護って!いちごちゃん!〜いちごパンティは見えてるか〜   作:ろくさん

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第5章:暴走シルバーミサイル! 免許返納ジャスティス その3

 

「(……赤飯じゃなくてイチゴだって思い知らせてやる……!)」

 

いちごは怒りに震える手で新品のイチゴパンティ(純白)を握りしめた。

アスファルトに尻餅をついたまま。

スカートは無い。

パンティは丸見え。

その丸見えのパンティはワイパーの油で黒く汚れている。

そして今目の前の老人(臼三)に「赤飯」「祝い事」と致命的な侮辱(ボケ)をかまされた。

 

(……やるしかない)

(今ここで)

 

いちごの頭脳が警鐘を鳴らす。

(ダメだ!)

(ここは交差点の真ん中だ!)

(さっき助けた保育園の子供たちが見ている!)

(物陰に隠れたヨウくんがカメラを構えている!)

(こんな状況で履き替えるなんて!)

(丸見えのまま脱いで丸見えのまま履くなんて!)

 

「(……お、お嫁にいけない……!)」

 

羞恥がいちごの怒りにブレーキをかける。

涙が再び滲んできた。

もう嫌だ。

帰りたい。

部室で数学のドリルを解いていたあの瞬間に戻りたい。

 

「……おお……。めでたい、めでたい……」

 

運転席の臼三が割れたメガネの奥でまだ「赤飯」を眺めて満足そうに頷いている。

 

(…………このっ)

 

その光景が。

その悪意なき侮辱(ボケ)が。

いちごの羞恥心(ブレーキ)を粉々に粉砕した。

 

(……うるさい!)

(うるさいうるさいうるさい!)

(お嫁にいけるかどうかなんて知らない!)

(こいつは私の「イチゴ柄」を「赤飯」と呼んだ!)

(それもこんな油まみれにした挙句に!)

(絶対に許さない!)

(私が! プリティストロベリーが!)

 

「(見てなさい……!)」

 

いちごは意を決した。

彼女はもう子供たちの視線もヨウくんのレンズも気にしないことにした。

これは「儀式」なのだ。

ヒーローが真の力に目覚めるための神聖な「変身(チェンジ)」なのだ。

(『スウィートハート』だって変身バンクは裸だ!)

 

いちごは震える手で。

泥と油に汚れたイチゴ柄のパンティ。

そのゴム紐に指をかけた。

 

「(……あ)」

滑り台の陰から見ていた女の子たちが息を飲む気配がした。

(見ないで!)

心で叫ぶ。だが手は止めない。

 

「(……記録(レック)。桃瀬さん換装(チェンジ)シーケンス移行。……アングル完璧。解像度最大)」

物陰のヨウくんが冷静にメガネ(カメラ)のピントを合わせた。

 

いちごは顔を羞恥と怒りで真っ赤に染め上げながら。

汚されたパンティを一気に引きずり下ろした。

秋の冷たいアスファルトの空気が彼女の聖域を撫でる。

完全な「丸出し」の状態。

 

「観音様かの?…ありがたや…」

老人が何か言ってるが、茹だった頭は理解できない。早く変身しなくちゃ!

 

(……恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!)

だが怒りが勝る。

彼女は汚れたパンティ(赤飯)を勢いよく地面に叩きつけた。

(※後でヨウくんが「サンプルNo.4(赤飯・油汚染)」として回収する)

 

そして。

新品のイチゴ柄を両手で広げた。

その純白の布地が夕日に輝いて見える。

いちごは素早くそれに足を通し。

一気に装着した。

 

清潔な真新しい布地が彼女の火照った肌に触れた。

 

その瞬間。

 

「なっ!?」

 

「うおっ!?」

「ま、眩しい……!」

 

いちごの身体が爆発的な光を放った。

さっきまでの淡い光ではない。

交差点が夜になったかのように錯覚するほどの強烈な閃光。

光源はプリティストロベリー。

いや彼女が今まさに装着した「イチゴ柄」のパンティその一点から凄まじいピンク色の光が奔流となって溢れ出したのだ。

 

運転席の臼三はあまりの眩しさに咄嗟に腕で目を覆った。

保育園の子供たちも保育士さんも目を閉じる。

ヨウくんのメガネ(カメラ)だけが特殊なフィルター(※ヨウくん開発)越しにその神々しい「変身(換装)」の一部始終を記録していた。

 

光の中でいちごの身体が変貌していく。

ちぎれたスカート。

汚れたレオタード。

それらが光の粒子となって一度霧散する。

そして再構築される。

 

変身の「核」は今履き替えたばかりのイチゴ柄のパンティ。

 

(……っ!!!)

 

いちごは光の中で信じられない「感覚」に息を飲んだ。

履いたばかりのパンティが熱を帯びる。

まるでそれ自体が命を持ったかのように彼女の身体を締め付け変異していく。

 

「あ……っ!」

 

パンティのサイドライン。

その布地がありえないほどの張力で物理的に吊り上げられていく。

腰骨を遥かに越え彼女の脇腹のラインに沿って鋭角的に上へ上へと。

 

「(食い込んで……る……!)」

 

純白のイチゴ柄の布地が彼女の太ももの付け根その柔らかい内側に深く深く食い込んでいく。

それはもはや「パンティ」というより肌に張り付いた「第二の皮膚」であり「装甲」だった。

極限まで切り詰められた超ハイレグスタイル。

 

その変異した「イチゴ柄」を中心(コア)として。

残りのコスチュームが一瞬で再構築された。

 

胸元のリボンは戦闘機のようにシャープな形状に。

スカートは短く切り詰められたチュチュに変わりその下から食い込むハイレグのラインが惜しげもなく晒されている。

(※ちぎれたスカートも光の力で再構成されたのだ)

手には肘上までのロンググローブ。

足は膝上までの鋭いピンヒールのロングブーツ。

そして頭。

イチゴのカチューシャではなく天を突くように伸びたシャープな「ウサギの耳」。

 

光が収束していく。

臼三がおそるおそる腕を下ろすとそこに立っていた「プリティストroベリー」の姿に絶句した。

 

「な……なんじゃ……ありゃ……」

 

さっきまでの泥まみれの少女はどこにもいなかった。

そこにあったのは怒りをその食い込むハイレグのラインにまで宿した苛烈な「執行者」の姿だった。

 

「プリティストロベリー・バニー!」

 

地を這うような冷たい声。

さっきまでの必死だった少女の声ではない。

 

「(……赤飯……じゃ、ない……?)」

臼三の朦朧(もうろう)とした意識が目の前の「本物」のオーラに圧倒されていた。

 

「(……対象(臼三)『侮辱』から『混乱』モードへ移行。……完璧な変身(データ)だ)」

ヨウくんが通信機(生徒手帳)をそっと閉じた。

 

「あなたの『近道』は……」

 

いちご(バニー)は冷たく臼三(ドライバー)を見下ろした。

 

「もうおしまいです」

 

「あ……あ……」

 

臼三はエアバッグに埋もれたまま動けない。

目の前の「バニー」が恐ろしくそしてあまりにも神々しかったから。

 

「ひっ!」

 

いちご(バニー)はゆっくりと破壊されたプリウスのボンネットに歩み寄った。

ぐしゃぐしゃに折れ曲がった金属が彼女の接近を拒む。

だが彼女は止まらない。

ピンヒールが歪んだボンネットに突き刺さり確実な足場を作る。

 

(このじいさんに物理的な『お仕置き』はできない)

(でも!)

(この人が二度と『凶器(クルマ)』に乗れないように!)

(この人が『迷惑(ミサイル)』を撒き散らせないように!)

 

いちご(バニー)の狙いは臼三本人ではない。

彼が「近道」と呼び「相棒」と頼った「シルバーミサイル」そのもの。

その「心臓部」。

事故の衝撃で歪みむき出しになった「エンジンブロック」だった。

 

「あなたにはもう『運転』はさせません」

 

「な……なにを……」

 

いちご(バニー)はロンググローブに包まれた両手をむき出しのエンジンブロックに差し込んだ。

熱い。

オイルの匂いが鼻を突く。

だが彼女の怒りの方が遥かに熱かった。

 

「(赤飯じゃ、ない!)」

彼女は心の底で叫んだ。

「(イチゴ(・・)です!)」

 

「必殺!」

 

彼女は全身の力を込め。

その指がエンジンブロックの強固なフレームを掴む。

 

「ストロベリッシュ・バニー……!」

 

「や、やめ……」

臼三が何かを言いかけた。

 

免許返納(ジャスティス)・クラッシュ!!」

 

ブチブチブチッ!

ゴリゴリゴリッ!

金属が引きちぎれるおぞましい音が交差点に響き渡る。

太いケーブルが火花を散らしながら断裂し冷却水がアスファルトに撒き散らされた。

 

「おおおおおおおっ!」

 

いちご(バニー)の雄叫びと共に。

重さ数百キロはあろうかという「エンジンブロック」そのものが。

プリウスの車体から完全に引きずり出された。

 

「…………」

 

交差点が静まり返った。

保育園の子供たちも泣き止みその光景に呆然としていた。

いちご(バニー)はオイルと煙を吹くエンジンブロックをまるでトロフィーのように高々と天に掲げていた。

 

「(……筋出力推定4.8倍。……換装(パンティ)によるブースト効果……凄まじい……)」

ヨウくんがメガネ(カメラ)越しに震えていた。

 

「あ……あ……わしの、ぷりうす、が……」

臼三は心臓(エンジン)を失った愛車(プリウス)の残骸を見てついに意識を失った。

 

ウー、ウー、ウー……

その時ようやく遠くからパトカーのサイレンが近づいてきた。

 

「……ふぅ」

いちご(バニー)はその光景を見届けると静かに変身を解いた。

(※実際は変身の光と共にハイレグの食い込みが元のパンティのラインに戻りチュチュも元のスカート丈に戻った)

 

そして元のプリティストロベリーの姿に戻ると(※スカートは無いままだが)駆けつけた警察官にドンと音を立ててエンジンブロックを差し出した。

 

「お、お巡りさん! この人です!」

 

「(……え? なにこの子? え? エンジン?)」

警察官は混乱していた。

 

数分後。

現場検証が続く交差点の隅。

いちごはヨウくんから受け取った制服(カバン)をなんとか羽織り(※下はまだコスチュームのままだが)人目から隠れていた。

 

「ぷはー。疲れた……」

 

「お疲れ桃瀬さん」

 

ヨウくんがイチゴミルク(※パソコンを買いに行く途中の自販機で買った)を差し出した。

 

「わ、ありがと!……ていうか!」

いちごはイチゴミルクを受け取りながらヨウくんのもう片方の手を睨んだ。

そこには見覚えのあるジップロック(サンプルNo.4)が握られていた。

 

「(……また、回収した……)」

 

「(……赤飯(サンプル)か。貴重なデータだ)」

ヨウくんがボソリと呟いた。

 

「『赤飯』言うなー!」

 

いちごはイチゴミルクのパックをヨウくんに叩きつけようとして思いとどまった。 (……あ。パソコン買ってくれるんだった)

 

「……ねえヨウくん。パソコン屋もう閉まっちゃうかな……」

 

「ああ。急ごう」

 

いちごは頷き、ヨウくんと二人、騒然とする交差点を背に、電気街へと歩き出そうとした。 (※現場検証が続く物陰で、なんとか制服に(下着も)着替え直している) イチゴミルクのストローを吸いながら、平和が戻った空を見上げる。 (ふぅ。今日も疲れたけど、結果オーライ、だね!)

 

と、思った、その時だった。

 

(…………) (…………あれ?)

 

いちごの歩く足が止まった。 さっきまでの戦闘の記憶が、アドレナリン(興奮)の霧が晴れると共に急速に鮮明な「映像」となって脳内に蘇ってきた。

 

(……私、あの時……) (スカートなくて……) (赤飯って言われて、キレて……)

 

(……あ)

 

(……脱いで、履き替えた……) (……交差点の真ん中で……)

 

(…………)

 

(……はっ!!!!)

 

いちごの顔から一気に血の気が引いていく。 いや違う。 次の瞬間、羞恥と怒りで首筋まで一気に真っ赤に染め上がった。

 

(ぜ、ぜ、全部、見えちゃってたよね!?) (ヨウくん物陰にいたけど絶対メガネ(カメラ)で見てた(・・・・)よね!?) (しかも今回はドローン(真上)じゃなくて正面(・・)から……!)

 

いちごは、その場に固まったまま動けなくなった。 自分の制服のスカートの上から、そっ、とお股(また)の部分を両手で押さえた。 そして、もじもじと身体(からだ)をくねらせながら。 ギギギ……と、油の切れたブリキ人形のように隣を歩くヨウくんの横顔を見上げた。

 

「……ねぇ……その……」

 

「なんだ桃瀬さん。急がないと店が閉まる」

 

「(そんなこと、どうでもいい!)」 いちごは勇気を振り絞った。

 

「……み、見た……よね……?」

 

「……?」

 

「だ、だから! さっきの! 私が、その……履き替えるとこ! ぜ、全部……!」

 

ヨウくんはそこでようやく足を止めた。 そしていちごの真っ赤な顔と、スカートの上から股間を押さえているその恥じらいのポーズを無表情のまま一瞥(いちべつ)した。

 

そしてゆっくりと自分のメガネの位置をクイと中指で、押し上げながら。 いつも通りの冷静な分析(かんそう)を口にした。

 

「ああ」

 

「(……っ!)」

 

「良いスジだっ――」

 

「忘れろパンチッ!!!!」

 

ゴスッ! いちごの怒りと羞恥が込められた、渾身(こんしん)の右ストレート(※手加減済み)が、ヨウくんの頬(ほお)にクリーンヒットした。

 

「(……ナイス……パン……チ……)」 ヨウくんは、親指を立てる間もなく、メガネを吹っ飛ばしながらアスファルトの上へと沈んでいった。

 

「うわあああああん! バカー! ヨウくんのド変態ーっ!」

 

いちごは真っ赤な顔のまま、涙目でその場にしゃがみ込んでしまった。 (……もう、お嫁にいけない……!)

 

ご近所の平和(と交通安全)は、護られたが。 いちごの乙女としての尊厳は今日もかろうじて(?)護られなかったのだった。

 

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