The Sky Blessing ~Rabbit Edition~   作:ella_coat

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第56話 乱戦温泉

 粉雪が舞い散る空の下、隔絶された極上の癒やし空間であるはずのその場所は、瞬く間に阿鼻叫喚の地獄絵図へと塗り替えられようとしていた。

 

 脱衣所と露天風呂を隔てていた木製の引き戸は弾け飛び、無数の破片となって湯船に浮かんでいる。直前まで白濁した名湯から立ち昇っていた穏やかな湯気は、焼け焦げた木材のきな臭い煙と、鼻を突くような硫黄の悪臭によってかき消されていた。

 そして、もうもうと立ち込める白い蒸気と黒い煙の向こうから、ゆらりと姿を現したのは、全身が煮えたぎるマグマのように赤く脈打ち、陽炎を纏った人型の魔物――「炎延者」だった。

 

「…………は?」

 

 心地よい微睡みの中にいたはずのアキシャ、エクアル、ラビリアの三人は、生まれたままの姿で立ち尽くし、その非現実的な光景を凝視していた。

 ほんの数瞬の沈黙。事態を脳が処理するまでの空白を経て、最初に反応したのはやはりエクアルだった。

 

「な、な……なんでこんな所に魔物がいるのよ!?」

 

 彼女は反射的に湯船の縁に置かれていた手ぬぐいサイズのタオルをひっつかんだ。慎ましやかな胸元と、秘すべき下腹部を隠すように身体をギュッと縮こまらせ、顔を赤らめながら後ずさる。

 非戦闘時、しかも入浴中という、人間が最も無防備かつ無警戒になるプライベート空間を土足で侵されたのだ。混乱と羞恥が入り混じったその表情は、今にも泣き出しそうに歪んでいる。

 

 一方で、ラビリアもまた不快そうに眉をひそめていた。彼女はエクアルほど取り乱してはいないものの、右腕で胸の膨らみを若干隠しつつ、冷ややかな視線を侵入者へと向けている。

 

「はぁ……。せっかくいい気分だったのに、最悪だねー。湯船で温まるの、まだ途中だったんだけど」

 

 彼女にとって、自身の裸体を見られることへの羞恥心よりも、貴重なリラックスタイムを暴力的な手段で中断されたことへの不機嫌さが勝っているようだ。濡れた淡い桃色の髪を鬱陶しそうに払いながら、ラビリアは冷静に状況を分析し、隣で震えるエクアルに視線を投げかける。

 

「エクアルが感じた呪いの気配、やっぱり当たりだったみたいだね。……にしても、覗きにしては随分と数が多いみたいだけど」

 

 ラビリアの言葉通り、先頭に立った「炎延者」の背後から、さらに二体、三体と、同じ魔物がゾロゾロと姿を現す。狭い脱衣所はすでに彼らが発する異常な高熱によって焦熱地獄と化しており、床板や壁が炭化するパキパキという音が、ここまで響いてきていた。その光景に、エクアルが血相を変えて叫ぶ。

 

「ちょっと! 悠長なこと言ってる場合!? 武器も服も、全部脱衣所なのよ!? あそこを占拠されたら、どうしようもないじゃない!」

 

 エクアルの悲痛な叫びは、もっともな懸念だった。

 脱衣所に置いた籠の中には、彼女たちの戦闘服だけでなく、アキシャの大剣、エクアルの杖、ラビリアの銃といった全ての装備が入っている。もし「炎延者」の熱で服が燃やされれば、この極寒の雪国で着るものを失うだけでなく、一糸まとわぬ姿で拠点まで帰らねばならないという、社会的死にも等しい過酷な運命が待っているのだ。

 だが、魔物たちに慈悲などあろうはずもない。「炎延者」の一体が、醜悪な唸り声を上げながら、燃え盛る剣を振り上げ、震えるエクアルへと一歩踏み出した。

 

 その瞬間だった――湯船の水面が、まるで海底火山が噴火したかのように激しく跳ね上がった。

 

「っしゃあああ!!」

 

 大量のお湯しぶきと共に飛び出したのは、アキシャだった。

 彼女は一切の迷いもなく、また身体を隠そうとする素振りすら見せず、堂々たる全裸のまま風呂場の石床に「ダンッ!」と豪快に着地する。湯気の中に仁王立ちしたその姿は、ある種の芸術的な美しさを放っていた。水に濡れた白い肌が、魔物の放つ赤い光を浴びて艶めかしく輝き、引き締まった腹筋、しなやかな太もも、そして豊かな胸の膨らみが、呼吸に合わせて躍動する。

 アキシャは不敵な笑みを浮かべ、燃え盛る剣を構える魔物の目の前に立ちはだかると、低い声でドスの利いた啖呵を切った。

 

「人が気持ちよく風呂に入ってる時に土足で上がり込んでくるとは……いい度胸じゃねぇか、あぁ?」

 

 アキシャの顔には羞恥心など微塵もなく、あるのは純粋な闘争心と、露天風呂をゆっくりと楽しむ時間を邪魔されたことへの、明確かつ激しい怒りのみだった。

 

 アキシャと対峙した先頭の「炎延者」は、一瞬動きを止めた。目の前の獲物が、武器ひとつ持たない裸の少女であると侮ったのか、あるいはその堂々たる裸身に気圧されたのか。だが、魔物はすぐに殺意を取り戻し、隙だらけの大振りで剣を振り下ろそうとする。

 しかし、その剣が振り下ろされるよりも速く、アキシャの身体がバネのように弾ける。

 

「おらぁっ!!」

 

 鋭い気合いと共に放たれたのは、強烈な左回し蹴りだった。水滴を撒き散らしながらしなる濡れた素足が空を切り裂き、魔物の右腕の手首付近にクリーンヒットする。

 岩石のように硬質な身体と筋肉がぶつかり合う。

 バキィッ! という無機質な破砕音と共に、魔物の腕が異様な方向に曲がった。握力を失った手から燃え盛る剣が離れ、カランと虚しい音を立てて床に転がる。

 アキシャは着地する間もなく、空中で身体を捻り、無防備になった魔物の懐へと飛び込んだ。

 

「まずはお前からだ!」

 

 全体重を乗せた右ストレートが、魔物の顔面へと吸い込まれる。拳がめり込む衝撃で、魔物の頭部が内側から爆ぜるように砕け散った。核を失い、炎のマナで構成された身体は維持できなくなり、その場に崩れ落ちて黒い灰へと変わっていく。

 アキシャは湯気を上げる拳を軽く振り、残りの魔物たちへ挑発的に手招きをした。胸が揺れるのも気にせず、彼女は獰猛に笑う。

 

「次はどいつだ? まとめてかかって来いよ。のぼせる前に片付けてやる」

 

 そのあまりに男前すぎる、しかし姿は全裸という姉の姿に、エクアルはタオルをギュッと握りしめながらも、その光景に見入ってしまっていた。

 

「お姉ちゃん……! す、すごいけど……少しは恥じらいを持ってよ……!」

 

 そんなエクアルの悲鳴をよそに、アキシャの戦いぶりを見たラビリアもまた、感心したように口元を緩めていた。

 

「おー。やるねぇ、アキシャ……ふふ、私も負けてられないなー」

 

 ラビリアはゆらりと湯船から上がると、浴場の端にある坪庭へと歩み寄った。そこには風流な演出として植えられた、数本の青竹が雪を被って立っている。

 彼女はその一本に手を伸ばすと、まるで枯れ木でも折るかのような手軽さで、凄まじい脚力を込めた蹴りを見舞って根本をへし折った。さらに手刀で余分な枝葉を払い落とし、一本の長い竹の棒を作り上げる。

 

「即席の竹棒……バンブーロッドと言ったところかなー」

 

 ラビリアはその竹の棒を片手でくるくると回し、迫りくる「炎延者」を見据える。当然、ただの生木では高熱を纏う魔物には通用しない。触れた瞬間に燃え尽きるのがオチだ。

 だが、彼女の瞳にはすでに勝利への数式が浮かんでいた。

 

「確か竹は――こういう性質があったはず」

 

 ラビリアは自身の指先に魔力を集中させ、微量な熱量変換を行って竹の先端に触れる。ジュッ、という音と共に水分が瞬時に蒸発し、竹の先端が黒く炭化していく。炭化――すなわち、絶縁体である木材を、導電性の高い炭素物質へと変質させるプロセスだ。ラビリアは瞬時に竹の性質を書き換え、電撃を纏わせるための「媒体」へと作り変えたのだ。

 

「よし……それじゃ、いっくよー!」

 

 彼女がさらに魔力を流し込むと、黒く焦げた竹の先端からバチバチと黄色い稲妻が迸る。それは即席とは思えない、高出力のライトニングロッドへと変貌していた。

 ラビリアは白磁のような裸身を翻し、一気に加速する。アキシャに群がろうとしていた「炎延者」の側面へ、滑るように回り込んだ。

 

「隙ありアリー」

 

 帯電した竹槍による高速の突きが、魔物の脇腹を穿つ。強烈な電流が魔物の体内のマナ循環を阻害し、魔物は激しく痙攣して動きを止めた。壊れた機械のように身体を震わせているその瞬間、逆サイドから影が差す。

 

「ナイスだ、ラビリア!」

 

 アキシャだった。彼女はラビリアが作った隙を逃さず、空高く跳躍すると、重力に任せた踵落としを魔物の脳天へと振り下ろした。魔物の身体が地面にめり込み、そのまま霧散する。

 

 二人は息を合わせ、流れるようなコンビネーションで次々と敵を翻弄していく。ラビリアが竹棒で牽制して敵の意識を誘導し、その死角からアキシャが強打を叩き込む。あるいはアキシャが敵の攻撃を紙一重でかわし、生じた隙にラビリアが電撃を流し込んで麻痺させる。

 装備も、防具もない全裸の二人だが、その連携はむしろ普段よりも軽快で、敵を一切寄せ付けない。

 

「ほらほら、こっちだよー?」

「そら、よそ見してんじゃねぇぞ!」

 

 アキシャとラビリアが戦場を支配する中、その光景をただ見ていたエクアルは、自分だけがタオルを握りしめてオロオロしていたことに気づき、ハッと我に返った。

 

「っ……! 恥ずかしがってる場合じゃないわね! 私だってやらないと……!」

 

 エクアルは開き直ったように、胸元を隠していたタオルをバッと放り投げた。露わになった肌が冷気に晒されるが、今の彼女の心はそれ以上に熱く燃えている。

 両手を広げ、並々と湛えられた湯船の水面に意識を集中させる。

 

「水が一杯あるなら……こんなのは、どうかしら!?」

 

 彼女が指揮者のように腕を振り上げると、湯船のお湯が巨大な水塊となって宙に浮き上がった。それは意思を持つ蛇のようにうねり、彼女の合図と共に幾多の水の刃となって、脱衣所から溢れ出ようとしていた「炎延者」の群れへと殺到した。

 

 ジュワアアアアア!!

 

 凄まじい蒸気音が浴室内に響き渡る。火のマナから生まれた魔物にとって、水は天敵そのものだ。熱湯の刃に切り裂かれた魔物たちは、断末魔を上げる間もなく鎮火され、ドロドロとした黒い泥のような灰となって崩れ去った。

 

 こうして、三人の見事な連携により、浴室内に侵入した敵はあっという間に一掃された。立ち込める湯気の中、アキシャは濡れた髪をかき上げながらニヤリと笑う。

 

「うし……道が開けたな!」

 

 アキシャは残心もそこそこに、濡れた足音をペタペタと響かせて脱衣所へと駆け込んだ。

 

「急ぐぞ! この騒ぎだ、外で誰かが襲われてるかもしれねぇ!」

 

 ※※※

 

 脱衣所は戦闘の熱波と余波で荒れ果てていたが、幸いにも棚の奥にあった彼女たちの荷物は無事だった。

 アキシャは手早く自身の身体についた水滴をタオルで拭うと、着替える時間すら惜しいとばかりに、そのバスタオルを身体に巻き付けた。胸元で固く結んでその美しい胸を隠し、もう一枚のタオルを腰に巻いてショートパンツのように下半身を覆う。そして、その上から愛用の黒いロングコートを直接羽織るという、大胆極まりないスタイルを完成させた。

 下着や本来の服を着る手間すら省き、それらは乱雑にポーチ型のバッグへと押し込む。

 

「よし、こんなもんでいいだろ」

 

 真紅の大剣を背負い、愛用のポーチを太ももの素肌に直接巻き付けるアキシャ。

 ロングコートの前は開いており、中身はタオルのみ。動けば太ももや腹部の素肌が露わになり、激しい戦闘になればタオルがどうなるかも分からない。あまりに防御力皆無、かつ扇情的な格好に、エクアルが目を丸くして叫んだ。

 

「お姉ちゃん!? そ、そんな格好で外に出るの!? 下着もつけてないのに!?」

 

 だが、アキシャは脱衣所の出口へと向かいながら足を止め、肩越しに不敵に笑って見せた。

 

「誰かを救うためなら、別にこんな格好恥ずかしくもねぇよ。それに、着替えてる間に誰かが死んだら、寝覚めが悪いだろ?」

 

 その言葉には、彼女なりの揺るぎない信念があった。なり振り構わず、誰かのために最速で動く。それがアキシャという戦士の在り方なのだ。

 

「気になるならゆっくり来い。私一人でなんとかなるだろ」

 

 そう言い残すと、彼女は床板を蹴り割りかねない勢いで、爆発音のした屋外へと飛び出していった。その背中を見送ったエクアルは、自身の羞恥心を優先していたことを恥じ、唇を噛む。

 

「……そうよね、お姉ちゃんの言う通りだよね」

 

 そこに、ラビリアもまた手早くタオルを巻き、コートを羽織るだけのスタイルに着替えて並んだ。

 

「流石はアキシャだねー。迷いがないっていうか、ワイルドっていうか……まぁ、今回は私も賛成だねー」

 

 ラビリアは愛銃の安全装置をカチリと外すと、口元にニヤリと笑みを浮かべる。

 

「じゃ、私も行くね。エクアルも、早くしないと置いてっちゃうよー?」

 

 言うが早いか、ラビリアも風のように駆け出していく。残されたエクアルは、覚悟を決めた表情でタオルを身体に巻き付けた。

 

「ああもう! 何恥ずかしがってんだろ、私……しっかりしなさい!」

 

 エクアルは自身の相棒とも言える杖を強く握りしめ、コートの裾を翻して二人の後を追った。

 

 ※※※

 

 温泉施設の玄関前。外はまだ昼過ぎだというのに、分厚い雲に覆われて薄暗く、しんしんと冷たい雪が降り積もっていた。

 しかし、その静寂は暴力によって無惨にも破られていた。木造の温泉施設の外壁は、複数の「炎延者」によって放たれた火によって赤々と燃え始めており、黒煙と炎が雪空に向かって禍々しく昇っている。

 

 その炎の前で、施設の女将が雪の上に倒れ込み、必死に後ずさっていた。彼女の右脚は、遠距離から放たれた氷の矢によって深々と貫かれ、傷口ごと凍結して動かなくなっている。青ざめた顔で彼女が見上げる先には、三体の「炎延者」と、屋根の上に陣取った数体の「氷妨者」が、なんの言葉も発さずにただ見下ろしていた。

 

「ひっ、あぁ……!」

 

 先頭の「炎延者」が、無慈悲に燃え盛る剣を高く振り上げる。女将が死を覚悟して目を閉じた……刹那である。

 

 ガギィィィン!!

 

 重金属の衝突する甲高い轟音が響き、魔物の剣が弾き飛ばされた。女将が恐る恐る目を開けると、そこには湯気と雪を同時に纏い、黒いコートを英雄のマントのようにはためかせたアキシャが立っていた。

 タオル一枚の胸元からは白い谷間が覗き、コートの隙間から伸びる健康的な太ももが、雪の白さに負けない輝きを放っている。吐き出す息は白く、肌からは熱気が立ち昇っていた。

 

「どうやら間に合ったみたいだな……大丈夫か?」

 

 アキシャの問いかけに、女将は言葉を失いつつ、涙目で何度も首を縦に振った。アキシャは大剣を片手で軽々と構え、女将を背に守るように立ちはだかる。

 その隙を狙い、屋根の上にいた「氷妨者」たちが、一斉に氷の矢をつがえる。だが、それらの矢が放たれることはなかった。

 

「そこの氷屋さん、閉店時間だよー」

 

 鋭い発砲音と共に、三筋の光弾が正確無比に「氷妨者」たちの頭部を貫いたのだ。頭を吹き飛ばされた魔物たちは、雪崩のように屋根から滑り落ち、黒い塵となって消滅する。

 

 遅れて駆けつけたラビリアが、雪の上を滑り込むような姿勢からフォトンフォースを構えていた。コートがはだけ、タオルの隙間から美しい脚線美が露わになるが、彼女の射撃姿勢は微動だにしない。その瞳は冷徹に次の獲物を探している。

 さらに、脱衣所から飛び出してきたエクアルが、即座に女将のもとへ駆け寄った。

 

「大丈夫ですか!? すぐに治療します!」

 

 エクアルは杖をかざし、治癒魔法を発動させる。温かな水のマナが女将の右脚を包み込み、凍りついた氷を溶かし、傷を徐々に癒やしていく。彼女もまた、タオルとコートのみというあられもない姿だが、その瞳に宿る慈愛と強い意志は、聖女のような気高さを感じさせた。

 とはいえ、治療にはある程度の時間がかかる。その間、敵を近づけるわけにはいかない。

 

 アキシャは、エクアルが治療を始めたことを背中で感じ取ると、静かに、しかし激しい怒気を孕んだ瞳で魔物の群れを睨みつけた。

 

「……お前ら、私らの入浴を邪魔しただけじゃ飽き足らず、こんな良い場所を燃やそうとしやがったな?」

 

 アキシャにとって、食事と休息を邪魔されることは、何よりも許しがたい暴挙だった。彼女の身体から、マナと共に純粋な闘気がゆらりと立ち昇り、周囲に降り積もる雪を溶かしていく。

 ラビリアもまた、フォトンフォースのエネルギー充填を開始する。銃身が無機質な駆動音と共に熱を帯び、銃口が眩い光を放ち始めた。

 

「まったくだね……空気読めないにも程があるよ。裸のレディを襲うなんて、マナー違反もいいところだよ?」

 

 ラビリアの銃口に、高密度の光が集束していく。それはかつてレクシエルとの戦いで見せた「レーザー・バレット」の発射合図だった。

 敵の増援――さらに数体の「炎延者」と「氷妨者」が、どこからともなく現れ、包囲網を狭めようとする。だが、アキシャは鼻を鳴らして不敵に笑った。

 

「全員、木っ端微塵にしてやるよ!」

 

 派手に地面を蹴り飛ばし、アキシャが砲弾のように敵陣へと突っ込む。

 

「一人残らず……撃ち抜いてあげるねー」

 

 同時に、ラビリアのフォトンフォースから、閃光のようなレーザーが幾条も放たれた。

 

「らぁっ!!」

 

 アキシャの大剣が紅蓮の軌跡を描いて魔物を薙ぎ払い、ラビリアのレーザーが一直線上の敵を蒸発させる。

 「炎延者」たちは自爆する暇もなく両断され、「氷妨者」たちは光の奔流に飲まれて跡形もなく消滅していった。コートを翻し、白い肌を躍動させながら戦う彼女たちの姿は、雪と炎のコントラストの中で、この上なく美しく、そして圧倒的に強かった。タオルの隙間から覗く肢体が、戦いの激しさで汗ばみ、雪景色の中で艶めかしく輝いている。

 

 数分もしないうちに、敵の群れは完全に壊滅し、ただ黒い灰だけが雪の上に残された。アキシャは、ふぅと熱い息を吐いて大剣を肩に担ぐと、その黒い灰を見下ろす。

 

「……ふん、おとといきやがれ」

 

 彼女の火照った肌からは、まだ白い湯気が立ち上っていた。

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