NTR系同人エロゲのサレ夫に転生した俺、幼馴染で婚約者のステータスをオープンしてみたら既に寝取られてたんだが   作:ぜんはいざ

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友達が泣いているのはつらいわけで。

「……その、お話がありますの」

 

 俺だけは、ヨゼフィーネに止められて居残り確定だが。

 

「ええと、どうした? ……なんて、(とぼ)けてもしょうがないな」

 

 そう言って彼女の前に向き直り、姿勢を正すと。

 

「勝手なことをして、すまなかった」

 

 俺は深々と頭を下げ、謝罪した。

 もちろん兄上にお願いして、ランベルト皇子と婚約破棄できるように動いてもらったことについて。

 

「あ、頭を上げてくださいまし! でも……今回のこと、やっぱりあなたが関わっていたのね」

「…………………………」

 

 慌てて俺を起こそうとするヨゼフィーネ。

 僅かに見えた彼女の真紅の瞳は、悲しみで揺れているように感じた。

 

「ヨゼフィーネ様には酷いことをしたと思ってる。だけど、それでも後悔はない。……俺を救ってくれた大切な友達の一人が、これ以上苦しまなくて済むなら」

「……そう」

 

 俺の肩に手を置き、ヨゼフィーネはふう、と息を吐いた。

 

 そして。

 

 ――スコンッ!

 

「いてっ!?」

「フフ……本当にお節介ですわね。こんなことをしたって、あなたに得なんてありませんのに」

 

 思いきり頭をチョップされ思わず顔を上げると、ヨゼフィーネは愉快そうに笑った。

 そこには、先程謝罪した時のような、疲れた表情は見受けられない。

 

「得ならあるよ。ヨゼフィーネ様の誇り高く格好いい姿を見るのは好きだからな」

「そう……」

「だけど」

 

 少しだけ視線を落としたヨゼフィーネに、俺は言葉を続けた。

 

「誰もいないところでなら、たまには愚痴ったりしてくれてもいいんじゃないかな。……その、俺達は友達だし」

「あ……」

 

 『ルミナスの壊れた日々Ⅷ』でも、常に気丈に振る舞い、健気にランベルト皇子に尽くそうとしたヨゼフィーネ。

 なのにあの男からは相手にされないどころか嫉妬され、間男に寝取られるだけの結末を迎えてしまう。

 

 そんなNTR好きの脳破壊されたエロゲユーザーしか喜ばないクソエンド、彼女には絶対に迎えてほしくない。

 

「そ、そういうことだから、いい加減教室に戻ろうぜ。あんまりサボってると、教官に怒られるし」

 

 言ってから照れくさくなり、頭を掻いて足早に屋上を出ようとする……のだが。

 

「ヨゼフィーネ様……?」

「少しだけ、背中をお貸しくださいまし……っ」

 

 俺の背中にしがみつくヨゼフィーネ。

 ここは、振り向かないのが正解だろうな。

 

「わたくしは……あの御方の隣に相応しい妻になろうと、お父様達の期待に応えようと、頑張りましたの。たくさん……たくさん……っ」

「…………………………」

「なのにどうして!? わたくしの何がいけないんですの!? こんなの……こんなの、あんまりではないですの……っ!」

 

 俺の制服を握りしめ、額を押しつけるヨゼフィーネ。

 じんわりと湿り気を帯びているのは、きっとそういうことだろう。

 

「う……ううう……うあああああああ……っ!」

 

 慰める(すべ)を知らない俺は、彼女の慟哭(どうこく)を背中で受け止めながら、空を暗く染めるどんよりとした雲を、ただ無言で見上げることしかできなかった。

 

     ◇◆◇◆◇

 

「い、いいですこと! さっきのことは、誰にも言ってはいけませんわよ!」

 

 しばらくしてようやく泣き止んだかと思ったら、ヨゼフィーネがビシッ! と指を突き出し、偉そうにそんなことを言い放った。

 貸した背中をびっちゃびちゃにされたというのに、もうちょっと言い方があるんじゃないだろうか。

 

 まあ、悪役令嬢の彼女らしいが。

 

「分かってるよ。まさかあのヨゼフィーネ様が、子供みたいに号泣するなんて恥ずかしいよな。エマ達が知ったら……」

「本当に分かってますの!? ……もしバラしたら、その時はヴァイデンフェラー家総出であなたを不幸な目に()わせて差し上げますわよ?」

「ヒイイ!?」

 

 彼女の凄みのある声に、俺は軽く悲鳴を上げた。

 照れ隠しだってことは分かってるはずなのに、とても冗談には聞こえない。

 

「そういうことですから、早く行きますわよ!」

「ちょっ!?」

 

 ヨゼフィーネ様はもう用は済んだとばかりに、俺を置き去りにして一人でサッサと屋上から出て行ってしまった。

 ええー……この扱いは酷いんじゃない?

 

 などと思ったりもするが。

 

(まあ、ようやく吹っ切れたみたいで何より)

 

 俺もレーアとの一件で、ぐちゃぐちゃになっていた俺の気持ちを知っているエマが、受け止め、抱きしめてくれたおかげで、色々なものを吐き出して、それをヨゼフィーネ達が見守っていてくれて、本当の意味で前に進むことができたんだ。

 

 つまりこれは、あの日みんなにしてもらったことをお返ししたようなもの。

 

 だから。

 

「お願いだから、そんな目で睨まないでください」

 

 僅かに開いた屋上の扉の隙間から射殺すような視線を向けるエマに、俺は戦慄しながら土下座した。

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