NTR系同人エロゲのサレ夫に転生した俺、幼馴染で婚約者のステータスをオープンしてみたら既に寝取られてたんだが   作:ぜんはいざ

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受け入れたくない運命 ※レーア=クライネルト視点

■レーア=クライネルト視点

 

 ――私はただ、世界が決めた運命なんて受け入れたくなかっただけ。

 

 クライネルト伯爵家の長女として生まれた私には、物心ついた時から(そば)にいた幼馴染がいた。

 

 彼の名はニコラス=フリートラント。

 黒髪に美しい灰色の瞳をした、ちょっと変わった男の子。

 

 平気で気持ち悪い虫に触ったり、使用人達にもまるで友達のように接したりと、いわゆる普通の貴族子息とは違いちょっと変わっていた。

 彼曰く、『貴族だからって偉そうにしたり気取っているほうが格好悪い』そう。

 

 私は、そんな彼が少し苦手だった。

 

 もちろんニコラス……ニコが優しい人だということは知っているし、周りからとても慕われていることも知っている。

 私だって、彼の優しさに助けられたことは一度や二度じゃない。

 

 それでも、少なくともニコとの未来は想像できなかった。

 

 だけど、七歳の時に正式にニコとの婚約が決まったと、両親から聞かされた。

 今から思えば、幼い頃から彼が身近にいたのは、フリートラント家と関係を持ちたいという両親の思惑があったことが分かる。

 

 とはいえ、ちょっと感覚が合わないというだけで、ニコ自身は素敵な男の子。

 きっと彼と結婚したら、幸せな人生を送ることができることは当時の私でも理解できた。

 

 それからしばらくして、皇室主催のパーティーが催された。

 これは、七歳を迎えた子息令嬢を集め、お披露目をするという毎年の恒例行事。

 

 私はニコからプレゼントされた髪と同じ銀色のドレスを身に(まと)い、彼のエスコートで会場となる皇宮のホールに入った。

 

 すると。

 

「うわー……なんだあれ」

「やだ……怖い……」

 

 既に会場にいた子息令嬢達が遠巻きに眺める、藍色の髪の令嬢。

 全身が傷だらけで、ずっと恥ずかしそうにうつむいているその姿はとても(みじ)めで、私も他の子息令嬢達と同様、近寄りたいとも思わなかった。

 

「ねえニコ、あっち行こうよ」

 

 傷だらけの令嬢を視界に入れたくなくて、私は彼の手を引く。

 

 なのに。

 

「ちょっとごめん」

「ニコ!?」

 

 彼は私の手を放し、傷だらけの令嬢に駆け寄ると。

 

「ねえ君、大丈夫?」

 

 誰も近づこうとしない中、ニコだけが令嬢に声をかけたの。

 馬鹿だと思った。やっぱり変わってると思った。

 

 そんなことをして、何になるというんだろう。

 

 案の定、ニコまで周りの子息令嬢達から散々言われて。

 そんな女の子、放っておけばよかったのに。

 

 なのに。

 

「そうだよな、彼女のほうが可愛いよな」

 

 やっぱりニコは変わってる。

 私とは、根本的に価値観が違うんだ。

 

 それが分かった瞬間、私はニコが別の生き物のように思えた。

 そんな彼と、私はこれからもずっと……。

 

 これからの未来に絶望し、うつむいた私。

 

 その時。

 

「……馬鹿な奴だ。そんなに目立ったら、狙われる危険があるというのに」

 

 私の後ろからぽつり、と聞こえた、どこまでも冷え切った声。

 そう……まるでこの世界の全てを、否定するかのように。

 

 思わず振り返ると、そこには――どこまでも深い闇を(たた)えた、青い瞳の男の子がいた。

 

「あ、あの……」

「レーア! 放ったらかしにしちゃってごめん!」

 

 私は青い瞳の男の子に声をかけようとしたのに、戻ってきたニコの大声の謝罪で(さえぎ)られてしまう。

 その間に青い瞳の男の子は、もうここに興味ないとばかりに会場から出て行ってしまった。

 

「えーと……レーア?」

「……なんでもないよ」

 

 ニコが来なければ、あの青い瞳の男の子に声をかけることができたのに。

 私は不機嫌になり、ぷい、と顔を逸らした。

 

 その時、私を見つめる傷だらけの令嬢の姿が視界に入る。

 彼女の藍色の瞳には、どこか妬みのような色が(うかが)えた。

 

(……まあ、助けてくれたニコがこうやって必死に謝っている姿を見たら、羨ましくなるのかもね)

 

 傷だらけの令嬢の嫉妬の視線で、少しだけ溜飲を下げる私。

 だから彼女がこちらを見ている間、私はニコのことを許してあげなかった。

 

 そうして、私とユリアンとの、最初の出逢いは幕を閉じた。

 

     ◇◆◇◆◇

 

 ユリアンとの再会は、ルミナス皇立学院の入学式だった。

 

 彼は美しい中性的な顔立ちや立ち振る舞いの中にも気品が(あふ)れ、瞬く間に多くの令嬢を(とりこ)にする。

 

 でも、九年前に見たあのどこまでも深い闇を(たた)えた青い瞳はそのままで、何故か私は胸を締めつけられた。

 

「? レーア、どうしたんだ?」

「え? ……ううん、なんでもないよ」

「そうか。でも、何かあるならちゃんと俺に言えよ?」

「うん。分かってる」

 

 あれからニコは、その振る舞いこそ貴族子息に相応しいものになったものの、相変わらず言葉遣いは子供の頃のまま。

 だけど、私に向けてくれる愛情や優しさに疑いはなくて、それを幸せに感じる自分がいることも嘘じゃない。

 

 でも……ただ、それだけ。

 青い瞳の男の子と出逢った時に生まれた虚しさのようなものは、今も胸にくすぶり続けている。

 

 それからというもの、気がつくと私は、青い瞳の男の子を目で追うようになっていた。

 隣にニコがいようと、お構いなしに。

 

 そんな私に気づく気配のないニコは、聞いてもいないのに何気ない日常についてお構いなしに話しかける。

 私にはそれが退屈で、笑顔を作って相槌こそ打つものの、話なんてほとんど頭の中に残っていない。

 

 ちなみに、青い瞳の彼の名前はユリアン=レッツェル。

 レッツェル侯爵家の長男とのこと。

 

 その名前を始めて知った日の夜、私はベッドの中で何度も彼の名前を呟いた。

 ニコといる時に一度も感じたことのない、胸の高鳴りとともに。

 

 でも、どれだけ私が彼のことを気になっていても、結婚相手はニコ。

 私も貴族である以上、家同士で決まった婚約を覆すことができないことを理解している。

 

 だから私は、今日もまた笑いかけるんだ。

 目の前のニコに気づかれないように、その先にいるユリアンに向けて。

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