘘偽りがないことを証明するように、その澄んだ灰色の瞳で真っ直ぐ見つめながら。

 

「う……うえ……うえええええええええん……っ」

「ちょ!? 泣かないで!?」

 

 嬉しさのあまり泣き出してしまったわたしに、ずっとおろおろしながら、たくさん慰めてくれた彼。

 生まれて初めて優しくしてくれた、たった一人の男の子。

 

 これが、わたしと素敵な男の子――ニコラスさんとの、初めての出逢いでした。

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