NTR系同人エロゲのサレ夫に転生した俺、幼馴染で婚約者のステータスをオープンしてみたら既に寝取られてたんだが   作:ぜんはいざ

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どこで間違えたのかな ※レーア=クライネルト視点

■レーア=クライネルト視点

 

 ユリアンから独白を受けたあの日から、私と彼の関係は変わった。

 

 もちろんニコに後ろ指を差されるようなことはしていないけど、それでも、後ろめたい気持ちはある。

 だって……私は間違いなく、ユリアンのことが誰よりも気になっていたから。

 

 婚約者で幼馴染の、ニコ以上に。

 

 それはユリアンも同じみたいで、今では校舎裏で顔を合わせる度に、子犬のような瞳で私を見つめては、離すまいと抱きしめるようになった。

 そんな彼を可愛く……愛おしく思ってしまう。

 

 でも、私とユリアンが結ばれることは決してない。

 ニコと婚約もしているし、彼も彼で誰とも結ばれてはいけない存在なのだから。

 

 それでもユリアンは、何とかしようと必死になって、悩んで、そして答えを見出すの。

 

 それは。

 

「レーア、すまない……私達が、不甲斐ないばかりに……っ」

 

 突然実家に呼び出され何事かと思ったら、なんと事業に失敗して多額の負債を抱えてしまったとのこと。

 その借金の肩代わりとして、娘である私を要求されたとのことだった。

 

 もちろん普通なら、そんなことを受け入れられるはずがない。

 何せ、愛していた家族に売られてしまったのだから。

 

 だけど。

 

「……うん、分かった」

「レーア……!」

「でも、ニコとの婚約はどうするの? 今さら婚約破棄なんてしたら、その時こそクライネルト家は終わってしまうと思うけど」

「それは……」

 

 貴族同士の婚約を、しかもこちらに有責があるのに破棄をしてしまったら、クライネルト家は帝国からの信用を失い、今度こそ取り潰しの憂き目に遭ってしまう。

 それを逃れるためには、私が身売りされた事実を隠し通した上で、ニコとの婚約を続けるしかない。

 

「だからお父様、フリートラント家には絶対に悟られてはいけないの。……心配しないで? 向こう(・・・)には、引き続きニコと婚約したままでも構わないって、そう言ってもらえたから」

「レーア……すまない……すまない……っ」

 

 嗚咽(おえつ)を漏らし、何度も謝罪するお父様。

 そんな父とは裏腹に、私の心は弾んでいた。

 

 だって。

 

「さあ、行くよ。今日から君は、僕の所有物(・・・)だ」

「はい……」

 

 これで私は、仕方なく(・・・・)ユリアンのものになったのだから。

 

     ◇◆◇◆◇

 

(そんなの、決して許されることじゃないことは分かっていたはずなのに……)

 

 そう……全てが露呈してニコに婚約破棄をされた私を、フリートラント家が許すはずがなかった。

 私はニコの母親が用意したと思われる、帝都の歓楽街にある娼館の一室で、無数に(うごめ)く黒い(むし)達によって身体の穴という穴を(もてあそ)ばれている。

 

 ユリアンも同じ娼館に連れてこられ、隣の部屋から途絶えることなく悲鳴と嬌声(きょうせい)の区別のつかない声を叫び続けていた。

 

 でも。

 

(私達、ここまでされなきゃいけないことをしたの……?)

 

 ただ殺してくれるのなら、どれだけ幸せだったか。

 ニコの母親は酷いことに、拷問以上の苦しみを私とユリアンに与えたの。

 

 休みなんてなく、魔物や(むし)、それに触手のようなもので凌辱され続ける日々。

 毎日回復魔法や高価なポーションを与えられ、死ぬことは許されない。

 

 何より酷いのは、私とユリアンにほんの少しだけ希望を残してあること。

 

 あえて(・・・)僅かに窓に隙間を残し、外の景色が見えるのもそう。

 隣同士の部屋にして、互いの声が聞こえるようにしてあるのもそう。

 

 いつかきっと、ここから出ることができるんじゃないか。

 いつかきっと、お互い再会できるかもしれない。

 

 そんなあり得ない期待を、私達に残し続けるんだよ。

 

 つらいからこそ、苦しいからこそ、私達は(すが)ってしまう。

 絶対に叶わない願いだと、分かっているのに。

 

 ……ああでも、ユリアンとの再会はきっと無理かな。

 だって彼、ずっと呪詛(じゅそ)のように吐き続けているんだもん。

 

「あんな女に……あんな女に気を許したりしなければ、こんなことにはならなかったのに……っ!」

 

 ほらね? ユリアンは、こうなったのは全部私のせいだって。ずっと叫び続けてるんだよ。

 毎日、毎日、壁の向こうから、ずっと。

 

 こうなると私も、彼のことを好きなままでいることなんてできない。

 私は彼のために、優しいニコを騙して子供を産む覚悟までしたのに。

 

 そうして、もう何日経ったか分からない、ある夕暮れ時。

 今日も私は(むし)達に穴を埋め尽くされながら、届くことはない歓楽街の通りの景色を見つめる。

 

 すると。

 

(あれ、は……っ!)

 

 奇跡が起きた。

 なんと通りには、学院の制服を着た二人の男女が歩いていたんだ。

 

 しかも。

 

「ンゴ……ムグ、オオオオオゴオオオオオオオオオオオオッッッ!」

(ニコ……ニコオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!)

 

 口の中に(むし)が入っていようとお構いなしに、私は声の限り叫んだ。

 とても『ニコ』には聞こえないけど、それでも、かつて幼馴染だった元婚約者に届くと信じて。

 

 願いが通じたのかな。

 ニコは……ニコは、立ち止まってくれたんだ。

 

(あ……ああ……っ!)

 

 助かる。

 優しいニコが助けてくれる。

 

 私は根拠もなくそう確信し、窓の外のニコを凝視した。

 

 だけど。

 

「ア……ア、ア……ッ」

 

 そんな私の願いを打ち砕くかのように、隣の女が(わら)ったの。

 

 まるで、間抜けな私を嘲笑(あざわら)うかのように。

 まるで、『ニコはわたしのもの』だと誇示するかのように。

 

(ニコ……なんで……なんでえ……っ)

 

 どうして私は、間違えてしまったのかなあ……っ。

 最初からニコだけを見ていれば、こんなことにはならなかったのに。

 

 再び歩き出したニコの背中を、私はただ、見つめることしかできなかった。

 

 それが――最後に見た、ニコの姿だった。




お読みいただき、ありがとうございました!
レーア視点の蛇足編ではありましたが、これで一応はレーア編完結です。

先にお伝えしましたとおり、次のヨゼフィーネ編についてこれから作業に取り掛かるため、今しばらくお待ちくださいませ。

「続きが気になる」や「面白い!」と思ってくださった方は、高評価、感想を頂けると更新のモチベに繋がるのでよろしお願いします。
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