尚、こちらの都合で転スラ日記編は打ち切りで、本編に移ります。
シズの教え子
目の前に霧がかっている。それは、リムルの中に眠るシズの記憶だった。
シズは画面を外し、何やら教鞭を振るっている。彼女の目線の先には5人の子供達がいる。子供達はシズをとても慕っているのが分かる。
(お願い…あの子達を…)
「シズさん?」
(あの子達を…救って!)
「シズさん!」
リムルがシズを呼ぶと共に寝床から覚める。どうやら、夢だったようだ。リムルは考える。シズさんの心残りをなくして貰う為にも、子供達に会う必要があると考えた。
シズさんが亡くなる前、彼女の心残りを聞いた。
「私ね、イングラシア王国って所で教師をしてたの。皆とってもいい子なの。だけど、あの子達を置いて旅に出たの。だから、あの子達が心配なの」
リムルは彼女の言葉を思い出して決心する。
◆
その日、リムルは会議室で皆に宣言する。
「…というわけで、俺はイングラシア王国に行こうと思う」
「お気持ちは理解しました。しかし…」
「お一人では危険ではないでしょうか?」
リグルドとシュナが懸念するのはリムルの身の危険であった。彼らが、はみはみから聞く限り、人間の街には『西方正教会』と言う魔物を目の敵にする組織があると言う。その組織がリムルの命を狙わないとも限らないのだ。
「それについては安心しろ。我が護衛につく」
「それに、俺の分身体が1体、リムル様の護衛に当たる」
ランガがリムルの影に潜んで護衛、ソウエイの分身体が1体護衛に付くという話だった。そんな中、シュナはさらなる懸念を述べる。
「リムル様の安全は理解しました。しかし、人間の街までどうやって行くのですか?」
そう言うシュナだったが、リムルの横に座るはみはみが胸を張る。
「私が案内しますよ!多少街の様子が変わっているかも知れませんが、問題ありません」
そう、この場には『紅魔の勇者』と呼ばれる、はみはみがいるのだ。
「そういう事、はみはみに案内を任せようと思う。それに、はみはみは言動こそアレだが実力は俺よりも上だ。誰よりも強い護衛だろ?」
「むっ。私を護衛扱いするのは辞めてもらおう。私はシズの姉弟子なんです。彼女が君に託した子供達の面倒を見るためでもあるんですよ」
この場の誰よりも強い、はみはみが居れば問題が無いとの事で皆は納得した。
「そう言う訳で、俺達は人間の街に行ってくる。その間の事はベニマルやリグルドに任せる」
「はっ!お任せを!」
「お任せください!」
部下達の頼もしい言葉を聞いて、リムルと、はみはみは出立の準備を始める…
◆
リムルと、はみはみは準備を整えて皆に見送られながら、ジュラ・テンペスト連邦国を後にした。地球から見れば国家元首が僅かな護衛だけでお忍び外遊など以ての外だが、リムル自身が強いので問題はない。
出立して暫くすると、テンペストに向かう人間3人組を見つけた。それは、リムルの知り合いであるガバル、エレン、ギドであった。
「リムルの旦那じゃないですか、今日はどうしたんです?」
「それに、勇者様も一緒じゃないですか!」
「街を留守にしていいんでやすか?」
足を止めて話を聞くと、彼らはテンペストに向かう途中との事だった。リムルは旅をするのに2人だけでは心許ないと思い、3人を旅に同行しないかと誘った。
3人は二つ返事で了承した。彼らはシズさんの件でお世話になっている。その恩返しを出来るのならお安い御用だった。
リムルとしても、異世界の常識を知らないし、はみはみは常識について不安が残るので彼らであれば世情について知っていると考えたからだ。
「リムル、私を馬鹿にしましたか?」
「いや〜そんな訳ないじゃないか!」
リムルは、はみはみの追求をのらりくらりと躱すが、リムルは内心ヒヤヒヤであった。
(怖っ!なんで俺の考えた事が読めるの?!)
そんな事がありつつ、彼らは道路舗装を担当しているゲルド達の宿舎に泊まる事になるのだった。
◆
宿舎にて
"幻妖花"はその花粉や香りに幻覚作用があり、道を惑わす効果があるのだ。その厄介さ故に自由組合ではBランクの者が採取するのが推奨されている。
不用意に焼却処分すると幻覚作用のある花粉を辺り一面に撒き散らすので処理にも気を付けなければならない。そんな幻妖花をギルドへの納品に貰い受けたエレン一行とリムル。
彼らは一泊すると、ブルムンド王国方面の森林をリムルのユニークスキル『
その際、エレン達は何でもありだと嘆き、はみはみはリムルのスキルの有用性に感嘆を漏らすのだった。
◆
ーブルムンド王国ー
ブルムンド王国は小国である。人口は100万人であり、石造りの発展した街が王都ロンドしかない。食料も自国で賄えるなど典型的な小国である。
リムルは自由組合にて身分証明書としても使われている自由組合のカードを発行してもらうべく、王都にある自由組合支部に訪れていた。
「おい!エレンさんだぞ!」
「カバルさんにギドさんもいる!流石Bランク冒険者だ」
「所でお付きの2人は誰だ?」
「お前知らないのか!?あの女性は紅魔の勇者様だぞ!」
「えっ!?現役のあの勇者様か?!では、あの仮面の者は誰だ?」
「さあ…?誰だ?だが、エレンさん達の知り合いのようだぞ」
自由組合の支部のホールにいた者達はエレン達を見て声をあげ、数年ぶりとなる紅魔の勇者の姿に歓声をあげている。エレン達の慕われ具合にも驚いたが、はみはみの影響力は凄まじい物だとリムルは実感した。
「じゃあ、俺は組合に加盟する手続きを取ってくるよ」
「分かりました!私達は納品手続きしてきます!」
そう言って、一行は二手に分かれ、窓口に向かう。自由組合には裏方と現場の2部門に大きく分かれ、現場部門では採取・探索・討伐の何れかに属している。彼らはそれぞれの得意分野同士でパーティを組み、活動するのだが、3つの分野に所属するには試験を受ける必要がある。
「すみません。冒険者になりたいんですが…」
「えっ?でも君にはまだ早いんじゃ…」
「大丈夫ですよ!この子は私の弟子なんで」
そう言ったのは、はみはみだった。リムルは、はみはみの言葉に驚く。
『おい!いつ俺がお前の弟子になったんだ!』
『この場を切り抜ける嘘に決まってます。そもそも身分証明も出来ないリムルはこうするのが一番では?』
リムルは『思念伝達』で、はみはみに文句を言うが、はみはみは意に返さない。そんなはみはみを援護するかの様に三人組が戻ってきた。
「この人は強いでやすよ!」
「そうそう。俺らが束になっても敵わない位だからな」
「ねぇ〜!」
その言葉に周囲は動揺する。
「おい!あのカバルさん達が敵わないって!」
「紅魔の勇者様の弟子だから不思議ではないが…」
カバル達の言葉や、紅魔の勇者様の弟子と言う発言に納得した受付嬢は説明する。
「では、此方の用紙にお名前と希望部門をご記入下さい。尚、生年月日などは任意となります」
リムルはこの世界に生まれて精々が1年程だ。馬鹿正直に書く必要もないので、名前と希望部門を書く。リムルは討伐部門を希望した。
「討伐部門ですか?採取や探索の方が良いのでは?」
「でも、その2つより討伐の方が手っ取り早く試験が行えるだろう?」
「ええ、まあそうですが…」
「問題ないから進めてくれ」
そう言われては受付嬢も受け入れるしかなく、討伐部門の試験準備の為に、ある人物を呼んだ。
「お前か?エレン達の推薦というのは?」
そう言って現れたのは義足をして、杖で行動している男だった。名をジーギス。自由組合の討伐部門の戦士なったが、片足を失った為に裏方へと回った経歴を持つ。彼は、リムルを目の敵にするかの様な目を向けていたが、その後ろにいる、はみはみの姿を見た途端、その目線は鳴りを潜め、現れたのは強敵を前にした目だった。
「勇者様の弟子なんだって?お前に手加減は不要だろう。ついてこい」
そう言われ、付いてきた先は訓練場だった。周囲には冒険者の姿も見える。この世界は娯楽が少ないので、こう言った試験でも周囲の目を集めるのだ。
「ルールは簡単だ。この円形のラインから越えたら失格。俺が召喚する相手に勝つランクアップ戦だ。負けた場合、そのランクでの仕事を一定以上こなしたら再挑戦が出来る。わかったか?」
「ああ」
「それじゃあ…始めるぞ!」
そう言って彼は呪文を唱える。魔法陣が形成され、現れたのはダークゴブリンだった。Dランクの強さなのだが、リムルは一太刀で首を刎ねた。本人曰く、『ゴブタに嘲笑って来たと思いカッとなってやった』と供述している。
「おい…アレ、ジーギスさんがよく使う魔物だろ?」
「勇者様の弟子の前じゃあ敵でもないのか…」
周囲の感心を他所に、ジーギスは言う。
「流石だな。これなら更に飛び級でBランク試験を受けるか?」
「ああ。頼む」
そう言って、了承するとジーギスは召喚魔法を発動した。
リムルが見ている間に、ユニークスキル『
《告。個体名ジーギスが召喚魔法『悪魔召喚』を発動しました。解析完了。召喚魔法『悪魔召喚』を獲得しました》
(おお!あっさり獲得したぞ。って!ジーギス白目向きかけてるぞ!)
そして、魔法陣から現れたのは翼を持つ全体的に濃い黒の
「こいつに勝てばBランク確定だ。始めるぞ?」
「こい!」
それが合図となった。
まず、
《告。
『
魔法とはイメージである。リムルは前世の創作でよくある自身の力を剣に宿す魔法をイメージする。
《告。『魔法闘気』の獲得に成功しました》
その言葉と共に、刀身にオーラを纏う。そのオーラで
その光景を見ていた者達は驚き、口々にリムルを褒める。中には、チームに引き抜こうと口説く者もいたが、勇者の弟子である彼女を、引き抜こうとする者は極少数だった。
そこに、青筋を立てて近づいてきたのはギルドマスターのフューズだった。
「貴様ら!何をやっている!?早くリムル殿と勇者様をお連れせんか!?」
フューズの言葉に、エレン達は急いでギルドマスター室に案内するのだった。
◆
部屋に案内されたリムルと、はみはみはソファに腰を掛けた。フューズは口を開く。
「全く、リムル殿も何をしているのです?ギルマス権限で手続きをしてBランクまで上げましたのに」
「それは悪い事をしたな。俺としてはAランクまで上げたかったんだがな」
「あ、それは無理です。リムル殿が強かろうと、Bプラスランク以降はイングラシア王国の自由組合本部で試験を受ける必要があるんです」
リムルの機嫌を損ねないようにフューズは告げる。リムルは、はみはみの方を向く。
「はみはみ、お前知ってたろ!?」
「ええ。知ってましたよ。リムルの力を見せてもらう事も兼ねて黙ってましたが…」
「まっまく…」
リムルと、はみはみの会話にフューズが割って入った。
「因みに、リムル殿。先程の技は『魔法闘気』ですか?あれは西方正教会でも扱えるのは一握りですよ。まあ、あの場にいた者達は実力の低い奴等だから気付いてないでしょうが、高レベル冒険者ならリムル殿を何としても囲いに来ますよ」
「そうか…ならこの技は人前で見せる訳にもいかないな」
リムル達はフューズとの会話をソコソコに、本題に入る。
「実は、リムル殿に会いたいと言っている者がいるのです」
「それって誰だ?」
「国王陛下その人です。陛下はリムル殿との国交樹立を目的としており、その為に条約文書の作成の為に我が友ベルヤード男爵が対応することになっています」
リムルはジュラ・テンペスト連邦国の盟主と言う立場から、はみはみと別れてベルヤード男爵の下に行くのだった。
転スラ日記はいる?
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いる
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いらない