NTR系同人エロゲのサレ夫に転生した俺、幼馴染で婚約者のステータスをオープンしてみたら既に寝取られてたんだが   作:ぜんはいざ

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彼を癒せるのは、私だけ ※レーア=クライネルト視点

■レーア=クライネルト視点

 

 学院生活にも慣れ、半年が経ったある日のこと。

 談笑する二人の男子生徒の口から、ふいに放たれた言葉達。

 

「隣のクラスの女子生徒に聞いたんだけど、生徒会の副会長がさあ……放課後になると、いつも校舎裏に行くらしいぞ」

「そうなのか? なんでそんなところに……」

「さあ? 大方女子生徒から逃げてるんじゃないか? 俺達と違い、モテまくっているからな」

「言えてる」

 

 そうか……ユリアンは、放課後は校舎裏に……。

 

 そのことを知った私は、約束していたニコとのデートを断って、放課後に一人校舎裏へと向かった。

 

 そこには。

 

「こんな思いをしてまで、どうして僕は生きていかなきゃいけないんだ……っ」

 

 涙を(こぼ)し、拳を握りしめる彼。

 夕日に照らされた青い瞳は、吸い込まれそうになるほど美しくて。

 

 だから。

 

「っ!? お、お前は……!?」

「たくさん泣いて、いいんだよ……?」

 

 戸惑うユリアンを、私は後ろから抱きしめた。

 強く。ただ強く。

 

 ユリアンは険しい表情で振りほどこうとするけど、それもすぐに収まって、肩を震わせてすすり泣いた。

 私にできることは、こうして抱きしめてあげることだけ。

 

 それから、どれだけ時間が経っただろう。

 ようやく泣き止んだユリアンは振り返り、青い瞳で私を見つめる。

 

「お前……変な奴、だね……」

「そう、かな……」

 

 ニコに比べたら、私なんて全然普通。

 でも、彼の言葉を不快だとは思わなくて。

 

 ユリアンは私からそっと離れると、すぐにこの場から立ち去っていく……んだけど。

 

「……泣いたこと、誰にも言うなよ」

「うん、分かってる」

 

 少し恥ずかしそうに釘を刺すユリアン。

 私はそんな彼の背中を見つめ、笑顔で頷いた。

 

     ◇◆◇◆◇

 

 それから私は放課後になると、時間があればいつも校舎裏へ足繁く通うようになった。

 ユリアンも最初は私を見る度に露骨に顔をしかめたりもしたけど、今では隣に座っても何も言ったりしない。

 

 それどころか。

 

「お前……こんなところで、僕と一緒にいたりしてもいいのかい……? その、婚約者がいるんだろ?」

「そうだね。……でも、ニコには『用事がある』って言ってあるし、大丈夫だよ」

 

 ニコは優しいから、私の言葉をいつでも信じてくれる。

 もちろん私も、婚約者がいるのに彼とやましいことをしようなんて思わないし、ユリアンともちゃんと線を引くつもり。

 

 こうしているのだって、あくまでも彼が抱えている苦しみを少しでも癒やしてあげたいと思っただけ。

 だからこれは、決してニコを裏切ったわけじゃない。

 

「へえ……」

 

 どういうわけか、少しだけムッとした様子のユリアンは、こてん、と私の肩に頭を預けた。

 彼のこういうところ、少し子供っぽくて可愛いと思ってしまう……って!?

 

「きゃっ!?」

「こんなことをされても、お前はまだそんなことを言えるのかな?」

 

 突然私を押し倒したユリアンは、挑発めいた表情を浮かべ、私に尋ねる。

 だけど、私には全部分かっているよ。これも、ちょっと揶揄(からか)ってるだけだって。

 

「はいはい。そういうのはいいから」

「なんだよ……つまらないな」

 

 私が呆れた声でそう言うと、ユリアンは少し不機嫌そうに離れた。

 結局、彼にそんなことをするつもりも、ましてや勇気だってない。

 

 だって、私がここにこなくなったりしたら、嫌だもんね。

 知ってるよ? 私を見る度に、ちょっとだけ嬉しそうに顔を(ほころ)ばせているのを。

 

 さて、と。そろそろ時間かな。

 

「それじゃ、私はもう帰るね」

「っ!? ……そ、その……いや、なんでもない」

「変なユリアン」

 

 私はくすり、と笑うと、お尻を払ってから校舎裏を後に……って。

 

「ど、どうしたの……?」

「少しだけ……聞いてほしいことがある、んだ……」

 

 引き留めるユリアンが、苦しそうな表情でそんなことを言い出した。

 彼は何を話すつもりなんだろう……なんて、聞かなくても分かる。

 

 きっと彼は、今もずっと抱えている()について話してくれようとしているんだ。

 

「……ん、いいよ」

 

 私はさっきと同じように腰かけて、ユリアンを隣に座らせる。

 そして……彼の話を最後まで聞く、んだけど……。

 

「そんな……そんなの……っ」

 

 この時初めて、私はユリアンが抱えている闇を知った。

 父親が皇帝陛下に殺されてしまったこと、監視先として預けられたレッツェル侯爵に、顔を合わせる度に身体を差し出していることを。

 

 全ては、この世界で生き残るために。

 

「軽蔑、しただろ……? 僕の身体はもう、汚れ切っているんだ……」

 

 そう言って唇を噛み、うつむくユリアン。

 そんな彼の姿に、私はもう我慢できなかった。

 

「あ……」

「汚くなんて、ないよ……っ」

 

 校舎裏でのあの日(・・・)のように、私はユリアンを思いきり抱きしめた。

 (こぼ)れそうになる涙を必死に(こら)え、強く。

 

 だって、悲しいのは……つらいのはユリアンなのに、私が泣いちゃいけないから。

 

「本当に……馬鹿、だね……」

「知ってる、よ……前にも、言ったよね……」

 

 そうして私とユリアンは、星の瞬く夜空に見守られながら、抱きしめ合った。

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