死後の世界でレゼとマキマが恋バナ(?)等をする話です。
デンジについて、そして自分達について。
2人の心理・感情は、私が物語を読んで感じた完全創作です。独自設定も入っています。
マキマさんに対する心理の方が多いなぁ。最後まで悪役な彼女ですが、私の中ではこうなんですよ。『核兵器すら積んだ巨大戦艦の兵装を全て操りながら、戦艦の中枢で1人涙を流して人形と家族ごっこをし続ける女性』。それが私のマキマさんのイメージです。

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少女(レゼ)と母(マキマ)が語らひて

最初、列車の車両には私しかいなくて。

その後、彼女が入ってきた。

「久しぶりですね、マキマさん。」

「久しぶり・・・。意思が戻ったと言うことだね。」

「ここは死後の世界に行く車両。私もあなたももう無力。対等の存在。」

「・・・何の用かな?田舎のネズミさん。」

「恋バナしませんか?」

私は初めてマキマさんに対して、自分の意思で、笑顔で言ったんだ。

そして、列車は発車した。私達は隣に並んで座って。

 

テーマ1・デンジについて

「デンジ君についてどう思ってます?チェンソーマン抜きで。」

「餡子の入ってないあんパンについて語れと?」

「酷い言い方ですね。」

「彼は下等な存在だよ。」

「具体的に。」

「彼は学習能力が低すぎだね。脳の許容量が無いんだね。彼は趣味や特技もなくて。興味が無いんだね。今日見たテレビの流行りの歌手を覚えたとしても明日には忘れているだろうね。人として生きる為のあらゆる機能が欠落している。獣に近い性質しかない。それがデンジだよ。」

「デンジ『君』じゃないんだ。」

「私は、彼が嫌いなので。私が好きなのはチェンソーマンなので。」

「それは嘘。」

「・・・。あなたはデンジが好きなのかな?」

「好きですよ。デンジ君はね、下品な手品で笑わせてくれるんだ。そして下ネタを出すと喜んでくれるんだ。それが可愛くて。」

「幼児は下ネタが大好きで、出せば簡単に懐く・・・。彼に下ネタを出しているのは、あなたが彼を幼児とみなしている証左。腹立たしい。」

「やっぱりデンジ君のこと好きなんじゃないですか。」

「私の恋愛対象はね、全人類なんだよ。個体で気に入らない人物も相当数いるけど、私は総体で人類を愛している。デンジもその1人。だから人類に不要な要素を消去できるチェンソーマンの力を欲した。まぁ私は強いですから、チェンソーマンの力抜きでも、悪魔をある程度殲滅できたら人類全てを管理下に置く事を実行していたね。」

「それってどういう事?」

「私は全人類の個体全てに最良の人生を提供します。私はその気になれば誰の側にいる事も可能だから、1人1人に寄り添ってね。例えばデンジはね、何も出来ない。教育も躾も効果がない。社会に適応できない。だから介護するんだよ。私は彼が朝起きるのを手伝う。顔を洗ってあげる。服を着替えさせる。朝食を作ってあげる。食べさせる。歯を磨いてあげる。小便や大便の処理をする。適度に運動させ付き添ってあげる。昼食を作ってあげる。食べさせる。耳掃除をしてあげる。爪を切ってあげる。膝枕で昼寝をさせてあげる。お風呂に入れて身体を洗ってあげる。夕食を作ってあげる。食べさせる。寝る前に歯を磨いてあげる。服を着替えさせる。寝かせる。寝るときに子守歌を歌ってあげる。彼が眠るまで。それを彼の寿命が尽きるまで行う。病気一つ冒させない。怪我一つさせない。彼を傷つけるモノは、私が全力で遮断する。・・・彼は幸福な人生だったと思うだろうね。」

「老人の介護を滅茶苦茶歪ませた行為だよそれ・・・。あなたの愛は異常。」

「あなたは何故チェンソーマンの心臓を欲していたの?ソ連に指示されたから?それだったら、あなたは矮小すぎる。あなたに私の願いは否定させない。」

「・・・私も世界を変えたいと思った。デンジ君に会って彼と過ごしてそう思った。」

「どういう風に?あなたは弱いですから『チェンソーマンの力抜きで』を除外しての発案を許可します。」

「人類を滅ぼして、アダムとイブになりたかった・・・かな?2人っきりになりたかった。でも逃避行は嫌だった。いつか追いつかれるから。それだったら世界を壊して、2人だけの世界を作るんだ。2人の寿命を無くして、飢えとかも無くして、2人で人類の廃墟を散策して、夕方になったら綺麗な所、ハワイの海とかかな、そこで2人で踊るんだ。笑い合いながら。永遠に。」

「始まりの2人が世界を滅ぼすなんて愚かすぎる。・・・だから駆除されたんだよ、田舎のネズミさん。」

 

「何故、彼を学校へ行かせなかったんですか?」

「学校へ行けばデンジは幸せになれると?・・・。デンジはね、頭も悪いけど、友達も出来ないんだ。パワーちゃんとかは無しだよ。彼女達とはチェンソーマン関係で繋がっているからね。友達が出来ない理由はね、同じ事を続けられないんだ。友達を作るには共通の話題がいる。趣味がいる。でも、デンジはそれがない。昨日好きだった事が今日突然好きじゃなくなる事がある。」

「私はデンジ君といて楽しかったですよ?」

「本当に?あなたは嘘つきだからね。田舎のネズミさん。」

「その呼び方止めてよ・・・。レゼって呼んで欲しいな。」

「・・・もう、お互いに無力な存在ですからね・・・。従うよ、レゼ。」

「デンジ君はね、私がバイトしているカフェに一週間も通ってくれたんだ。」

「そう籠絡したのでしょう?彼を。」

「でもさ、その関係は友達じゃないのかな?私と友達になれるって事は、学校でも友達を作れる事にならない?」

「ならない。認めない。あなたはデンジを『下に』見ていた。自分よりレベルが低い存在として見ていた。それは友達ではない。」

「実際対等な友達関係なんてほとんど無いですよ?どっちかがリーダーでどっちかがサブ。どっちかに引っ張られて、どっちかが従う。友達関係の多くはそんなもの。」

「レゼ。あなたは、学校で友達に引っ張られて過ごすデンジを見て耐えられる?」

「・・・我慢できない。そいつを殴ると思う。」

「でしょう?その位の推測が出来なきゃおかしい。」

「やっぱりね。マキマさんの視点って母親なんだよ。」

「は?」

「自分の子供が傷つくのが怖い。だから学校に行かせられない。目の届く所に置いておきたい。・・・過保護な母親。」

「私は学校にデンジが行っても監視できるよ。あなた達を監視した様に。」

「それは私とデンジ君が争うのは肉体的なものだと予想してたから。デンジ君が肉体的に傷つくのは耐えられると信じているから。でも精神的に傷つくのは耐えられないと思ってる。学校で傷つくのは大抵精神的なもの。そうしたらあなたはすぐに学校に駆けつけるだろうね。」

「私をモンスターペアレントか何かと思っているの?」

「思ってる。」

 

「そういえば、あなたは学校のプールで、デンジの前でヌードを晒してたね。」

「うん。」

「恥を知りなさい。」

「へ?」

「あなたはデンジを何だと思ってるの?性欲の塊?それこそ彼に対する侮辱だよ。いいですか。彼は小学校中学年レベルの性知識しかない・・・。クラスメイトの女の子の胸が大きくなってときめくレベルの性欲。セックスの知識なんてまるでない。でも何となく憧れている。その位の純真さの人物に、あなたはいきなりヌードを突きつけた・・・。性的虐待と言うんですよ。こういうのは。・・・あの時に殺しておけば良かったかな。」

「あっはははははは!!!」

「何がおかしいのかな?」

「いやいや、私達一応高校生レベルですよ。学校行ってないけど。セックスとか一番興味ある時期でしょう?それを否定するの?それこそ性的虐待だよ。子供はね、親の知らない所で童貞処女を捨てているんだよ。」

「五月蠅いですね、痴女の癖に。」

「私もセックス経験ないんだけどなー。」

「では、生まれつきの淫売だね。」

「本当に過保護だね。」

 

私は『IRIS OUT』という曲を流した。デンジ君の内面を表したという曲。

「他の人は、こういう風にデンジが見えるんだ・・・。支離滅裂というか何というか。」

「私もよく分からない・・・。でも、デンジ君は生きるのに必死で。全力で。それは伝わってくる。」

「まぁ、それはそうですね。・・・でも、彼は純粋な筈なのに・・・。すぐにハグを要求してくる飼い犬のような、もっと単純に好きという思いを持っていて・・・。」

「私もそう思っていた。思い込んでいた・・・。だから私達は、デンジ君の恋人になれなかったんですよ。」

 

テーマ2・レゼについて

「岸辺がどうでもいい事を言っていたね。ソ連のモルモットとか。それを聞いた他の人はあなたをこう思うだろうね。『なんて可哀想な子なんだ』と。同情されて嬉しいかな?」

「・・・事実だよ。私はソ連に作られた兵器。」

「まぁ私も同情するよ。ソ連ってね、枕元に拳銃が無いと眠れない愚かな独裁者が生み出した歪んだ国なんだよ。そこで生まれた兵器が歪まない筈がない。」

「でも、私には自由意志があった。あなたに支配されてからは、それすらなかった。」

「私はチェンソーマンの力を手に入れたら、あなた達にも最良の人生を提供したよ?何が欲しかったのかな?両親?友人?恋人?世界中からそれを欲している者を選りすぐって補完してあげるよ。」

「自由。」

「却下。それは幻想に過ぎない。」

「デンジ君。」

「却下。あなた達は互いを幸せに出来ない。」

「ほらね。あなたがしようとしていた管理・支配行為は、全人類を都会のネズミにしようとする事なんだよ。」

「私はそんなに危険かな?イソップ寓話の結末も田舎のネズミの方が良いみたいな終わり方で。その教訓は『幸せは人それぞれ』なのに。」

「その教訓を知ってて何故人類を支配しようとするんですか?あなたに支配されない事が幸せな人も大勢いる筈。」

「私に支配される事で、幸福にならない事はあり得ない。私に誤りは無いから。」

「傲慢だよ。」

「私は寓話の裏をかいた。『田舎のネズミは命の危険に慣れていないから、簡単に殺される』とね。この寓話の教訓は穴がありすぎるんだよ。貧しい食事をして命の危険がある事に気が付いていない田舎のネズミ。それが人類。そしてあなた。」

「私は命の危険から逃げる事が出来る。」

「逃げられなかったじゃないですか。誰も私からは逃げられない。世界からは。」

 

「あなたは、デンジとお祭りに行っていたね。そして花火を見た。楽しかったかな?」

「楽しかったよ。デンジ君とのデートは。・・・目的を忘れそうになるくらい。」

「デンジと何を話していたのかな?」

「・・・。」

「ほら、答えられない。デンジはね。曖昧なんだよ。どういう会話をすればいいか分からない。誰も考えつかない。

例えば、射的屋でのデンジの会話。『全部外しちまった。せめて消しゴムでも当てられたらあげられたのに。』こういう事すらデンジは言わない。彼は相手が『自分の事で真剣に射的をしてくれたんだ』と言う事に心引かれることすら気が付かない。

例えば、金魚屋でのデンジの会話。『1匹も取れなかった。まぁ食べれないから良いけど。』これすらあり得ない。デンジはその気になれば金魚でも食べられるから。

デンジはね、恋愛会話が出来ないんだよ。

私はね、デンジとのデートは、映画を見続けた。そうすれば、その後カフェで会話になっても映画の話で会話が出来る。」

「要は、あなたもデンジ君のこと理解してないって事じゃないですか。」

「・・・。」

「あなたはこう言った。『10本に1本くらいしか面白い映画には出会えない。でもその1本に人生を変えられたことがある』と。その映画って何ですか?」

「・・・嘘だよ?」

「え・・・。」

「私が映画ごときで人生が変わるわけ無いよ。そう言えば単純なデンジは私にときめく。予想通りに引っかかった。彼は心があるかどうか聞いた。私は彼の心臓の音を聞いた。また引っかかった。デンジの心臓はチェンソーマンの心。デンジじゃないのにね。デンジの心は少なくとも脳にあるのにね。あははは。面白い。私は嘘つきだよ。あなたに言った『友人の農作業の手伝い』。あれも嘘。私は人類を管理したら農作業は完全機械化するつもりだった。長年拘束され身体に支障が出る重労働。そんなものは機械に任せれば良いの。私は人類を導く為ならどんな嘘でもつくよ。」

「・・・あなたは、本当に可哀想な人だね。」

「はい?」

「何であなたは、家族映画で涙を流したの?」

「・・・。」

「あなたは家族を欲していたからじゃないの?あなたが世界中でやろうとした作り物の家族ごっこじゃない、本当の家族。あなたは私と同じで家族を知らない。悪魔だから。」

「・・・好きなように推測して良いよ。世界にはその位の度量はあるから。」

 

私は『JANE DOE』という曲を流した。私とデンジ君の関係を表したという曲。

「あなたは最後にデンジと別れた時に彼に追いかけてきて欲しかったのかな?」

「・・・うん。」

「その後のあなたの結末は死しかないのに?」

「何で邪魔するんですか・・・。私はデンジ君と一緒にいたかった。それだけなのに・・・。」

「あなたは最初にデンジに接触した時点で死という結末が確定していた。・・・世界があなた達の関係を許さない。」

「世界は不条理だよ・・・。理不尽すぎるよ・・・。酷すぎるよ・・・。」

マキマさんが脚を叩いた。

「レゼ、頭を乗せなさい。」

私はマキマさんに膝枕をして貰った。優しく頭を撫でられた。

「レゼ。世界はね、脆いんだよ。たった1人の狂った人間が核兵器を持っただけで壊れてしまう・・・。あなたとデンジの存在は核兵器と同じ・・・。間違いも過ちも許されない。側にいる事さえ許さない。・・・あなた達が力を持っていなければ、優しくしてあげられたのにね。」

そう言うマキマさんの目はとても優しげで。

「・・・世界はね、嫌われ者なんだよ。どんな創作作品でも、世界は愛や夢の敵で。世界が人類全体を守る為にどれだけ辛い思いをしているのか知らないで。どれだけ悲しい思いをしているか知らないで。1人2人の愛や夢の為に人類全体を危険に晒す事なんて出来るわけ無いじゃないですか。」

そう言うマキマさんの目はとても切なげで。

 

テーマ3・マキマについて

「あなたは知らないでしょうが、星新一というSF作家のショートショートでこんな話があります。ある男がいました。彼には耳にイヤホンがついています。いえ、この世界全ての人の耳にイヤホンがついています。イヤホンは無線で指示する機械と繋がっていて、彼が起きる時間、何を食べるか、誰と結婚するか、その他彼の人生全ての行動を指示し続けます。彼が疑問を持つと『私に間違いは無いから。完璧だから』と諭します。そしてある男が年を取ったときに、機械は安楽死を命じ男は死んで終わります。あなたは、この世界をどう思いますか?」

「ディストピア。というか、その機械、マキマさんそのものじゃないですか。」

「私にはね、この世界がディストピアと言う指摘が理解できないんだよ。男は機械によって不慮の事故による死にも、仕事でミスや不祥事を犯して降格や失職をする事も無い。順風満帆な人生。苦痛の無い死。何が不満なのかな?」

「何度も言うけど、自由が無いんだよ。」

「何でそんなに自由が大事なの?いい?君達の人生は危ない事で溢れている。すぐ死ぬ不条理で溢れてる。自由を代償にして死を回避できるなら自由を放棄するべきじゃないのかな?」

「散々自分の身代わりに他の人に死を押しつけてきた存在が、言うべき台詞じゃない。」

「私は死ぬわけにはいかないの。知ってる?昆虫から哺乳類に至るまで生物には必要になれば、子供を殺すメカニズムが本能で刻まれているんだよ。親が死ねば、子供は、群れは、全滅してしまうから。私はその範囲が日本全体だっただけ。私は人類を管理する目的があったから。」

「あなたが管理しなくても、今も世界は正常に回っている。」

「見た目だけの話だよ。今も悪魔で世界は溢れてる。デンジは今でも馬鹿な事をしていてね。戦争の悪魔だかなんだかいう女が絡んできてね。・・・私なら、あんな女すぐに排除出来るのに。他の悪魔も排除できるのに。」

「・・・今のマキマさんの事をなんて諺で言うか知ってる?『負け犬の遠吠え』。」

「同じ負け犬が言うべき台詞じゃない。・・・後、私の後継の少女がいるね。デンジに愛されて。・・・死ねば良いのに。」

 

「私はデンジとの関係をどこの段階で間違ったか考えた事があるんだ。・・・最初からだったよ。彼をペット扱いしていた時から間違えてた。」

「ようやく気がつき始めたんだね、人類全体をペットに見ていた人。」

「彼との最後の戦いの前に、彼は出来の悪い映画も残すべきと私を否定した。私の頭はその時に混乱した。『こんな事を言う子に育てた覚えはないのに』って。」

「それは『巣立ち』って言うんだよ、マキマさん。」

「私は悲しかったよ、彼との別離が。」

「子離れしなよ。」

「私は対等に愛した男がいなかった。肉体関係は支配する為の手段。やっと対等に愛し合える男が出来たと思ったのに・・・。」

「あなたは愛を知る女になる前に、母になってしまったんだね。」

「私には少女時代すらない。存在し始めた時からこんな感じ。」

「あなたは恋を知る少女になる前に、母にならざるを得なかったんだね。」

「私はデンジと恋をしているあなたに嫉妬していたと思うよ。」

「だから私を殺したの?」

「違う。あなたは危険すぎる存在だから。人類という子を守るために、あなたを排除し支配しなければならなかった。母の責務として。」

「その母を世界中が排除したがってたんだけどね。」

「何で?私の子供達への愛は本物なのに・・・。私は純粋に人類を愛していただけなのに・・・。」

「あなたは、愛の経験値が少なすぎる。恋を知らず、対等な愛を知らず、少女の過程も、女の過程も通過して、いきなり母になった人の愛が正常な筈が無いよ・・・。可哀想だけど。あまりにも可哀想だけど。」

 

「兵器にされたあなたには分かるよね。人類がいかに愚かであるか。」

「うん。私は人類が愚かでなければ、普通に恋する少女でいられた。」

「だから私は人類を支配しようとした。管理しようとした。導こうとした。」

「誰もが逆らったけどね。」

「何で・・・。そんなに滅びたいの?世界は危険な存在に満ちていて。人類自体が愚かな事を繰り返しているのに。導く存在が必要なのに。」

「残念だけど、あなたに人類は導けないよ。あまりに自分の為に人を殺しすぎた。」

「そうだね・・・。でもね、人類が危険な目に遭う度に、過ちを繰り返す度に、私の心は傷ついていったんだよ。例えば、スペイン風邪。1億人以上が死亡した。」

「マキマさん、あなたいつから存在していたの・・・?」

「COVID-19(コヴィッドナインティーン)。感染者数2億4,629万人以上。あれほど隔離や予防を訴えたでしょう?どうして言う事を聞いてくれないの・・・。」

「マキマさん、落ち着いて・・・。」

「第二次世界大戦、に代わる何か。WWIIが無かったことになっても結局人類は愚かな殺し合いをしてしまう・・・。どうして・・・。愚かな人類達の殺し合いで約5,354万人が死亡した。何でそんなに殺せるの・・・。銃の悪魔だって、私だって、こんな数、無理だよ・・・。」

私はマキマさんを抱きしめていた。マキマさんも私を抱いた。

私がマキマさんを抱いた印象。・・・決壊寸前のダム。

今にも壊れそうで中身を吐き出したくて仕方がないのに、吐き出せば大勢の子供が死んでしまうから吐き出せなくて。必死に必死に耐えていて。

そんな人類を支配し管理しようとし、人類から悪として恐れられた母の背中はあまりにか細くて、儚く感じた。

 

テーマ4・失恋した少女と失恋した母について

人は失敗すると「ああすれば良かったのかな?」って反省するよね?

私達もね。反省会になったんだ。

「もし、私が武器人間じゃなかったらデンジ君と恋人になれたのかな?」

「そもそも出会えないよ?あなたソ連の人だよ。ネットで出会う確率だって天文学的な確率・・・。私がデンジに初めて会った時、彼の唇を奪ったり、胸を揉ませてあげたり、セックスをさせてあげたら恋人になれたのかな?」

「なれないよ?デンジ君は性に対してはピュアで、それは神聖な行為だと思っているから。・・・あなたが一番知っているでしょ?・・・私がデンジ君の舌を噛み千切らなかったら、もっと一緒にいられたのかな?」

「無理だよ。何故あの時にあなたが彼の舌を噛み千切ったか・・・。それは悪魔を宿している者の本能。デンジに恋する感情が溢れた時点であなたは『殺したい』という本能を抑える限界を超えた・・・。何故か?恋愛という本能と殺意という本能は独占欲というカテゴリに当てはまれば同じモノだから。残酷なシステムだよね。・・・デンジにチェンソーマンの力が無かったら私は彼に恋していたのかな?」

「ありえないよ。そうしたら、あなたはとっくにデンジ君を支配していた。あなたがさっき言ったように恋愛という本能と殺意という本能は同じモノ。あなたはデンジ君が銃の悪魔に勝てるまでチェンソーマンの力を高める事を待っていた。支配という殺意に似た感情を抑えながら。そうしている内にあなたの中で上っ面だったデンジ君に対する恋愛感情は本物になっていったんだね。そして銃の悪魔が現れた時に、あなたの宿願が来た時に、あなたの恋愛本能と支配本能は限界を超えた。デンジ君の大切な者を奪いまくって。デンジ君の心を壊しまくって支配して。デンジ君と出会う頃のあなたと最後のあなたは、私は別人に見える。・・・どっちが本当のあなただったのかな?」

「・・・わからないよ。」

「だろうね。ちなみに、最後のあなたはボムの私そっくりだった。力に酔っていた。・・・私はデンジ君と出会う頃のあなたが本物のあなただと思うよ。」

「じゃあ私のデンジに対する恋愛感情は上っ面じゃないですか・・・。私は恋愛する事すら出来ないの?」

「・・・悲しいけれど出来ないよ。あなたにも映画で泣く程度の人の心はあるのにね。それを完全に塗りつぶしてしまうくらい支配の力は強大だった。」

「そうしたら私は支配の力なんて要らなかった・・・。世界中の人々から嫌われて。憎まれて。たった1人の女にだよ?私は世界そのものだと思ってた。・・・違った。世界の敵だった。・・・私の愛は本物だと思っていたのに・・・。」

「あなたは力がありすぎたんだよ。私よりも遙かに。・・・自分が分からなくなるくらい。」

「デンジなら私を救えたのかな?」

「救えない。彼は殺す事しか出来ない。」

「私は生まれ変わりたいよ。やり直したいよ。1人の普通の女として生まれたかったよ。・・・そうか、自由が大切ってそういう普通の女の生き方が出来ることだったんだね・・・。自由が欲しかった・・・。」

「私もやり直したかった。普通の少女でいたかった。・・・人類が、国が、世界がそれを許さなかった。」

「だから私は人類を」

「もういいよ、マキマさん・・・。もうどうにもならないんだよ。最初から誰にもどうする事も出来なかったんだよ。」

 

田舎のネズミと都会のネズミに例えるとね?『田舎のネズミは、力は無いけど、デンジ君と愛し合えた。都会のネズミは、世界を思い通りに出来る力があるけど、デンジ君と愛し合えない。』そして、この寓話の意地悪な所は『選べない』。私達は天使の子の様に選べなかったんだ。

だから私達は泣いたんだ。

抱き合って泣いたんだ。

失恋したから泣いたんだ。

少女と母は、悲しくて切なくて、泣き続けたんだ。

それでも列車は進んでいくんだ。

戻る事を許さずに。やり直す事を許さずに。生まれ変わる事を許さずに。

泣き続ける私達を乗せて、どこまでも走って行くんだよ。


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