護って!いちごちゃん!〜いちごパンティは見えてるか〜 作:ろくさん
「そこまでだよ!おじさん達!」
いちごは保育園の裏手用具倉庫の陰から勢いよく飛び出した。
純白のコスチュームが初夏の眩しい日差しを浴びてキラキラと輝いていた。
「(……ん?)」
「(……なんだ?)」
保育園の通用門前。
さっきまでボイン先生が出てくるのを待ち構えていた十数人のおじさん
彼らはまだボイン先生が園内に引っ込んだ後も諦めきれずに粘っていたのだ。
「次のハプニング」を期待して。
「(……コスプレ?)」
「(さっきのガキか?)」
「(
男たちの間に失笑が漏れる。
彼らにとっていちごは「
その小娘が何やら派手な格好で出てきたところで脅威には感じない。
むしろ新しい「撮影対象」が増えたとすら思っているかもしれない。
いちごはその侮蔑的な視線を真正面から受け止めた。
怒りでアホ毛がピクピクと震える。
(……こいつら反省の色ゼロだ)
(先生の優しさ(鈍感さ?)に甘えて!)
(絶対に許さない!)
いちごはビシッと男たちを指差した。
「愛と正義の! プリティストロベリー!」
決めポーズを取る。
風が彼女のスカートをふわりと揺らした。
「おお……」
男たちの中から感嘆とも興奮ともつかない声が漏れた。
やはり新しい「被写体」としてロックオンしたらしい。
数人が慣れた手つきでカメラをいちごに向け始めた。
カシャカシャというシャッター音が響く。
「ご近所の
いちごは続ける。
「ここから立ち去りなさい! さもないと……!」
いちごは拳を握りしめる。
「お仕置きです!」
「ぷっ……あはは!」
「お仕置きだってよ!」
「マジウケるんだけどこの子!」
男たちは腹を抱えて笑い出した。
完全にいちごを子供扱いし馬鹿にしている。
「(……舐めやがってぇ……!)」
いちごの怒りがさらに増す。
「いい加減にしてください!」
いちごは男たちの輪の中心に踏み込んだ。
「これは盗撮です! 迷惑行為です! すぐにやめないと……!」
「はいはいわかったわかった」
リーダー格らしき小太りの中年男がいちごの前に立ちはだかった。
ニヤニヤと下品な笑みを浮かべている。
「お嬢ちゃんも先生の『ファン』なんだろ?」
「だったら邪魔すんなよ。俺たちだって『ファン活動』してるだけなんだからさ」
「ファン活動!? 人が転んだり困ったりするのを待ってカメラ向けるのが!?」
いちごは叫び返した。
「だって先生可愛いじゃん」
「ちょっとドジなとこがまたそそるっていうか」
「『奇跡の瞬間』は見逃せないだろ?」
男は悪びれる様子もなく言い放った。
周囲の男たちも「そうだそうだ」と頷いている。
彼らの頭の中ではボイン先生の「ラッキースケベ」はもはや公共の「エンターテイメント」なのだ。
(ダメだ……!)
(言葉じゃ通じない!)
(この人たちは自分たちが正しいと信じ込んでる!)
いちごは物理的に彼らを排除することを決意した。
「どいてください!」
いちごはリーダー格の男を押しのけようとした。
だが男はびくともしない。
それどころか他の男たちがいちごを取り囲むように壁を作った。
まるでスクラムを組むように。
「うおっと危ねえな!」
「押すなよちっちゃいお嬢ちゃん」
「怪我しちゃうぜ?」
男たちはいちごを完全に包囲した。
逃げ場はない。
彼らに悪意はないのかもしれない。
だが集団心理と歪んだ欲望が彼らを「壁」に変えていた。
「(……くっ! 多い……!)」
いちごは焦った。
一人一人はただのおじさんだ。
だが十数人が壁となると物理的な圧力は相当なものだ。
プリティストロベリーの力をもってしてもこの「肉の壁」を突破するのは容易ではない。
『(桃瀬さん! 包囲された! まずは距離を取れ! ジャンプだ!)』
電柱の陰からヨウくんの指示が飛ぶ。
(ジャンプ!?)
いちごは躊躇した。
この短いスカートでジャンプ?
だが今はそれしかない!
いちごは地面を強く蹴った。
アトラクションショーで鍛えた跳躍力。
彼女の身体がふわりと宙に浮く。
男たちの頭上を越え包囲網の外へ!
「おお! 飛んだ!」
「撮れ撮れ!」
男たちのカメラがいちごの跳躍を追う。
そして当然のようにそのレンズは宙を舞ういちごのスカートの下に向けられていた。
カシャカシャカシャカシャ!
無数のシャッター音とフラッシュの光。
いちごは空中で顔を赤らめた。
(見られた……!)
今日は白地に小粒の赤イチゴ柄。
完璧に見られた。
着地と同時にいちごは男たちに向き直った。
怒りで顔が燃えるように熱い。
「あなたたち……! 最低です!」
「いやーいいジャンプだったぜ!」
「まさか飛ぶとは思わなかったな!」
「ごちそうさま!」
男たちは下品な笑みを浮かべている。
彼らにとっていちごの怒りなどどうでもいい。
ただ「撮れた」という事実だけが重要なのだ。
(こいつら……!)
(もはやボイン先生だけじゃない!)
(私まで
いちごの怒りが新たな段階に達した。
「もう許しません!」
いちごは再び男たちの壁に突っ込んだ。
今度はジャンプではない。
低い姿勢で彼らの足元をすり抜けるように!
「うおっ!」
「足元!」
男たちは咄嗟に反応できない。
いちごはその隙を突き壁の一角を崩した。
包囲網の外に出る。
「逃がすか!」
リーダー格の男がいちごの腕を掴もうとする。
いちごはそれを振り払う。
もみ合いになる。
「やめ……!」
いちごが叫んだ瞬間。
男が持っていた一眼レフカメラ。
その長い望遠レンズの先端がいちごのスカートの裾に引っかかった。
ビリッ!
「あ!」
またしても布が裂ける嫌な音。
スカートの裾がわずかにだが確かに破れた。
そしてその勢いでスカート全体が不自然にめくれ上がる。
「「「おおおおお!!」」」
再びシャッター音の嵐。
今度は至近距離から。
破れたスカート。
めくれ上がった隙間から覗くイチゴ柄。
完璧な「パンチラ」どころかほぼ「パンモロ」に近い状態だ。
「(……くっ! また……!)」
いちごは必死にスカートを押さえる。
だが男はカメラを構えたままニヤニヤしている。
「わりいわりい事故だよ事故」
(絶対にわざとだ!)
『(桃瀬さん! 敵の攻撃パターン変化! カメラ自体を武器として使用! 警戒レベルをB+に引き上げろ!)』
ヨウくんの声。
(わかってる!)
「いい加減にしろ!」
いちごは渾身の力で男を突き飛ばした。
男は数歩よろめく。
だが倒れない。
他の男たちがいちごを再び囲もうと動き出す。
(どうすれば……!)
(こいつらカメラを手放さない限り
いちごは焦っていた。
このままでは
それどころかまた何をされるかわからない。
その時いちごの目に飛び込んできたものがあった。
男たちが路上に無造作に置いていたカメラバッグや三脚の数々。
(あれだ!)
いちごはターゲットを変えた。
男たち(本体)ではなく彼らの「
彼女は素早く身を翻し最も近くにあった大型のカメラバッグに蹴りを入れた。
ドン! という鈍い音と共にバッグがアスファルトの上を滑っていく。
「あ! 俺のバッグ!」
バッグの持ち主らしき男が慌てて追いかける。
壁に穴が空いた。
「こっちも!」
いちごは立てかけてあった三脚を蹴り倒した。
ガシャン! という派手な音。
「俺の
別の男が悲鳴を上げる。
「(よし! 効果あり!)」
いちごは確信した。
こいつらにとって自分自身よりカメラ(機材)の方が大事なのだ。
「みんな! 機材を守れ!」
リーダー格の男が叫んだ。
男たちの意識がいちごから自分たちの「宝物」へと移る。
包囲網が完全に崩れた。
(今だ!)
いちごはこの隙にリーダー格の男に一撃を食らわせようとした。
高く跳躍し回し蹴りを放つ!
だが。
リーダー格の男は意外にも冷静だった。
彼は自分のカメラ(最高級フラッグシップ機)だけは手放さずしっかりと構えていたのだ。
そしていちごが跳躍し足が最も高く上がった瞬間。
完璧なタイミングでシャッターを切った。
カシャッ!
という乾いた音。
「(……撮られた……!)」
いちごは空中で気づいた。
最高の「蹴り上げパンチラ」アングルを。
男は撮れた写真を確認し満足げに頷いた。
そしていちごに向かって下卑た笑みを浮かべた。
「……イチゴ柄か」
男は心底馬鹿にしたような声で言った。
「……へぇ。まだそんなガキみたいなパンツ履いてんだな」
「コスプレは派手なのに中身はお子ちゃまかよ」
「ダッセー」
(…………)
(…………イチゴ)
(…………ガキ?)
(…………お子ちゃま?)
(…………ダサい?)
いちごの頭の中で男の下品な笑い声とその言葉が反響した。
怒りが沸点を超える。
さっきまでの焦りや恐怖は完全に消え去っていた。
(……この)
(……このクソオヤジがああああああっ!!!!)
いちごのアホ毛が怒りで限界まで逆立った。
彼女の全身から凄まじいピンク色のオーラが立ち上る。
周囲の男たちがその熱量に「うおっ!」と声を上げた。
「(……来た! トリガー成立! しかも最高の
電柱の陰のヨウくんがガッツポーズ(※無表情)をした。
「ヨウくんっ!!!!」
いちごの絶叫が初夏の住宅街に響き渡った。
(※パンチラ撮られ&罵倒され状態で絶叫している)
その声に応えヨウくんが電柱の陰から飛び出してきた。
彼の手にいつもの銀色のポリ袋が握られていた。
「プリティストロベリーッ!」
ヨウくんが叫ぶ。
「新しい! イチゴパンティだよッ!!」
銀色のポリ
「(……な、なんだアレ……!?)」
男たちが空を見上げる。
いちごはそのポリ袋を空中で完璧にキャッチした。
(……お仕置きタイムです!)