女性優位世界の【変身】男魔術師 in 崖っぷち戦線   作:回帰

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5話

 

 さすがに今ので魔人を倒せてるわけないし、早く次の攻撃に備えなくちゃ。

 

 よいしょ、と。

 

「――お、起き上がった。というか、後から来たこれも……魔人、よね?」

 

 まだみんなシンとしてる中、さっきまで捕えられてたカレンさんが疑問を口にする。

 

 そしてそれを皮切りに。

 

 徐々に、周囲にざわめきが広がっていく。

 

「ちょっと変わった姿だけど……ベースはほぼ人間の形、です。それにこの魔力! 魔人が増えちゃいましたぁ……っ!」

 

「しかも角まで生えてる。すごく強そう」

 

 この声、アイリさんとサヤ隊長だ。……あそこか。よかった、二人も無事だった。

 

 ただ、他の兵たちはもう何人もやられちゃってるみたい……。僕に向けられるのも、大半は大きな恐怖の眼差しだ。

 

「……でもこいつ。いま、たしかに私のことを助けた、のよね? 仲間割れ……?」

 

 僕を見る目が恐怖じゃない数少ない人物――カレンさんが怪訝そうにつぶやいた。

 

 よかった、冷静に見てくれて。仲間に襲い掛かられたら大変だから、カレンさんみたいな人に統制をとってもらわなきゃ。

 

 そのためには、説明を。

 

(フーガの名前は出したらダメね。あと、完全な味方とも言わない方がいいかも)

 

 名前はそうだろうけど、味方って言うのもダメなの?

 

(もしそれを信じられて、司令部までついてこいとか言われても困るでしょ。そこまではないにしても、便利なやつとは思われない方がいいに決まってる)

 

 うーん、そんなものかあ。

 

(だから、こう。さっきの女兵士にしたみたいな親しみやすい感じもやめて。わたしの力をふるうに相応しく、もっと威風堂々とさ)

 

 そういうの苦手なんだけどな。でも、まあ、レヴィが言うなら。

 

 威風堂々。つまりこう、強者っぽい感じでいけばいいのかな、なんて。

 

 レヴィの言う振る舞いを頭の中でイメージしていると。

 

「――そこの、あなた。青いあなたよ」

 

「……青い。僕?」

 

「会話が通じそうで安心したわ」

 

 声をかけてきたのはカレンさん。中身が僕だってこともバレてなさそう。

 

 ……よし、じゃあ僕は強者っぽく返事を。えーっと。

 

「――僕になにか用かな? 可愛いお嬢さん」

 

(なんで口説いてるの……ッ!?)

 

 え? だって。なんかこう、余裕のある感じが上位者っぽくない?

 

 ぽくないかなあ。まあ、もうこのキャラでいっちゃったから突き通そう。

 

「可愛いお嬢さん、って。ふざけてるのか知らないけど……。あ、あなたはその、私たちの――敵なの?」

 

「なるほど、そうだよね。気になるよね、僕魔人だし」

 

 うーん、でもどうしよう。レヴィには完全に味方ってスタンスは取らない方がとアドバイスしてもらったし。

 

 よし。じゃあ――

 

「――敵ではないよ。いま蹴飛ばした魔人も、仲間じゃない」

 

「っじゃあ」

 

「でも。君たちの味方、っていうわけでもないんだ。ごめんね」

 

「ッ!」

 

「ああ、ちょっと待って、そんなに身構える必要はないよ。たしかに味方ではないけど、さっき言った通り敵でもないから。僕の目的はそこの魔人を倒すことだし、この場においてはどっちかって言うと――」

 

 そう話をしていたところで。吹き飛ばして転がっていた有翼の魔人から、強力な魔力が立ち上った。

 

 さらに、起き上がり、目にも止まらぬ速さで突っ込んで来て――

 

「よくもッ! 男だからって甘く見てたら調子に乗って!」

 

「――人間の味方寄り、だからね」

 

 あぶなっ。鳥の足で強烈な飛び蹴りをかまされたけど、顔の前で足首キャッチ! なんとか余裕ある感じに見せられたかな!?

 

(まあこれくらいなら及第点、かな。でもさっきの、余計な口説きはいらないから。……アレ本心じゃないんだよね?)

 

 本心じゃないかと言われると……ノーコメントで! はいと言うと、カレンさん貶すことになっちゃうからね。

 

(……)

 

 あ、すごい不満げ。なんでかな!?

 

 と、脳内で会話してると。

 

「――こ、の! アタイの足を、放せ!」

 

「わっ。すごい魔力」

 

「【強化】!」

 

 捕まってジタバタしてた魔人が、身体強化の魔術で強引に逃れようとする……んだけど。

 

 すごい……。この体、片手で強化した魔人を抑え込めるんだけど。

 

(ふん。この姿はわたしの力がベースなんだから当然。この程度の下位魔人なんて敵じゃないの)

 

「この、はな、せって! 何この馬鹿力!? 角持ちって言っても男のくせにッ」

 

「……うーん。どうも、君の力じゃ僕には勝てないみたいなんだけど……どうかな。ここは一つ、諦めてそっちの陣地に帰る気はない? それなら怪我しなくてすむよ?」

 

(うわっ。わたしの力だから他人事っぽい言い方になってるのは分かるけど、それ相手からしたら……)

 

「――な、舐めてるのか? この、『暴風の魔人』たるアタイをッ? 貧弱な男風情が!?」

 

「ええっ。そんな、怒らせるつもりはなかったんだけど!」

 

(ナチュラルな煽り。一番腹立つやつじゃん)

 

「誤解だって~……」

 

「もう、今さら謝ったって遅いからねッ! 同じ魔人だからって容赦なんかしない!」

 

(ほら、もう無理だって、やるしかないよ。でもこの方が良かったかもね、手っ取り早くて)

 

 たしかに戦うつもりで来てはいたけど。戦闘を回避できるならそれに越したことはないと思ってたのになあ。

 

「【風】!」

 

「うわっ! すごい風っとっと……」

 

 しまった。暴風にたまらず手を放しちゃった。

 

「――ッもう、許さないよ! ボコボコにして連れ帰って、慰み者にしてやるッ!」

 

(こいつ……。フーガを、慰み者? 身の程を知れ……ッ)

 

 まあまあ。たしかにちょっと……刺激が強い言葉だったけど、彼女に好き勝手させるつもりはないからさ。

 

 だってほら。レヴィの力が、僕を守ってくれるでしょう?

 

(ッ。それは、まあ、……そうだけど)

 

 だよね! だったらほら、問題ない。

 

 それじゃあ後は――

 

「――みんな、ちょっと距離取っててね。今から僕ら戦わなくちゃだから。危なくないように、ね」

 

 動きを止めていた周囲の連合軍兵士と魔族たち――特に一番近いカレンさんへそう告げる。

 

 カレンさんはちょっとどぎまぎした様子で、素直に頷いてくれた。

 

「っあなたが、何者かは分からないけれど……この場は従うしかないものね」

 

 そんな、僕が脅したみたいな。結果的に言うこと聞いてくれるならいいけど。

 

 よし、それじゃあ。

 

「――アハハッ! この間抜けめ! 考えなしに、魔力を溜める時間を与えてくれるなんてね! 初撃で終わらせてあげるッ」

 

「おお、いつの間に。すごい魔力……」

 

「くらいな、アタイの風を! ――嵐刃風竜(テンペスト)……ッ!」

 

 肌にびりびり感じるほどの魔力に驚いていると。

 

 翼の魔人が掲げた両手から放ったのは――渦を巻く暴風だ。

 

 横に伸びる真空刃でできた竜巻って感じ。明らかに必殺技の類じゃない?

 

 しかも、すごいのはその規模。竜巻の幅が……ええと、たぶん人間が五十人並んでも飲み込めるほどだよ。

 

 かわしたら周りの兵士に被害が出るし、そもそも普通の人なら大きすぎて回避も間に合わない。

 

「これが魔人、なんだね……!」

 

 こんな技をたった一人、それなりの時間をかけるだけで出せるなら。

 

 ……そりゃ、人類の戦線は崩壊しちゃうよね。こんな強力な単独戦力が何人もいたら、戦術も戦略もあったものじゃないや。

 

「さあさあさあッ! 軟弱な男は痛い目合って、大人しくアタイに飼われてな――!」

 

 でも。

 

 あんまり実感ないんだけど、いまや僕もレヴィのおかげでそれと同じ存在になってる。

 

 だったら、僕がしなくちゃいけないことは一つ――。

 

 青い外殻に覆われた拳を、ギチリと握る。

 

(うん。それでいい……)

 

 さっきのあの魔人みたいにじっくり魔力を溜めなくたっていい。このレヴィの体が、何をするのが最適なのかある程度教えてくれるから。

 

(――やっちゃえ。フーガ)

 

 

 

「【強化】。――殴るだけで、いけるよね?」

 

 

 

 空間を軋ませるような剛力で握って。振り抜いたその拳が。その拳圧が。

 

 ――迫る竜巻を、跡形もなくかき消した。

 

 

 

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