護って!いちごちゃん!〜いちごパンティは見えてるか〜   作:ろくさん

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第8章:春の珍事! 公園のコート(一丁)おじさん その3

(……お仕置きタイムです!)

 

いちごは怒りに震える手で新品のイチゴパンティ(ポリ袋入り)を掴み取った。 下着は半脱げのまま男に馬乗りされている最悪の状況。 だが彼女の瞳にはもう恐怖も羞恥もない。 春の陽光を反射して燃え盛る怒りの炎だけがあった。

 

「はっははは! イチゴパンツ!!ふふははっは」 男はまだ芝生の上で笑い転げている。 自分の上にいる少女の身体から放たれる尋常ならざるオーラ。 公園の空気がピリピリと張り詰めていく感覚。 その変化に全く気づいていない。愚かにも。

 

(……赤ちゃん?) (……子供っぽい?) (……ダサい?)

 

侮辱の言葉がいちごの怒りの炉にくべられる薪となる。 熱い。 身体の芯から燃え上がるような怒り。 (……今ここで!) (……この変態の目の前で!) (……この桜吹雪の中で!) (……変身してやる!)

 

いちごは意を決した。 彼女は握りしめたポリ袋を怒りを込めてビリビリに引き裂いた。 ビニール片が桜の花びらと共に宙を舞う。 中から現れたのは汚れなき純白の生地に鮮やかな赤いイチゴが散りばめられた新品の「それ」だった。 春の日差しを受けて神々しいまでに白く輝いて見える。

 

「(……これが私の!)

 

いちごは震える手で。 今まさに白日の下に晒されている泥のシミがついたイチゴ柄パンティ。 その湿ったゴム紐に指をかけた。 汗ばんだ指先が滑る。

 

(見られたっていい!) (笑われたっていい!) (でも!) (このまま終わるわけにはいかない!)

 

「(桃瀬さん! 光で隠れている! 今だ!)」 ヨウくんの声が骨伝導イヤホンから鋭く響いた。 いちごは頷く。 今しかない。

 

彼女が握りしめた新品のイチゴパンティから淡いピンク色の光が溢れ始めた。 まるで内側から発光しているかのようだ。 周囲の桜の花びらがその光を浴びて蛍光ピンクに染まる。

 

「ん? なんだ……? 光っ……?」 男がようやく異変に気づき笑うのをやめた。 目の前の少女の手元が眩しく発光している。 それがいちごの最後の隙を与えた。

 

その光を目眩ましにするように。 いちごは素早くしかし確実な動きで。 汚されたパンティを一気に引きずり下ろした。 汗と泥と涙で湿った布地が肌から離れる不快な感触。 春風が彼女のあらわになった聖域を撫でる。 完全な「丸出し」の状態。 芝生の感触が直接肌に伝わる。

 

(……恥ずかしいけど!) (……負けない!)

 

彼女は汚れたパンティ(子供っぽいダサいヤツ)を憎しみを込めて丸めると。 馬乗りになっていた男の顔に叩きつけた。「むぐっ!?」 男が窒息しそうな声を上げる。 (これで少しは黙ってなさい!)

 

そして。 新品のイチゴ柄を両手で広げ足を通し。 一気に装着した。 清潔な真新しい布地が彼女の火照った肌に触れた瞬間。 まるで全身の細胞が活性化するような感覚があった。

 

「なっ!?」

 

「うおっ!?」 「ま、眩しい……!」

 

いちごの身体が爆発的な光を放った。 さっきまでの淡い光ではない。 公園全体が真昼になったかのような強烈な閃光。 光源はプリティストロベリー。 いや彼女が今まさに装着した「イチゴ柄」のパンティその一点から凄まじいピンク色の光が奔流となって溢れ出したのだ。 桜の花びらさえもその光の中で白く焼き尽くされて見える。

 

男はあまりの眩しさに咄嗟に腕で目を覆った。 「ぐあああ! 目が! 目がああああぁぁぁああ!」 彼は口に詰められたパンティ(汚)を吐き出す間もなくいちごの上から転がり落ち芝生の上でのたうち回った。 桜の木の下で日向ぼっこしていた老人たちも遠巻きに見ていた家族連れも皆目を覆っている。

 

ヨウくんの高画質小型カメラだけが特殊フィルター(ヨウくん開発Ver.2)越しにその神々しい「変身(換装)」の一部始終を記録していた。 新PCの処理能力が悲鳴を上げるほどの膨大なデータ量だ。

 

光の中でいちごの身体が変貌していく。 脱げたスパッツ。 破れたブラウス。 それらが光の粒子となって一度霧散する。 物理法則を超えた現象。 そして再構築される。

 

変身の「核」は今履き替えたばかりのイチゴ柄のパンティ。

 

(……っ!!!)

 

いちごは光の中で信じられない「感覚」に息を飲んだ。 履いたばかりのパンティが熱を帯びる。 まるでそれ自体が命を持ったかのように彼女の身体に合わせて変形し締め付け変異していく。 怒りのエネルギーがパンティを通して全身に流れ込む。

 

「あ……っ!」

 

パンティのサイドライン。 その布地がありえないほどの張力で物理的に吊り上げられていく。 腰骨を遥かに越え彼女の脇腹のラインに沿って鋭角的に上へ上へと。 皮膚にくい込むほどの圧迫感。 だがそれは痛みではなく力への昇華だった。

 

「(んっ!…食い込んで……くる……!)」

 

純白のイチゴ柄の布地が彼女の太ももの付け根その柔らかい内側に深く深く食い込んでいく。 それはもはや「パンティ」というより肌に張り付いた「第二の皮膚」であり「装甲」だった。 極限まで切り詰められた超ハイレグスタイル。 怒りの紋章。

 

その変異した「イチゴ柄」を中心(コア)として。 残りのコスチュームが一瞬で再構築された。 光の糸が身体に巻き付き形を成していく。

 

胸元のリボンは戦闘機のようにシャープな形状に。 スカートは短く切り詰められたチュチュに変わりその下から食い込むハイレグのラインが惜しげもなく晒されている。 手には肘上までのロンググローブ。 指先まで力がみなぎる感覚。 足は膝上までの鋭いピンヒールのロングブーツ。 大地をしっかりと踏みしめる安定感。 そして頭。 イチゴのカチューシャではなく天を突くように伸びたシャープな「ウサギの耳」。 周囲の音情報を増幅して拾い上げている。

 

光が収束していく。 いちごはゆっくりと立ち上がった。 芝生の上に転がり目を押さえている全裸(ネクタイのみ)の男を見下ろす。 彼女の姿は怒りをその食い込むハイレグのラインにまで宿した苛烈な「執行者」だった。 桜吹雪が彼女の周囲を祝福するように舞っている。 だがそれは春ののどかな風景ではない。 処刑台の上の断罪者のようだ。

 

「プリティストロベリー・バニー!」

 

地を這うような冷たい声。 さっきまでの必死だった少女の声ではない。 怒りと決意に満ちた声。

 

「な、なんなんだ……いったい……」 男は光で焼かれた目をしばたかせながらかろうじていちご(バニー)のシルエットを捉えた。 さっきまでのただの女子高生(妖精)とは明らかに違う。 圧倒的な存在感。 神々しさすら感じる。 だがそれ以上に恐ろしい気迫。 本能が危険信号を発している。

 

「(……対象『混乱』および『恐怖』モードへ移行。……完璧な変身(データ)だ。バイタルサイン低下確認)」 ヨウくんが通信機をそっと閉じた。 カメラは回し続ける。

 

「あなたの『解放』は……」

 

いちご(バニー)は冷たく(変質者)を見下ろした。 その目は憐れみのかけらもなかった。

 

「もうおしまいです」

 

「あ……あ……」

 

男は起き上がろうとするが腰が抜けて動けない。 目の前の「バニー」が放つプレッシャーが彼を地面に縫い付けている。 全裸の身体が恐怖で小刻みに震えていた。 桜の花びらがそのみすぼらしい身体に張り付く。

 

「ひっ!」

 

いちご(バニー)はゆっくりとその男に歩み寄った。 ピンヒールが春の柔らかな芝生に深く突き刺さる。 ザクッザクッという音が男の鼓膜に不気味に響いた。

 

(この変態に物理的な『お仕置き』は……) (……いやコイツは別だ!) (私の身体(からだ)に触った!) (私を(はずかし)めた!) (全力でいく!) (手加減はしない!)

 

いちご(バニー)の狙いは男本人。 彼女はその全裸(ネクタイのみ)の男の目の前に立つとゆっくりと右足のヒールを高々と振り上げた。 空中で静止するブーツ。 その動きは天を突くようにしなやかで美しい。 食い込んだハイレグのラインが彼女の可動域を限界まで見せつけていた。 ブーツの先端に怒りのエネルギーがピンク色の光となって収束していく。

 

(私の『イチゴ柄』を子供っぽいと言った!) (ダサいと言った!) (その目に焼き付けなさい!) (これが私の正義(イチゴ)最終形態(バニー)だ!)

 

「さようならあなたの歪んだ『春』」

 

「ま、待て! やめ……! 悪かった! 許してくれ!」 男が初めて恐怖に歪んだ声で命乞いをした。 だが遅い。 いちご(バニー)の心はもう凍り付いていた。

 

いちご(バニー)のヒールが男の鳩尾(みぞおち)その一点を目掛けて正確に振り下ろされた。 空気抵抗すら感じさせない速度。

 

「ストロベリッシュ・バニー・クラッシュ!!」

 

ゴッ!!!! という肉を打つ音とは思えない鈍く重い破壊音が春の公園に響き渡る。 男の身体が「く」の字に折れ曲がった。 肋骨(あばら)が砕ける嫌な音が微かに聞こえた。 衝撃波が芝生を揺らし桜の花びらが激しく舞い上がる。 男は白目を剥き口から泡を吹き完全に意識を失った。 その表情には恐怖と苦悶が張り付いていた。

 

「…………」

 

公園が静まり返った。 家族連れも子供たちも遠巻きにその光景を見ていたが誰も声を出せない。 あまりにも苛烈な「お仕置き」だったからだ。 桜吹雪だけが何もなかったかのように舞い続けている。

 

いちご(バニー)は気絶した(全裸)を見下ろし冷たく言い放った。 「お仕置き完了です」

 

そして彼女は拾い上げた桜の(さっき自分が武器にしようとしたもの)と男が脱ぎ捨てたトレンチコートのベルトを使い。 手際よく気絶した男を桜の古木に縛り付けた。 まるで手慣れた猟師が獲物を吊るすように。 全裸の男がミノムシのように木にぶら下がるシュールな光景が出来上がった。

 

ウー、ウー、ウー…… その時ようやく遠くからパトカーのサイレンが近づいてきた。 (※ヨウくんが不審者(全裸)および傷害事件(頭突き)で通報済みだった)

 

「……ふぅ」 いちご(バニー)はその光景を見届けると静かに変身を解いた。 (※実際は変身の光と共にハイレグの食い込みが元のパンティのラインに戻りチュチュも元のスカート丈に戻った)

 

そして元のプリティストロベリーの姿に戻ると駆けつけた警察官に木に縛り付けられた(全裸ミノムシ状態)を指差した。

 

「お巡りさん! この人です! 公然わいせつと暴行罪です!」

 

「(……え? なにこの子? え? 全裸? 縛られてる? ミノムシ?)」 警察官は混乱していた。 いちごは冷静に(しかし内心はまだ怒りで震えながら)状況を説明した。

 

数分後。 現場検証と(変質者)逮捕劇(※木から降ろすのに手間取った)が続く公園の隅。 いちごはヨウくんから受け取った制服(カバン)をなんとか羽織り(※下はコスチュームのまま)人目から隠れていた。 破れたブラウスと失われたスカート。 今日の被害は甚大だ。

 

「ぷはー。疲れた……春って怖い。トラウマになりそう」 いちごはぐったりとベンチに座り込んだ。

 

「お疲れ桃瀬さん」 ヨウくんがイチゴミルク(※近くの自販機で買った)を差し出した。 彼の目は興奮でわずかに輝いているように見えた。

 

「わ、ありがと!……ていうか!」 いちごはイチゴミルクを受け取りながらヨウくんのもう片方の手を睨んだ。 そこには見覚えのあるジップロック(サンプルNo.7)が握られていた。 (※さっきいちごが男の顔に叩きつけた泥付きイチゴパンティ)

 

「(……また回収した……!)」

 

「(……これも貴重なデータだ。……念入りな滅菌(めっきん)プロトコルが必要だな)」 ヨウくんがボソリと呟いた。

 

「『滅菌』言うなー!」

 

いちごはイチゴミルクのパックをヨウくんに叩きつけようとして思いとどまった。 (……あ。パソコン新しくなったんだった) (……殴ったらまた弁償させられる……!) (……でも!) 「ねえヨウくん! もう春のパトロールやめない!? 私もう桜見たくない!」

 

「いや。データが不足している。特異個体(コートおじさん)の行動パターン心理分析にはさらなるサンプルが必要だ。明日も続行だ」

 

「えええええ! もう会いたくないよ!」

 

ご近所の平和(と春の風紀)は今日もかろうじて護られたのだった。 いちごの深いトラウマと共に。

 

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