NTR系同人エロゲのサレ夫に転生した俺、幼馴染で婚約者のステータスをオープンしてみたら既に寝取られてたんだが 作:ぜんはいざ
「……カロリング王国から、停戦条件として『ヨゼフィーネ=ヴァイデンフェラーを差し出せ』と要求がありました」
ほらな?
あの男、カロリング王国の王太子として優秀……というか、異世界恋愛系のラノベや漫画に登場するスパダリイケメンみたいにハイスペックだが、その中身はどこまでいっても暴君ヤンデレ。
たとえどれだけの血が流れても、ヒロインを手に入れるためなら何とも思わない。
言ってしまえばサイコパスだよ。サイコパス。
「つまり帝国は、ヨゼフィーネ様をカロリング王国に生贄と差し出すことを決めたわけ、ですかー」
「そ、そうです! 一人の命で大勢が救われるのであればやむなしと、皇帝陛下もそのようにご決断……」
「は?」
「ヒイッ!? すす、すみません!」
エマの殺気をあてられ、帝国騎士はすぐさま土下座する。
それにしても……そうかー。確かにいくら公爵令嬢とはいえ、国全体の損失を考えれば彼女を差し出すに越したことはないし、上手くすればカロリング王国に恩を売ることができる。
皇帝という立場からすれば、そんな判断を下すのも至極当然といえば当然なわけで。
「……ふざけんな」
「ニ、ニコラス……?」
「ふざけんなよ! 女の子一人犠牲にして、自分達が助かればそれでいいってか? それのどこが帝国だ! 皇帝なんだよ!」
気づけば俺は、周囲の目もくれず声を荒らげた。
大体、ヨゼフィーネが何をしたっていうんだ。悪いのは全部ダミアンと、彼女を売ろうとしたボンクラ皇子だろうが。
なら、アイツ等こそ全責任を負うべきだろ。
「な、なら貴様は、大勢の帝国民が犠牲になってもいいのか! そうなった時、貴様は責任を負えるのか!」
「…………………………っ」
悔しいが、帝国騎士の言い分ももっともだ。
ヨゼフィーネを守ろうとすれば、今度は無関係な人々が犠牲になる。
つまり俺の
せめて俺のスキルが【ステータスオープン】なんてゴミスキルじゃなく、ラノベみたいにチート能力があったなら、大切な友達が守れたのに。
俺は無能な自分を呪い、拳を握りしめて唇を噛む……んだけど。
「わたくし一人の命で大勢が救われるのであれば、喜んでこの身を差し出しますわ」
「ヨゼフィーネ、様……?」
なんと彼女は一歩前に出て、Iカップの胸に手を当て、そう言ってのけた。
その凛とした表情と真紅の瞳に、覚悟の色を
「フフ……ニコラス、なんて顔をしていますの。わたくしとて帝国を支えるヴァイデンフェラー家の息女ですのよ? こんな時に役に立ってこそですわ」
にこり、と微笑んで告げるヨゼフィーネ。
でも、よく見ると彼女の華奢な身体は、僅かに震えていた。
俺は……俺は……っ。
「……んふふー。カロリング王国……ニコさんとヨゼフィーネ様にこんな顔をさせるなんて、少しおいたが過ぎますね」
「え……?」
少しうつむくエマの呟きに、俺は思わず振り返る。
だって、俺がこれまで聞いてきた彼女の声で、一番恐怖を感じてしまったのだから。
そう……まるで、その声色に死神が宿ったような、そんな感覚を覚えるほどに。
「それでー、カロリング王国の軍勢はどこに?」
「は、はっ! 西の国境に陣を展開! 猶予は三日となっております!」
敬礼ポーズを取り、洗いざらい全てを話す帝国騎士。
つまり、三日以内にヨゼフィーネを差し出さなければ、侵攻を開始するってことか。
「んふ♪ なら、行っちゃいましょうか」
人差し指を口元に当てて
「あ、あのー……どちらに?」
「決まってますー……ニコさんを困らせるクソ共を、皆殺しに」
振り返りそう言うと、エマは口の端を三日月のように吊り上げた。
◇◆◇◆◇
「……ニコさんには、学院に残っていただきたかったんですけどー」
西の国境へと向かう馬車の中、エマがジト目を向けてそうぼやいた。
だというのに、彼女の顔は嬉しさを隠し切れないとばかりにニッコニコである。
ちなみにこの馬車、エマの実家であるバルツァー辺境伯家御用達のものとのことで、鋼鉄製な上に
彼女曰く、辺境では魔獣の襲撃も日常茶飯事のため、身を守るために必須なんだとか。辺境怖い。
ヨゼフィーネには、言うまでもなく学院に残ってもらった。
そもそも彼女を守るために、俺達はカロリング王国軍と対峙するんだ。餌を連中の前にぶら下げてどうするんだよ。
……帝都を出ようとした際にメッチャ号泣して引き留められたし、何なら『言うことを聞いてくださらないなら、ここで死にますわ!』などとナイフまで取り出した時にはクッソ焦ったけど。
あ、もちろんヨゼフィーネはエマが一瞬で意識を刈り取り、その隙にこうやって出てきたので問題ない。
目が覚めた後も、取り巻きのローザやフーゴ達が全力で止めてくれることだろう。(他力本願)
「き、君一人でそんなところに行かせるわけないだろ。……それに、俺だって……っ」
使い込まれた剣を、俺は強く握りしめる。
レーアに好かれたくて、魔物討伐に明け暮れていた時に振るい続けた、俺の愛剣だ。
アイツにはユリアンと一緒に裏で馬鹿にされただけだったが、こうして少しでも役に立つことができるんだから、無駄じゃなかったな。
(……なんてくだらないことを考えてるんだから、意外に余裕あるのかな)
本音を言うと戦争なんて御免だし、怖いし、今すぐにでも逃げ出したい。
でも、俺のつらそうな顔を見て戦うことを決意したエマに全部任せるなんて、普通にあり得ないだろ。
あーあ。俺、NTR系同人エロゲに転生してまで、何をやってるんだろうな。
などと思いながら、俺は自虐めいた笑みを浮かべる……んだけど。
「エマ……?」
「……やっぱりニコさんは、すっごく素敵な男の子です。わたしのために、ヨゼフィーネ様のために、こうして一緒に来てくれるんですから」
俺の手を握りしめ、
その熱を帯びた藍色の瞳や、潤った唇に、こんな時だっていうのにどうしようもなく胸が高鳴ってしまう。
「い、いや、別に……」
「んふふー、誤魔化そうとしたって駄目ですよ? そんなニコさんだから、わたしは……」
耐え切れなくなって慌てて目を逸らすものの、エマは逃がしてくれず、むしろその綺麗な顔がゆっくりと近づいてきて……。
――ガカッ!
「っ!?」
突然、馬車に何かが当たった。
「……こんな時に邪魔をするなんて、本当に無粋ですね」
車窓から忌々しげに睨むエマを見て、今の音がカロリング王国の軍が狙ったものだと気づく。
俺も外に目を向けてみれば、横一線に並んで弓を構える兵士の姿があった。
「ちょっとここで待っててくださーい」
「エ、エマ、俺も!」
扉を開いて降りようとするエマに続き、俺も席を立つ……んだけど。
「っ!? エマ!?」
「この中なら、絶対に安心安全ですー。なので、そこで見ていてくださいね?」
馬車の中に閉じ込められてしまう俺。
そんな俺を見てくすり、と笑うと、エマは巨大なバトルアックスを肩に担ぎ、カロリング王国軍へゆっくりと歩いていった。