NTR系同人エロゲのサレ夫に転生した俺、幼馴染で婚約者のステータスをオープンしてみたら既に寝取られてたんだが   作:ぜんはいざ

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サレ夫のボンクラ皇子が、道化師になった日。

「ランベルト殿下」

「っ!? な、なんだ……?」

 

 今度はボンクラ皇子に向き直り、険しい表情で見据えると。

 

 ――バシンッッッ!

 

 なんとヨゼフィーネが、思いきり引っ叩いたんだけど。

 

「な、何を……」

「……本当のことを言うと、詳しいことは何一つ知りませんわ。ですけど」

 

 今まで散々尽くしてきた彼女に、こんなことをされるなんて思わなかったのだろう。

 ランベルト皇子は、あからさまに狼狽(うろた)える。

 

 ヨゼフィーネは怒り……いや、違うな。そんな単純な感情なんかじゃない。

 気高く、凛とした眼差しで、一拍置くと。

 

「きっとニコラスは正しいことをして、あなたが間違っていることだけは分かるわ」

「……っ」

 

 どうしてここまで、彼女は俺なんかのことを信頼してくれるのだろうか。

 でも、俺にはそれをとても嬉しく思えて、胸が熱くなった。

 

 ヨゼフィーネ=ヴァイデンフェラーというヒロインを救おうとしてよかったと、心から思えるほどに。

 

「ランベルト殿下。婚約者でも何でもないあなたは、もうお呼びではありませんの。道化師はそろそろ、舞台からご退場なさってくださる?」

「き……き……貴様……っ」

 

 腰に手を当て、尊大に言い放つヨゼフィーネ。

 その迫力に気圧され、ボンクラ皇子は完全に腰砕けである。

 

 そんな姿は、スキルのとおりまさに道化師(ピエロ)に相応しい。

 実際、彼女もそう言っちゃったし。まさかとは思うけど、ステータスが視えるとか? ……って、それはないか。

 

「エマ」

「ランベルト殿下、お帰りはあちらですー」

「っ!? は、離せ!」

 

 ヨゼフィーネに声をかけられると、エマはボンクラ皇子を猫のように襟首(えりくび)をつかんで持ち上げ、そのまま食堂の外へと放り投げてしまった。

 よくよく考えたら、エマが取り巻きらしいことしたの、初めて見た気がする。

 

「これでうるさい小物はいなくなったとして……ニコラス」

「っ!?」

「全部洗いざらい話しなさい」

「はい……」

 

 腕組みをして睨むヨゼフィーネに、俺は身体を縮めて頷くしかなかった。

 

     ◇◆◇◆◇

 

「ということなんだけど……」

 

 わざわざ床に正座させられ、俺はこれまでのことを白状した。

 ランベルト皇子の陰謀、ダミアンの思惑について。

 

 あの男が、婚約者であるヨゼフィーネを生贄にしようとしていたことも。

 

「……そう。ヴァイデンフェラー家の後ろ盾がなければカール殿下と満足に対抗できない分際で、舐め腐っていますわね」

「で、ですよねー……」

 

 怒りのあまり額に青筋を立てるヨゼフィーネに、俺は相槌を打つしかない。

 

 ただ。

 

(よかった。思ったよりショックを受けてない)

 

 あれだけ尽くしてきた相手が、自分を利用しようとしていたことを知ったんだ。

 彼女がこの上なく傷つくと心配したが、意外にもヨゼフィーネは冷静……ではないな。それでも、怒り狂ってこそいるけど、ダメージを受けているようには見受けられない。

 

「ですけど……フフ、ヴァイデンフェラー家を敵に回して、しかも処分待ち。命があるかどうかも怪しいですわね」

 

 そう言って、悪い笑みを浮かべるヨゼフィーネ。

 悪役令嬢が悪巧みをしているようにしか見えない。

 

「とはいえ、これで清々いたしましたわ。やはり婚約破棄になって正解ですわね」

「そ、そうだとも! ヨゼフィーネ様に、あんな(くず)は似合わないって!」

「フフ……よく分かってるじゃない」

 

 ここぞとばかりに同調した俺に、ヨゼフィーネは悪役令嬢よろしくクスクスと(わら)う。

 味方なら最高に頼もしい笑みだけど、もし敵側だったら恐怖だろうな。

 

 実際、ヴァイデンフェラー公爵家に睨まれて、無事で済むとも思えないし。

 

「まあ、あなたが色々と余計なこと(・・・・・)をしたために、殿下……いいえ、どうせ皇家から籍を抜かれることになるでしょうから、ただのランベルトですわね。きっとあの男には、これから色々と報いを受けることになるんじゃないかしら?」

「そりゃそうだろ。あんな男が、のさばっていいわけがない」

「フフッ、そうね」

 

 俺とヨゼフィーネは互いに軽口でそんなことを言い合うと、思わず吹き出してしまった。

 何にせよ、結果的にボンクラ皇子はこれでおしまい。暴君ヤンデレも国外に追放されて、ヨゼフィーネを狙う間男は全て片づけたといっていいだろう。

 

 レーアの時は前世の記憶が戻ったのが寝取られた後だったからどうしようもなかったけど、今度はちゃんとヒロインを救うことができて何より……っ!?

 

「んふふー……お二人共、すっごく仲がよろしいんですねー……?」

 

 いつの間にか、俺達の背後に立っていたエマ。

 その底冷えするような声に脂汗を流しつつ、俺はゆっくり振り返ると。

 

「まさかとは思いますけどー……そんなこと(・・・・・)、あるわけないですよね?」

「そそ、そんなことって何かなー……」

「決まってるじゃないですかー。……ニコさんが、ヨゼフィーネ様を好きになったのかってことです」

「まままま、まさか! もも、もちろんヨゼフィーネ様は大切な友達だが、恋愛とかそういうんじゃないから!」

 

 エマの問いかけに、それはもう全力で否定してやったさ。

 冗談でもヨゼフィーネのことが好きだとか、そんなこと言ってみろ。

 

 その時はきっと、俺は再び転生する羽目になるだろうな。

 

 だけど。

 

「…………………………」

 

 ヨゼフィーネがちょっと悲しそうにうつむいてるけど、気のせいだよな……?

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