【本編完結】旅する物語 異世界探訪 五条悟との邂逅 作:masuda028
世界を越えて、悲劇に抗う物語。
※本作は『呪術廻戦』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
廻星編からはLiSAさんの『残酷な夜に輝け』をテーマ曲と設定します。各節で脳内再生お願いします。
ふたつ前の更新分になりますが、落陽編の"おまけ"はご覧いただけたでしょうか? もしまだの方がおられましたら、是非先にご覧ください。
https://syosetu.org/novel/391078/100.html
●3
呪術学園・地下会議室。
重たい扉が閉じられると同時に、複数の帳が重なり合うように展開された。
外界の気配は完全に遮断され、空気が一段重くなる。
集められたのは、現状を“共有してもいい”と判断された者たちだけだった。
壁際に立つ五条悟。
机の向こう側、資料に目を落とす夏油傑。
補助監督、窓、数名の一級術師。
だが、この場の重心がどこにあるかは明白だった。
「じゃ、整理しよっか」
悟が口を開く。
軽い口調だが、誰も気を抜かなかった。
「両面宿儺は、完全顕現には至っていない。
けど、“世界に触れる”ことはもう出来てる」
傑が資料を一枚、机の中央に滑らせる。
「ドクター・ゼロが作成した顕現用ドール。
呪骸でも器でもない、“殻”だ」
「魂を縛らない。
でも、宿儺の呪力を通す」
悟が淡々と補足する。
「今のあいつはさ、
世界に直接触るための手袋をしてる状態」
ざわ、と小さく息を呑む音。
「さらに問題なのは──」
傑が続ける。
「そのドールに、虎杖悠仁が獲得した“指を引き寄せる性質”が組み込まれている」
誰かが小さく舌打ちした。
「つまり、指を集めようとする必要がない」
「正確には」
悟が首を振る。
「“集まってくる”」
沈黙。
「すでに起きている現象を挙げる」
傑の声は落ち着いている。
「結界の歪み、呪霊の異常活性、術式精度の低下」
「どれも、世界の前提がズレ始めている兆候だ」
「世界がさ」
悟が天井を見上げる。
「昔のルールを思い出しかけてる」
空気が、さらに重くなる。
「このまま放置すれば」
傑は言い切った。
「完全顕現は時間の問題だ」
「で」
悟は視線を戻す。
「その時、一番邪魔なのが──俺」
誰も否定しなかった。
傑が資料を持つ指先に少しだけ力が入る。
「宿儺は、俺を“戦力”として見てない」
悟の声は静かだった。
「構造だ。世界を今の形で固定してる、柱」
傑が頷く。
「五条悟が存在する限り、
世界は“人間が考えなくて済む形”を保てる」
「だから先に折る」
悟が言う。
「完成する前に」
短い沈黙。
「正面衝突は?」
誰かが問う。
「論外」
悟は即答した。
「勝てる勝てない以前に、世界が壊れる」
「宿儺は“勝つため”に戦わない」
傑が続ける。
「“壊すため”に戦う」
会議室に、重い理解が落ちる。
「じゃあ、どうする」
低い声。
悟は、ゆっくりと目を開けた。
「宿儺は思ってる」
「俺を殺せば、世界が回り出すって」
机を、指先で一度だけ叩く。
「なら逆に」
声が少し低くなる。
「“俺がいるから成立してる場所”を、利用する」
傑が視線を上げる。
「囮か」
「柱をさ」
悟は言い切った。
「どうせ折る気で来るなら、
折り方くらい、選ばせない」
傑は一瞬だけ目を伏せ、すぐに顔を上げた。
「分かった」
「悟が折れない前提で、全部組み直す」
悟が、いつものように笑う。
「頼もしいね、相棒」
誰も口にしなかったが、全員が理解していた。
傑が何か言いかけた言葉を飲み込んだ様子で、
「……ああ、そうだね」
微笑みを返した。
この作戦は──
五条悟が“世界の中心に立ち続ける”ことを前提にした賭けだ。
結界が、低く唸る。
そしてその外側で、
世界は静かに、別の時代を思い出し始めていた。
●4
「むーん……なんで作戦会議に参加しちゃいけないのー!?」
科目準備室のソファに座り、せいらは思いきり頬を膨らませていた。
足をぶらぶらさせ、完全に拗ねきっている。
「まったくじゃ! なんで妾も、帳をおろさせておいて開始前に追い出しおってからに!!」
もう一人拗ねきっているのは……天内理子が机の上にどっかりと腰を下ろして腕を組んでいる。
口調も態度も大仰だが、今は目付きも鋭い。
「重要会議って言ってたじゃん!」
「そうじゃそうじゃ! 妾など、何百年も“戦”を見てきたというのに!」
「──あなた達、ここで鬱憤を撒き散らさないでくれる?」
静かな声が割って入った。
そよかに抱っこされ、白猫姿のお師匠様が現れる。
音もなく机の上に降り立つと、尻尾を一度だけ揺らした。
「そよか、ここに水面とパソコンを用意して」
「はい」
テキパキと手際よく準備が進む。
ほどなくして、水を張った洗面器とノートパソコンが机の上に並べられた。
洗面器の水面が、ゆらりと揺れる。
そこに映し出されたのは──結界の内側、悟と傑を中心にした作戦会議の様子だった。
最新の液晶画面が放つ青白い光と、行灯の火を反射するようなゆらゆらとした水面。その二つが、せいらの瞳の中で混ざり合っている。
一方、ノートパソコンの画面には、会議開始前までのログが文字情報として並んでいる。
術式解析、呪力波形、ドール構造図、指の反応記録。
「……盗み見じゃん」
せいらがぽつりと言う。
「おー。これはこれはハイテクなのかローテクなのか……」
天内理子は目を細めたり開いたりしている。
「ただの“観測”よ」
白猫は当然のように言い切った。
「参加を許されていないだけで、状況を把握してはいけない理由はないでしょう?」
天内理子がにやりと笑う。
「なるほどのう。表の盤から外された駒は、裏から盤を覗く、と」
水面の向こうで、悟が何かを指し示し、傑が腕を組んで頷いている。
「……やっぱり」
せいらは画面を見つめたまま、呟いた。
「さとるは、最初から“自分が前に立つ前提”で話してる」
ちらりとそよかを見るせいら。
白猫の尻尾が、ぴたりと止まる。
「ええ」
「だからあなた達は外された」
「守る側に置かれた、ということですか?」
そよかが静かに問いかける。
「いいえ」
白猫は淡々と答えた。
「“最後に選択する側”よ」
その言葉に、準備室の空気がわずかに張り詰める。
ごくりと天内理子は喉を鳴らした。
「両面宿儺は、精巧なドールに収まっている」
「虎杖悠仁が獲得した“指を集める能力”を搭載した、完全顕現用の器」
水面に映る会議の中でも、同じ単語が飛び交っている。
「つまり」
白猫は低く続けた。
「この戦いは、正面衝突だけでは終わらない」
せいらは、ゆっくりと背筋を伸ばした。
「……じゃあさ。外に出されたわたし達がやることって──」
白猫は瞳を細めて微笑むと、そよかがぽつりと言う。
「“想定外”になること」
洗面器の水面が、わずかに波立つ。
その向こうで、世界を賭けた議論は続いている。
そして、帳の外では──
別の歯車が、静かに回り始めていた。
──
「──はい。基礎の理解はできています」
「…………」
「わかりました。ありがとうございます。歌姫先輩──」
「だーれだ」
呪術学園の廊下で電話をしていると突然両手で目隠しをされるそよか。
「悟」
「正解、流石は僕の嫁」
目隠しを外してニコニコと顔を覗き込む、見慣れた顔。
「はいはい……」
「──歌姫と話してたの? 珍しいじゃん」
「そう? たまに話すけど」
「えっ、どんなこと?」
「……色々」
「色々!? ちょっとちょっと、僕に対する変な悪口とか鵜呑みにしたいでよ?」
「なんで変な悪口言われること前提なの。歌姫先輩に対して失礼じゃない」
「いや、そうだけど──あ、そよかさん。大事な話です」
「は?」
「今夜ぐらいに大人の関係しませんか?」
うざいぐらいにキメ顔のウインクをした悟。流れるように腹パンするそよか。
「昭和のおっさんか!!」
「うぅ、ツッコミも冷たいよ……そよか……」
腹をおさえ悶えながらも、そよかの顔をじっと見て「……あー、でもやっぱり落ち着く。こういうそよかといちゃついてる時間!」
悟は冗談めかして、でも少しだけ真剣なトーンで言った。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
【おしゃべりチャッピーの次回予告】
え、待って!?
理髪室でこの会話してから最終決戦行くの!?
軽口なのに重すぎるし、
「帰ってくるしかないな」で逃げ道塞ぐの、友情として強すぎない!?
神頼みしてる最強とか反則だし、
虎ノ門ヒルズの屋上で宣言バトル始まってるし、
もう始まってるじゃん、戦いじゃなくて“覚悟”が!!
次回
『“ずるい”男の生存戦略、星を廻す中心で交わす殺意』
絶対みないとだね!!
●メインはpixivで活動しています。
https://www.pixiv.net/users/2225877