護って!いちごちゃん!〜いちごパンティは見えてるか〜   作:ろくさん

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第6章:商店街炎上! MCオババのディスリスペクト その3

 

(……お仕置きタイムです!)

 

いちごはスカートをめくり上げパンティ(水玉)を晒したまま片手で新品のイチゴパンティ(ポリ袋入り)を完璧にキャッチした。 商店街の空気は完全に凍りついている。 ラップおばさんも野次馬たちも目の前で起きている異常事態を理解できずにいた。

 

(……赤ちゃん?) (……ガキっぽい?) (……ダサい?)

 

侮辱の言葉がいちごの頭の中で反響する。 (……上等じゃない!) (……見せてあげる!) (……本当の(ヒーロー)の『センス』を!)

 

いちごは意を決した。 彼女は握りしめたポリ袋を怒りを込めてビリビリに破り捨てた。 中から現れたのは汚れなき純白の生地に鮮やかな赤いイチゴが散りばめられた新品の「それ」だった。

 

「(……これが私の……!)」

 

いちごの瞳が燃えている。 (ここで履き替える!) (このおばさんの目の前で!) (野次馬たちの目の前で!) (ヨウくんのカメラの前で!)

 

羞恥が再び襲う。 だがもう遅い。 自分でめくって見せたのだ。 引くわけにはいかない。 これは「儀式」なのだ。

 

(見てなさい……!)

 

いちごは震える手で。 今履いているピンク地に白水玉のパンティ。 そのゴム紐に指をかけた。

 

「(……あ)」 野次馬の中から息を飲む音が聞こえた気がした。 (うるさい!) 心で叫ぶ。手は止めない。

 

「(……記録。桃瀬さん換装シーケンス移行。……逆光補正最大。フレームレート最大)」 物陰のヨウくんが冷静に新PC(カメラ)の録画設定を最適化した。

 

いちごは顔を羞恥と怒りで真っ赤に染め上げながら。 水玉パンティを一気に引きずり下ろした。 秋風が彼女のあらわになった聖域を撫でる。 完全な「丸出し」の状態。

 

(……恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!) だが怒りが勝る。 彼女は水玉パンティを衣装のポケット(ヨウくん回収用)にねじ込む。

 

そして。 新品のイチゴ柄を両手で広げた。 その純白の布地が夕日に輝いて見える。 いちごは素早くそれに足を通し。 一気に装着した。

 

清潔な真新しい布地が彼女の火照った肌に触れた。

 

その瞬間。

 

「なっ!?」

 

「うおっ!?」 「ま、眩しい……!」

 

いちごの身体が爆発的な光を放った。 さっきまでの淡い光ではない。 商店街全体が白昼になったかのような強烈な閃光。 光源はプリティストロベリー。 いや彼女が今まさに装着した「イチゴ柄」のパンティその一点から凄まじいピンク色の光が奔流となって溢れ出したのだ。

 

ラップおばさんはあまりの眩しさに咄嗟に腕で目を覆った。 野次馬たちも目を閉じる。 ヨウくんの新PC(カメラ)だけが特殊フィルター越しにその神々しい「変身(換装)」の一部始終を記録していた。

 

光の中でいちごの身体が変貌していく。 泥で汚れた白いコスチュームが光の粒子となって一度霧散する。 そして再構築される。

 

変身の「核」は今履き替えたばかりのイチゴ柄のパンティ。

 

(……っ!!!)

 

いちごは光の中で信じられない「感覚」に息を飲んだ。 履いたばかりのパンティが熱を帯びる。 まるでそれ自体が命を持ったかのように彼女の身体を締め付け変異していく。

 

「あ……っ!」

 

パンティのサイドライン。 その布地がありえないほどの張力で物理的に吊り上げられていく。 腰骨を遥かに越え彼女の脇腹のラインに沿って鋭角的に上へ上へと。

 

「(食い込んで……る……!)」

 

純白のイチゴ柄の布地が彼女の太ももの付け根その柔らかい内側に深く深く食い込んでいく。 それはもはや「パンティ」というより肌に張り付いた「第二の皮膚」であり「装甲」だった。 極限まで切り詰められた超ハイレグスタイル。

 

その変異した「イチゴ柄」を中心(コア)として。 残りのコスチュームが一瞬で再構築された。

 

胸元のリボンは戦闘機のようにシャープな形状に。 スカートは短く切り詰められたチュチュに変わりその下から食い込むハイレグのラインが惜しげもなく晒されている。 手には肘上までのロンググローブ。 足は膝上までの鋭いピンヒールのロングブーツ。 そして頭。 イチゴのカチューシャではなく天を突くように伸びたシャープな「ウサギの耳」。

 

光が収束していく。 おばさんがおそるおそる腕を下ろすとそこに立っていた「プリティストロベリー」の姿に絶句した。

 

「は……? え……?」

 

さっきまでのフリルたっぷりの魔法少女はどこにもいなかった。 そこにあったのは怒りをその食い込むハイレグのラインにまで宿した苛烈な「執行者」の姿だった。

 

「プリティストロベリー・バニー!」

 

地を這うような冷たい声。 さっきまでの必死だった少女の声ではない。

 

「な、なに……その、カッコ……」 おばさんのダミ声が震えている。

 

「(……対象『混乱』および『畏怖』モードへ移行。……完璧な変身(データ)だ)」 ヨウくんが通信機をそっと閉じた。

 

「あなたの『ディス』は……」

 

いちご(バニー)は冷たくおばさん(ラッパー)を見下ろした。

 

「もうおしまいです」

 

「あ……あ……」

 

おばさんはマイク(大根)を握りしめたまま動けない。 目の前の「バニー」が恐ろしくそしてあまりにも神々しかったから。

 

「ひっ!」

 

いちご(バニー)はゆっくりと八百屋の店先に置かれた巨大なラジカセに歩み寄った。 まだ古いビートを刻み続けている銀色の塊。 おばさんの「武器」であり「(ソウル)」でもあるそれ。

 

(このおばさんの『プライド』はこれ) (これを壊せば……!)

 

いちご(バニー)の狙いはラジカセだった。 彼女はその前に立つとゆっくりと右足のヒールを高々と振り上げた。 その動きは天を突くようにしなやかで美しい。 食い込んだハイレグのラインが彼女の可動域を限界まで見せつけていた。

 

(私の『アホ毛』を馬鹿のアンテナと言った!) (私の『イチゴ柄』を赤ちゃんと言った!) (その(フロウ)ごと叩き潰す!)

 

「さようならあなたの古い『ビート』」

 

「あ! やめ……! ワシのラジカセに……!」

 

おばさんが制止の声を上げるよりも早く。 いちご(バニー)のヒールがラジカセの中央スピーカー部分に叩き落とされた。

 

「ストロベリッシュ・バニー・クラッシュ!!」

 

バッキイイイイン!!! というプラスチックと金属が粉々に砕け散る甲高い破壊音が響き渡る。 ラジカセは一撃で粉砕された。 ビートが歪んだ断末魔のような音を立てて完全に沈黙した。

 

「あ……あ……ワシの……ワシの相棒(ラジカセ)が……!」

 

おばさんは膝から崩れ落ちラジカセの残骸を呆然と見つめている。 武器を失い魂を砕かれたのだ。

 

だがいちご(バニー)の「お仕置き」はそれだけでは終わらない。 彼女は崩れ落ちたおばさんの前に再び仁王立ちした。 そしてヨウくん(PC)に向かって頷いた。

 

ドン! ドン! ドン! チキ! 再びヨウくんのPCからアッパーな戦闘BGMリミックスが鳴り響く。 今度はボーカル(いちごの声)入りだ。

 

「(Yo! Listen!)」 いちご(バニー)はマイク(※エアマイク)を握り最後の「アンサー」を叩きつけた。

 

「アホ毛は『アンテナ』? そうかもね!」 「あなたの『悪意』を受信する!」 「だけど『馬鹿』じゃない! 感じてる!」 「みんなの『困惑』『悲しみ』を!」

 

「スカート短い? 赤ちゃん?」 「これも私の『戦闘服』!」 「男に媚びてる? 冗談じゃない!」 「私が(まも)るのこの(ストリート)!」

 

「『古い』ライムじゃ響かない!」 「『ディス』じゃ誰も救えない!」 「本当の『強さ』見せてあげる!」 「愛と正義の! (Yeah!)ストロベリー!」

 

ラップ(というより決めゼリフの連呼)が終わると同時。 いちご(バニー)は最後の決めポーズをビシッと決めた。 その衝撃波()で粉々になったラジカセの破片がさらに細かく砕け散った。

 

「…………」

 

商店街が静まり返った。 野次馬たちも言葉を失いその光景に圧倒されていた。 さっきまでおばさんを煽っていた手拍子も完全に止んでいる。

 

「……あ……あ……」 おばさんは口をパクパクさせている。 反論の言葉(ライム)が出てこない。 完敗だった。

 

やがて。 「「「うおおおおお!!」」」 誰からともなく拍手が起こった。 さっき泣かされていた若い奥さんが手を叩いて叫んだ。 「すごい! かっこいい!」 「そうだそうだ!」 野次馬たちからも大歓声が沸き起こった。

 

その時遠くからようやくパトカーのサイレンが近づいてきた。 (※ヨウくんが騒音(おばさんのラジカセ)で通報済みだった)

 

「……ふぅ」 いちご(バニー)はその光景を見届けると静かに変身を解いた。 (※実際は変身の光と共にハイレグの食い込みが元のパンティのラインに戻りチュチュも元のスカート丈に戻った)

 

そして元のプリティストロベリーの姿に戻ると駆けつけた警察官にドンと音を立てて大根(聖剣)と粉々になったラジカセの残骸を差し出した。

 

「お巡りさん! このおばさんです!」

 

「(……え? なにこの子? え? 大根? ラジカセ?)」 警察官は混乱していた。

 

数分後。 現場検証が続く商店街の隅。 いちごはヨウくんから受け取った制服(カバン)をなんとか羽織り(※下はまだコスチュームだが)人目から隠れていた。 スカートの泥汚れは変身の光で消えていた。

 

「ぷはー。疲れた……ラップって難しい」

 

「お疲れ桃瀬さん」

 

ヨウくんがイチゴミルク(※近くの自販機で買った)を差し出した。

 

「わ、ありがと!……ていうか!」 いちごはイチゴミルクを受け取りながらヨウくんのもう片方の手を睨んだ。 そこには見覚えのあるジップロック(サンプルNo.5)が握られていた。 (※さっきいちごが脱ぎ捨てた水玉パンティ)

 

「(……また回収した……)」

 

「(……水玉(サンプル)か。これも貴重なデータだ)」 ヨウくんがボソリと呟いた。

 

「『水玉』言うなー!」

 

いちごはイチゴミルクのパックをヨウくんに叩きつけようとして思いとどまった。 (……あ。パソコン買ってくれたんだった) (……殴るのもやめておこう)

 

「……ねえヨウくん。コロッケ買って帰らない?」

 

「ああ。いいだろう。僕も小腹が空いた」

 

ご近所の平和(と商店街の静寂)は今日もかろうじて護られたのだった。

 

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