護って!いちごちゃん!〜いちごパンティは見えてるか〜 作:ろくさん
「お仕置き、です!」
プリティストロベリーとなった、いちごの決めゼリフが、秋晴れの公園に響き渡る。
トイレの影では、ヨウくんが、メガネ(カメラ)のピントを合わせながら、その完璧な「決めポーズ」のシルエットを、冷静に記録していた。
(……よし。逆光だが、それもまた、神々しさを演出している。データ取得、良好)
滑り台の陰から、先ほどいじめられていた二人の女の子が、目を輝かせて、その光景を見つめている。
「わあ……」
「ほんもの、だ……」
いちごは、ビシッと、小さな「王様」ショータくんを指差したまま、完璧なヒーローの
(さあ、観念しなさい、このクソ……いえ、小さな暴君!)
(私の
だが。
ショータくんの反応は、いちごの(そして、ヨウくんの)予想を、完全に裏切るものだった。
「…………」
ショータくんは、ぽかん、と口を開け、いちご(プリティストロベリー)の姿を、下から上まで、じーっと、見つめていた。
その瞳に、さっきまでの「怒り」や「反抗」の色は、ない。
それどころか。
その、クレヨンで描いたような、丸い頬が。
じわじわと、朱色に、染まっていく。
「(……え?)」
いちごは、決めポーズのまま、固まった。
(な、なに……この反応……)
(顔、赤くない……?)
「……ぷ、ぷり……」
ショータくんが、かろうじて、声を漏らす。
「……ぷりてぃ……すとろべりー……?」
その呟きは、疑問形でありながら、どこか、憧れのアイドルにでも出会ったかのような、熱を帯びていた。
「(……ファン?)」
いちごは、混乱した。
(え、ちょ、この流れ、どうすれば……)
(お仕置きする相手が、私のファンだったパターン……?)
(
トイレの影のヨウくんも、この想定外の事態に、眉をひそめていた。
(……まずい。
(これでは、
(いや、それ以前に、『パンティへの侮辱』という、二段変身への必須フラグが……)
「(あ、あの……)」
いちごが、どう対応すべきか、迷った、その瞬間。
「(……でも)」
ショータくんの顔が、再び、困惑に歪んだ。
(……プリティストロベリー……だ)
(テレビで、いつも、みてる……)
(でも……なんで……?)
(さっき、ぼくを、『たかい たかい』した、『おばさん』は……?)
ショータくんの、5歳児の脳が、必死に、情報を処理しようとする。
「プリティストロベリー(憧れ)」と「さっきの
そして、彼は、ある「結論」に、達した。
「(……そうだ!)」
ショータくんの顔から、赤みが引いていく。
そして、再び、怒りの赤みが、差し始めた。
「(わかったぞ!)」
ショータくんは、いちご(プリティストロベリー)を、ビシッと、指差した。
その小さな指は、怒りに震えていた。
「だ、だまされないぞ!」
「え?」
いちごは、ポーズを解き、素で、聞き返した。
「おまえは、プリティストロベリー じゃない!」
「(……えええ!?)」
「おまえは、プリティストロベリー の カッコ をした、さっきの『おばさん』だ!」
「(お、おばさん、言うなーっ!)」
いちごは、心の中で絶叫した。
(ていうか、バレてる!? いや、そもそも隠してないけど!)
「そうだ! おまえは、この『しょーた・きんぐだむ』を、ねらう、『わるい まじょ』だ!」
(ま、魔女!?)
いちごは、展開についていけなかった。
(ヒーローのコスプレしてるのに、魔女!?)
「(……なるほど。
ヨウくんが、冷静に、その心理を分析する。
「おうさま は、だまされないぞ!」
ショータくんは、完全に「王様」モードに戻っていた。
彼は、いじめられていた女の子たち(砂の民)を、振り返る。
「すなっくども! であえー! まじょ を やっつけろ!」
「え……」
女の子たちは、おずおずと、滑り台の陰から出てきた。
しかし、憧れの(本物かもしれない)プリティストロベリーと、怖い(本物の)ショータくんの間で、オロオロするばかりだ。
「な、なに やってる! かかれ!」
「(ダメだよ!)」
いちごは、女の子たちに向かって、慌てて手を振った。
「あんな子の言うこと、聞いちゃダメ! あの子は、悪い王様だよ!」
「な、なんだと!」
ショータくんが、激昂する。
「この! すなっくども が! つかえない!」
ショータくんは、ついに、自分で戦うことを、決意した。
彼は、砂場の砂を、両手で、わしづかみにした。
「こうなったら、おうさま じきじき に、せいばい してやる!」
「(あ、やばい)」
いちごは、咄嗟に、防御のポーズを取った。
「くらえ! すなかけこうげき! サンドストーム!!」
ショータくんが、両手から、砂を、ぶわっ、と撒き散らした!
それは、子供の攻撃と、侮れない量だった。
乾いた砂が、霧のように、いちごの視界を、完全に覆い尽くす。
「きゃっ! め、目に……!」
いちごは、咄嗟に、両手で顔を覆った。
コスチュームの、フリルの隙間。グローブと腕の間。あらゆる場所に、ジャリジャリとした、不快な砂粒が、入り込んでくる。
(うう……! 最悪!
「ぎゃははは! どうだ! め が あけられないだろ!」
ショータくんが、高笑いしている。
いちごが、必死に、目を
「(……チャンス!)」
ショータくんは、素早く、砂場の隅にある、泥溜まり(ひっさつうんこ製造所)に駆け寄った。
そして、エクスカリバー(スコップ)で、さっきよりも、遥かに巨大な、黒い「それ」を、すくい上げる。
「(……観測。対象、
ヨウくんが、ドローン(※砂を避けて高高度に退避中)のカメラを、ズームさせる。
「(うう……やっと、目、開けられる……)」
いちごが、涙目になりながら、顔を上げた、その瞬間。
「しねー! ひっさつ! うんこ・ばずーか!!」
「え、ちょ、まっ―――!?」
さっきの、ブラウスに命中した「それ」とは、比べ物にならない。
ソフトボール大の、黒く、湿った、重い「泥の塊」が、凄まじい勢いで、飛んできた。
べちゃっ!!!
という、悪夢のような音と共に。
それは、いちごの、純白のコスチューム。
その、胸。
フリルたっぷりの、スカート。
そして、太ももに、無惨にも、命中した。
「「「…………」」」
再び、公園の時が、止まる。
滑り台の女の子たちが、息を飲んだ。
ヨウくんが、ドローンのカメラ越しに、目を見開いた。
いちごは、ゆっくりと、自分の、身体を見た。
白、ピンク、水色、だったはずの、愛用の、戦闘服。
それが今。
まるで、泥沼プロレスでもしたかのように、黒く、汚く、おぞましい「
純白のスカートは、泥の重みで、ぐっしょりと、張り付いている。
「(…………うそ)」
「ぎゃはははは! きたねー! まじょ、うんこ まみれだぞ!」
ショータくんが、腹を抱えて、笑い転げている。
いちごの、アホ毛が、怒りで、限界まで、逆立った。
(……あの……)
(あの、クソガキいいいいいっ!!)
「(桃瀬さん、落ち着け。まだだ。まだ、
ヨウくんが、
「(うるさい! もう、我慢の限界だよ!)」
いちごは、怒りで、泥まみれのスカートを握りしめ、ショータくんに、詰め寄ろうとした。
(子供だろうが、王様だろうが、関係ない!)
(この衣装を……私の『正義』を、うんこまみれにしたこと、絶対に、後悔させてやる!)
「ひっ!」
いちごの、鬼のような形相に、さすがのショータくんも、一瞬、たじろいだ。
だが、彼は「王様」だ。
ここで、引くわけには、いかない。
「(……そ、そうだ!)」
ショータくんは、後ずさりしながら、ある「秘策」を、思いついた。
(こいつ、スカート(よろい) が、じゃま そうだ!)
(さっき、すなっく(女の子) に やったみたいに……!)
(あの、ひらひら を、めくってやれば……!)
いちごが、泥を振り払いながら、一歩、踏み出す。
その、隙。
「おうさま の けんり! すかーとめくりだ!」
「え!?」
ショータくんは、いちごの、怒りの形相を、恐れることなく。
その、足元に、潜り込むように、ダッシュした。
そして、その手には、エクスカリバー(赤いスコップ)が、握られていた。
「(……な、なにを……!?)」
いちごは、子供の、予測不能な動きに、対応が、遅れた。
ショータくんは、その、エクスカリバー(スコップ)の先端を。
いちごの、泥まみれの、スカートの、
正確に、引っ掛けた。
「(……まずい!)」
いちごが、気づいた時は、遅かった。
「とれたー!」
ショータくんは、スコップを、渾身の力で、振り上げた。
めくり上げる、というより、もはや「剥ぎ取る」ような、暴力的な動き。
泥の重みで、張り付いていたスカートが、その力に、
ばさっ!
という、情けない音と共に。
いちごの、腰から下が、完全に、
「「「…………」」」
公園の、空気が、
滑り台の女の子たちが、両手で、口を、覆った。
ヨウくんの、ドローン(カメラ)が、その、歴史的瞬間を、完璧な「真上」アングルから、捉えていた。
「(…………あ)」
いちごは、完全に、固まった。
スカートが、ない。
いや、ある。
ショータくんの、エクスカリバー(スコップ)の先端に、泥まみれの「スカート(布)」だけが、無惨にも、引っかかっている。
(※ヨウくん特製の「戦闘時・パージ(分離)機能」が、最悪の形で、作動してしまったのである)
そして、いちごの、腰から下。
そこには。
コスチュームの、白いレオタード(ハイレグではない、通常形態)。
そして、その、レオタードが、守り切れなかった、純白の、聖域。
さっきの、泥バズーカの「
「イチゴ柄」の、パンティが。
秋の、白日の下に、完璧に、
「…………」
ショータくんは、自分が、何をしでかしたのか、わかっていなかった。
彼は、
「ぎゃはは! まじょ の よろい、とったぞー!」
そして、彼は、ようやく、目の前の「魔女」の、本体に、目をやった。
泥のシミがついた、イチゴ柄。
「…………?」
ショータくんは、首を、かしげた。
そして、次の瞬間。
5歳児の、無邪気で、残酷な、最大級の「侮辱」が、放たれた。
「うわっ!」
ショータくんは、エクスカリバー(戦利品)を放り投げ、腹を抱えて、笑い転げ始めた。
「ぎゃははははは!」
「な……なに……」
いちごは、羞恥と、怒りと、混乱で、声が、震えた。
「イチゴ! イチゴのパンツだ!」
ショータくんは、砂の上を、ゴロゴロと転がりながら、涙を流して、笑っている。
「だっせー! なにそれ! イチゴ!」
「しかも、うんこ(泥) ついてるし!」
「きたねー! だせー! うんこイチゴパンツだー!」
(……うんこ)
(……イチゴ)
(……パンツ)
いちごの、頭の中で、その、最悪の「単語」が、反響した。
(…………この)
(…………この、クソガキがああああああっ!!!!)
いちごの、アホ毛が、怒りで、アンテナのように、逆立った。
彼女の、全身から、凄まじい、ピンク色のオーラが、立ち上る。
「(……来た! トリガー、成立!)」
ヨウくんが、ドローンのカメラを、最大ズームにする。
「ヨウくんっ!!!!」
いちごの、絶叫が、公園中に、響き渡った。
(※スカートがないため、パンティ丸見えのまま、絶叫している)
その声に応え、木陰に隠れていた、偵察ドローン(ヨウくん操縦)が、いちごの真上まで、急上昇した。
「(桃瀬さん! 受け取れ!)」
ドローンの、下部ハッチが、開く。
そこから、銀色の、
「ぎゃははは! うんこイチゴ……ん?」
笑い転げていたショータくんが、空からの「補給物資」に、気づいた。
いちごは、その、ポリ
「(……お仕置きの時間、です!)」
いちごは、スカートがない(パンティ丸見えの)まま、新品のイチゴパンティを、強く、強く、握りしめた。