護って!いちごちゃん!〜いちごパンティは見えてるか〜   作:ろくさん

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第7章:水中の女帝! プールサイドのデッドヒート その2

 

「……小娘。お前も『浄化』してやる」

 

ウォーキングオババはビート板を盾のように構えた。 そのゴーグルの奥の瞳は冷たくいちごを射抜いている。 プールサイドで悲しそうにしていたおばあちゃんも他の利用者たちも固唾を飲んで成り行きを見守っていた。 監視員だけがあわあわと笛を吹こうか迷っている。

 

(……来る!) いちごは腰を落とし戦闘態勢に入った。 水中での戦いは初めてだ。 だがこのプリティストロベリー・オルカ(ヨウくん特製)がある! (どんな秘密があるか知らないけどきっとすごいんだ!) 根拠のない自信がいちごを支えていた。

 

ザバァッ! 先に動いたのはオババだった。 彼女はビート板を盾にしたまま猛烈な勢いで水中を「歩き」始めた。 いやそれは歩行ではない。 凄まじい脚力で水を蹴り爆発的な推進力を生み出している。 まるで人間魚雷だ。

 

「(速い!)」 いちごは驚愕した。 水面が盛り上がり渦潮のような波がいちごに向かって押し寄せる。 これが「女帝ウォーク」!

 

「(うわっ!)」 いちごはその強烈な水流に足を取られ体勢を崩した。 水の抵抗が思った以上に重い。 いつものように華麗に避けることができない。

 

「(桃瀬さん! 水の抵抗を計算に入れろ! 敵はそれを完全に掌握している!)」 二階のヨウくんから冷静な分析が飛ぶ。 (わかってるよ!) いちごは必死に足を踏ん張り押し寄せる(オババ)を迎え撃った。

 

「水の『理』!」 オババは低い声で唸ると(ビート板)をいちごの顔面に叩きつけてきた。

 

「(させない!)」 いちごはそれを腕でガードする。 バチン! と鈍い音が響いた。 (……硬い! ただのビート板じゃない!?) 素材が違うのかオババの筋力が異常なのか。 腕が痺れるほどの衝撃だった。

 

「(くっ……!)」 いちごはガードした腕を弾かれがら空きになった胴体にオババの膝蹴りが突き刺さった。 水中での打撃。 衝撃は水を通して増幅されいちごの呼吸が一瞬止まる。 「ぐ……!」

 

(桃瀬さん! オルカの機能を使え! 背中のスイッチだ!) ヨウくんの声。 (背中!? スイッチ!?) いちごはパニックになりながら背中に手を回した。 確かにゼッケンの下あたりに小さな硬い感触がある。 (これか!) いちごはそれを強く押した。

 

ブブブブ……! かすかな振動音と共にいちごの身体に異変が起きた。 オルカ(水着)の生地が水を弾き始める。 そして足首の部分からかすかな水流ジェットが噴射された。

 

「(うわ! なにこれ!)」 いちごの身体が水面を滑るように後ろに下がった。 オババの追撃をギリギリで回避する。 (すごい! ヨウくん!)

 

『(……ヨウくんファイバーVer.3。超撥水性と小型水流ジェット機能。……ただしバッテリーは五分だ)』 ヨウくんの冷静な補足。 (五分!? 短っ!)

 

「……ほう。小細工を」 オババはいちごの動きの変化に気づいた。 だが動じない。 彼女は(ビート板)を捨てた。 そしてレーンロープにぶら下げてあった「プルブイ」(足に挟む浮き具ひょうたん型)を二つ掴んだ。

 

「(……あれをどうする気?)」 いちごが警戒する。 オババはプルブイを両手に持つと凄まじい勢いで腕を回転させ始めた。 水しぶきが激しく舞い上がる。 遠心力でプルブイが唸りを上げている。

 

水渦(みうず)!」 オババが叫ぶと同時。 二つのプルブイがいちごに向かって投げつけられた。 それはただの投擲ではない。 高速回転による螺旋状の水流を纏った凶器だった。

 

「きゃあっ!」 いちごは水流ジェットで回避しようとする。 だが二つのプルブイは正確にいちごの両側を狙っていた。 避けきれない! いちごは咄嗟に腕でガードする。

 

バチン! バチン! 硬いプルブイが腕に激突した。 それだけではない。 螺旋水流がオルカ(水着)の生地を抉るように襲いかかる。

 

ビリッ! 「(あ!)」 いちごの肩の部分。 ヨウくんファイバーVer.3(薄い生地)が水流に耐えきれずわずかに裂けた。 白い肌が覗く。

 

「(……まずい! 生地強度が足りない!)」 ヨウくんが分析する。

 

「……(もろ)いな。所詮は(おか)の者の水着か」 オババは冷たく言い放つと再びプルブイを構えた。

 

(くそっ! あのプルブイ攻撃やばい!) いちごは焦った。 水流ジェットを使えば避けられるかもしれない。 だがバッテリーはあとわずかだ。 (どうすれば……!)

 

その時いちごの目にプールサイドに置かれた赤い「監視台」が映った。 (あれだ!) いちごは水流ジェットを最大噴射させ一気にプールサイドへと上がった。

 

「……逃げるか。(おか)へ」 オババは追ってこない。 水中こそが彼女の領域(テリトリー)だからだ。 彼女はレーンの中央で静かにいちごを見据えている。

 

「(……はぁ、はぁ……)」 いちごは肩で息をする。 裂けた水着の肩紐を押さえる。 (……あの人強すぎる) (水中じゃ勝てない……!)

 

『(桃瀬さん! 発想を転換しろ!)』 ヨウくんの声。 『(水中で勝てないなら(おか)に引きずり出せ!)』

 

(陸に……?) いちごは監視台を見上げた。 高さは二メートルほど。 (……そうだ!)

 

いちごは監視台に駆け上がった。 そしてレーンの中央で静止しているオババに向かって叫んだ。 「おばあさん! 水の中ばかりじゃなくてたまには(おか)の空気も美味しいですよ!」 挑発だった。

 

「……小娘が」 オババのゴーグルの奥の目がわずかに怒りの色を帯びた。 「水こそが命の源。(おか)など(けが)れた仮初(かりそめ)の世界」

 

「そんなこと言って! 本当は(おか)に上がるのが怖いだけでしょ!」 いちごはさらに煽る。 「その引き締まった身体も(おか)じゃただの重り! 水の助けがないと何もできない!」

 

「……黙れ」 オババの声が低くなった。 水面が怒りで波立っている。

 

(おか)に上がってきなさいよ! どっちが本物か勝負しましょう!」

 

「……よかろう」 オババはついに挑発に乗った。 「水の『(ことわり)』を(おか)でも教えてやる」 ザバァッ! オババはプールサイドに上がった。 水から上がった彼女の肉体はさらに威圧感を増していた。 水滴が褐色の肌を滑り落ちる。

 

(……来た!) いちごは監視台の上で身構えた。 ((ここ)なら私のフィールドだ!)

 

()らえ!」 オババはプールサイドに置いてあった清掃用の「デッキブラシ」を掴んだ。 そしてそれを槍のように構え監視台に向かって投げつけてきた!

 

「(えええ!? ブラシ!?)」 いちごは咄嗟に横に跳んで回避する。 デッキブラシは監視台のプラスチック座席に突き刺さった。

 

「(……あの人なんでも武器にする!)」 いちごが着地した瞬間。 オババは既に監視台のハシゴを登り始めていた。 その動きは老齢とは思えないほど素早い。

 

「(まずい! 狭い場所じゃ不利だ!)」 いちごは監視台から飛び降りようとした。 だがオババの方が早かった。 彼女はいちごの足首を掴んだ。 「!」 いちごはバランスを崩し監視台の手すりに胸を打ち付けた。 「ぐっ……!」

 

(おか)でも水の『(ことわり)』は変わらん」 オババはいちごの足首を掴んだまま逆さ吊りのような状態にした。 いちごの身体が手すりからぶら下がる。

 

「きゃあああっ!」 当然スクール水着(オルカ)の上半身がずり下がり胸元があらわになる。 そして下半身も重力に従い水着のお尻部分が食い込み…… イチゴ柄のプリントされた生地が限界まで引っ張られた。

 

「「「おおおおお!!」」」 プールサイドの男子中学生たちが(なぜか)興奮している。

 

「(……記録。最大露出。……オルカの耐久テストとしては良好なデータだが……)」 ヨウくんが冷静にカメラのズームを調整する。

 

「は、離して! この!」 いちごは必死に足をバタつかせる。 だがオババの握力は異常に強い。

 

「……ふん。やはり(おか)の者は(もろ)い」 オババはいちごを吊り下げたまま彼女の水着(オルカ)を品定めするように見た。 肩の裂け目。 胸元の「ICHIGO」ゼッケン。 そして引っ張られて食い込んでいるお尻の「イチゴ柄」。

 

「……なんだその柄は」 オババは心底理解できないという顔で呟いた。 「……(みず)戦士(せんし)果実(かじつ)の柄とは……」 彼女は空いている方の手でいちごのお尻のイチゴ柄をペチペチと叩いた。

 

「ひゃっ!」 いちごが変な声を上げる。

 

「……ふざけているのか? (みず)愚弄(ぐろう)する気か?」 オババの目が怒りに燃えた。 「イチゴなどケーキの上にでも乗っていろ!」 「(ここ)神聖(しんせい)な『(ロード)』だ!」

 

(……イチゴ) (……ケーキの上?) (……水着(オルカ)愚弄(ぐろう)……?)

 

いちごの中で何かが切れた。 (この水着(オルカ)は!) (ヨウくんが私のために作ってくれた!) ((ここ)で戦うための!) (私の正義(イチゴ)の証なのに!)

 

「(ふざけるなああああああっ!!!!)」

 

いちごのアホ毛が怒りで限界まで逆立った。 彼女の全身からピンク色のオーラが湯気のように立ち上る。

 

「(……来た! トリガー成立!)」 ヨウくんがガッツポーズ(※無表情)をした。

 

「ヨウくんっ!!!!」

 

いちごの絶叫が市民プール中に響き渡った。 (※逆さ吊りパンティ(水着)食い込み状態で絶叫している)

 

その声に応えヨウくんが観覧席から何かを投げた。 銀色のポリ袋ではない。 もっと硬質でメタリックな輝きを持つ「何か」。 それは正確ないちごの逆さ吊りの手元に向かって飛んでいく。

 

「プリティストロベリーッ!」 ヨウくんが叫ぶ。

 

「新しい! 『オルカ・フィン』だよッ!!」

 

(……フィン?) いちごはその飛来物を空中で完璧にキャッチした。 それはイルカのヒレのような形状をした銀色の「アタッチメントパーツ」だった。

 

(……お仕置きタイムです!)

 

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