護って!いちごちゃん!〜いちごパンティは見えてるか〜   作:ろくさん

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第5章:暴走シルバーミサイル! 免許返納ジャスティス その2

 

(間に合えっ!!)

 

いちごの絶叫と銀色のミサイル(プリウス)の突進。 交差点の真ん中で二つが激突するのは同時だった。

 

ピンク色の変身の光が銀色の車体と衝突し爆発的な閃光となって弾ける。

 

ドンッッ!!!

 

金属が肉を打つ音ではない。 金属が金属よりも硬い「何か」に激激したかのような鈍く重い破壊音だった。

 

「「「きゃあああああ!!」」」

 

横断歩道の手前で保育士さんが園児たちを必死にかき集める。 そのわずか数メートル先。 変身をコンマ数秒で完了させたプリティストロベリーが、暴走するプリウスの真正面に立ちはだかっていた。 いや立ちはだかろうとしていた。

 

「(……っ! お、重っ……!)」

 

いちごは両方の手のひらでプリウスのボンネットを真正面から受け止めていた。 だが時速四十キロで突進してくる鉄の塊。 いくらプリティストロベリーの(コスプレ補正)があっても、それをピタリと止めることはできなかった。

 

ズズズズズズ……!

 

いちごのピンクのショートブーツがアスファルトの上を火花を散らしながら押し戻されていく。 子供たち(ターゲット)から引き離される形になるのは不幸中の幸いだった。 だがこのままでは交差点の反対側まで押し込まれてしまう。

 

「(くっ……! と、止まれ……! 止まれえええ!)」

 

いちごは奥歯をギリと食いしばる。 腕がミシミシと悲鳴を上げていた。 ヒーローショーの殺陣(たて)とはワケが違う。 本物の「質量」と「運動エネルギー」が彼女の華奢な(コスチュームに包まれた)身体に襲いかかっていた。

 

「な、なんじゃ……!? なんじゃああ!?」

 

運転席の普利 臼三(ふり うすぞう)はパニックに陥っていた。 突然目の前にピンク色の「何か」が現れ自分の愛車(プリウス)が止まらない。 いや止めている。 彼はパニックのあまり自分がまだアクセルを床が抜けるほど踏み込んでいることに気づいていなかった。

 

ブオオオオオオン! エンジンが空しくしかし力強く唸り続ける。

 

「(このじいさん……! アクセル踏んでる!)」

 

いちごはボンネット越しに運転席の臼三の恐怖に歪んだ顔を睨みつけた。 (ブレーキ! ブレーキ踏んでよ!) 叫びたいのに全身の筋肉に力を込めすぎて声が出ない。

 

ズズズ……ガガガッ!

 

プリウスの車体がいちごの(パワー)に押されわずかに進路がずれた。 そしてそのまま交差点の中央分離帯の縁石(えんせき)に乗り上げた。

 

ガツンッ! という衝撃。 プリウスの車体が大きく跳ねる。

 

「きゃあっ!?」

 

いちごはその上下動で体勢を崩した。 両手で押さえ込んでいたボンネットから手が滑る。 身体が宙に浮いた。 そして重力に従いプリウスのボンネットの上に背中から叩きつけられる形になった。

 

ドン! 「(……いっ……!)」

 

背中を強打し肺から空気が絞り出される。 いちごはそのままツルツルと滑り、ボンネットの上からフロントガラスに背中(お尻)を押し付けられる最悪の体勢になった。 スカートがめくれ上がりお尻がガラスにべちゃっと張り付く。

 

「(……さ、最悪……!)」

 

だが最悪はまだ終わらない。 縁石に乗り上げたプリウスはまだ止まっていなかった。 臼三はパニックの頂点に達していた。

 

「(……わ、わしはどうすれば……!)」 (前が見えん!) (ピンクの何かが邪魔じゃ!)

 

彼はその「邪魔なもの」をどかそうと無我夢中で手元のレバーをガチャガチャと動かした。 ワイパーとウインカーとライト。 あらゆるスイッチがデタラメに押される。

 

そして。

 

ウィーン……ガシャ。 ウィーン……ガシャ。

 

フロントガラスのワイパーが動き出した。

 

「(え?)」

 

いちごは自分がフロントガラスに張り付いていることを思い出した。 (……ま、まさか……!)

 

ガシャッ! いちごの予想通り。 黒く古びたワイパーのゴムブレードが、いちごの(ブーツ)を思い切りひっぱたいた。

 

「いった!? ちょ、やめ……!」

 

ガシャッ! 二度目のワイパーが今度はめくれ上がったいちごのスカートのフリルを捉えた。

 

ビリビリビリッ! という布が裂ける嫌な音。

 

「あああっ!」

 

いちごの純白のコスチューム。 そのスカート部分が無惨にもワイパーの往復運動によって引き裂かれた。 めくれ上がっていたスカートの残骸がちぎれ飛ぶ。

 

「(……う、うそ……! スカートが……!)」

 

そしてそこに現れたのは。 プリティストロベリーのコスチューム(レオタード)が守り切れていなかった聖域。 純白のイチゴ柄のパンティだった。

 

「(……丸見え……!)」

 

いちごの顔がカッと赤く染まる。 だが悪夢はまだ終わらない。

 

ガシャッ!

 

三度目のワイパーが襲いかかる。 いちごは咄嗟に身をよじろうとした。 だが背中をフロントガラスに張り付けられ身動きが取れない。

 

そして無慈悲なワイパーブレードは。 何年分もの雨風にさらされ。 アスファルトの(オイル)と排気ガスのススとこびりついた虫の死骸(しがい)が層を成して。 黒くギトギトに汚れたそのゴムの「先端」が。

 

いちごの露出したイチゴ柄のパンティ。 その純白のど真ん中を。

 

べちゃ……。

 

と最悪の効果音と共に。 左から右へと無慈悲に横断していった。

 

「(………………あ)」

 

いちごの思考が完全に停止した。 目の前に広がるのは(フロントガラス越しに見えるのは)。 パニックになっている園児たちの泣き顔。 そして自分の股間。 そこに刻み込まれた一本の黒くギトギトとした油汚れの「線」。

 

(……よご、れた……) (……わたしの、イチゴ柄が……) (……こんな、きたない、ワイパーで……)

 

その時だった。 ガッッッッシャアアアアン!!!

 

制御を失ったプリウスはついに交差点の反対側の信号機の「柱」に正面から激突した。 凄まじい衝撃。 ボンネットがぐしゃりとV字に折れ曲がる。 エンジンが悲鳴を上げそしてプスン……と沈黙した。

 

「(……う……)」

 

いちごの身体もその最後の衝撃でフロントガラスからアスファルトの上へと振り落とされた。 ドンとお尻を強打する。 (……い、痛い……) (……スカート破れて……) (……パンティ汚れて……) (……もう最悪……)

 

涙目で顔を上げると。 激突したプリウスの運転席。 エアバッグがボンと開いていた。

 

プシュー……。 エアバッグの空気が抜けていく。 煙の向こうから顔を出したのは。 牛乳瓶の(メガネ)が割れ額からわずかに血を流した普利 臼三(ふり うすぞう)だった。

 

「(……じ、じいさん……! だ、大丈夫……!?)」 いちごは自分の屈辱(くつじょく)も忘れ咄嗟に駆け寄ろうとした。

 

臼三はまだ何が起こったのか理解できていないという顔で。 呆然とフロントガラス(割れている)の先を見ていた。 そしてその視線がアスファルトに尻餅をついているいちごの姿を捉えた。

 

「(……あ)」 いちごは自分の格好を思い出した。 スカートは破れちぎれ飛んでいる。 パンティは丸見え。 しかもそのど真ん中にはワイパーの黒い油の筋がべっとりと。

 

「(……み、見ないで……!)」

 

いちごは咄嗟に両手で股間を隠そうとした。 だが遅かった。 臼三はその割れた牛乳瓶の(メガネ)で。 いちごのその無惨な「イチゴ柄」をじっと凝視した。

 

そして数秒後。 彼はそのシワだらけの顔にわずかな「認識」を浮かべると。 ゆっくりと呟いた。

 

「……おお……?」

 

臼三は目を細めた。 (……なんじゃあれは) (……ピンクの服……) (……股間のあたりが……黒く汚れとるが……) (……その汚れの下に……なにか赤いツブツブの模様が……) (……あああれは……)

 

「……おお……。赤飯(せきはん)か……?」

 

「(…………は?)」

 

いちごの思考が二度目の停止をした。 (いま……なんて……?)

 

臼三は一人納得したように頷いた。 (……そうか。赤飯か。……めでたいのう)

 

「……なにか祝い(おいわいごと)か、のぅ……?」

 

(…………) (…………) (…………せきはん?)

 

(…………おいわいごと?)

 

いちごの頭の中でその致命的なボケ(・・・・)が反響した。

 

(この……!) (このわたしのイチゴ(せいぎのあかし)を……!) (ワイパーの油で(けが)しておいて……!) (赤飯(せきはん)だぁ!?)

 

(ふざけるなああああああああっ!!!!)

 

いちごのアホ毛が怒りで限界まで逆立った。 彼女の全身からピンク色のオーラが湯気のように立ち上る。

 

「(……来た! トリガー成立!)」

 

交差点の端。 物陰に隠れていたヨウくんがガッツポーズ(※無表情)をした。 (完璧だ! 史上最悪の侮辱(ボケ)だ!)

 

「ヨウくんっ!!!!」

 

いちごの絶叫が事故現場(こうさてん)に響き渡った。 (※パンティ丸見えかつ油まみれのまま絶叫している)

 

その声に応えヨウくんが物陰から飛び出してきた。 彼の手にいつもの銀色のポリ(ぶつ)が握られていた。 (※パソコンを買いに行く途中だったので当然携帯していた)

 

「(プリティストロベリーッ!)」

 

ヨウくんが叫ぶ。 (※声には出ていない。アイコンタクトだ)

 

「(新しい! イチゴパンティだよッ!!)」

 

ヨウくんは警察が来る直前の一瞬の隙を突き。 そのポリ(新品)を破壊されたプリウスのボンネットの上へと滑り込ませるように投げ渡した。

 

カサッ。 ポリ袋がいちごのすぐ足元に転がる。 (……来た!)

 

いちごはその新品のイチゴパンティ(じゅんぱく)を怒りに震える手で掴み取った。 (……このじいさん(シルバーミサイル)……!) (……絶対に許さない……!) (……赤飯(せきはん)じゃなくてイチゴ(・・)だって思い知らせてやる……!)

 

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