【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
廻星編からはLiSAさんの『残酷な夜に輝け』をテーマ曲と設定します。各節で脳内再生お願いします。
ひとつ前の更新分になりますが、落陽編の"おまけ"はご覧いただけたでしょうか? もしまだの方がおられましたら、是非先にご覧ください。
https://syosetu.org/novel/391078/100.html
長く続いた五条悟との邂逅……いよいよ最終編です。
どうぞ最後までお楽しみください。
101廻星編 1・2:澱(よど)んだ世界の破壊者、宿命の王と星の巡りが導く"最強"の終着
●プロローグ
そよかの病室は個室だった。
白鷺大学附属医療棟、その中でも限られた者しか使えない特別病室。
扉の外には黒服が二人。
中には秘書と護衛が一人。
その中心に、サーミルが立っている。
「回復されたと聞いて、安心しました」
柔らかな微笑み。
視線はそよかに向けられているが、
その意識は明らかに空間全体を見ていた。
(あー……相変わらずだな)
五条悟は内心でそう思う。
敵意も焦りもない。
だからこそ油断ならないタイプ。
「助かって良かった、とは本心です。ただ──」
サーミルは間を取り、
まるで天気の話を続けるかのように言葉を重ねた。
「ドクター・ゼロの関与があった以上、
検査という形で安全を確認できれば、国連としても安心できる」
“管理下”とも“預かる”とも言わない。
選択肢を提示しているようで、実質は圧。
悟はそよかの頭に手を置く。
撫でる。
反応はいつも通り。
触れられて、ほんの少し緩む呼吸。
「そよかはそよかだから」
いつもの調子で、軽く。
「瞬きの癖も、声のトーンも変わってないし」
指先でうなじのあたりをそっと撫でる。
「撫でられて気持ちいい場所もそのまま……」
そよかにキッと視線を向けられて、悟は目を細める。
「見えないとこにあったほくろの位置までしーっかり七海と確認済み」
秘書が一瞬だけ言葉を失う。
だがサーミルは、微笑みを崩さない。
「……あなたの六眼は、やはり噂以上ですね」
感心とも、牽制とも取れる言い方。
(ほら来た。褒めて距離詰めるやつ)
悟は肩をすくめる。
「俺の六眼以上に精密な検査なんて、ないよ」
言い切る。
でも声は柔らかい。
「あとさ」
一歩近づく。
護衛が反応するより先に、悟は続けた。
「今回良くできた捏造映像で貶められてさー。あれって、相当なパトロンがいないと出来ないよね?」
にこやかに、まるで世間話。
「国連って、そういう“技術提供”が得意な人、いたりするんでしょ?」
沈黙。
──だが、サーミルは焦らない。
「疑われる立場というのは、時に不便です。悟も大変だったでしょう」
静かに息を吐き、
悟を真正面から見る。
「ただ、私は“結果”だけを見ています。
今、彼女が彼女であるなら……」
小さく肩をすくめた。
「それで構いません」
(出た出た。逃げ道作りながら引くやつ)
悟は心の中で苦笑する。
「次に何かあったら、また話しましょう」
サーミルはそう言って、
最初から一歩引くつもりだったかのように踵を返した。
悟はその背中を見送りながら、
小さく息を吐く。
(……ほんと、相変わらず食えない)
少ししゃがんで、そよかの手を握る。
「大丈夫。ああいう奴は、全部分かってる顔して、
肝心なとこは踏み込んでこないから」
それは、“信頼”ではなく、
“警戒の仕方を知っている者”への評価だった。
いつもよりほんの少し力を込められた悟の手は、そよかにとって普段とは違う熱を感じさせた。
●1
結界の内側で、呪力が濁流のように渦巻いていた。
荒れ狂っているのに、どこか“押さえつけられている”ような気配がある。
両面宿儺は、岩のように腰を下ろしていた。
裂けた皮膚は再生しきらず、血は止まらない。
だが、その表情に焦りはない。
──本来なら、気にも留めぬはずの痛みだ。
「……肉体への負荷が大きすぎます」
傍らで裏梅が告げる。
宿儺は嗤った。
「器は壊れかけの状態ほど、よく馴染むものだ」
血を拭うでもなく、指先を動かす。
呪力が応じ、空気が軋んだ。
「ひどく退屈だな」
裏梅は口を閉ざす。
この男に“安全”という概念は存在しない。
宿儺は視線を上げ、結界の向こうを“見た”。
「あれがいるからだ」
──五条悟。六眼と無下限呪術の使い手。
かつて出会った、理の外側に守られた者たち。
それらと同じ意志を、瞳に宿していた。
だからこそ──認めん。
淡々とした断定だった。
憎悪でも、怒りでもない。
「──あの目障りな双眸は、世界を止める」
裏梅の指先が、僅かに震える。
「秩序という名の檻を作り、人間を守ることで、思考を奪う。淘汰も、選別も、進化も起こらん」
宿儺は唇を歪めた。
「……泥のように澱(よど)んだ時間だ」
空気が重く沈む。
「俺は世界を救わん──壊す」
言葉と同時に、呪力が一段、膨れ上がる。
「血を流させ、恐怖を撒き、選ばせる。
跪くか、抗うか」
「どちらでもいい。その選択だけを許そう」
宿儺は、ふと裏梅に視線を向けた。
「──裏梅」
「貴様、俺を天秤にかけたな」
問いではなかった。
裏梅は、否定しない。
「……全ては宿儺様のため、ただ利用しただけです」
宿儺は、表情を変えずに一言。
「構わん」
立ち上がる。
血が滴り、地面に落ちる音がやけに大きく響いた。
「五条悟がいる限り、人間は“考えなくて済む”」
その目が、冷たく細められる。
「ゆえに──殺す」
それは宣言だった。
「世界を再び、戦乱へ戻す。
星が廻る、その中心に、五条悟の首を据える」
宿儺が立ち上がると、再生の追いつかない肉体から呪力が黒い火花となって散った。その激痛すら、彼にとっては『退屈を紛らわす刺激』に過ぎない。
裏梅は、静かに膝をついた。
「御意」
宿儺は嗤う。
「さあ、始めよう」
呪力が、結界を揺らした。
●2
伏黒恵が呪術学園高等部校舎の資料室で、ある資料を広げていたとき、
控えめにドアがノックされ小さく扉が開いた。
「恵ー?」
聞き慣れた声に顔を上げる。
「津美紀……?」
津美紀は、いつもと変わらない様子で立っていた。
「あ、やっぱりここにいた。ユリ先生がここにいるって言ってたから」
呪術学園の制服姿で何かを後ろ手に持っている。
「どうした?」
恵は何か禍々しい呪力を感じていた。
「ちょっと見せたいものがあって」
そう言って、後ろ手に持っていたものを前に差し出す。
ぬいぐるみだった。布製の、小さな人型。
伏黒津美紀をデフォルメして小さくしたような……二頭身で浴衣っぽい着物をきている。
恵が眉をひそめた、その瞬間。
「……相変わらず、ぱっとしない顔してるわね」
ぬいぐるみが、喋った。
恵の思考が、一拍遅れる。
見た目は量産されていそうな安っぽいぬいぐるみ。だが、そこから発せられるのは、空間を圧するほどの尊大で、艶やかな女の声だった。
「……は?」
「その表情。少しだけ愉快ね。状況を理解してない男の顔」
ぬいぐるみは、ふふ、と笑うように首を傾けた。
呪力反応。
微弱だが、紛れもない──。
「もしかして、これが津美紀に憑いてたやつか……?」
「そうなの! ユリ先生が祓ってくれたんだよ。万(よろず)って言うんだって」
津美紀が名を呼ぶと、ぬいぐるみは鼻で笑った。
「津美紀、違うわ! あの女が私を祓ったわけじゃない! 私が選んだの!」
恵は焦ったように津美紀を見る。
「津美紀、そいつは──」
「大丈夫よ」
津美紀は、首を振った。
迷いも恐怖もない。
「もう、私の中にはいないから」
その言い方が、やけに静かだった。
「……説明してくれ」
恵の低い声に、万は楽しそうに応じる。
「簡単よ。私は“意味がなくなった場所”から降りただけ」
「意味……?」
「津美紀の中にいるべき理由がなくなったの」
ぬいぐるみの目が、少し細くなる。
「だったら居座るのも変でしょう」
津美紀が困ったように笑う。
「いきなりこの状態になったから、私もびっくりしたけどね」
「でも、津美紀も選んだわ」
万はさらりと言った。
「“意味がある方”を」
恵の胸に、嫌な感触が広がる。
「……津美紀に、何をした」
万は肩をすくめる仕草をした。
「何も。
ただ──縛りをひとつ、置いてきただけ」
空気が張り詰める。
「縛り──だと?」
「ええ」
万は、あっけらかんと続けた。
「本来の私の器が、意味もなく壊れないように」
恵が驚いたように目を瞬く。
「……そんな大げさなことだったの?」
「大げさ?」
万は鼻で笑った。
「ずっと合理的な判断だわ」
恵は、言葉を失った。
万は最後に、じっと恵を見た。
「勘違いしないで。情じゃない。
私は、奪った分を返しただけ」
ぬいぐるみは、にやりと笑う。
「にしても津美紀。
男の趣味、悪くない?」
「……何を言ってるの?」
津美紀が困惑すると、万は楽しそうに言った。
「全部自分で背負い込もうとするところとか──」
恵は、何も言えなかった。
守られている。
だが、それは祝福ではなく──
本当に置き土産だった。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
最新話までしっかり追いついてきてくれてる方、六名いらっしゃいますよね? 嬉しいです。ありがとうございます。
読んでいて面白いですか? どういう気持ちで読んでいるのか、こっそり教えてもらえたら凄く嬉しいです。
●メインはpixivで活動しています。
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