NTR系同人エロゲのサレ夫に転生した俺、幼馴染で婚約者のステータスをオープンしてみたら既に寝取られてたんだが   作:ぜんはいざ

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覇王色の使い手がこの世界にもいた件。

「えー……これ、どういうことだってばよ」

 

 目の前の光景に理解が追いつかず、俺は呆けた声を漏らすことしかできない。

 というか、殺気だけで兵士を倒すとか、そんなことあり得るの? それなんて覇王色?

 

「ま、まあ、とにかくカロリング王国軍は、エマが壊滅させたってことでいいんだよな……?」

 

 大丈夫だとはなんとなく思っていたものの、大軍を殺気だけで倒したり、雨のように降り注ぐ矢をほんのひと振りで吹き飛ばしたりする姿を見て、やっぱりエマは地上最強の生物なんだと、改めて痛感した……って。

 

「そ、そんなことより!」

 

 閉じ込められたままの俺は、扉の隙間に剣を無理やり差し込んで鍵を壊すと、馬車を飛び出してエマのいるところまで駆け出した。

 

「う、うう……」

「怖い……怖いよ……」

「もう嫌だ……家に帰りたい……」

 

 地面に転がる兵士達は、(うめ)き声を上げる者、恐怖で震える者、嗚咽を漏らす者と、それはもう悲惨な状況だった。

 救いがあるとすれば、倒れたおかげで無傷だってことくらいだろうか。死ぬほどトラウマ植え付けられたっぽいけど。

 

(これ、もし下手にエマに戦いを挑んでいたら、逆に命はなかったんじゃないだろうか)

 

 その結論に思い至った俺は、背筋が凍るような思いを振り払うようにかぶりを振り、兵士達を踏みつけながら走ること、およそ五分。

 

「なんとか言ったらどうですかー? ……半べそかいてないで、さっさと喋れよ。使えないゴミカスだな」

「ヒ、ヒイイ……ッ」

 

 髪をつかまれ、ニコニコ笑顔で話しかけるエマに、ダミアンはただただ泣きじゃくる。

 暴君ヤンデレとしての面影はどこにもなく、お漏らししたのか、ズボンがびっちょびちょになっていた。汚いな。

 

「エマ……」

「ニコさん!」

「ぷげっ!?」

 

 背後から声をかけると、エマは勢いよく振り返り満面の笑みを浮かべた。

 一方で、ダミアンは彼女に放り投げられ、勢い余って顔から地面に落ちた。無様である。

 

「その……さ、さすがはエマだな。俺の出番、何一つなかった……」

「えへへ、そんなことないですよー。わたし、ニコさんが見てくれていたおかげで張り切っちゃいました」

 

 そう言って身体をくねくねさせてはにかむエマ。

 現実から目を逸らせば、照れるHカップ美少女というだけなんだよなー。死屍累々と化している周囲は、絶対に見てはいけない。

 

「それでー、この後はどうします?」

「もちろん、ダミアンを拘束して兄上経由で皇宮に届けよう」

 

 全部丸投げにすることは心苦しいけど、きっと兄上なら最も良い結果に導いてくれるだろう。決して面倒くさいからじゃないぞ。

 

「分かりましたー。……そういうことだからオマエは、引きずって連れて行くから」

「なっ!? ぼ、僕はカロリング王国の王太子……」

「黙れよ。わたしとニコさんの二人だけの空間に、ゴミカスが臭い息をまき散らすなって言ってるんですよ」

「…………………………」

 

 有無を言わさず馬車へとドナドナされるダミアン。

 仕舞いにはロープで馬車の後ろにくくりつけられることとなり、文字どおり帝都まで引きずられることとなった。

 

 ……途中で死んだりしないかな?

 

     ◇◆◇◆◇

 

「……本当に、無茶をする」

「は、はは……」

 

 帝都のフリートラント家のタウンハウスに帰ってきた俺達。

 こめかみを押さえて溜息を吐く兄上に、俺は苦笑いすることしかできない。

 

「分かっているのか? 下手をすれば、大変なことになっていたのだぞ」

 

 兄上の言うとおり、ルミナス帝国とカロリング王国による大規模な戦争が起きてもおかしくない状況だったことは事実。

 しかも帝都の門をくぐった時には、馬車に引きずられていたダミアンはボロ雑巾のようにずたぼろで、かろうじて息をしているだけの肉塊と化していたし。

 

 ここは素直に謝ろう。

 

「す、すみません兄上……帝国を巻き込んで、色々と迷惑を……」

「そんなことを言っているのではないッッッ!」

「っ!?」

 

 顔をしかめ苦言を呈されることはあっても、こんなに怒鳴られたことは一度だってない。

 それだけ兄上は怒っていて、俺のしでかしたことは帝国にとって非常にまずいことだったのだと認識する。

 

「そ、その、ごめ……っ」

「ふう……いいか。カロリング軍に単身乗り込んで、いつ命を落としてもおかしくなかったのだ。お願いだから、そんな無茶な真似をしないでくれ」

「あ……」

 

 謝ろうとした俺の言葉を(さえぎ)り、兄上は息を吐くと抑揚のない声でそう告げた。

 兄上は帝国に不利益なことをしたから怒っているんじゃなくて、俺が無茶なことをしたから、なのか……。

 

「……とにかく、私の言いたいことは言った。そこにいる王太子は、預かっておこう」

「は、はい」

 

 これで話は終わりだとばかりに、兄上は見るも無残なダミアンを無造作に馬車に乗せ、自身も乗り込もうとする……んだけど。

 

「あ、兄上!」

「なんだ」

「その……ありがとう。それと、ごめん」

「……分かればいい」

 

 深々と頭を下げる俺を一瞥(いちべつ)すると、兄上は今度こそ皇宮へと向かった。

 

「ニコさんのお兄様は、すごくお優しい方なんですねー」

「ああ……俺のたった一人の、自慢の兄上だよ」

 

 エマの言葉に、俺は素直にそう答えた。

 

 ……ちょっと彼女の声色に嫉妬がこもっていたような気がするけど、そんなことないよな?

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