強制的にTSさせられた元人間の現戦術人形が、ヤー〇ム的なスラム街で狩人をやってるだけの話です。

なので仕掛け武器だのとか出てきますが、どうかご容赦ください……。

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とある狩人の話

 

ドスッ、ザクッ……ドシャッ。

 

自律人形が台頭する以前、かつては最先端技術を持つ企業が寄り集まっていた、今では霧深く閑散とした巨大なスラム街。

その一角の吹きさらした下水道で、死体を食べ肥え太った人間大ほどもある大きなカラスを斬り伏した小さな影があった。

 

「はぁ、これでようやく4体目……いい加減、キリが無いな」

 

その霧の中に佇んでいるのは、銀灰色の短い癖毛をした幼げな少女だった。その少女の身体つきは幼げな顔や身長とは真逆に、ボンキュッボンと表現するのが正しいくらいのグラマラスさがあった。

そんな彼女の格好は殆ど白いスクール水着と言っても差し支えない姿の上から煤けたカモフラージュマントを羽織っただけであり、一目見ただけで痴女かと思うような異質な雰囲気をまとっている。

そんな琥珀色の瞳をした彼女の右手に握られているのは、小柄な身体には似つかわしくない大きさの杭打ち機……この街では「パイルハンマー」と呼ばれる武器であった。

 

「治療用のナノマシン輸血液も少なくなってきたし、とりあえずは一旦ここで切り上げるべきかな……」

 

この少女の個体名称は「エヴェリン」、出自が「とある理由」によって少々特殊な戦術人形だ。

 

正気を失った人間や人形の始末、そして怪物狩りまで請け負うのが、この街では「獣狩りの狩人」と呼ばれる仕事だ。

かつて製造コードLMG11と呼ばれたエヴェリンは、戦術人形大手企業のI.O.P.から比較的自由な所属として、PMCや自警団といった組織へのアプローチの為に広告塔を兼ねて狩人をやらされている。

 

◇◇◇

 

僕はエヴェリン。

 

今はしがない狩人として、専用の銃すら無く働かされている戦術人形だ。

元々は「アリス・ジョージ」という名前以外は普通の男として生きていたけれど、世界的な電脳不足から何者かによって寝ている所を拉致されて、気がつけばこの街のI.O.P.社の工場で今の人形の身体にされていた。

 

向こうさんによれば、僕みたいに電脳化されて送られてきた形で戦術人形となってしまった例は久しぶりらしい。

 

それはさておき……僕の今の身体は、どういう訳か最高クラスの娼婦人形として生産されたモデルだ。

後にI.O.P.の開発に電話で問いただしたところ、オーガニック素材99%の生身同然な抱き心地をウリにしたタイプの小柄なバリエーションモデルなんだとか。

だけど、それの起動テストをしたらパーソナルデータが男だったもんだから僕も作業員も大騒ぎ、結果として強制シャットダウンさせられた後に調べて僕が元人間だった事が判明したそうな。

 

その結果として、元の肉体が死んでいた僕は流されに流されるがまま、この街で募集していた狩人の仕事をさせられる羽目になった訳だ。

 

「お疲れ様、エヴェリン。初めての単独の仕事にしては、慎重かつ大胆で危なげない動きだったな」

 

「そんな事ないよ、先輩。そもそも僕、マシンガンを扱うのも想定で作られたボディだし、そのパワーでゴリ押しした部分も多かったよ」

 

下水道の隠れ家で僕に親しげに話しかけてくれているのは、この街で数少ない数年前から狩人をやり続けている狩人組合の先輩、「リオ・シモン」という人間の男だ。

古臭いスポーツ帽子に一昔前の軍用ジャケット、そして使い込まれて汚れたジーンズといった不審者丸出しな見た目に反して、その性格は飄々としていながらも真面目で掴みどころがない。

 

彼は力任せな僕の武器とは対照的に、咄嗟の取り回しが良いノコギリ形態と、一振りの威力やリーチに長けた鉈形態を変形によって切り替えられる「ノコギリ鉈」を得意な武器としている。

 

「……で、どう?これから狩人として、今後もやっていけそうか?」

 

「うーん、良く分かんない。だけど、お上からの指示もあるから、嫌でも頑張っていかなくちゃ」

 

「ふむ、そうか……殆どフリーランスとはいえ、組織に所属してると辛そうだな〜……」

 

「だからって、狩人一辺倒な先輩もどうかと思うよ?」

 

「なるほど、こりゃ1本取られたわ〜HAHAHA」

 

そんな軽飄な彼から教わった狩人としての知識は、今まで普通の生活をしてきた僕にとっては未知の領域ばかりだ。

 

――この街の人間や人形は、ナノマシンが生成する鎮痛成分などに麻薬的な依存をしていて、それらを輸血液という形で他者や死体から摂取する事が日常的になっている。

 

だから時折、正気を失った人々が「血」を求めて街を彷徨う異常事態、通称「獣狩りの夜」が定期的に発生している。

自分達が「獣」と認めた相手を殺して、その血を自らに輸血して束の間の快楽に酔う……この街でのナノマシンは、正にタチの悪いドラッグと何ら変わらない。

容量用法を守れば、瞬く間に傷を治してくれる優れものなんだけどな……。

 

なぜ毒物とかが効きにくい人形も依存しているかについては未だ不明。だから、それを調べる事も僕がスラム街に送られた理由の1つでもあるんだけどね。

 

輸血液に隠された秘密……それを暴いて可能ならI.O.P.の下に届けろ、というお達しだ。

 

「今回の夜も、長くなりそうだな……」

 

そんな先輩の呟いた言葉に、僕は言いようのない不安を何となく感じた。

まるで、今までの「獣狩りの夜」とは違う……とでも言いたいような。

 

◇◇◇

 

街の人の多くがナノマシンを含んだ血を求める「獣狩りの夜」が始まりだした翌日、僕と先輩の下に新たな仕事が舞い込んだ。

 

「今回の依頼は、街と大教会に繋がる大橋付近に住んでる人々からだ。「最近、悲鳴みたいな獣の声が響いて怖いから調べて欲しい」ですってよ、不気味だね〜……」

 

「先輩、オバケみたいなジェスチャーで本気で僕が怖がると思ってる?これでも一応、中身は成人男性なんですけど?」

 

「わーってる、冗談だっての……ノリ悪いなぁ」

 

大の大人のクセに頬を膨らませてむくれる先輩を他所に、僕は依頼のメールを確認しながら先輩に質問する。

 

「それで?先輩的に、今回は何かヤバいものとか感じますか?」

 

「まぁ、今回は大捕物になりそうって感じかな。普通、人間や人形がナノマシンの作用によって正気を失ったりE.L.I.D.モドキみたくなったとしても、4車線くらいある大橋で響く程の咆哮は上げられない。可能性があるとするなら……」

 

「あるとするなら?」

 

「過度に輸血を続けた奴の変異パターンの可能性が高い、って事。異常な成長ホルモンによって膨張していく肉体を補う為に周りの物を取り込んで、今は文字通り巨大な獣のように暴れてるかもしれないね」

 

その先輩の言葉を聞いて、僕は恐怖で一瞬だけ震えた。

 

単に戦う敵が想像も出来ないほどに巨大だからというのもあるけれど、そうなるまでに一体どれだけの血を取り込んで生きてきたのか……。

それを考えるだけでも、おおよそ人としてやる事とは思えないほどにおぞましい。

 

「そんな相手……勝ち目は、あるんですか?」

 

「ぶっちゃけ、一か八かになるかも。俺の武器だと、デカブツ相手に致命傷を与えるには不十分だ。だから今回はエヴェリン、お前が切り札になる覚悟でいて欲しい。あのパイルハンマーの一撃なら、どんな大きさであっても十二分のダメージは叩き出せるハズだからな」

 

「なるほど、じゃあ先輩は囮に……って、待って待って!?先輩がそこまで言う奴が相手なのに、1人で引きつけるつもりなの!?無茶ですよ!!」

 

だけど、先輩は普段通りの様子で頭の後ろに腕を組みながら笑顔を浮かべてみせた。

 

「無茶かどうか、それはやってみなくちゃ分からんだろ。それに今や、この街でマトモな狩人をやっているのは俺とエヴェリンの2人だけだ。狂ってない街の人達を守る為にも、張れるだけの命は張らないとな」

 

しかし、そう語る先輩の眼差しは本気そのものといった具合で、一切ふざけてはいないように感じた。

 

「あとエヴェリン、デカいのは態度じゃなくオッパイとケツだけにしといてね。先輩狩人との約束だゾ☆」

 

「先輩、セクハラならシバき倒すよ?」

 

「はい、すいませんでした……」

 

ただでさえセクサドールな自分の身体を気にしているってのに、開発者は何でロリ巨乳で巨尻なんてニッチも良い所なボディにしてくれたんだか。

しかも、紐付けられてる戦闘システムに干渉するせいでマトモな衣服も着られないし!

 

◇◇◇

 

その夕方、僕と先輩は普段の狩りでは持ち出さない銃器(とはいってもフリントロック式の拳銃や散弾銃なのだが)すらも装備して、件の大教会に繋がる大橋にやって来た。

 

「いんやぁ、しかし……相変わらずの人気の無さっぷりだな〜!あんまりに見通しが良いから、普段ここを通る奴は居ないんだよね!」

 

「まぁ、邪魔する奴が他に居なさそうなのは良かったけども……」

 

――この大橋は以前こそ大教会に繋がる道として使われていたらしいものの、「獣狩りの夜」で正気を失った人々が闊歩するようになった現在では大教会と繋がる大扉は固く閉じられている。

 

先輩から、ナノマシンの混じった血による輸血法の治療を広めたのは大教会の一派だと聞いている。だから、僕からすれば実に大教会は卑怯で胡散臭い組織だと思っている。

 

「どうしたよ、エヴェリン?そんな深刻そうな表情してさ〜」

 

「いや、別に……突然ですけど、先輩は街を見捨てたような大教会の事、どう思ってるんですか?」

 

「まぁ、ふざけんなって気持ちと仕方ないかなって気持ちが半々かな。だって、ナノマシンを取り扱ってた企業は軒並み街から出ていっているんだ。その技術を引き継いで、取り残された人々に輸血液によるナノマシン注入という治療法を広めたのが大教会。だから俺は、連中だって街の人を守りたい気持ちは同じだと思っているんだ」

 

「輸血液で人々が血を求めるようになったのに?むしろ僕、そこが元凶だと思ってるんだけど……」

 

「だけど実際、放置してたらどれだけ多くの人々が狂ったかも分からんからね。アレだ、無いよりマシってやつ。あんなんでも生きる希望を持てる人だって居るもんさね」

 

そう言われてしまうと、これ以上は僕も先輩に返す言葉が無くなってしまう。

大教会が輸血液でナノマシンを補充する術を広めたならば、それは最後まで見届ける義務や権利もあると思うんだけど……。

でも、逆に考えるとするならば……その大教会ですら、今は手に負えない事態になってしまったという事なのかな。

 

「とはいえ、教会所属の狩人の1人でも出張ってきてくれれば心強いんだけどな〜……」

 

「へぇ……大教会にも狩人が居るんだ」

 

「俺が狩人デビューした頃はバリバリ活躍してたよ。でも、「獣狩りの夜」の頻度が増して落ち着かなくなってきた頃に、あんまり姿とか噂とか見なくなってた感じかな」

 

「だとするなら、やっぱり……」

 

「エヴェリン、そう犯人だとか決めつけるのは早計だよ。もしかしたら、単に大教会へ避難してきた人々を守る為に、外部からの侵入を防ぐ為に閉鎖しているだけかもしれないしね」

 

「僕も、そうだと良いんだけど思ってるんですけどね……」

 

それにしたっては、状況証拠が濃すぎてキナ臭さ全開で不安だ。

キナ粉センサーなら、ざっと53万は出るくらいにキナ臭いんじゃないか?

 

……とまぁ詮索は一旦ここまでにしといて、今は仕事に集中しないとね。

 

ちょうど今、城塞みたいな大教会の方から二足歩行の巨大な鹿みたいな化け物が飛び降りてきたもの!

 

「やっぱり向こうもダメだったか!エヴェリン、どうやら教会からの増援は期待出来なさそうだ!」

 

「了解!あんな奴が放置されてた時点で、だいぶ大教会の無事は怪しかったけどね!」

 

だってアレが来た方向、狩人が多くいるかもと聞いてた大教会の向こう側ですもん。

その人達が取り逃した可能性はあるにしても、避難してきた人か誰かが変異した結果と考えるのが自然だよ。

 

――だからこれ以上は苦しまぬよう、せめて安らかに眠らせてあげるのが、僕ら狩人の仕事だ。

 

「っ!飛び上がったぞ!エヴェリン、頭上に気を付けろ!」

 

「分かってる!それにしても、あんな図体で激しく動けるなんて……うわわわっ!!」

 

しかし僕と先輩を狩人と認識したか否か、その怪物は5mはあろう巨体で軽々しく跳ねながら、瓦礫や鉄筋を取り込んで肥大化した右腕を着地と同時に先輩へ向かって振り下ろしてくる。

 

先輩はそれをギリギリで身体を傾けて避けながら、なかば着地の衝撃で転びながらも左手に抱えた散弾銃を至近距離からブチかました。

その不意打ちともいえる一撃で怪物は悲鳴みたいな咆哮を小さく上げ、体重のバランスを支えられずにスッ転ぶ。

 

「ふぅ、あっぶないな……お前みたいな変異体用にあつらえた水銀弾、お味はいかがかな!?」

 

すると、その先輩の挑発に怒り狂ったのか怪物は両足を死にかけのカエルのようにビョッと動かし、器用にも先輩の散弾銃を蹴り壊しながら跳ね起きてきたのだ。

 

「あ〜クソ!これ作るの結構手間取ったってのに……エヴェリン!そこで呆けてないで、俺が囮になってる隙に奴にパイルをブチ込め!」

 

「あっ……は、はい!」

 

いかんいかん、一瞬とはいえ先輩の戦い方が凄く洗練されてて、ついつい脳内モノローグで実況にふけっちゃったよ。

 

先輩に集中している怪物の懐に、すぐさま僕も飛び込みながら右手に持ったパイルハンマーを起動させる。

怪物も遅れて僕の存在に気づいたようだけど、もう遅い!

 

「どっせぇぇぇぇえい!!!」

 

そのガラ空きになっている横っ腹に強烈な一撃を浴びせた瞬間、パイルの火薬の炸裂による衝撃で怪物も僕も大きく仰け反る。

 

しかし、怪物は屈強な上半身で2度目の転倒に耐えきったけれど、ロクに衝撃を受け止める体勢を取っていなかった僕は道路の上をゴロゴロと転がされてしまった。

 

いつつ……剣先みたいなパイルハンマーの杭部分で殴るように斬るのとは違って、やっぱり一撃必殺に特化したコレの扱いは難しいや。

 

「エヴェリン!危ない!」

 

「へっ?――うわっ、たぁ!?」

 

危ない危ない……あの一撃を入れたとはいえ、それで簡単に倒れてくれる相手じゃなかったか。

かなり弱ってて動きも鈍くはなってきているけれど、先輩の一声が無かったらR-18G待ったナシの挽き肉に加工されちゃうところだったな。

 

だけど、今の相手の状態なら次は確実に仕留められる!

 

「よし、もう1発――って、あれ!?先輩、もう倒しちゃったんですか!?」

 

「そりゃあエヴェリンお前、今ので見事なまでにターゲッティングされてたもん。そんなガラ空きな怪物の背中に飛び乗って、そのドタマをカチ割るぐらい楽勝だっつーのさ」

 

「普通の人間はやらないんだよ、そんな動き!?」

 

やっぱり人間辞めてるよ、この人……。

狩人の仕事で起こったトンデモ話を、武勇伝みたいに聞かされた事があったけど……そのどれもが、高所から飛び移ろうとして失敗したけどアシクビヲクジキマシターで済んだりとか、頭に大きな瓦礫を投げつけられたけど首がムチ打ちになる程度で済んだりとか、そんなバカげた話だらけだもん。

 

そして、こんなヤバい人を相棒に持った僕も後々は同じような体験をするのかな〜と思うと、別な意味で寒気がしてくるよ。

 

「さて、仕事も終わった訳だし……帰りに何か食べて帰りますか〜」

 

「いや、まず組合に報告しないとダメだからね!というか、この辺でマトモに開いてる店ってありましたっけ!?」

 

「え?あの組合事務所の近くの串焼き屋じゃダメ?」

 

「カエルだかイモリだかを通常メニューに出してる時点で論外です!!」

 

だけど何と文句を言ったとしても、この道を選んだのは僕自身だ。

 

だから僕は狩人……いや、狩人形として夜が明けるまで血に飢えた獣を狩り続ける。

その先に僅かでも、この街の人々に対する救いがあると信じて……。




ここにぃ、俺たちの戦いはこれからだENDした殆ど勢い任せで脳内設定だけで作品を書いた人がいるらしいんですよ。

_人人人人人人_  
>  私です  < 
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y ̄

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