冒険者ギルド こーほーぶ! 作:へ、ヘイトスピーチ…!
「広報やってみない?具体的には新聞」
「はぁ!?私が新聞!?」
なしてわだじがそげなことせないかんとです!?(怪電波受信)
ダンダン、ダダダン、ダダダンダンとテーブルを叩きながらエッジの効いた声で凄む……けれど、ギルマスにとって私の精一杯の威嚇はゴブリンのソレとほぼ変わらないらしい。ゴブリンを見るような目で見られた……。もうまぢ病む……殺そ……
「いやぁ……君の趣味を加味するとねぇ」
なんだぁ!その糸目の神父服とかいう怪しさが服着て歩いてるみたいな恰好をしてぇ……!
「君、普通に失礼だよねぇ。一応上司だし、仕事を斡旋した恩人でもあるんだけど」
「その節はありがとうございましたねぇ!(ガン切れ)」
兎にも角にも説明!説明プリーズと訴えるとしょうがないなぁ~という顔で話し始めた。それが聞いてみるとまぁ……
「最近、冒険者の人員が減少傾向なんだ。調べると前年と比較しても加入する者が減っている。理由はわかるかな?」
「えぇ?良い事じゃないですか」
「よくないでしょ。こっちは運営側だよ?」
あぁ……まぁ、はい。えー、でも普通に考えればわかることじゃないですか
「世間様は命を賭け金にするギャンブルだとか、安定しないとか、乱暴で下品でほぼ犯罪者予備軍たちの集まりとか……そういうこと言われてるからじゃないですか?」
このご時世、戦う職業というのは忌避をもって見られやすくなった。
なんせ、おっきな戦争は此処最近起きてないし、治安もよくなってきている。治安維持や守衛の職業が改善されてきたというのもあるだろう。衛兵とかね。薄給だったのが改善された~って知り合いが言ってましたし。
そもそも、冒険者という職業は、魔物という需要があるから成り立ってるだけだ。魔物が居なかったらとっくに廃れてるだろう。
……なんなら、冒険者が治安を下げる一因にもなってるだろうし、割とギリギリの職業需要だったりする。
「うん。大体そうだね。そのせいで成ろうと思う人が減っている。これを危惧した本部が広報部を作って冒険者のイメージ改善をしようという事で話がまとまったらしい」
「はた迷惑ですね」
「うん、僕もそう思う」
とっても嫌な顔をすると、ギルマスも嫌な顔で返す。いやなシンパシーだ。大人になって獲得する悲しいシンパシーでもある。
悲しいかな、大人になって社会の仲間入りすると上の決定には逆らえなくなる。
なんで下のこと考えずに勝手に決定するんですかねぇ!?(ドストレート不満)
ギルマスが続けた。
「それで、いくつかの支部で実験的に新聞を作ろうという事になって、此処もその対象になった。その仕事を君に任せたいなと」
「え~、なんで私なんですか~」
新聞なんて書いたこともない。というか新聞書くなら他に適任が居ると思うのに。アルスタさんとか、アルスタさんとか、アルスタさんとか。
文字綺麗だし、言葉選びも綺麗だ。私なんて新聞でも書こうものならラインギリギリ超えるくらいの内容になる。
「君の趣味が写真撮影だからねぇ。今でこそ帝国の影響で識字率は上がっているけど、それでも文字が読めない人は多い。こういうことがあった……とわかりやすく伝えるには絵や写真が一番なんだよ」
「合理的だけどぉ……」
確かに王国の識字率はそこまでと聞く。それなら新聞じゃなくていいのでは?と思うのだが……まぁ識字率向上の為でもあるんだろう。多分。
「他の支部だと絵が上手い人とかが担当してたりするから適材適所だねぇ。それに」
「それに?」
「君、ギルドにあんま馴染めてないでしょ?といっても結構肉食系の娘ばっかりだから合わないだろうな~って思ってたけど。こっちだと取材と称して外出出来るからラクだと思うよ」
「し」
「し?」
「知ってたんなら環境改善しろクソ上司ィ!!!!!!!」
「っあふん」
どう、とギルマスがもんどりうってKO。
YOU WIN した私は、勝利ポーズをキメることになった。
とりあえず私が広報部やるのは確定らしい。ファック!
────―
「そういうわけで新聞を書くことになりました!(全ギレ)」
「あらぁ……具体的にどうするの?」
「未定です(全々ギレ)」
「どうしようかしらねぇ……」
仕事終わりのアルスタさんを引っ張ってきて作戦会議ナウだ。
残業みたいでちょっと申し訳ないが上司が悪いので仕方ない。上司が悪なのだ。
アルスタさん、せーのっ、おのれ上司(義務的憤怒)
「おのれ上司。……とりあえずネタ集めからじゃないかしら?冒険者に関するネタを書かないといけないわけでしょ?」
それはそう。
乗ってくれたアルスタさんが提案を出すがうーむとその提案に疑問を出す。気分はクソ上司だ。とりあえず若手の出した提案を否定する上司ね。そういうやつ。
「でも、冒険者に関するネタってむずかしくないですか?普通に野蛮人ばっかですよ?」
「ん~でも、選別すれば大丈夫だと思うけどなぁ……。ほら、銀級のウィンスターさんとかそうじゃない?」
といって話題に出たウィンスターさんに私は唸る。絶妙だ。絶妙なライン。
悪くもないし、かといって安易な理由で冒険者になったわけでもない絶妙なラインだ。私は言い募る。
「でも、ウィンスターさんって気難しそうじゃないですか?」
「そう?結構話が通じるし、貴女の写真撮影の趣味と近い趣味……確か絵描きが趣味だったと聞いたわ。近い趣味で話が通じるんじゃないかしら?」
「ソレは違いますよ!!!!」
絵描きと写真撮影が近い趣味という暴論を聞いて黙っていられる私ではない。私は憤慨した。
趣味を持つ人間と言うのは自分が持つ趣味を高尚なるものとして扱うクセがある。それに則るならば全くもって異なる趣味だ。写真撮影はその場の風景や“今”を切り取るのが仕事であって、絵というのは、自分で見て感じ取ったものを絵として表現するものだ。
私は少なくともそう思ってるし、それを他者に押し付けるつもりはさらさらない。ただ、私一個人としてはそういう風に崇高で神聖なものだと思ってしまっている。
それは私が写真撮影という趣味を高尚なものとして格付けているからだ。
趣味人というのはとんでもなく厄介な生き物。これを強調しておきたい。
「まぁまぁ……でもあの人はこのギルドの中では常識人の部類だし、ギルドの要請なら断れないはずよ。貴女に良い所を見せようとして危険な依頼に行くなんてこともないだろうし」
「それは……そうですね」
そうだ。大体のギルド員……もとい冒険者なんていい所を見せようと自分の命をぶん投げるような人達ばっかりだ。
それに比べてウィンスターさんはそういうことはないように見える。
『受けた依頼は着実に慎重に』がモットーの人だ。
「むむ……じゃあちょっとウィンスターさんに話を通してきます」
「そうすればいいわ。ダメそうなら私の方で大丈夫な人を見繕うから」
とりあえず、そういうことになった。
─────
「今日は急な依頼なのに対応していただいて本当にありがとうございます」
「いや、気にしないでくれ。ギルドからの直接の依頼だ。断るはずもない」
明くる日、こういうのは仕事を通さずに話を進めるととってもとっても面倒になるので依頼を出して取材することにした。報酬?ちゃんとギルマスからぶんどりましたが?当たり前ですよ。無茶な金額通してやりました。
「それで、依頼の内容だが……初めて受けるものだし報酬が破格過ぎる。実態を知りたいのだが……」
「あっ、すいません。ちょっと怪しいですよね……」
うーむ、ギルドからの直接の依頼とはいえ疑わせてしまったようだ。なんせ、報酬が10,000G……上等な武器防具一式は揃える金額なのだから。そりゃ疑うよ。まぁ私がぶんどれるだけぶんどった金額なのだが……
「依頼の実態を話す前に前提として……冒険者が減少傾向なのは知っていますか?」
「あぁ。新人の冒険者もあまり見なくなったな。この時期なら結構見かけたんだが……」
そう。この時期、秋だ。収穫の季節でありギルドにとっては第二の春と言ってもいい。
冬を乗り越えるのが難しい村々から口減らし、出稼ぎの為に若い人達が街に来て冒険者になったりするからだ。行き場がなかったり、冬に仕事が無いものが稼ぎの為に上京するというわけ。
いやな春過ぎる~。
冬は仕事もめっきり無くなるがしかし、秋なら腐る程ある。
冬を乗り越える為に魔物は肥えるし、動物も肥える。
村で狩人をやっていたのなら仕事には困らないだろう。
だけど今年の秋はそんな若い狩人や冒険者は見なくなった。せいぜい、毎年出稼ぎに来る狩人くらい……。
「此処だけの話なんですが、ギルドで冒険者の質・数共に問題になっているんです」
「ほう?……だが道理か。最近じゃ戦争や小競り合いも見かけなくなったし、現状が飽和気味なら数は減る……が質もか」
「えぇ。どうやら冒険者の仕事は危険で報酬が割に合わない、下品で粗野な人が成る職業……そういうイメージが定着してしまい、職業的に難しい立ち位置になってしまったから……というのが上の見解です。今はまだ現状の人数でなんとかなるでしょうが……」
「後進の数が減り、質も落ちれば冒険者ギルドとしてやっていけなくなる……か」
「話が早くて助かります。そういったわけで、冒険者の内情や実情を新聞にしてイメージ改善に繋げようというのが今回の依頼の理由なります」
ふぅ、と一息。喋りきる。沈黙が支配し、ウィンスターさんが一言。
「イメージそのままじゃないか?」
「ですよね!!!」
そう!残念ながら事実だ。命がいくつあっても足りないし下品で粗野な人間ばっかり。そりゃ廃れるよ。危ない仕事だ。誰が成ろうと思う?どうしろと?
「イメージ改善と言われても……な」
遠い目だ。そらそうよ()
必死になって言い募る。
「はいぃ。多分、多少……多少!!!脚色して書け……というのが裏なんでしょうが」
「……俺がネタになるのか?」
「……えぇ。このギルドで強くてマトモな人でかつ内情を話しても問題ない人となると……」
「俺より強い奴は……【夢見】や【火花】か。それらは無理だろうな。発言が危なすぎる」
「ですね……」
ふっと二人して思い出したのは二人の冒険者。
一人はちょーっと新興宗教の教祖で【夢見】と呼ばれている。夢に干渉する固有魔法を持っているからだ。
ギルド内で宗教勧誘に余念がないちょっと迷惑な人で、ちょっと……本人はお告げと称してヤバめの儀式をするくらいの怪しさ100点満点なだけ。
あとやってることがほぼ洗脳。
もう一人はちょーっと自然回帰に余念がないテロリストだ。【火花】と呼ばれている。人間は自然に帰るべきだと声高に叫び、手始めとして放火を行う。
ガチの犯罪者である。
何度も捕まっているが、植物に関する知識には目を見張るものがある為、社会奉仕活動として駆り出されるところを見る。
自然回帰を人生の重しにしている以外、品行方正だからだ。
どうあがいてもネタに出来ない。危なすぎる。コンプラ的にも。被害的にも。
「他も実力はあるが如何せん性格面に難がある…………となると無難なのは俺になる……か」
悲しい自覚だけど事実、まともで実力がある人は少ない。あとはウィンスターさんのほかに一人居るが……
「はい……ウィンスターさんとあと一人【燭台】のリストイテさんが候補として上がっていますが」
「今は王都に遠出していたな」
「そうなんです……」
悲しい沈黙が走る。もう一人の方は王都の方へ出張中だ。
……理解して頂けただろうか。この絶望的などうしようもなさを。ある程度脚色しろとは言え、冒険者の実態なんてたかが知れている。
というかちゃんと伝えてしまえばなる人なんて激減するだろう。それを回避しながら、良いところだけを書けと?そんなの偏向報道にもほどがある。
「どうしましょう……」
「どうするか……」
ギルドからの依頼だ。断ってもペナルティはない……とされているが実質的にはある。断ると今後受ける依頼がしょっぱくなるのだ。だから断るという選択ができない。申し訳ないけどウィンスターさんには受けるしか道がないのだ。
一緒に地獄に落ちてもらおう……(悲しい道連れ)
「期限は決まっているのか?」
「いえ、幸いなことに特段の期限はないので打ち合わせしていきましょう」
「あぁ……。よろしく頼む」
「よろしくお願いします」
そうしてここに、冒険者のイメージ改善というとんでもない無茶ぶりを考える二人の生贄が出来上がった。
今後のことについて全く未来が見えないが、しかし、何とかして書きあげねばいけない。なので二人して死んだ顔で打ち合わせに臨んでいく。
あーでもない、こーでもないと話し合い、いくつかの提案の末
「一先ずだ。改めて、現状を知る必要がある」
冒険者の実態を調査することになった。