英霊の稲荷様   作:名無しのペロリスト

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エピローグ

 黒幕とアーチャーを倒したあとは、教会の地下に囚われていたアイリスフィールを救出する。

 別ルートから情報を得て駆けつけた衛宮切嗣も合流したが、シリアスから急にイチャラブ展開を見せられる、同行者多数の身にもなって欲しい。

 

 それはそれとして、一緒に運び込まれていた聖杯を見た瞬間に、バーサーカーが目の色を変えた。

 

 ライダーやそのマスターも聖杯を見て驚愕したが、普段はのほほんとしている彼女にしては珍しい反応だ。

 そっちのほうが驚きだった。

 

 しかしその理由を聞くと、恐ろしい事実が発覚する。

 

 何と、聖杯は悪意に汚染されていたのだ。

 どのような願いであろうと、叶える段階で世界の滅亡に帰結する。

 それが本当なら、まさに呪われた聖遺物だ。

 

 だがそんなことを急に言われても、信じられるはずがない。

 そもそも英霊やマスターは、聖杯を目的に戦っている。

 それをいきなり、危険だから破壊しましょうと言われても、賛同できるはずがなかった。

 

 けれど、例外もいた。

 稲荷は無造作に鳴狐を呼び出し、全く躊躇せずに破壊した。

 元々世界の滅亡を防ぐために参加していたので、危険物を放置するはずもない。

 

 他の英霊が止める間もない、一瞬の出来事だった。

 

 稲荷は心優しいサーヴァントだ。

 敵であっても、救いの手を差し伸べるほどのお人好しである。

 そこに策略や陰謀などなく、偽ることのない本心だった。

 

 だからこそ他のサーヴァントやマスターは、バーサーカーの発言を疑いたくはなかった。

 しかし嘘かもしれないという疑念は拭えず、迷っている間に破壊されたのだ。

 

 とにかく聖杯は真っ二つに斬られて、最後は微妙な空気の中で全員脱落エンドである。

 だがそれで幕引きなら、まだ良かった。

 残念ながら、そうはいかなかった。

 

 何と聖杯に貯蔵された英霊たちの魔力が、黒く染まった泥に変わり、壊れた杯から一斉に溢れ出てきたのだ。

 

 それは周囲の物や人を飲み込む、呪いの炎となった。

 

 しかし世界の破滅を招く万能の願望器を破壊したので、この世が滅びるよりはマシな結果だ。

 けれど、爆心地に居る俺たちの避難が間に合うはずもない。

 

 このままでは、泥をまともに浴びて全滅してしまう。

 けれど、現実はそうはならなかった。

 

 たった一人だけ、英霊の座に戻らなかったサーヴァントがいたのだ。

 

 彼女は黒い泥に抗うべく、浄化の炎で俺たちを死の呪いから守った。

 だが完全には満たされていないとはいえ、サーヴァントが四体も捧げられたのだ。

 稲荷一人で押し戻せるはずもない。

 

 それにアーチャーとの戦いで消耗しすぎており、聖杯を破壊したときも狐火を使っていなかった。

 団子の予備もなく、令呪を助けも借りられない。

 

 そのせいで爆心地の俺たちは守られたが、周辺への被害を抑えるので精一杯だった。

 最後には彼女は自身の肉体を維持することもできなくなり、魔力の残滓になって消えてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 こうして、聖杯戦争は終結した。

 なお稲荷を失って悲しみに暮れた俺と桜ちゃんだが、次の日には普通に復活し、早起きして屋敷で朝食を作ってくれていた。

 聖杯の補助がないので大きくパワーダウンしているけれど、現世に留まるぐらいは可能なようだ。

 俺と桜ちゃんは大喜びで涙も引っ込み、バーサーカーの復活祝いを行うのだった。

 

 

 

 その後、俺は魔術師を辞めてフリーのルポライターに戻り、さらに間桐臓硯の事業も引き継ぐ。

 腹黒いアイツほど上手くはやれなくても、優秀な助手がいるので経営には問題はない。

 

 桜ちゃんは正式に間桐の娘になり、魔術師を目指すらしい。

 将来の目標は、お母さんのように格好良い正義の味方とのことだ。

 それに家事スキルや女子力も上達を目指すという、欲張りセットでもある。

 

 

 

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトとその許嫁は、時計塔に帰ると思いきや、何故か冬木市に家を買って、新しい魔術の研究を始めた。

 弟子は桜ちゃんで天才的な才能を持っているので、ぜひ養子にと頼み込まれるが、現時点ではやるつもりはない。

 

 葵さんは、時臣殺害の誤解は解けた。

 しかし俺は魔術師の考え方ではなく、関係修復は望めそうにない。

 桜ちゃんも顔も見たくないようなので、凛ちゃんも含めて一切連絡も取らない絶縁状態だ。

 少なくとも仲直りするにしても年単位の時間が必要になるため、現時点では諦めムードである。

 

 

 

 ウェイバー・ベルベットは、彼が帰国する前にケイネス・エルメロイが直接会いに行く。

 聖杯戦争を最後まで生き残った彼の才能を認め、素直に称賛して一冊の魔導書を渡す。

 彼にアーチボルト家の未来を託したらしいが、気になるなら時計塔に帰って自分で行けば良いのにと思わなくはない。

 

 まあ忠誠の証としてバーサーカーの足を舐めようとした奴らなので、多分もうイギリスには帰らずに、日本に骨を埋めるつもりなのだろう。

 何ならウェイバー・ベルベットにも稲荷を布教する程なので、筋金入りと言える。

 

 

 

 衛宮切嗣は二人の嫁さんと里帰りというか、実家に殴り込んで娘を強奪した。

 その際に、うちの助手がちょっと脅したようだ。

 更地にされて、明日から駐車場として使われるよりはマシだろう。

 今は冬木市の拠点を改修し、聖杯戦争の被害者の一人、身寄りのない子供を養子として迎え入れたらしい。

 

 ただ夜はかなり激しいようで、このままでは腹上死(ふくじょうし)してしまうと泣きつかれる。

 若い女性を二人同時に相手にすれば、それはまあそうなる。さらに稲荷の眷族補正がつくので、生身の人間の彼には激務だろう。

 

 なのでバーサーカー的には嫌々ではあったが、衛宮切嗣は大喜びで契約を交わす。

 こうして、新しい眷族が一人増えた。

 

 今後は稲荷を見習って、正義の味方として頑張っていくらしい。

 

 

 

 だが、言峰綺礼とアーチャーが生きていたのは驚いた。

 二人共、稲荷が殺したはずだ。なのに何故か無事だし、無駄にしぶとい。

 両方とも戦うつもりはないらしいが、正直全く信用できない。

 バーサーカーはジト目で睨みつけたが、聖杯戦争は終わったので過去の因縁を飲み込んで、今後は心を入れ替えるならと水に流した。

 

 もちろん、仲直りなどもっての外だ。

 彼らの心からの謝罪など嘘偽りだろうし、今も警戒は続けている。

 少しでも怪しい動きがあれば、乗り込んでぶちのめす気満々なのだった。

 

 

 

 俺が知っている情報は、こんなところだ。

 他にも重要人物は居るだろうが、そういう奴は自分と接点が殆どないか、キャスターのマスターのように、いつの間にか死んでいる。

 

 そもそも聖杯戦争で生き残るだけでも、相当運が良い。

 サーヴァントは召喚された時から死の運命が決まっていると言うが、マスターも殆どが死亡するのが普通だ。

 

 今回は例外的に大勢が生き残ったけれど、それでも死者は多い。

 

 あと、もっともおかしいのは、聖杯が破壊されたのにバーサーカーが消えなかったことだ。

 どうやら、そういうスキルを持っているらしい。

 

 俺としては稲荷が居なくなるのは寂しいし、桜ちゃんもとても懐いている。

 実の母親よりも愛情深く子育てをしているようで、外から見ればまるで本物の母子のようだ。

 

 ただし身長差から、俺以外は姉妹に見えている。

 とにかく稲荷は正式に、うちの家族になった。

 残念ながら令呪は使い切ったが、まだ一応マスターではある。

 

 彼女は今まで通り家事手伝いと、俺の助手のようなことをしてもらっている。

 とても優秀で基本的に何でもできるので、流石は英霊だと感心する。

 そもそも戦いが得意なサーヴァントが、何で事務仕事に適正があるのかは知らない。

 

 それに関しては、相変わらず稲荷は話したがらない。

 まあ今もパスが繋がっているので、たまに夢を見て大体察しはつく。

 

 稲荷に打ち明けると、絶対ややこしいことになるし、最悪あっちの世界に帰ってしまいかねない。

 それは色んな意味で、非常に困る。

 

 たまにふらっと居なくなって、しばらくすると帰って来ることがある。

 何処に行っていたのかと聞くと、世界の滅亡を防いだり、大事件や大事故を阻止したりと、正義の味方のようなことをしているようだ。

 

 最初は一人でやっていた。

 しかし衛宮切嗣が泣いて足に縋りついてきたことで、都合が合うなら一緒にどうかと誘うようになる。

 彼はどうやら、正義の味方になりかったようだ。

 

 現実にそれをやっている稲荷が近くに居るのに、除け者にされるのは確かに辛いだろう。

 まあ聖杯戦争が終結したあと、魔術師を引退した一般人の俺には、ちょっと理解できないが、まるで太陽のように眩く輝く彼女に憧れる気持ちはわからなくはない。

 

 

 

 そのような理由で、稲荷に居なくなられると正直困る。

 俺や桜の心の安寧だけでなく、世界の滅亡を防ぎ、平和を維持するためにも絶対に必要だ。

 

 関係悪化を招きそうな稲荷の過去は、きっと誰にも話すことはない。

 墓まで持っていくのは、ほぼ確定なのだった。




ステイナイトを匂わせつつも、続かないので完結とさせていただきます。
最後は駆け足ですが、ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。
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