冒険者ギルド こーほーぶ! 作:へ、ヘイトスピーチ…!
「はぁい、次の方~」
此処は冒険者ギルドのとある支部。
今日も今日とて、ゴロツキからホップにステップ、向こう側へflyawayしてしまった冒険者共を相手しなくちゃいけない…now少女爆裂ブラック企業労働ingツライツライさんだ。
はぁと溜息。速く終わらないかな…労働辛い。
冒険者ギルドってブラックなの?と疑問に持つ諸兄諸姉方はいらっしゃるだろう。そりゃあ〜…ねぇ?だって冒険者になる理由ランキングTOP3が
『1位:金がない 2位:他に就ける職がない 3位:住んでたところの口減らし』
なんだもん。
もう行くとこまで行って、命を担保に金を稼ぐことしかないとかそういうやつばっか。治安なんてカスのカス通り越して、ゴミの区別すらつかないレベル。もはや、地面に落ちてるゴミの方がマシまである。トテモトテモツライツライさんなのだ。
「げへへっ…カイリちゃ~ん、今日もばっちり魔物討伐してきたぜ~おじちゃん疲れちゃったから癒してほしいな~」
うっ、口臭、体臭もエグイ…身体ちゃんと洗ってるの~。も~やだ~、風呂…は高いからせめて水浴びしてよぉ~。泣き言内心ゲロって対応。幸か不幸か幸い災い、引き攣った笑みに相手は気づいていなかった。鈍感男で助かった…!こういうのに気づく男は油断ならないのだ。
「仕事中なので…討伐証明物をお願いします」
「つれないなぁ…今日の俺ぁすごかったんだぜ?石熊をこの大剣でバッサリぶった切ってやったんだからよォ!」
「はいはい、すごいすごい…はい、確認できました。石熊討伐の依頼達成確認しました。こちら依頼報酬です…詰まっちゃってるんでさっさとどいてください」
「良いじゃねぇの後ろのことなんか…それより今日どう?夜空いてね?命の張り合いでもうビンビンだからよぉ…カイリちゃんで沈めてほしいなぁなんて」
「セ ク ハ ラ、ボストンさーん!コイツ連れてってくださーい」
「あいよー」
んも~やだ~~~~~!
普通にセクハラしてくるのホントどうにかならないの!?ゴミばっか過ぎて泣きそう…てか泣いてる…心が…心が泣きたがってるよぉ…。
「うぁ、離せ!俺ぁカイリちゃんに用があんだよ!テメェみたいなむせぇ男に興味ねぇ!」
「はいはい、黙って離れような~」
ドナドナド~ナ~ド~ナ~されていくのをジト目で見送っていると次の方のレレイさんが苦笑いして依頼物を受付へ出してくる。
「カイリちゃん、大変だったね。あ、これ依頼と依頼証明物ね。モテる受付嬢は大変だねぇ…」
「ほんっとそうですよ~レレイさんも気を付けてくださいね~」
ギルドでも数少ないマトモな冒険者と話しながら労働now…お給金高いとはいえ…毎度毎度毎度毎度…こういうのばっかでムカムカする…!
も~冒険者嫌い!セクハラはしてくるし乱暴だしうるさいし乱暴だし汚いし乱暴だし乱暴だし乱暴だし!
魔物を相手する仕事だから仕方ないとはいえ、もう少し身だしなみに気をつけてほしい!
どいつもこいつも魔物の血塗れなのだから鼻がひん曲がりそうになる。洗えよ!身体を!(倒置法)
ランクが上がればそういう人は減るとはいえ…減るとはいえ!(ここ重要)辺鄙な田舎ギルドにそんな逸材は滅多に居ないし、居たとしても王都…つまり都会に行く。残るはむさいロクデナシばかり…
あーっもう、うんざりする!
むっさい男を捌いて捌いて裁いて捌いて…夜のお誘いや飲みのお誘いをきっかり断り、度の過ぎたセクハラはドナドナ~して、今日の業務をえっちらおっちら終わらせる。
夕刻、ようやくさばき切ってギルド奥に引っ込み、事務机にぐてぇっと頬を張り付けた。疲れたぁ~もう動けないぃ…。隣に座っていた受付嬢先輩のアルスタさんに愚痴をこぼした。吐かなきゃやってられないよこんなの~。
「アルスタさーん、やめたいですよも~」
「カイリはもう少し冒険者のいなし方を学ばないとね」
「えぇ~今でも結構やってますってぇ~」
「冷たく返すだけが技じゃないのよ。受付嬢は冒険者のやる気を出すのも仕事なんだから」
「あんな奴らのやる気なんて知らないですよ~…」
クスクスと笑うアルスタさんに泣き言を漏らす。つよい。
受付嬢の平均勤務年数が7~8年。だけどアルスタさんはこの道10年のでぇベテランだ。ちなみに夫は居るらしい。セクハラ冒険者をドナドナした人、ボストンさんだ。ムキムキマッチョメンでギルドのサブマスターで言い寄ってきたら容赦なくぺしゃんこにされるらしい。コワ~。
それはさておき、一応この仕事。採用条件が顔というのもあって世間様では夢のある仕事とされている。大体の女性が街で親同士のアレコレで結婚したりする中、受付嬢だとワンチャン高ランクの冒険者と結婚できるのだ。
高ランク冒険者は『性格良し!金よし!(比較的)安定よし!チ〇コもいい!』と言われている…らしい。特に最後怪しいが…。
でも、ランクが高い=強さは保証されているし、強さだけじゃなく人柄や貴族も相手にするためのマナー等々色々見られる。そのため、優良物件といえば優良物件なのだ。……といっても冒険者だから死ぬときは死ぬので安定(比較的)なのだが……。
あと、命を賭けるために依頼報酬が高いのもあって結婚まで行かなくとも仲良くしておくと貢いでもらえたりする…らしい。私は今のところない。
そんな冒険者ギルドで夢のある受付嬢になったと思えば…
「冒険者は汚いし臭いし乱暴だし…」
「ランクが上がればそういう人は少なくなるわねぇ」
ここ田舎じゃーん!(泣)(事実陳列罪)
「依頼してくる人は結構面倒くさい人ばっかだし」
「緊急の依頼もあったりするけど、基本的に冒険者に依頼するのは注文が多くて仕入れられなかった物だったりするからねぇ」
本当にそう!!!テーブルをがんと叩く。手いたぁ…。
冒険者ギルドに依頼する人も依頼する人なのだ!!!
期限のない、あるいは期限の長い依頼というのは大抵マシなものが多い…けど、報酬が高くて期限が短い依頼は9割ゴミ依頼と言われている。
例えば、とある魔物の毛皮を1週間以内に納品して欲しい、そういう依頼があったとしよう。報酬は2500G。ちなみに10Gで普通の飲食店の一食分程度。鉄製のショートソードが400Gとかなのでまぁ高い。三食で宿屋に泊まれば2か月分のお金だ。
さぁ、この依頼受ける人どのくらいいるだろう?取り合いになる?強いパーティーが持っていく?ぶっぶー
正解はだれも居ない。
何故って?だって相手は生き物なのだ。魔物、野生の動物よりも強いといっても生き物で、依頼を受けたら初めにやることはその依頼の魔物がどこに生息しているのかを調査すること。
運が良ければ発見例が報告されていて、そこは短縮できるけどね。
次にそこに向かう為の準備。徒歩一日で行けるところならまだマシで、4日、5日、1週間とかザラにある。はい、依頼の期限ブッチ。終わりです。
運よく、とても運よく近い所で見つかったとしましょう。
やること?また調査ですよ。いきなり生息地に割って入って討伐~なんてうまくいくはずありません。慣れていないなら尚更です。
立地、天候、ちゃんと魔物がいるかどうかの探索。
他に危険な魔物はいないか。
何処なら有利に戦闘を進められるか。
どこで攻めるべきかさえも調査する。
普通に命掛かってますからね。マジで強い人はそこらへん端折りますが…それでも、こういう依頼なら絶対にやらないといけない。だってあとがめんどくさくなるから。
早い人だと1日、普通で2日、遅い人なら3日はかけるべきと言われている。……まぁそういうのを端折るのが低ランク冒険者なんだけど。
そこまでして、ようやく討伐。
魔物と切ったはったの命の取り合い。さて、ここで倒せました。わーい。
はい。じゃあ剥ぎ取りをしましょう。え?剥ぎ取りの技術を持っていない?じゃあ…この依頼失敗ですね。だって相手は生き物。それも依頼の要求が毛皮なら早々に油やらをはぎとらないとナマモノですから鮮度は大事。放置すれば腐っていきます。ドロドロです。
なんなら戦闘中にめちゃくちゃ傷つけまくったらもう商品価値はゴミ以下でしょう。
それでもようやく、ようやく!依頼の品を取ってきて期日以内に納品したとします。……はい!此処で貴方安心しましたね?ホッと胸を撫で下ろしたかな?残念、まだ終わっていません。今度は依頼主から文句が入ってきます。
『こんな傷だらけの毛皮売りモンになるか!報酬費返せ!』と
はい、そうです!!!そうなんです!!!!
1週間とかいうゴミみたいな依頼を出してきたのはソッチのくせにクレーム入れてくるんですねぇ!
はぁ…ゴミ。ゴミです~。
「受付嬢同士はなんかピリピリしてるし…」
「私は既婚者だからいいけど、他の人は玉の輿を狙ったりしてるからねぇ…同僚というよりライバルかしら?」
「昨日、普通に冒険者の対応しただけなのに、先輩の方に『私の冒険者に色目使うんじゃないわよ!』って怒られました…」
「あるあるねぇ…」
そう。受付嬢になる人なんて玉の輿を狙う肉食獣ばっかなのだ。イイ男がいれば食らいついて離さない猛獣…!女は獣だ(クソデカ主語)あと普通にカースト?みたいなのが形成されてすんごくつらい。私、コネ採用というか…知り合いの紹介で入るしかなかったワケアリ受付嬢なのに…。
内も外も人間関係のあれやこれやでめっためた!内に湧き上がる想いをメラメラ燃やし何度目かの決意を掲げる!
「もー嫌!辞めます!」
「でもカイリちゃん…行く当てあるの?」
「…………ないです…」
湧き上がる退職意欲はシュンと消え去った。
燃え尽きた灰をかき集めるようにしくしくと泣く。うぇーん…生きるのツライよ〜
「うぅぅ…受付嬢は安泰だって聞いたのにぃ…」
「一応事務作業もできるかどうかを問われるけどね。まぁ、顔が仕事道具だからある程度良ければ事務が出来なくても許されるわ」
「お給料は良いけど、お外で職業言うとみんな離れる…」
「冒険者って野蛮な人を相手にしてるからね。恋愛面でのもめごととかそれこそ一般の人は気が引けるわ。冒険者と争って亡くなった人がいるって話も聞くし」
「じゃあ冒険者内で相手を探しても…汚い、臭い、うるさい、乱暴…」
「有望株はさっさと王都に行くからねぇ…」
「たまにいる良い人に話しかければ他の受付嬢にブチ切れられる…」
「あちらも今後の人生掛かってるから…」
「も~やだぁ~…やめたいぃ~~~」
「あらあら…」
泣き言フルスロットルでギャン泣きエブリディ…辞めたくてもこれ以上お給金が良い仕事なんて滅多にないから辞めるに辞められない。
このご時世、女が稼ぐにゃそこそこの実力と顔を求められる…帝国とかだと違うけど、残念ながら私が住む王国は前時代的というか…古いのだ。格式あるとか言うがいくら何でも進まなすぎ…未だに私の趣味に使う道具の取り扱いが少ないのも勘弁して欲しい…
私の事務用机、その片隅を占領する趣味道具を手に持つ。
いくらかずっしりとした重み、角張った形状が手に馴染む。艶消しされた黒がチャーミング!レバーを下ろせばレンズが展開され、その正体を現した。
魔導器物式インスタントカメラ。通称:魔カメラ。
帝国産の魔力転写式構造を持ったあちらじゃそこまで珍しくない産物…だが生憎此方じゃ滅多に見られない代物だ。
私の趣味、風景だとか街の一角を四角い写真に閉じ込める私の大切な道具。
明日、休日だし西の農場で写真撮ろっかなぁ…。ちょうど収穫時期だし…良いのが撮れそう。
そんな風に現実逃避していると、アルスタさんから声が掛かった。
「あ、そうそう。ギルマスが呼んでいたわ。なんでも任せたいお仕事があるんだって」
「えぇ~…あのギルマスですか?糸目ですんごく怪しそうな?」
「イケメンで他の娘も人気なのに、貴女だけよ~ギルマスを疑うの」
「いやぁ…まぁ…」
ギルマス…私に受付嬢を紹介した知り合いの知り合い…つまり関係者ではあるんだけど………ねぇ?糸目、なっが~い髪を編んで一つにして、何故か神父服を着ている。神官でもないのに。
そう、メッッッッッチャ怪しい。怪しすぎるじゃん。信じられるわけないでしょあの見た目で…
「とりあえず、行ってみたら?ギルドはもう夜の営業に切り替えるし、暇だと思うから」
「ギルマスが暇ってあんまりよくないのでは…?」
「残念だけどあの人、仕事出来るタイプだから…」
「優秀さが腹立つ…!」
うぎぎ、切れ散らしながら バンッ 机を叩いて魔カメラのチェーンを首に通して立ち上がる。
「アルスタさん!私、ギルマスの話聞いたら直帰します!」
「はいはい。業務時間には入れておくから頑張ってねぇ」
「行ってきます!!!」
なーんかとっても嫌な予感を携えながらギルマスの部屋に向かう。
ドス、ドス、ドスと足を鳴らし、ノックを乱暴にワン、ツー、スリー!
返事を待たずに開け放って開口一言
「カチコミじゃい!」
感想評価オナシャシャシャス