NTR系同人エロゲのサレ夫に転生した俺、幼馴染で婚約者のステータスをオープンしてみたら既に寝取られてたんだが 作:ぜんはいざ
■アレクシス=フリートラント視点
私がニコと出逢ったのは、五歳の時。
土砂降りの中帰ってきた、母の腕の中で眠る赤ん坊の姿を見たのが最初だった。
母から突然、『今日からこの子は、うちの子よ』と告げられた時には、さすがの私も頭が真っ白になったが、すぐに意識を取り戻す。
赤ん坊の、屋敷中に響きわたるかと思うほどの、大きな泣き声で。
「あらあら……お腹が空いたのかしら……」
頬に手を当て、少し困った表情の母。
すぐにヤコブに声をかけ、赤ん坊のために最近子供が生まれたばかりの使用人に母乳を分けてもらうことにした。
「はむ……むちゅ」
使用人の母乳にむしゃぶりつく赤ん坊。
それを穏やかな笑みを浮かべて見つめる母に、私は尋ねた。
「この赤ん坊は、どうされたのですか?」
「それがねえ……」
母曰く、仕事先――皇帝陛下から依頼を受けた暗殺の標的宅――で、何故かぽつん、と眠る赤ん坊がいたとのこと。
もちろん標的の子供というわけでもなく、周囲には誰もいない。そして気づけば、こうして連れて帰ってきていたのだとか。
「……不思議なことがあるものよね。でも、私はこの子を連れて帰らずにはいられなかったの」
そう言って美味しそうに母乳を飲む赤ん坊の頬を指でつついては、これまで一度たりとも見せたことのない、心からの優しい微笑みを見せる母。
殺伐とした裏の世界で生きる彼女が、ここまで気を許すとは。
「では、この赤ん坊はフリートラント家で育てるということですね。ですが、そうなると……」
「……この家に迷惑は絶対にかけないようにするわ。もちろん、あの人にもちゃんと説明する」
私の言葉に、母は僅かに眉根を寄せてそう答える。
どうやら、絶対に赤ん坊を手放すつもりはないようだ。
「ふう……まさか
「…………………………」
ようやく満足した赤ん坊を使用人から引き取ると、守るように抱きしめる母。
私の言葉に、警戒しているようだ。
気づいたかもしれないが、母――サビーネ様は実の母ではない。
本当の母は、私が生まれた直後に命を落としてしまったそうだ。
つまりサビーネ様は継母ということになるのだが、そもそも父ユルゲンとは仕事上の取引相手に過ぎない。夫人の座に収まったのも、あくまでも利害関係によるものだろう。
私はまだ五歳のため、さすがに二人の関係の詳細までは分からない。
「ご安心ください。私に迷惑がかからない限り、何かを申し上げたりすることはありませんので」
別にこの赤ん坊がどこの馬の骨であろうと、最初から興味はない。
なので、私の邪魔にさえならなければ構わないのだ。
私は母に一礼すると、応接間を出て自室へと戻った。
◇◆◇◆◇
「そのはず、だったのだがな……」
八歳になった私は、三歳のニコをあやしながら溜息を吐く。
初めて出逢った時に母に告げた言葉と真逆のことをしている自分に呆れてしまうが、存外この子のことを気に入ってしまったのだ。
今では暇を見つけては、率先してニコの面倒を見るようになっていた。
時折、母や執事長のヤコブが恨めしそうに私を見るが、全て無視している。二人共、暗殺者としての仕事はいいのかと問いたい。
まあとにかく。
「あにうえー! あにうえー!」
「どうした?」
「えへへ……これあげる!」
そう言って渡してきたのは、四葉のクローバー。
どうやら庭で見つけてきたようだ。
「その……いいのか?」
「うん! これをもってたらね、しあわせになれるんだよ! このまえははうえがいってた! だからだいすきなあにうえにあげるんだ!」
「そうか……」
なんとニコは、私の幸せを願ってこのようなプレゼントをくれるとは。
これはもう、しおりにして大切に……いやいや、万が一のことがあってはならない。金庫に保管するのが妥当だろうな。
「だからねー……」
おや? 手を後ろに回して、もじもじし始めたぞ?
思わず抱きしめてしまいそうになるが、ニコが話し終えるまで今は我慢だ。
「あにうえ、これからもいっぱいあそんでくれる?」
「!」
これはどうしたことだ。
私の弟は、天使なのだろうか。いや、きっとそうに違いない。
「もちろんだ。フリートラント家の誰よりも、この私がニコと遊んであげよう」
「わあい!」
両手を上げ、大はしゃぎのニコ。
それを見て、私は思う。
――このたった一人の大切な弟の笑顔を、生涯守り抜いてみせると。
◇◆◇◆◇
「まったく……うちのニコには困ったものだ」
皇宮内を歩く中、そう呟いて私は思わず苦笑する。
カロリング王国軍と対峙するなど、そんな無茶はやめてもらいたいものだが、それでも、こうして真っ先に頼ってくれて嬉しい自分がいた。
それに。
(あの女のせいで傷ついた心も、ようやく癒えたようだしな)
ニコラスと婚約をしておきながら、皇兄殿下の
その事実を知った時には怒りでどうにかなってしまいそうだったが、ここは母があの女に最も相応しい罰を与えてくださったので、どうにか
できればこの手で始末してやりたかったが、これ以上は望むまい。
何より、大事なのはニコなのだからな。
「さて……では、あいつの期待に応えるとしようか」
そう呟くと、私は皇宮内にある部屋の扉を押した。
そこには。
「やあ、待っていたぞ」
「……お待たせしました。〝カール〟第一皇子殿下」