護って!いちごちゃん!〜いちごパンティは見えてるか〜 作:ろくさん
「覚悟はいい? お仕置きだぜ!」
プリティストロベリー(いちご)の素人丸出しのラップが響き渡った。 勢いだけは完璧だ。 ヨウくんがPCから流すアッパーな戦闘BGMリミックスが場の空気を支配する。
「「「…………」」」
さっきまでおばさんを煽っていた野次馬たちが一瞬静まり返った。 夫婦喧嘩の仲裁とは明らかに空気が違う。 本物のショーかガチの喧嘩か。 誰もが固唾を飲んで二人を見守っていた。
ラップおばさんは驚きで目を見開いていた。 マイクを払いのけられビートを上書きされたのだ。 だが彼女もこの商店街のベテランだ。
「(……な、このガキ……!)」
おばさんの顔が怒りと楽しさで歪んだ。 (……面白い。やってやろうじゃねえか)
「Ha! 上等だぜ嬢ちゃん!」 おばさんはマイクのボリュームを最大にした。 ヨウくんが流すビートを強引に乗りこなし始めた。
「Yo! Yo! 聞いたかみんな!」 「さっきのガキが変身してきたぜ!」 「だがその格好! マジでイタいぜ!」
おばさんのダミ声が再び場の空気を掴む。 野次馬たちが歓声を上げた。 「「おおお!」「女将! 行けー!」」
(……くっ!) いちごはアウェイな空気に怯みそうになる。 だが負けられない。
「フリフリスカート! ピンクのリボン!」 おばさんのディスラップがいちごのコスチュームを攻撃する。 「まるでお遊戯会だぜ! 赤ちゃん以下だぜ!」 「そんなカッコで首突っ込むな!」 「ごっこ遊びは家でやんな! Yo!」
(ごっこ遊び……!) いちごのアホ毛がピクリと反応した。 (序章で迷惑カメコに言われたのと同じ……!)
「(桃瀬さん! 落ち着け! ビートを外すな!)」 物陰のヨウくんから冷静な指示が通信機から飛ぶ。
(わかってる!) いちごはマイクを握るフリをした。 おばさんのターンが終わる。今だ!
「(Yo! Check it out!)」 いちごは脳内で練習したラップで応戦する。
「ごっこ遊びじゃありません!」 「私の心は真剣です!」 「困ってる人がいたら!」 「見すごせないのがヒーローです!」
(お、おお?) (なんかまともだぞ?) 野次馬たちがさっきとは違う意味でざわめいた。 いちごのラップ(スピーチ)はド下手だった。 だがその内容はあまりにもまっすぐな「正論」だった。
「(……くっ!)」 おばさんが一瞬言葉に詰まった。 (このガキ……! 正論で返しやがった……!)
いちごは勢いに乗る。 「あなたの言葉は暴力です!」 「夫婦の心を傷つけて!」 「私のアホ毛も笑った!」 「それは全然カッコよくない!」
「「…………」」 野次馬たちもさすがに黙り込んだ。 (……あれ? もしかして嬢ちゃんの言う通りじゃね……?) (……確かに女将のラップただの悪口……)
空気が変わった。 おばさんは焦った。 (……まずい! オーディエンスがこいつに流れる!)
「(……桃瀬さん押してるぞ! そのまま論破しろ!)」 ヨウくんがPCのビートをさらにアゲる。
「Ha! 青臭いこと言ってんじゃねえよ!」 おばさんはついに「禁じ手」を使った。 彼女はいちごの「正論」ではなく「存在」そのものをディスり始めた。
「『ヒーロー』だぁ? 『正義』だぁ?」 「どうせアンタも目立ちたいだけだろ!」 「その短いスカート! 男に媚びてる証拠だぜ!」
「(……!)」 いちごのラップ(スピーチ)が止まった。 (男に媚びてる……?)
「図星か嬢ちゃん!」 おばさんは勝機と見た。 空気を引き戻すにはもっと下品なネタが必要だ。
「どうせそのスカートの中!」 「見せたくてしょうがないんだろ!」 「見せパン! 見せパン! Yeah! Ah!」
「ち、違う!」 いちごは咄嗟にスカートの裾を押さえた。 「そ、そんなつもりじゃ……!」 ビートから完全に外れただの抗議になっている。
「「「ぎゃはははは!」」」 野次馬たちが待ってましたとばかりに下品な笑い声を上げた。 「図星だ!」「やっぱり見せパンだ!」「よっ! エロいぞ!」
(……くっ! ちがう! ちがうのに!) いちごの目に悔し涙が浮かぶ。 (このコスチュームはヨウくんが作ってくれた私の正義の証で……!) (……ちょっとスカート短いのは可動域のためで……!)
「(……まずい。桃瀬さん動揺が激しい)」 ヨウくんがPCを抱えながら眉をひそめた。 (……このおばさん。いちごの一番触れられたくない部分を……!)
「Yo! Yo! どうした黙って!」 おばさんは完全に自分のペースに戻っていた。 彼女はマイクを捨てた。 八百屋の店先から一本の巨大な「大根」を引き抜いた。
(……え?) いちごがその凶器に目を見開く。 (……大根?)
「Yo! これがワシの聖剣! 聖剣ダイコン! Yeah!」 (……デジャヴ!?) いちごはショータくんのエクスカリバー(スコップ)の悪夢が蘇り一瞬身を固くした。
「ほら見せてみろよ嬢ちゃん!」 おばさんはその大根の
ツンツン。 「パンティ見せろ! Yo!」 ツンツン。 「その中身見せろ! Yo!」
「ひゃっ! や、やめて! やめてください!」 いちごは必死に後ろに下がりながら
「「「やれー! やれー! めくれー!」」」 野次馬たちが最悪のコールを始めた。 商店街はもはや地獄の様相だった。
(……なんなのこの町……!) いちごは半泣きだった。
「ほら! ほら! ほら!」 おばさんが調子に乗って大根を大きく振り回す。 いちごが払いのけた手と大根が交錯したその瞬間。
べちゃっ。
いちごが避けきれなかった大根の先端。 黒い泥の塊が。 いちごの純白のコスチューム。 そのスカートのど真ん中に無惨な黒い染みを刻み込んだ。
「(…………あ)」
いちごの動きが止まった。 (……また) (……また汚された……) (……今度は大根の泥……)
「おっと! 汚しちまったぜ!」 おばさんは悪びれる様子もなく笑った。 「だがいいじゃねえか! その泥の模様!」
そしておばさんはいちごの顔を覗き込み。 致命的な侮辱をラップに乗せた。
「Yo! さっきの嬢ちゃん(制服)と同じ顔だぜ!」 「中身も外見も頭の中も!」 「ぜーんぶ『赤ちゃん』だぜ! Yo!」
「(…………)」
「(…………あかちゃん?)」
いちごの頭の中で何かが切れた。 (……私の正義のコスチュームを泥で汚して……) (……スカートめくろうとして……) (……アホ毛を馬鹿のアンテナと呼んで……) (……挙句の果てに……)
(……あかちゃん、だぁ!?)
(ふざけるなああああああああっ!!!!)
いちごのアホ毛が怒りで限界まで逆立った。 彼女の全身からピンク色のオーラが湯気のように立ち上る。
(……だが待て) いちごは気づいた。 (……パンティが汚されてない……!) (……パンティを侮辱されてない……!) (……これじゃ怒りが足りない……!) (……これじゃ二段変身が……!)
「(……桃瀬さん!)」 ヨウくんの焦った声が通信機から飛ぶ。 (……トリガーが不発だ! このままではジリ貧だ!)
いちごは怒りと焦りで混乱した。 その隙をラップおばさんが見逃すはずがなかった。
「Yo! どうした黙って!」 おばさんは泥の付いた大根をもう一度振り上げた。 「そのスカートの中! 見せてみろって言ってんだろが!」
(……くっ!) (……こうなったら!)
いちごは咄嗟にスカートの裾を
「(……!)」 おばさんの動きが止まった。 野次馬たちも息を飲んだ。
いちごは自分のイチゴ柄のパンティ(※本日はピンク地に白の水玉)を堂々と晒した。
「……これのどこが赤ちゃんなんですか!」
「(…………は?)」 おばさんは呆然とした。 (……こ、このガキ……。自分でめくった……!?) (……しかもイチゴ……じゃなくて水玉……?)
「(……桃瀬さん! 逆ギレ! 新しいパターンだ!)」 ヨウくんが興奮気味に新しいPCに打ち込む。
「……そ、そうだ! そのパンツだ!」 おばさんは慌ててラップを再開した。 「水玉! イチゴ! どっちでも同じ!」 「ガキっぽい! ダサい! 赤ちゃんだ! Yo!」
(……よし! 言った!) いちごは心の中でガッツポーズをした。 (……言わせた! これで変身できる!)
「ヨウくんっ!!!!」
いちごの絶叫が商店街に響き渡った。 (※パンティ丸見えのまま絶叫している)
「(……ああ! 完璧な流れだ!)」 ヨウくんが物陰で興奮に打鍵しながら叫んだ。
「新しい! イチゴパンティだよッ!!」
銀色のポリ
「(……な、なんだアレ……!?)」 おばさんが空を見上げる。 いちごはそのポリ袋をスカートをめくり上げたまま片手で完璧にキャッチした。
(……お仕置きタイムです!)