NTR系同人エロゲのサレ夫に転生した俺、幼馴染で婚約者のステータスをオープンしてみたら既に寝取られてたんだが   作:ぜんはいざ

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チキンな俺はこうなることが分かっていた。

 ――ぴと。

 

「っ!? エエエ、エマ!?」

「ニコさんの背中って、い、意外と大きいんですねー……」

 

 なんとエマが、背中に柔らかいものを押し付けてるんだが。押し付けてるんだが。

 しかもだよ。感触からして、さっきまで覆っていたタオル越しじゃなく、直接触れているわけで。

 

「どど、どうしたんだよ!? 急に!?」

「ん、んふふー……男の人の背中って、どうなのかなーって」

 

 そんな理由で、普通はHカップおっぱい(with陥没乳首)を背中に押し付けたりはしません。

 つまりだよ。エマ的には、こんなことをしてもいいと思えるほど、俺のことを……ってことで、いいんだよな……?

 

「そ、その、エマ……」

「な、なんですかー……?」

 

 意を決して呼びかけると、エマがどこか艶っぽい声で恥ずかしそうに返事をした。

 心なしか、彼女の心臓の音が速い気がすると思う。嘘です。Hカップに阻まれて、心音なんて分からないです。

 

「お、俺……」

 

 ここまでされたんだ。さすがに俺のことを何とも思っていないとか、そんなことは絶対にあり得ない。

 たとえ好感度ステータスが『ふじこ』だったとしても、所詮はバグ。なのでここは、全力で据え膳に食らいつくべし。

 

「俺……俺……っ」

「ニコ、さん……」

 

 エマが唾を飲み込む音が聞こえる。

 それと同時に、身体中……それこそ頭の天辺から足のつま先まで、くまなく火照って目の前が真っ白になりそう。

 

 言っておくが、これは決して比喩じゃない。

 

 その証拠に。

 

「っ!? ニコさん!? ニコさん!?」

 

 エマの叫び声があっという間に聞こえなくなって、すぐに意識を失ってしまったのだから。

 

     ◇◆◇◆◇

 

「…………………………」

「…………………………」

 

 次の日の朝、学院へと向かう馬車の中で、俺とエマは向かい合いながら無言で座っている。

 

 昨日の風呂の一件? 分かっていると思うが、俺はのぼせてしまったようで、目が覚めたら朝で、ベッドの上だったよ。

 傍ではエマならぬヤコブが()って……違う。立っていて、『昨夜は残念でしたな』なんて、(さげす)んだ目で見下ろしてやがった。

 

 というか、エマが風呂に入っているの知ってて、俺を止めなかったくせに。

 もし俺がフリートラント家の当主だったら、今頃有無を言わさずヤコブの給金を倍増しているところだぞ。

 

 で、やっぱり気まずくて、エマとはまだ一言も話せておらず、空気が非常に重い。

 どうしてあんなことをしたのか尋ねたいところだが、それはつまり陥没乳首を含め、一部始終をしっかりバッチリ覚えているということを(さら)すわけで。

 

「あ、あのー……」

「っ!? なな、なんですかー……?」

 

 おそるおそる声をかけた瞬間、エマはビクッとなって上目遣いでおずおずと尋ね返す。

 さて、エロゲ紳士諸兄は、この後俺がどんな言葉をかけると思う?

 

「さ、昨夜はごめんな……エマがいるのに、風呂に入ってしまって」

「あう……い、いえー……」

 

 そう告げた瞬間、緊張が一気に高まる。

 さあ……ここからが勝負。

 

「ゆ、湯船に浸かったところまでは覚えてるんだが、その後の記憶がなくて……エマがのぼせた俺を、助けてくれたんだよな……?」

 

 ああ、チキンだが? それでオマエ等に迷惑でもかけたか?

 冷静に考えれば、好感度ステータスが『ふじこ』なんだから、彼女が俺のこと好きだっていう保証はないんだぞ?

 

 昨日のことだって、単に揶揄(からか)われていただけっていう可能性もあるわけだし。

 

 加えておっぱい押し付けられてのぼせて気絶したなんて生き恥を(さら)したんだ。日和ってしまうのも当然というもの。(全力言い訳)

 だから、安全策を取ってしまうのも仕方が………っ!?

 

「……へえー。昨日のこと、覚えてないんですかー……」

「ヒイイイイ!?」

 

 ハイライトが消え、どこまでも深い闇を(たた)えたエマの藍色の瞳。

 三日月のように吊り上げて(わら)う彼女に、終末のラッパの音が脳内で鳴り響いた。

 

 そうして俺は、昨日に引き続きもう一度気絶した。

 

     ◇◆◇◆◇

 

「一体何をやらかしたでござるか? 謝るなら早いほうがいいでござるぞ」

「…………………………」

 

 昼休みの食堂で、隣に座るフーゴが耳打ちする。

 なお、目の前に座るエマはいつものニコニコ笑顔は鳴りを潜め、むっすーとした表情で黙々と食事していた。居たたまれないことこの上ない。

 

「ニコラス、早くエマをなんとかしなさい。このままでは、食事が不味くなりましてよ?」

「は、はは……俺もそうしたいのはやまやまなんだけどなー……」

 

 眉根を寄せて苦言を呈するヨゼフィーネに、そう答えることしかできなかった。

 全てはチキンの俺が悪いのである。(反省)

 

「まあ、二人のことですしあまり言いませんけど。……エマもエマで、いつまでも()ねるのはおよしなさい」

()ねてないですー」

()ねてるじゃありませんの……」

 

 口を尖らせ、ぷい、と顔を背けるエマを見て、呆れるヨゼフィーネ。

 ハッキリ言って居たたまれないのは間違いないんだけど、それ以上にエマをクッソ可愛いと思ってしまうのは、きっとお風呂の時の興奮が冷めやらないからではないだろうか。

 

 などとくだらないことを考えていると。

 

「ニコラス=フリートラントはいるかッッッ!」

 

 食堂に入って来るなり、いきなり大声で叫んだ、一人の男子生徒。

 

 ――ランベルト=フォン=ルミナスが、鬼の形相で俺を探していた。

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