護って!いちごちゃん!〜いちごパンティは見えてるか〜 作:ろくさん
バッ! 男のトレンチコートが大きく開かれた。 いちごは目を瞑る暇もなかった。 息を呑み固まる。 何が飛び出すのか。 ナイフか銃か。 あるいはもっとおぞましい何かが。
しかしそこに現れたのは。 いちごの想像を遥かに超えたそしてある意味最も恐れていた「現実」だった。
「…………え?」
コートの内側。 そこには何もなかった。 いや正確にはほとんど何もなかった。 男は首から下完全に全裸だったのだ。 申し訳程度に首に締められた歪んだネクタイを除いては。
春の柔らかな日差しが男のたるんだ中年男性の裸体を白日の下に晒している。 満開の桜吹雪がその裸身の周りを祝福するかのように舞っていた。 あまりにもシュールでグロテスクな光景。
「(……ひっ……!)」 いちごは声にならない悲鳴を上げた。 全身の血の気が引いていく。 足が震え立っているのがやっとだった。
『(……記録。コート内部展開。……全裸。ネクタイ着用。……予測データと一致。脅威レベルをB+から
男は
「……ああ……素晴らしい……」 男はうっとりと呟いた。 「……これが春。これが自由」 そして彼はゆっくりといちごを見下ろした。 その目は狂気に満ちている。
「さあ
「(……え?)」
「君も
「(……どうし!?)」 いちごは意味がわからなかった。 だが次の瞬間男が何をしようとしているのか理解した。
男は笑顔のまま。 その両手をいちごの
「いやあああああああっ!」 いちごはようやく金縛りが解けた。 全力で男を突き飛ばそうとする。 だが男は意外にも力が強い。 がっしりと肩を掴まれ逃げられない。
「フフフ……何を恥ずかしがる必要がある」 男は耳元で囁く。 「
「(なに言ってんのこの人!?)」 いちごはパニックだった。 男の汗臭い体臭と狂気の言葉がいちごの精神を蝕んでいく。 腕を振りほどこうともがく。 だが男の掴む力は緩まない。
「(桃瀬さん! 落ち着け! 関節技を狙え!
ミシミシ…… いちごのブラウスのボタンが悲鳴を上げる。 第一ボタンが弾け飛んだ。 白い肌があらわになる。
「(……やだ! やだやだ!)」 いちごの目に涙が浮かぶ。 恐怖と嫌悪感で気が狂いそうだ。
(こうなったら!) いちごは最後の力を振り絞り男の急所股間を狙って膝蹴りを叩き込んだ。 (当たれ!)
「むん!」 しかし男は鍛えているのか脂肪が厚いのか。 いちごの渾身の膝蹴りを平然と受け止めた。 「……フフ。元気な妖精だ」
(……効かない!?) いちごは絶望した。 男の手がいちごのスカートのホックに伸びる。
「(ダメ……!)」
その時だった。 いちごの頭の中で何かが閃いた。 (そうだ! この男変質者だけど『プリティストロベリー』のファン(古参)だった可能性は!?) (もしかしたら私の『決めゼリフ』が効くかも……!)
いちごは息を吸い込んだ。 そしてありったけの声で叫んだ。 「愛と正義の! プリティストロベリー! あなたに! お仕置きです!」
「……?」 男の動きが一瞬止まった。 (効いた!?) いちごは期待した。
だが男は首をかしげただけだった。 「……ぷりてぃ……? 何のことかな?」 そしてすぐにまたスカートのホックを外そうとし始めた。
(ダメだああああ! ファンじゃなかったあああ!) いちごの最後の希望が打ち砕かれた。
プチッ。 ついにスカートのホックが外れた。 ずり落ちていく制服のスカート。 いちごの下半身があらわになる。 幸い今日はスパッツを履いていた。 (……セーフ……じゃない!)
男の手がいちごの
「(もう我慢できない!)」 いちごの中で何かが完全に切れた。 恐怖が怒りに変わる。 (この変態! 絶対に許さない!)
いちごは掴まれていた腕を振りほどくと同時。 渾身の力で男の顔面に頭突きを食らわせた。 ゴツン! という鈍い音。
「ぐふっ……!」 さすがにこれは効いたらしい。 男が鼻血を流しよろめいた。 いちごはその隙に距離を取る。
「(……はぁ、はぁ……!)」 スカートがずり落ちスパッツ姿という屈辱的な格好。 だが今はそんなことを気にしている場合ではない。 目の前の
「……やるな。妖精」 男は鼻血を手の甲で拭うと再び狂気の笑みを浮かべた。 「……だが遊びは終わりだ」 男は自分のトレンチコートをバサリと脱ぎ捨てた。 完全に
「(ひいいい! 脱いだ!)」 いちごは再び恐怖に襲われた。 だが今度は逃げない。 (戦うんだ!)
「(桃瀬さん! 距離を取れ! 武器を使え! そこにある枝だ!)」 ヨウくんが指示を出す。 いちごは足元に落ちていた手頃な太さの桜の枝を拾った。 (これで……!)
「フン!」 男は
そして。 男はいちごの構えた枝ではなく。 いちごの履いている「スパッツ」そのものを掴んだ!
「なっ!?」
「捕まえた!」 男はそのまま力任せにいちごを地面に押し倒した。 ドン! と背中を打ち付ける。 いちごは受け身を取れず息が詰まった。
男はいちごの上に馬乗りになる。 体重をかけられ身動きが取れない。「やだやだ!離して! この変態!」 いちごは必死にもがく。 だが男の力は圧倒的だった。
「さあ妖精。本当の姿になるのだ」 男はいちごのスパッツのゴムを掴み力ずくで引き下げようとする。 ミシミシと布地が悲鳴を上げる。
「(やだ! やだ! これだけは!) いちごは泣き叫びながら抵抗する。 だが男の力は緩まない。 ついにスパッツが半分ほど引きずり下ろされた。
そして。 いちごの最後の砦。 彼女が今日履いていた白地に小粒の赤イチゴが散りばめられた純白のパンティが。 男の狂気の目の前に晒された。
「…………」
男の動きがぴたりと止まった。 彼は自分の「戦果」を凝視している。 いちごは恐怖と屈辱で全身が震えていた。
(……見られた) (……最悪の形で……!)
男は数秒間そのイチゴ柄を見つめた後。 心底不思議そうな顔で呟いた。
「……ん?」
男はゆっくりと顔を上げいちごの涙で濡れた顔を見た。 そしてまた視線を下に落としイチゴ柄のパンティをまじまじと見る。 何かを考えているようだ。 そしてついに理解したかのように。 口を開いた。
「……イチゴ……?」
男の声には怒りも興奮もない。 ただ純粋な「疑問」とそしてほんのわずかな「呆れ」が混じっていた。
「……柄? イチゴ柄??」
男はまるで信じられないものを見たかのように。 ぷっ……と吹き出した。
「は……はは……」
最初は小さな笑い声だった。 だがそれはすぐに抑えきれない大爆笑へと変わった。
「はっはははは! イチゴ!? いちご柄のパンツ!?」
男は馬乗りになったまま腹を抱えて笑い転げている。 涙を流して。 呼吸困難になるほどに。
「子供かッ!幼子か!?」 「はははは! こんな
(…………) (…………いちご) (…………ダサい?) (…………子供?)
いちごの頭の中で男の甲高い笑い声とその言葉が反響した。 恐怖が消えていく。 羞恥が消えていく。 後に残ったのはマグマのように熱く燃え上がる純粋な「怒り」だけだった。
(……この) (……この変態がああああああっ!!!!)
いちごのアホ毛が怒りで限界まで逆立った。 彼女の全身から凄まじいピンク色のオーラが立ち上る。 馬乗りになっていた男がその熱量に「あっつ!」と声を上げた。
「(……来た! トリガー成立! しかも馬乗り状態! これは最高のデータが!)」 高台のヨウくんがカメラのズームを最大にした。
「ヨウくんっ!!!!」
いちごの絶叫が春爛漫の公園に響き渡った。 (※スパッツ半脱げパンティ丸見え馬乗り状態で絶叫している)
その声に応えヨウくんが高台から何かを投げた。 いつもの銀色のポリ袋。 それは正確にいちごが男に押さえつけられていない方の手元に向かって飛んでいく。
「プリティストロベリーッ!」 ヨウくんが叫ぶ。
「新しい! イチゴパンティだよッ!!」
(……来た!) いちごはそのポリ