この小説は、Catalyst Game Labsから発売されているShadowrun Anarchyをプレイした時の小説風リプレイです。
 世界観などは、大体シャドウラン5版と同じです。
 今回遊んだのは公式シナリオ『ASSASSIN’S GREED』です。
 ネタバレを気になさる方は読まないほうがいいかと思います。

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アサシンズグリード

 

 207X年のシアトルは、いつものように雨にまみれていた。

 メガシティの闇が街灯のネオンを飲み込み、ダウンタウンの路地裏に潜む影たちは、今日も獲物を狙っている。

 インターナショナル・ディストリクトの北西部、夜の影に包まれたバー『クラブ・ペナンブラ』は、そんな影の住人たちの溜まり場だ。

 トリデオのレーザーを反射する、月面のような床。

 このレトロな内装のクラブを、大音量の人気ダンス・ミュージックが満たしている。

 曲に合わせて熱狂的に踊っている、ダンスフロアの人々の波の中を、作りのいいコート姿のエルフの男が縫うように進む。

 細身で長身な男の動きは驚くほどなめらかで、一切足を止めないまま進み終えると、込み入った話をするために設えてある場所にたどり着いた。

 薄暗がりの中に隠れている座席のひとつに座ると、先に座っていたエルフの女性に話しかける。

 

 「悪いな、洗濯した一張羅をどこにやったか探すのに手間どったわ」

 

 人を食ったような態度を見せるエルフの男、ザッパーは一言詫びる。

 クラブ・ペナンブラは老舗だけあって、みすぼらしい格好で来ると追い返されかねない。

 そのために羽織ってきた上物のコートに隠れて、鞘に納まった日本刀の柄がわずかに見えた。

 ザッパーは、灰色の髪を後ろでまとめたエルフの女性──マリー・グレーと名乗っているヒットマン、の顔を眺めるなり、さらに言葉を続けた。

 

 「随分顔色が悪いな、それに血の匂いか?」

 「ああ……腹に大穴が空いてね。傷はもう塞いだから、今すぐ死ぬようなことはないよ」

 

 それでもまだ痛みが強いが、麻酔の類を使いたくない事情があるのかとザッパーが考えていると、マリーが囁くように言った。

 

 「ザッパー、仕事だよ。内容は私の護衛兼、復讐の手伝い。報酬は五カルマ。敵は中級企業のジョンソン。私の依頼人だった男だ」

 「え? もしかしてお前、殺し屋の分際で依頼主に食われかけたってか?」

 

 依頼人の裏切り。

 安物のシャドウランものトリッドで、何百回と繰り返されてるありふれた話だ。

 それだけにランナーは警戒するし、ジョンソンは裏切らないことを約束する。

 ザッパーの言葉は、決してマリーを馬鹿にするものではない。

 むしろマリーの、ヒットマンとしての能力を信用しているからこそ、思わずこぼれた驚きに染まっている。

 

 「ああ、油断したよ…… 本当に安い仕事だったからね。まさかそれすらケチられるとは思わなかった」

 

 マリーは苦笑いの表情でくすくす笑う。

 

 「オーケイ、それでどっから始めればいいんで?」

 「私のセーフハウスまで連れて行って欲しい。そこで武器を回収したい」

 「まずは運び屋ね。それではお足下にお気を付け下さいませ、お嬢様」

 

 先に立ち上がったザッパーは、執事のようにお辞儀をしてみせた。

 

 

 ザッパーの運転するフォード・アメリカーから降りると、二人は入り組んだ狭い路地を歩く。

 暫くしてたどり着いた、みすぼらしい廃墟のようなアパート。

 その中に入ると、ザッパーはマリーを肩に担ぎ、階段を上る。

 足音がコンクリートに響き、心臓の鼓動が耳に鳴る。

 

 「重てえな、お前。ダイエットしろよ、エルフのくせに」

 「半分はサイバーウェアだよ。でもその前に、女性に向かって重いは酷いね」

 

 ぶつくさ言いながら目当ての部屋の前に来るなり、ザッパーは扉を蹴り開けた。

 

 「ようやく着いたぜ。ここからは自分で歩けよ、お嬢さん」

 「ありがとう、おかげで、少し休めたよ」

 

 マリーは薄く笑い、壁に近づいて何かを操作した。

 するとそれまで壁だったところが割れ、入れるようになった。

 

 「まずは、中に入って」

 

 セーフハウスはボロアパートの一室を改造した狭い部屋だった。

 マリーは素早く武器ロッカーを開け、スナイパーライフルを引っ張り出した。

 黒光りする銃身に、精密なスコープが冷たく輝く。

 レンジャーアームズSM-5と呼ばれる銃だ。

 続いて、彼女は仕舞ってあったデータチップを取り出し、中身をコムリンクへコピーする。

 依頼の証拠――あのジョンソンが彼女に下した殺しの命令が、そこに刻まれているとマリーは説明した。

 

 「これで十分。次は奴の屋敷へ向うよ」

 「報酬の取り立ての時間か、だがその前に……」

 

 言葉はそこで途切れた。

 外から駆けてくる複数人の足音が響く。

 

 「ここに脱出口がある! そこから逃げるよ!」

 「こっちにケガ人がいなかったらそれもいいが…… 少し、時間稼ぎをする。先に逃げろ」

 

 セーフハウスの床に空いている脱出口からマリーを逃がす。

 ザッパーは息を吸い込み、低いマントラを呟く――土の精霊を呼び寄せる古い呪い。

 空気が重く淀み、床のコンクリートが震え出す。

 細かい粒子が渦を巻き、土埃が舞い上がる。

 

 「我が前に立ち、我が敵を蹴散らせ──『金剛』!」

 

 突如として現れる、岩そのものの巨体。

 身長二メートルを超え、拳は大地を砕く巨槌。

 土の精霊が出現するのとほぼ同時に、ドアの向こうからグレネードが放たれる。

 

 衝撃と爆発。

 

 アパートの一室が煙で満たされる。

 金剛と名付けられた土の精霊が壁となり、爆発からザッパーを守っていた。

 先頭の兵士が土の精霊に気づき、アレス・アルファをフルオートで叩き込む。

 弾丸が精霊の岩肌に当たるが、火花を散らすだけで跳ね返る。

 金剛の巨腕が振り下ろされ、先頭の兵士の肩を直撃。

 骨の砕ける音が響き、男の体が壁にめり込み、血しぶきが飛び散る。

 その隙にザッパーが飛び出し、日本刀を抜く。

 刃は空気を裂き、銀色の閃光となって、二番手にいた兵士の腕を斬り飛ばす。

 

 「金剛、奴らをぶっ潰せ(ZAP)!」

 

 ザッパーの叫びが精霊を駆り立てる。

 金剛は前進し、二番手の兵士の胸を拳で貫く。

 肋骨が折れ、男は絶叫を上げて倒れる。

 三番手の兵士がショットガンを構え、散弾を浴びせるが、金剛は無傷。

 ザッパーがその隙を突き、刀を横薙ぎに振るう。

 刃がアーマーの隙間を抉り、兵士の首筋を裂く。

 血の噴水が上がり、男は喉を押さえて崩れ落ちる。

 残りの兵士三人がパニックに陥り、後退しようとする。

 そこに金剛が突進を決め、一人を掴んで壁に叩きつける。

 残った二人はその光景を目にし、逃げ出した。

 

 「もういいぞ金剛、ありがとな」

 

 土の精霊を戻し、ザッパーも脱出口からその場を後にする。

 脱出口の先にあった隠しガレージで、マリーがユーロカー・ウェストウィンドのエンジンをかけて待っていた。 

 急いで乗り込むや、狭いスポーツカーの車内で、ザッパーはシートに沈み、刀を拭う。

 

 「待たずに先に逃げてるかと心配したぜ」

 「裏切るのも裏切られるのも、暫くは遠慮するよ」

 

 ザッパーの軽口に、マリーはハンドルを握りしめ、くすくすと笑みを浮かべる。

 車は夜のハイウェイに溶け込み、追手を振り切った。

 

 

 ジョンソンの屋敷は、シアトルの郊外に聳えていた。

 企業絡みの豪邸、プールサイドのテラスでジョンソンはくつろいでいる。

 本名はヴィクター・ロス。

 脂ぎった人間の男。

 訓練された兵士たちに囲まれ、シャンパンを傾ける。

 

 「あの女殺し屋、片付いたか? 支払い? ふん、影の連中に金を払っても意味がないわ」

 

 兵士の一人がヴィクターに何か報告を試みるが、突然――頭部に弾丸が貫通する。

 スナイパーの一撃。

 レンジャーアームズSM-5から放たれた精密弾がヘルメットを粉砕し、脳天を吹き飛ばす。

 プールサイドが血しぶきに染まる。

 唖然としているうちに、もう一人倒れた。

 ヴィクターの顔が青ざめる。

 

 「何だ!? 誰だ、撃つな!」

 

 周囲の兵士がヴィクターを守るために周囲を囲み、狙撃地点を見極めようと試みるも、さらにもう一人、今度は胸を撃ち抜かれ、肺に穴が開き、血を吐いて倒れる。

 四番目は肩を撃たれ、ライフルを落としてうずくまるが、即座に次弾が喉を貫く。

 ここでようやく狙撃地点がわかり、兵士たちが動き始める。

 兵士たちは物陰に隠れて応戦を試みるが、マリーの射撃は容赦ない。

 また一人、今度は額を貫かれる。

 ヴィクターはプールに飛び込み、這うように逃げようとする。

 

 「助けろ! 誰でもいい! 俺を助けろ!」

 

 その時、風が爆発的に渦巻く。

 狙撃地点と別方向から、嵐が吹き荒れる。

 

 「ブッ飛ばせ(ZAP)、『野分』!」

 

 荒れ狂う風の精霊が、横合いから兵士たちを薙ぎ払う。

 風の精霊に吹き飛ばされたところに、さらにマリーの狙撃が襲いかかる。

 そこにザッパーが突撃、刀を上段から振り下ろす。

 刃が肩から胸までを斬り裂き、骨が露わになる。

 血が噴き、ザッパーの視界を赤く染める。

 兵士の一人が接近戦を挑み、ナイフを抜いて肉薄する。

 刃がザッパーの腕をかすめ、皮膚が裂け、血が滴る。

 痛みが響くが、刀の柄で喉を突く。

 気管が潰れ、男は泡を吹いて倒れる。。

 次々と兵士が仕留められ、動くものがほぼいなくなった頃、ヴィクターはようやくプールから這い上がり、震える手で拳銃を構える。

 

 「お前は……一体何者だ!」

 「まだわかってねえのかよ、致命的に察しが悪いヤツだな。お前が支払いをケチった、あの殺し屋の代理の取立人だよ」

 

 ザッパーは片手でコムリンクを操作しながら答える。

 映像ファイルが再生され、周囲にヴィクターの声が響く――「ターゲットを消せ。報酬は後で払う」。

 

 「ふざけるな! 殺し屋など、ただゴミだ! 俺が正当なビジネスで得た金を、どうして支払わなきゃならん!」

 

 ヴィクターは激昂して叫び続ける。

 

 「お前もだ、エルフのチンピラ! 暴力しか知らない分際で、えらそうな能書きを垂れるな! 個の暴力なぞ、企業の力の前では無力だ! いずれ強者に食われるか……」

 「うるせえよ、ジジイ」

 

 ザッパーの刀が閃き、ヴィクターの胸を貫く。

 刃が心臓を抉り、血がプールに滴る。

 ヴィクターの目が見開き、息が止まる。

 

 「あっ、やっち(ZAP)まった…… まあいいか、俺の仕事は口で喋ることじゃねえ」

 

 野分と呼んでいた風の精霊を戻すと、ザッパーはコムリンクを操作してマリーに話しかける。

 

 「マリー、片付いたぜ。あの野郎、報酬払わねえってよ。仕方ねえから、息の根止めた」

 

 ライフルのスコープ越しにこちらを見ていただろうマリーは、疲れた溜息を漏らす。

 

 「依頼人殺しは評判に傷がつくんだけど……でも、今回は仕方ないね。お疲れ様」

 「おう。ああそうそう、俺への報酬は忘れるなよ?」

 「わかってるよ。全く、君に頼むといつもこんな感じだね、『大雑把のザッパーさん』」

 

 マリーが最後の部分だけ日本語で言うと、コムリンクの通信が途切れた。

 ザッパーは刀を鞘に収め、夜空を見上げる。

 疲労で体が重いが、急いでここを離れなければなるまい。

 

 「大雑把? ふん、褒め言葉だぜ」

 




 Shadowrun Anarchyは要するに簡単なルールでナラティブに遊ぶシャドウランですが、買ったばかりの頃は正直よくわからなくて積んでました。
 しかしAnarchyの次作が出るということなので、改めて読んで遊んでみたところ、簡単ルールでシャドウランが遊べるので、こりゃなかなかいいんじゃない?という評価に変わりました。

 中でも好きなのは、新円(お金)とカルマ(経験値)をカルマに一本化しているところです。
 当小説の中でも、報酬の単位がカルマなことに驚かれた人がいるかもしれませんが、便利です。

 次に好きなのは、特殊で高額な装備や、魔法などの特殊能力、それらを全てひっくるめて、「シャドウアンプ」と呼ばれる能力でまとめられているところです。
 魔法使いの呪文も、デッカーのデッキも、サムライのサイバーウェアも、アデプトパワーも、クリッター能力も、全部シャドウアンプです。
 シャドウアンプが習得できる数には制限があるので、欲張れないところもいいですね。

 シャドウランは好きだけど色々と難しいと感じる人におすすめできるゲームです。

※おまけのキャラステータス
■ザッパー(ZAPPER)
種族:エルフ
覚醒者
■能力値
筋力:5
敏捷:8
意志:6
論理:2
魅力:2
エッジ:1
■気質
・素早くやっつけろ(ZAP)
・適材適所、面倒事は他人に任せよう
・難しく考えるな、大雑把にいけ
・立ち止まるな、動いてから考えろ
■技能
近接武器(専門化:刀剣+2):5
召霊術:5
■シャドウアンプ
強化反射神経:R3
能力値ブースト【敏捷】:R3
■素質
卓越した能力値【敏捷】
ブレードマスター
戦闘中毒
■装備

アーマージャケット
■ギア
偽造SINと偽造免許(武器)
コムリンク(トランシスアヴァロン)
眼鏡(画像リンク、熱映像、拡大視覚)
トラウマパッチ
■コンタクト
ルゥ・シーフー(人間?のミスティックアデプト、師匠)
ハットリ(エルフのタリスモンガー、刀鍛冶)

 GM「金剛とか野分って何? 見分けがついてるとか?」
 ザッパー「俺が土の精霊を呼んだらとにかくそいつを金剛って呼ぶ。見分けがついてるわけじゃないよ適当」

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