ゴジラ対エヴァンゲリオン(仮)   作:蜜柑ブタ

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 お待たせしました。
 スランプに陥って書きたくても全然書けなくなってました。

 スランプ状態で書いたのでもしかしたら書き直すかもしれません。


第十二話  使徒の誤算

 機龍フィアの暴走。

 その原因が使徒に乗っ取られたこと。

 使徒の正体がナノサイズの微生物の集まりであること。

 微生物と分かった時、使徒が機龍フィア以外に広がっている可能性が疑われた。

 機龍フィアにいる使徒が他の箇所に増殖しているとなれば、機龍フィアについているのを駆除しても意味がない。即座に機龍フィアを輸送していたしらさぎは勿論、機龍フィアが暴走してしらさぎから落ちる直後までの航路も調べることになる。

 しらさぎは、機龍フィアを運ぶ時のハンガーが半分の位置ぐらいで千切れていた。よく調べてみると千切れた面が溶けていた。

 防菌・防毒・防放射能装備フルで、でも相手はいまだに未知の敵だから万が一のことがありうる覚悟を決めた調査員が…拍子抜けするほどしらさぎには使徒の痕跡はなく、ハンガーが壊れたこと以外は至って安全だった。

 なので科学部からの結論は、機龍フィア内部にいる使徒は、機龍フィアにとりつくのに成功したものの代償として機龍フィアの外ではすぐに死滅してしまうほど脆弱になってしまったということである。

 

 それを裏付けるものとして。

 機龍フィアの両掌に即席のコアっぽい球体のようなものが見つかった。

 あと、ゴジラがそれを知ってか知らずか、機龍フィアの両腕を掴んで片足で機龍フィアの腹を押して、両腕を引きちぎろうとしていた…。

 凄まじい怪力で引っ張られることで、ゴジラとまともにプロレスができる機龍フィアの腕が嫌な音をたて、火花を散らしていた。

 

 あと少しで千切られる!っというところで、突然、機龍フィアに大きな変化が起こることになる。

 光のなかった両目に強い光が灯り、大きく口を開け、凄まじい大音量で、機械音の雄叫びを上げだしたのだ。

 

 それがきっかけかは不明だが、機龍フィアの動力炉の暴走が緩やかに減速した。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 機龍フィアに変化が起こる前。

 ゴボリッと。

 尾崎は、口から泡を吐いた。

 光のない、青黒い奇妙な液体の中に閉じ込められた尾崎は、上も下も分からないままもがいた。

 機龍フィアを支配し、操っている使徒に捕まり飲み込まれた。

 脱出をしようと手足を動かすも触れるのは、液体のような感触だけでそれ以外がない。

「(…息が……。)」

 液体の中なので酸素が得られるはずがない。

 息を大きく吸う暇もないまま、捕まって飲み込まれたためどんどん苦しくなっていく。

 しかし諦めるわけにはいかないと、最後の最後まで足掻こうと尾崎は動いた。

 

 その時、尾崎の目の前で強い光が発生した。

 

 閉じた瞼の上からでも感じたその光に反応して目を開けると、自分がいまいるはずがない場所で尾崎は倒れていた。

「こ、ここは?」

 起き上がり、周りを見回す。

 倒壊した建物や車や家電、それ以外にも様々な物が転がっている。

 座り込んでいる地面の感触も本物のようだ。

 リアルだが、おかしい点がいくつかあった。周りに音がない。そして空気の動きない。匂いもない。つまり時が止まったように尾崎以外のすべてがおかしかったのだ。

 とりあえず状況を整理しようと尾崎が思考しようとした時、強烈な血生臭い匂いと共に手に液体が触れる感触があった。

 驚いてそちらを見ると、大きな瓦礫の下からドロドロと赤黒い液体が流れ出ていた。

 瓦礫の下に生き物がいる。だが…、流れ出てくる血の量といい匂いといい、被災地の救助と捜索経験がある尾崎は、瓦礫の下には死体があると認識せざるおえなかった。

 リアルな夢とはいえ、放っておくのは忍びないと感じた尾崎は立ち上がり、せめて瓦礫に潰されている状態から解放しようと思い、立ち上がって瓦礫に近づいた。

 するとなぜかは分からないが、見えない力に吸い寄せられるように瓦礫の傍に落ちている衣類の切れ端のようなものや、文字盤の破片や、オモチャだったと思われるが原形がほとんど失われた物に目が行っていった。

 丁度いいぐらいにそれぞれ一文字ずつぐらい字が残っていた。

 それらの文字を組み合わせると、つ、ム、ぐ、となる。

 尾崎は、あれ?っと思った。どこかで聞いたことがある話の内容と、今の状況が似ているというよく分からない確信みたいまものが脳裏に浮かんだからだ。

 更に追い打ちをかけるように、ちょっとだけ離れたところに、『椎堂』と書かれた看板の一部みたいなものが落ちていた。形からするに『椎堂』は中間か後半部分の文字だったっぽい。

「なんでだ?」

 なぜ自分が他人の過去の映像の幻の中にいるのか、そもそもこれが本当に“彼”……、椎堂ツムグの過去が再現された光景なのかどうかすら謎だ。

 ツムグの名前の語源が、発見された場所に落ちていた物から適当につなぎ合わせてつけた仮の名前であることは聞いていた。名前の語源になった物の詳細は知らないが、ゴジラと怪獣の戦いが繰り広げられ破壊され尽くした現場にあった物だから形を保っている物はほとんどなかったはずだ。だから自分が目にしている文字が残っている壊れた物類が後のツムグの名前になった可能性が高い。

 だとすると…。

「この下に、いるのは、…ツムグ? ツムグなのか?」

 瓦礫の下から流れ出ている血は、乾く気配がない。それどころか、瓦礫の下の隙間からブクブクと血が泡立ち始めている。

 破壊し尽くされた街の中で、誰にも知られることなく密かに胎動し、そしてG細胞完全適応者『椎堂ツムグ』と呼ばれることになる、あの神出鬼没のトラブルメーカーで、とりあえずは味方なんだがゴジラを崇拝しているところがあり、よく分かんない変な奴で、機龍フィアの材料にしてその操縦者となる者が生まれてくる。

 ブクブクと泡立っていた血が、勢いを増してボコボコと激しく泡立ち始めた。人間の大人よりも大きい瓦礫がグラグラと動き始めていた。

 その激しい変化に、尾崎は思わず後退りした。

 被災地の救助と捜索で、酷い死体は幾らでも見たし、その死体を回収することもした。あの時は吐き気とかそういうものなんかより、死体になってしまった者達が哀れで、救うことができなかったというショックの方が大きかった。

 今目の前で生まれてこようとしている、奇妙な知人(?)の様は、それまで尾崎が感じたことがない強烈な吐き気と悪寒を湧きあがらせた。

 そして、まるでそのタイミングを見計らったかのように、尾崎の体に、背中から衝撃が走った。

 衝撃で思わず退けぞったため、ゆっくりと目線を後ろにやると、青白く光る捻じれた槍のようなものが背中に突き刺さっていた。

 激痛と共に喉をせり上がってきた鉄の味を堪えながら、尾崎は咄嗟に、これは夢だ、幻だと己に言い聞かせた。

 超能力の活用の訓練と同時にそれに対する耐性を養う訓練と、人体などの神秘についての勉強などで“病は気から”という言葉通り思い込みで肉体に外傷や毒や病にならなくても死亡すると教わり、一歩間違えば死に直行レベルの精神系の超能力の攻撃を受けて耐えたり退ける術を体で覚えさせられた(※能力の有無に個人差があるのでレベルの上限は人によっては違う)。

 今いる場所が現実ではないと分かっているからこそ、ここで死んだとしたら現実の自分も死ぬと理解していたからこその対応だった。

 これは夢だ現実じゃない!っと繰り返し強く念じ続けていると…。

 

 ど派手なガラスが砕けるような音がして、尾崎がビクンッと反応してそちらを見た。

 

 それと同時に背中に刺さっていた槍みたいなものも光の粒なって飛散し、尾崎の周りを漂いだした。

 尾崎の視線の先には、中空に空いた穴から落ちてくる、椎堂ツムグがいた。

 ツムグは、尾崎を見つけてギョッとした。

『尾崎ちゃんんん!? なんでここにぃぃぃい!?』

 尾崎を指さしながら落ちていくツムグは、地面に接触した途端、地面が粉々に砕けて空いた暗闇の穴に吸い込まれるように落ちて消えてしまった。

 尾崎は、ポカーンっとツムグが消えた場所を見つめていた。

 なぜかは不明だが、尾崎がさっきまで刺されていた箇所も元通りに戻っていた。

「えっ、ツムグ? 一体、何が?」

 何が何だかさっぱり分からんと尾崎は膝をついた。

 そこにきて尾崎は、やっと自分の周りにある青白い光の粒に気付いた。

「なんなんだこれは!? まさか、使徒か!?」

 自分に纏わりついていた光を体を振って払落しながら、尾崎は光の粒の包囲から脱出した。

 竜巻のように渦を作っていた使徒は、その外へ逃げ出した尾崎を見おろすように動く。

 尾崎は、身構えながら自分が今置かれている状況を確認した。

 機龍フィアの首の後ろ辺りある、外付けリミッター解除装置を使おうとかなり近くまで接近できたまではよかったが、機龍フィアの装甲に擬態していた使徒に捕まって丸呑みにされてしまった。

 丸呑みにされた後、窒息しそうになったが、使徒はなにを考えたのか夢の世界から攻撃をしかけ、夢の世界で殺そうとしてきた。

 しかもなぜかツムグの過去っぽい映像。たぶん機龍フィアの操縦室に閉じ込められているツムグから得た情報を基にこの夢を作ったのだろう。

 機龍フィアの表面に走る青白い光の筋と同色なので、目の前にいる光の粒々が使徒であることは間違いない。

 今まで固形の形で出現してきた使徒だったが、この使徒は粒の一つ一つが使徒だというのを見抜いた。

 つまりこれまでの使徒と違い、弱点のコアを潰せばそれで終わりじゃない。粒を残さずすべて消さないと倒せないということだ。

 

 しかし…、尾崎は、むしろこの状況はチャンスだと考えた。

 

 精神を直接攻撃は、対処法が分からなければそのままドツボにはまってお終いだ。

 だが尾崎はその訓練をしているし、ミュータントでも特殊であったことから実験ついでにミュータントの能力がどこまで通用するのか、どんな応用ができるのかという個別訓練を行ったことがあった。

 その実験&訓練とは、コンピュータなどの人工知能のプログラムに超能力で干渉し、超能力でプログラムを操るというものだ。

 パスワードやセキュリティを強引に破り、自分が必要としているデータだけを引っ張り出して入手、脳を記憶媒体としてデータを運ぶ。

 生体や無機物から情報を読み取りその情報を記憶できる超能力から、普通の人間より脳の記憶容量が大きいと判断されたことから始まった実験だったが結果は予想を遥かに上回るものだった。

 ちなみに実践に使うかどうかはまだ検討中である。取り換えが利かない脳細胞に負担がかかるからだ。

 それは置いといて、精神攻撃と電子プログラムに関わるその実験の検体として参加していた尾崎である。今この状況は恐らくであるが現実世界よりも圧倒的にこの使徒に対して有利な状況かもしれないのだ。

 いくら無数の微生物の集まりからなる使徒とはいえ、それを統一している意思は一つであるはずだ。

 ましてや今、ツムグの過去を再現したリアルな夢の世界を作り出し、そこから攻撃を仕掛ける大掛かりなことをやってきたのだから、微生物の集まりの使徒の意思に直接手を下すことが可能だ。仮に現実世界で何らかの保険をかけてあって大部分を失っても生き残れるようにしていてもだ。

 夢を通じて殺すことができる。

 尾崎は、ぐっと身構え、使徒をまっすぐ見据えた。

 使徒の意思は渦を巻いていたが、渦を巻く方向を変え、密集度を高めドリルのように鋭い形の渦を作るとその先端を尾崎に向けた。

 次の瞬間、目に見えないと例えれるような速度でドリルのようなそれが尾崎に突っ込んでいった。

 尾崎は、まったく無駄のない動きで跳躍し、難なく回避すると、右手を振りかぶって橙色の精神エネルギーを纏わせて使徒の意思に向かってその拳を叩きこんだ。

 ガラスが砕けるような大きな音と、橙色の光が花火のように広がった。

 少し間をおいて耳に刺すように大音量の甲高い悲鳴が木霊した。

 尾崎は着地し、使徒の意思を見た。使徒の意思は、尾崎の攻撃に混乱しているのかその粒々のほとんどが動きに法則性を失っている。量もさっきまでの半分ぐらいしかない。

 やがて混乱が治まってきたのか何とか統一性を取り戻した青白い光の粒が尾崎のいる方向とは逆方向へ動き出した。

 逃げようとしているらしい。

 しかし、尾崎は、根は優しいが、自分以外の大切な人達を守るという使命感の強い青年だ。ましてや相手が世界の滅亡に関わる使徒で、しかも現在進行形で機龍フィアを乗っ取って操り大きな危機を招いているのだ。逃がすわけにはいかない。

「負けるわけにはいかないんだ!」

 尾崎が気合と共にそう叫ぶと、尾崎の身体から橙色のオーラが放たれ、周囲に広がり、使徒の意思の行く手を遮った。

 逃げ道を塞がれ、甲高い鳴き声のような音を出した使徒の意思は、恐る恐るという様子で背後にいる尾崎を見るような動きをした。

「…お前達、使徒は、アダムのところに行きたいだけなんだから、俺達と敵対するつもりなんて本当はないのかもしれない……。けれど、俺達は、戦いを止めることはできない。お前達がアダムのところへ行ったら世界が終わってしまうというのが本当なら止めなきゃいけない。ゴジラもいるし、俺達は、負けられないんだ! 生き残るために!」

 尾崎は、右手の拳により一層強い橙色の光を纏わせ、使徒の意思に向かって拳を振った。

 放たれる強大な精神エネルギーによる攻撃。

 微生物のひとつひとつが使徒であるため倒すのが困難な現実じゃなく、それを統一するひとつの意思がいる夢の世界での直接の攻撃に、使徒イロウルは、更に大きな悲鳴を上げた。

 

 

 捨て身で機龍フィアを乗っ取った使徒イロウロの大誤算は、尾崎をただのミュータント兵士と侮り、夢の世界に引きずり込んで身も心も壊して喰おうとしたことであろう。

 

 

 ナノサイズの微生物の集まりであるイロウルの大本たる意思の方が大ダメージを受けたせいか、精巧に作られていた夢の世界が崩壊を始めた。

 ひび割れた空に赤と金色が混じった電気のような光がスパークし、ゴジラに似た、けれど機械から発せられる雄叫びみたいな声が響き渡った。

 

 

 現実世界では、機龍フィアが顎の関節を引きちぎるほど大きく口を開けて電子音交じりの雄叫びを上げていた。

 機龍フィアの両腕を引きちぎろうと踏ん張っていたゴジラは咄嗟に止まるし、地球防衛軍側もいきなりのことに固まらざるおえなかった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 白っぽいヒビが入った暗黒の空間に、ニョキッと手が伸びた。

「ブハッ!」

 暗黒空間にできたヒビから這い出てきたツムグは、ゲホゲホとむせた。

「で、溺死とか…。昔さんざんやられたことだし。結局、細胞が適応して無酸素状態でも平気になっちゃったけど。ま、いいや。それにしても尾崎ちゃんとあんなところで会うなんて…、使徒ちゃんも何考えてんだか…。」

 咽た時に出た唾を口元を手で拭うと、後ろに振り返った。

 青白い光の粒が宙を舞っている。だが初めに遭遇したものよりも明らかに量が少なく、動きにも元気がないように見える。

「尾崎ちゃんの一撃は効いた? 痛いでしょ~?」

 ツムグは、腰に手を当て、にや~っと笑って使徒を見上げた。

 使徒はそのの言葉を聞いて悔しいのか、それともわけが分からないと混乱しているのか、どちらとも取れる動きを見せる

「アホだな~。っていうか、なんで尾崎ちゃんを喰おうとしたわけ?」

 それを見てツムグは、呆れた笑みを浮かべながらそう言うが使徒から返事はない。

 使徒は、もう放っておいていいと考えたツムグは、顎に手を当て、ここから脱出することを考えた。

 しかし使徒から受けた封じが思っていた以上に作用しており、ドつぼにはまっていて、肉体の方に帰ることが難しいことに気付いた。

 自力で脱出となると脳の活動を止めている部分。ヘルメットに繋がっている管とコードに浸食している使徒の変異(脳の活動を止めるための物なので使徒とは別物化している)を取り除くか、あるいは、死にそうになるほどダメージを受けて死から再生するときの一時的な細胞のエネルギーの増加で活動を止めている部位も活性化させるか。

 思いついて、ツムグは、肩を落とした。

「どっちも第三者がいなきゃできないじゃん! うわ~、まさかこんなドつぼにはまるなんて俺、どんだけ油断してたの!? 誰かに助けてもらいたくても俺の身体、機龍フィアちゃんのコックピットの中だし!? ……もう過去は戻らない。どーしようか…。ホントにどーしよう、十五年ぶりにヤバいって状況だよ!」

 両手を両頬にあてて顔を青くして叫ぶツムグ。普段の彼を知っている者達のほとんどが見たことがない慌てぶりである。

 ツムグが焦っていると。

 

 -------ムグ------…

 

「ん?」

 

 -----------バカ----…

 

「えっ? 馬鹿って…、何事? っていうかこの声誰!? 子供?」

 

 -----! バカバカバカバカ!!

 

「連呼された!」

 

 ツムグの……、バカーーーー!

 

 そう叫ぶ声が響き渡ったと同時に、ツムグの足の下の方から銀色と赤の巨大な物体の頭部が浮上してきた。

 

「あーー! ごめんねーーーー!」

 

 浮上してきた機龍フィアの頭に吹っ飛ばされて、ツムグは、暗黒空間の彼方へ飛んでいった。

 ツムグがいなくなったあと、暗黒から頭を出した機龍フィアが、くるりと後ろにいる使徒の方を見た。

 そしてガバッと口を開けた。残し少ない使徒の粒はすべて機龍フィアの口の陰に覆われた。

 さっき尾崎にやられた痛みにのたうっていた使徒は、機龍フィアの口に気付いた時には、機龍フィアの口が閉じられる直前だった。

 口が閉まる、直前で気付いたことと、使徒自体が粒々だったので、折角残っていた量の4分の3を失いながら残り4分の1が命からがらという状態でこの空間から逃げていった。

 ガジガジと使徒を噛み砕く動きをしていた機龍フィアは、やがて怒りが収まらないという風に苛立った雄叫びをあげた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 千切れかけていた両腕はバチバチと火花を散らしていたが、機龍フィアがゴジラから少し距離を取った途端に赤黒い粘土のようなものが千切れかけてむき出しになった骨の部位から溢れ出て千切れかけていた腕の他の部分にくっつき、腕をもとの位置に戻して装甲までは治ってないがそれでも両腕が修復された。

 腕が千切れそうになった分だけ離れていた距離が縮まり、機龍フィアの顔とゴジラの顔がくっちきそうなほど近づいた。

 ゴジラは、忌々しそうに口の端を歪めた。

 

「な…、何が?」

「動力炉の温度上昇が止まりました!」

「温度が低下しています! 安全値まであと5分!」

「とりあえず危機は脱したらしいな。」

 機龍フィアからは温度上昇による湯気がもうもうと出ている。

「いやいや、別の危機が起こっていますよ?」

「本部からの伝達! 科学部での観測によると機龍フィアのDNAコンピュータの活性率が300を突破!」

「なんだそりゃ!?」

「機龍フィアの背中側、首付近に高いP・K(超能力)反応有り! 信号を確認! 尾崎少尉です!」

「生きていたか!」

 

 機龍フィアの変化により、使徒イロウルに飲み込まれていた尾崎が解放された。

 繭のような球体が破れ、そこから飛び出した尾崎は、機龍フィアの首筋を横走りしリミッター解除装置に近づいた。

 そこからは目にも留まらぬ速さとはこのことという速さで尾崎はハッチを壊すように開け、中にある回転型のスイッチを掴みグリングリンと右に左に、事前に頭に記録させられたマニュアルに従い回転させる。

 最後にグリッと押し込んだ時、リミッター解除装置が四角い枠ごと爆発した。その衝撃で尾崎の身体は、宙に投げ出され、機龍フィアの首筋から落下した。

 尾崎は身を捻り、ゴジラに掴みかかられている機龍フィアにぶつからないように、そして潰されないよう着地点に気を付けて落ちていった。

 リミッター解除装置があった場所から蒸気が漏れ、やがて鈍い灰色の背骨が朱色っぽい明るい赤い色に染まりだした。

 その色は機龍フィアの全身に広がっていた青白い血管のような色を塗りつぶすように広がっていき、鼓膜を刺すような甲高い悲鳴が木霊した。

 すると機龍フィアの両腕の付け根から青白いアメーバのように機龍フィアから分離していく使徒イロウルが出現した。

 イロウルは、G細胞完全適応者の細胞の活性化で焼かれてしまいそうなってよっぽど慌てたのか、よりにもよってゴジラの方へ出てきてしまった。

 ゴジラは、機龍フィアから手を離すと、アメーバ状のイロウルに手を伸ばす。しかし、イロウルは、端から火が灯り、ジワジワと燃えていってしまった。

 静かに燃え尽き、使徒イロウルは死んだ。

 

「パターン青。消滅…。」

「勝った…のか?」

 

 微生物の集まりの使徒が死んだという反応が確認されても全く安心できなかった。

 なにせ微生物。一つ一つがコアを持つ使徒と判明してしまったことが大きい。

 だから油断できない。

 イロウルが殲滅されたという報告がされても、緊張は解けれない。

 そんな中、ゴジラが雄叫びを上げた。

 喉がやっと治ったらしい。完治とは言い難いがそれでも鳴き声を出せるほどには回復したようだ。

 だがその直後。

 

 機龍フィアに、ゴジラは、ビンタ、された。

 

 しかもビンタの強さは、ぺちんっという程度である。

 ゴジラも、地球防衛軍もみんなポカーンである。

 しかしすぐに我に返ったゴジラは、怒りを露わにして機龍フィアに殴りかかろうとしたが、それよりも早く機龍フィアが両腕を上から下へ振り上げゴジラを殴打した。傍から見ると、それは子供が駄々をこねて両手を振り回すそれだ。

 機龍フィアが爆発させられそうになった危機を脱したはいいが、今度は機龍フィアに起こった別の異変で地球防衛軍は慌てた。

 連続で叩いてる割にはダメージはとても低いらしく、ゴジラは、なんなんだ?っという感じに眉間を寄せている。

 その時。

 

『ツムグのバカーーーー!』

 

 

 

「喋った!?」

 

 電子音混じりの子供のような声が機龍フィアから出た。

 口が動いているわけじゃないのでスピーカーか何かから出ているのだろうが、喋れるようにしてはいなかったはずだ。パイロットが操縦席から外に向かって声を向けることはあれど。

 いきなり子供の声を発したことは、機龍フィアの開発に関わった科学者達や技術者達を混乱させた。

 ゴジラもちょっとびっくりしていた。

『バカバカバカ!! いっつもゴジラ、ゴジラって! ツムグのバカ!』

 操縦席にいるツムグに向かって怒鳴っている。

『ツムグは、“ふぃあ”のだもん! “ふぃあ”のだもん! ゴジラのじゃないもん!』

 

 

「…微妙に発音が……。」

「科学部からの報告で、音声の解析結果、平仮名で“ふぃあ”って言っているとのことです。」

「機龍“フィア”だから、“ふぃあ”なのか?」

「つまりあの声は機龍フィアのDNAコンピュータということか。」

「自我意識が芽生えただと? それじゃあ3式と同じ…。」

「いやいやいやいや、3式機龍とは明らかに違いますって! 資料で見てますけどあんなんじゃなかったですって。」

 

『あげないもん! あげないもん! ツムグは、あげないもん!』

 

「椎堂ツムグが好きなんだな…。」

「あいつの遺伝子細胞から発生した意識なら普通なんじゃないか?」

「ハハッ、あいつモテんじゃねーか。」

「違うと思うぞ!? むしろ兄弟とかそんな感覚だと思うぞ!?」

「司令部はさぞかし大騒ぎだろうな…。」

「そうでしょうね…。」

「あっ」

 前線部隊が基地にいる司令部の混乱を心配していると、事は動いた。

 黙って叩かれていたゴジラは、我慢の限界をむかえたのか呆れたのか、機龍フィアを強烈な張り手で倒すとくるりと背中を向けて海の方へ去っていった。

「帰りましたね…。」

「使徒もいなくなったしな…。」

「喉の怪我も治り切っていないようだし、無理して来たってのもありそうだな。」

 

『ウゥ~~、ツムグ、起きてよ~!』

 

「って、あいつ(ツムグ)起きてないのか!?」

「そもそも意識がなくなっていたなんて初耳だぞ!」

「仕方ないだろ、内部の情報が入ってこなかったんだから…。」

「どーすんだ、これから? 司令部からの指示はまだか?」

「仕方ない。俺達は俺達でできることをやればいいだろ。」

「それもそうだな。」

「尾崎少尉が見つかりました!」

「そうか! ん? 何かあったのか?」

「それが……、数十キロ離れたところからテレパスで近寄るなと言っていて…。」

「? ……まさか。科学部に指示を仰げ! 全軍に伝達、尾崎をSS級危険物として警戒しろ!」

「は、はい!」

「どーした熊坂!?」

「使徒につかれてた機龍フィアに直接触ったんだ…。発信機が途中で途切れたのは使徒に捕まったか何かされたに違いない。あいつのことだ…、それに気付いて味方に近寄らないようにしてるんだろう。」

「あっ…。」

 

『ツムグ~~。う~、ん? だぁれ?』

 

「なんだ? 様子がおかしいぞ?」

 

『えっ? ほんとう? ツムグだいじょうぶ? ほんとにほんとに? うん。分かった。』

 

 機龍フィアがキョロキョロと首を振りながら誰かと会話をし、やがて大人しくなった。

 自我が芽生えたことで勝手に動いていた機龍フィアが大人しくなったため、その隙にと回収することになった。

 暴れるかと思われたが、嘘みたいに大人しかった。

 後で分かったことだが、機龍フィアに話しかけて大人しくするよう説得したのは、尾崎だった。テレパシーを使ったらしい。

 

 機龍フィアが回収されるのと同時に、問題の尾崎の方も回収となった。

 微生物の使徒に侵されている可能性に、尾崎と親しい者達は不安の色を浮かべた。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「……ん?」

 ツムグが目を覚まして最初に目にしたのは、手術室の強烈なライトだった。

「やっとお目覚めか。」

「おはよ~。」

 頭がまだボーっとするが、目をこすりながらツムグは、起き上がった。

 マスクをして白衣を着た自分の管理者の一人がカルテを片手に持って立っている。

「脳の活動は若干にぶいが、事情聴取だ。」

「大丈夫。大体把握してるから。」

 寝たままヒラヒラ手を振ると管理者は呆れたように息を吐いた。

 それからは使徒サハクィエルが殲滅された直後に機龍フィアをなぜ飛ばしたのか。いつ使徒イロウルにやられてしまったのか。硬質な繭みたいに変化したイロウルに強制的に眠らされていた状態についてなどを話した。

「普通なら脳死ししているか、脳に重大なダメージを受けるがな。G細胞の力だな。」

「尾崎ちゃんは?」

「…なぜおまえが知っている?」

「夢の中で尾崎ちゃんと会った。」

「そうか…。おまえには説明が必要ないな。」

「自分でも便利だなぁって思うよ。でさ、尾崎ちゃんの様子は?」

「かなり参っているみたいだ。無理もない。いまだに得体のしれない化け物に身体を侵されているかもしれないからな。」

「検査中ってこと?」

「今回の使徒は微生物だ。少しでも残っていたら復活する可能性が高いからな。」

「その心配はないよ~。」

「はっ?」

 ツムグは、むくりと起き上がり、ニッと笑った。

「尾崎ちゃんのところ、連れてって。」

 そう言われて管理者の一人は、言葉を失った。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 科学研究が行われたり、検査といったことも行われる特別な実験所がある。

 恐らく世界で1、2を争う防護、防菌の場所であろう。

 怪獣がいた頃からフル稼働のそこに、尾崎はいた。

 正確には…、監禁されていた。

 簡素な病人服の恰好で、室内の外が見える窓にソッと手で触れる。

 機龍フィアのリミッター解除装置を使うために出動したはいいが、目前のところで使徒に捕まった。

 使徒は微生物の集まりだったことをあの時はまだ判明していなかった。少なくともこれまで現れた使徒と生態が全く異なるとは分かっていたがどのような生態を持つ使徒なのかは分からなかったし、何より機龍フィアを奪還することを優先しなければならず、機龍フィア自体がミュータントの強力な超能力をほとんど受けつけない仕組みだったのもあり仲間の力を合わせても接近できるのが尾崎しかいなかった。

 アメーバのように変態した使徒に捕まり、その液体を口にしたうえに、精神攻撃まで受けたのだ。体の中に使徒が入り込んで生き延びている可能性は非常に高いということだ。

 尾崎は、壁に背を預けてその場に座り込んだ。

 清潔すぎる白い部屋はあまりいい気分にはならない。

 正式にM機関への戦士になる前、尾崎には実験動物も同然の扱いを受けた時期がある。

 初めのうちは他の者達と同等の扱いだったが、検査や訓練を受けるにつれ、自分だけが違う場所に移動する機会が増え、やがて引き離された。

 尾崎でも、真一でもなく、割り振られた番号でもなく、“カイザー”という名称で呼ばれるようにもなり当時は混乱した。

 普通の人間ではないという自覚はあり、同じ力を持つM機関に保護された仲間達との出会いを通じてそれを理解したし、その力の扱い方や高め方などを学ばなければならない理由だって理解した。

 なのになぜ自分だけが違う場所に連れてこられたのか。子供に分かるわけがない。

 あのままだったら尾崎真一という存在は実験体として終わっていたかもしれないし、尾崎自身が現在の尾崎として精神を保てていたか怪しい。

 膝に顎を乗せてあの時のことを思い出す。

 金色の混じった赤色と、なぜか奇妙に見えた笑みを思い出した。

 そう、実験室に閉じ込められていた尾崎を解放したのは、ツムグだった。

 しかし正確なところは解放したと言えるのかどうか今思うと微妙なところではある。

 何をやったかというと…、ツムグが、襲って来たのである。

 …殺すとかそういう意味の方である。

 子供時代の尾崎は当時出せる全力で抵抗したので軽症ですんだ。普通ならトラウマになりそうだが、奇跡的にトラウマはならなかった。っというよりは、戦っている間に記憶が飛んでてしまったのでトラウマが残らなかったというのが正しいかもしれない。子供の身体で強大な超能力を多用して負担がかかりすぎたせいだとカルテには残っている。

 能力の高いミュータントより、そんなミュータントを遊び半分に殺そうとしたG細胞完全適応者の方の対処の方が優先となり、尾崎は解放されたのだった。

 セキュリティ厳重で病原菌が入るのも困難な場所に音もなく入り込んだツムグの異常さは狂気の域だということらしい。

「今思うとツムグのおかげだったんだな…。」

 結局は今逆戻りしているが、子供時代に出ることができたのはツムグのおかげだったのだと今更ながら思う。

 あとで聞いた話だが、殺そうとしたのは単なるパフォーマンスであり、本気ではなかったらしい。なにせその後も遊びと称した突然のバトルを持ち込んできたり、覗きや盗聴の常習犯だったりして、もういちいち気にしてたらやってられないと周りの空気もありいつの間にか慣れてしまったのである。

 そういえばツムグは、今どうしているだろうとも考えていると、実験室の窓を叩く音がした。

 顔を上げて窓を見て、尾崎は目を見開いてすぐに立ち上がった。

「美雪!」

 手足の先まで防護服で覆われているので人相が分かり辛いが一目で音無であることが分かった。

 窓に手を添えると、その手に重ねるように音無が窓の外から手を添えてきた。

 口が動いているが音は聞こえない。

 尾崎は、胸をえぐられるような申し訳なさを感じて胸を抑えた。

「ごめん。心配かけて。」

 彼女の泣きそうな顔に今すぐに彼女を抱きしめたいのを堪える。

 自分の体の中にはまだあの使徒が潜んでいるかもしれない。使徒がもういないことがはっきりするまで外に出るのは不可能だろう。

 もしかしたら一生…。その考えが過って尾崎は絶望した。

 が、その時。

「それはない。それはないから。」

 後ろからポンッと誰かに肩を叩かれた。

 …昔、同じことがあったような…。

「で、デジャヴ?」

「空気ぶっ壊して悪いけど、手っ取り早く、ね?」

「どうやって入ってきたんだ!?」

 慌ててツムグから距離を取る尾崎。窓の向こうにいる音無も驚愕している。シリアスの空気どこ行った?

「気にしない気にしない。」

 ツムグは、笑う。

 おかしい…、あの一件からセキュリティは強化されてツムグでも入り込めないようされていたはずだが…。

 ツムグは、右手を前に出して、グッと拳を握った。すると拳から血が垂れた。

「今から証明するから観察よろしく。」

 宙を見上げて、恐らくここの管理者達や研究者、そして事を観察していた上層部の人間達に向かって言った。

「しょうめい?」

「ようは使徒が残ってなければいいってことでしょ? 今から俺と握手して。こっちの血の付いた方で。」

「それで分かるのか?」

「なぜか知らないけど、使徒はG細胞に触ると火傷しちゃうんだよ。機龍フィアにとりついてた使徒もね、体を焼きながら耐えて耐えてたわけ。かなりしんどかったはずだよ。あれって微生物だからなんとかなってたんだろうけど。さすがに無理がたたってたと思うよ? でさ、もし尾崎の中に使徒が残ってたら俺の血を触ったら大ごとだ。残ってなかったらなんともない。簡単でしょ?」

「…うーん。」

「グダグダ考えてもここから出られないよ?」

「いや…その…、ツムグの血って、死ぬんじゃなかったか?」

「あれは体内に入れた場合。注射しなけりゃ大丈夫! …な、はず。」

「不安になるだろ!」

「触っただけでダメなら、あの虫みたいな形した使徒の時に大変だったって!」

 使徒マトリエル襲来時に、ツムグは、内臓から出血して吐血した。更にそのままゴジラと戦ったため操縦席は血塗れになった。いや、床が血の海なので開けた瞬間に…。

「あっ、そうか。」

「で、やる? やらない? 美雪ちゃんと一生はなればな…。」

「やるに決まっているだろう!」

「良い返事。さっ、グッと。」

 そうして、尾崎はツムグの血の付いた方の手を握った。

 握って…、1分後。

 

『パターン青。確認できません。尾崎少尉の解放を承認します。』

 

 っという、放送が聞こえ、部屋の鍵が開いた音がした。

「おめでとう、尾崎。晴れて自由の身だ…って、早っ。」

 ツムグが言うが早いか、尾崎はすぐさま部屋から飛び出し、外にいた音無を抱きしめた。

 ツムグは、その様子を見てから部屋から出ていき、二人を残して去っていった。

 監視カメラで様子を見ていた側も外で待機していた側も赤面する甘い空気がたちこめていたが、このまま放っておくわけにいかないで、二人に話しかけ、実験室からの退出となった。

 実験所の外で尾崎を出迎えたのは、M機関の仲間で、その中でジトッと見てくる風間がいたので心配をかけたことを話しかけようとしたら、まず拳が飛んできた。そのまま掴みかかられそうになったので仲間達が風間を抑えて、音無が間に入って、熊坂が落ち着けとチョップ入れたりしてなんやかんやあったが無事に戻ってこれたことを祝福されているのは嫌でも分かったので尾崎は涙した。

 尾崎に泣かれて風間はプイッとそっぷを向いた。

 それから、無事に戻ってこれたことを祝われて落ち着いてから言われた。

「戻る前にあの子らにも顔を見せとけ。」

「えっ?」

「シンジ君達の事よ。みんな心配してたんだから。」

「泣きつかれて面倒だったんだぞ。」

「すまない…。」

 尾崎が大変だったことは、シンジ達にも伝わっていた。ただし詳細は明かされず、ただ二度と会えない可能性があることを遠回しに言われ情緒不安定になったシンジが泣き出してしまったのである。

 本人は自覚なく尾崎を心の支えにしていたために不安定になり、泣き出してしまった彼を宥めようとした者達の声を聞いた途端、声を上げて泣くという事態にもなってしまい、尾崎の安否確認をしようと風間に縋ったり、相変わらず表情の乏しいレイが撫でたり抱きしめたりして慰めようとしたという。

 食堂にいると聞いたので行ってみると、普段はM機関の者達が座る席にシンジとレイが並んで座っていた。その周りには二人を心配そうに見ている食堂の職員達がいた。

 レイが尾崎の存在に気付いて振り向き、すぐにシンジの肩を叩いた。

 シンジがゆっくりと泣き腫らした顔で後ろを向く。無表情だった顔がみるみる変わった。

「お、おざきさん…。」

「心配かけてごめん。もう大丈夫だから。」

 尾崎は優しく笑って自分のもとへ駆けて来たシンジを抱留めてその頭を撫でた。

 食堂にいたおばちゃん達もホッとした顔をしてその光景を見守っていた。

 レイもどこか母性を感じさせる柔らかい眼差しでシンジと尾崎を見ていた。

 食堂の入り口で背中を預けていた風間は、肩の荷が下りたというように長生きを吐いていた。しかしその表情はほんのりと明るい。

 

 

 

 こうして恐怖の名を持つ使徒がもたらした恐怖は去った。

 

 

 

 

 

 




 イロウルの倒し方は、一応機龍フィア内部でというのは最初から決めてましたが、乗っ取られるというのは後から決めました。
 最初は周りに気が付かれないうちに殲滅というアッサリ展開でしたがそれじゃ酷いと思ったのでボツ。
 そこで、尾崎は強い(まだ潜在している)という設定にしているのに活躍場面がないなと思ったので急遽この展開にしました。
 最後の方でシンジが情緒不安定になってますが、精神崩壊からの回復だから本人も自覚のないまま尾崎に依存することで保っていたということにしました。変な意味はありません。

 もっとラヴラヴなシーン書きたいな…。頑張ろう。


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