相棒のスレイプモンと仲間のヴァロドゥルモンと共にユニオンのクエストをこなしていた時の事。



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 それはきっと、私のオリジンだったのだと思う。





歪んだ羽衣

 

 テイマーユニオン・ライトファング所属のデジモンタイマーの1人として、私の住む全エリア捜索を行うという前代未聞の巨大クエストに着いていた時の事だった。

 巨大な戦闘音が聞こえ、付近に駆け寄った時、そこに歪んだ羽衣を纏い、パンチャーレオモンとダークドラモンの頭をオメガモンの様に手とし、腕とし、武器とする騎士の様なデジモンがいた。

 何処からか飛んでくる光の矢を、バンチョーレオモンが咬みつく剣で切り防ぎ、ダークドラモンの頭から光弾を撃ち迎撃していた。しかし、それでも何本かは防ぎきれず、デジモンの甲冑の様な頭部を掠めたり、羽衣を貫いたりしていた。

 

 今となって思えば、あの光の矢は彼、あるは彼女という歪みを排除しに来ていた、スレイプモンのビフロストだったのだと思う。なんと強大なデジモンに狙われていた事だろう。そして、何と罪深い存在なのだろう。

 

 兎も角、当時の私には何が起こっているか分からず、付近の物陰に身を潜め観察に徹していた。側から見てわかるその歪んだ存在感に圧倒され、先ず私が出る余地はない、出ても足手纏いになるのがベテランテイマーではない私にも分かっていた。そういう理性的な感覚があったのも覚えているが、何より“格好良かった”。

 歪んでいるにも関わらず、1人何かと戦うあのデジモンは歪んでいるのに、王道の存在で、騎士であるように見えて、そこに正義がない。

 

 “心”で戦っていた。

 

 その心が、生存本能によるものなのか、深さが見えない復讐心なのか、はたまた上を目指すという向上心なのかはわからないが、そこに“心”があった。

 私はその様子に、顔が紅潮していた。口を開け、相棒のレッパモンの事すら忘れて、見惚れていた。

 

 夢中になっていたからか、レッパモンがズボンの裾を噛み引っ張っていたにも関わらず、戦闘範囲がこちらに近づいていた事に気が付かなかった。

 

 気がついた時には、光の矢が目の前に来ていた。

 

 世界景色がモノクロになり、異様にゆっくりに見えた。

 

 避けなければ、と思うも体は微小しか動かない。

 私を守ろうとレッパモンが突進をしていたが、理解してしまった、明らかに間に合わない。

 

 咄嗟に思ったのは漠然とした後悔と謝罪だった。

 

 

 

 だが、その世界は竜の顎に噛み砕かれた。

 

 不思議なデジモンが、額を貫かんとする光の矢を掴んでいた。

 名も知らぬただそこに居ただけの私を守ってくれたのだ。

 その景色を忘れもしない。

 

 不思議なデジモンは私に一瞥もくれず、背を向け、戦う何かに向けて一歩、二歩と進み、右の剣を振り上げた。

 

 データの密度が急激高まり、炎が現れ、戦場が歪む。唯一でありながら、二つの究極。“心”の極致。

 

 ー“覇王両断剣”ー

 

 “世界”がズレた。

 

 つかさず、左腕を構え“それ”を放った。

 

 ー“ダークプロミネンス”ー

 

 “空間”が捻れた。

 

 息が止まっていた、いや、心臓が止まっていた。

 すぐに拍動を始めたが、冷や汗が吹き出し、失禁もしていた。

 

 羽衣が綺麗に荒々しく舞っていた。

 

 私達は吹き荒れる暴風を耐える事しか出来ず、地面という命綱を握り締めていた。

 暴風が止まった後も必死にレッパモンを抱きしめ守っていた。風が分かるレッパモンが苦しそうに私の腕に噛み付くまで、動けずにいた。

 

 それまで、あのデジモンはただそこに存在していた。

 

 意識がハッキリして、汚れたテイマー衣装も気にせず何か言わなければと思い、震える足で無理矢理立ち上がって、声を掛けようとした。

 

 そんな私の様子に気がついたのか、背中越しに此方を見つめた。

 兜の隙間から見える光る眼に、言葉が詰まった。

 

 一瞬だったと思う。何とか、何か言わねばと、思った時には、羽衣のデジモンは“空”へ消えていった。

 

 私は、ただその一等星を見ながら立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 「オマエタチはナゼ、“それ”をカバう」

 「“それ”はセカイの“ユガみ”ハイジョせねばならナい」

 

 2人の聖騎士型デジモンが言う。

 

「え、えへへ……いやぁ!かのロイヤルナイツに、質問されるにゃんて光栄だなぁ!?…く、詳しく聞かせてあげるよ?!」

(主、噛んでますよ)

 

 緊張のしすぎで、震えて上擦った声がでる。

 かつてない恐怖で戦ってすら居ないのに心が折れそうだ。

 今の私には分かる。片方のガルルモンとグレイモンの頭を下げる白い騎士は伝説のデジモンオメガモン、もう1人はかの伝説のロイヤルナイツの中でも伝説の漆黒の鎧に蒼マントのアルファモン。

 

 万が一にも勝てないだろうけど、背後にいるデジモンだけは、護りたい。

 

「………き、聞きます?」

 

 冗談半分ならぬ、本気半分で言ったけど流石にダメか…

 

 「「…」」

 

「な、何か、言って貰えます…?」

「主、無駄ですよ。私はロイヤルナイツじゃないですけど、同じ型のデジモンとしてわかっちゃいます。戦うしかありません、ご覚悟をなさってください。」

 

 あの時からあり得ないほど一緒に成長してくれた元レッパモンのスレイプモンが言う

 

「スレちゃん、ほ、本当ぉ…!?」

「おぬし、ワシを従えてる癖にへっぴり越しよねぇ」

 

 あのデジモンを探す旅の過程で出逢ったヴァロドゥルモンが言う。

 

「ヴァロ姉ぇ…戦わなきゃですかコレぇ…!?」

「でも、勝ち目がないわけじゃない。分かってるでしょおぬし。やるならやりなさい。」

 

 そう、背後の歪んだ羽衣のデジモン、私の一等星が共に戦ってくれれば。

 

「…分かった。2人とも、時間稼いでくれる…?」

 

 「勿論、恩人の為にも。」

 「おぬしが見捨ててればなぁ…まぁ、まだワシ死にたくないし。ソイツいないと勝てないし。やるよ。」

 

「ッ…あ”り”か”と”ぉ”…!!」

 

 2人が前に出ていくのをみて、振り返る。

 

 翡翠の様に鮮やかな緑の襤褸を纏い、右は勲章の跡が無数についたバンチョーレオモンの帽子は千切れる寸前で、左はダークドラモンの顎の歯が不揃いになっている。デジ文字で“カオス”と刻まれた剣は刃こぼれが酷く、あと何が切れるのかと聞かれる次第だ。

 

 そう、私の一等星はカオスモン。カオスモンって総称ではあるけど、彼、或いは彼女はカオスモン。世界の“歪み”。だから、ロイヤルナイツに目をつけられた。

 

 それでも。

 

「…さて、“カオスモン”」

 

 大金を叩いて買い貯めたフルリペアを躊躇なく存分にカオスモンに使う。この後の生活なんて知ったものか。

 

「お願い、起きて。」

 

 瀕死になりかけた戦いでもその殆どを回復できるフルリペア。そんな、アイテムでもカオスモンは、少しずつしか直せない。

 

「お願い…私の一等星。」

 

 空になったフルリペアが2桁を超えた。

 一般に言われる超究極体。その一体に数えられる事もあるカオスモン。しかし、超究極体であるにも関わらず、カオスモンは圧倒的に不安定である。しかも、“世界”側から修正プログラムが走る為、更に短命であるという。

 

「あの時、助けてくれたお礼、まだ言えてないの。」

 

 在庫はまだ、ある。プラチナテイマーの財力は伊達じゃない。

 体の修復は進むが、意識だけ回復しない。

 

「主ッ!!まだ!?」

 

 2人もそろそろ限界が見えて来た。なのにロイヤルナイツの2人はまだまだ、余裕そうだ。

 

「ッ!…カオスモン、貴方が覚えてるかは分からない。でも!私達は貴方に助けられた、ありがとう…今度は私たちが助けたい…でも…」

「“貴方”が必要なのカオスモン…」

 

「“助けて、カオスモン”!!!」

 

 フルリペアが無くなった。

 

 だが、剣が光った。

 

 “心”が灯った。

 

 

 

 激闘を経て、スレイプモンのレッドデジゾイドの鎧は傷でくすみ、ヴァルドゥルモンの輝きは幾分か弱くなってしまっている。

 対してロイヤルナイツ達の鎧は未だに輝きを放ち、疲弊の様子も見れない。

 

「ッハァ…ヴァロ姉様、アイツら何なんですか。本当にデジモンなんですか?」

「一応その筈だよ。アンタも…十分そっち側だって理解してる?」

 

「我々の目的はカオスモンの排除」

「邪魔をしなければ命までは取らない」

 

「アイツら、ああ言ってるけど」

「知らない奴らの話なんて知りません!主がやりたい事の方が大切です!」

「アンタ…ホント好きねぇ…まぁ、好きになるのも分かるけどぉ……まって、なに!?」

 

 「「…」」

 

 突如、威圧感が増した。周辺の情報が荒れ、ロイヤルナイツの2人から風が吹きマントが靡く。

 

「…今からホンキってわけね。」

「まだ、上があるんですか!?」

 

 スレイプモンとヴァロドゥルモンから嫌な汗が流れる。

 

 2体の間に緑の衣が靡いた。

 

 まるで庇うかの様に2体の前にカオスモンが立つ。

 それは不退転の覚悟でもあった。

 

「…カオスモン!?」

「アンタ、もうやれんの?」

「うん、ケイちゃん大丈夫だって」

「ケイちゃん??」

「…主、カオスモンにあだ名つけたんですか?」

「うん!」

 

 総称じゃ可哀想じゃん。と言うと、スレちゃんはハァーと溜め息をついた。

 カオスモンに続いて、2体の横に立つとスレイプモン達にデジミン、デジアルを与え、微だがHPとMPを回復する。

 

「ごめん、フルリペア全部使っちゃったから、コレで許して」

「ってことは、明日からテイマー業が忙しくなりますね、主。」

「アナタ、忙しくても翼の手入れは手伝いなさいよ?」

「うっ…分かってるってヴァロ姉ぇ…」

 

 スレちゃんが笑う。そんな会話も気に留めないカオスモンことケイちゃんは、真っ直ぐロイヤルナイツの2人を見つめていた。

 

「さて、主。我らがケイちゃんはやる気一杯みたいですよ。」

「というか、全力じゃなかったのはワタシたちも同じなのよ!」

「そうだね、スレちゃん、ヴァロ姉ぇありがとう」

 

「…ケイちゃん、改めて一緒に戦ってくれる?」

 

 カオスモンはあの日と同じ様に背中越しに此方を見つめ、うなづいた。

 

「私たちのターンはこれからだよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、ユニオンに居るマトモなテイマーってアイツだけだと思ってたんだが、他にも居たとはね。」

「ロイヤルナイツと勘違いされてるのも笑ったぜ」

「にしても、オマエ達が認めるとはな」

 

 アルファモン、オメガモンと同等の存在感を放つデジモン達が話す。

 

「カノジョは、“あれ”をアンテイさせた」

「モットもオンビンにキキをカイヒした」

「ヴァロドゥルモンがミトメタなら、マチガイないハズだ」

 

 アルファモン達が言う。

 

「オマエ達がそう言うなら、まぁ大丈夫何だろうな。…オレもそろそろユニオンを認めないと駄目か?」

「ドゥフトモン…まだ認めてなかったのか…」

「アイツと戦ったあの時、がユニオン全体はまだまだだったろ!」

 

 紅蓮色の鎧と5対の白き羽を持つデュークモンがいう。

 

「デュークモン、キコウのイケンをキキたい」

「ワレらは、カノジョにイチニンすべきだとオモう」

 

 アルファモン達がいう。

 

「ふむ、オマエ達が言いたい事は分かった。だが、万が一の為、オファニモンとカオスデュークモンの方にも情報を伝えておく。それでどうだ?」

「イギなし」

「サンセイだ」

 

「わりぃ遅れた〜って、何だよ。もう解散する流れか?」

「まぁな、大遅刻だぞベルゼブモン」

 

 緑の瞳のベルゼブモンが会議の輪に加わった。

 

「なんだ、結局アルファとオメガが、“あれ”しばいて終わったのか」

「いや、違う。“カオスモン”は討伐しないことになった。」

「ハァ!?正気かよデュークモン」

「アルファモンとオメガモンの意見だ。あと、ここには居ないがスレイプモンからも様子見で良さそうだと言われている。」

「スレイプが?珍しいなオイ」

「優秀な後輩が出来たらしい」

「スサノオのおっさん、それマジ???」

 

「まぁ、何はともあれ。世界に危険を及ばさないなら、我ら“ガイアオリジン”が直接手を出す理由もない。生命に貴賎はない。」

「そぉかい、分かったよ。」

 

 一戦交えて見たかったんだけどナァ〜とベルゼブモンが言った。

 

「カオスモン、いや“ケイ”よ、汝の道に幸在らん事を」

 

 

 

-THE END-

 

 

 

 

 


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