護って!いちごちゃん!〜いちごパンティは見えてるか〜 作:ろくさん
「(絶対に許さない!)」
いちごは怒りに燃えながら公園のトイレに飛び込んだ。 湿気を含んだ冷たい空気と消毒液の匂い。 狭い個室の中で彼女は素早く
『(桃瀬さん準備はいいか)』 骨伝導イヤホンからヨウくんの声が響く。 『(対象はまだ二〇三号室のベランダにいる。……七輪の火を煽いでいるようだ)』
「(うん! 行く!)」 いちごは個室のドアを蹴破らんばかりの勢いで開けた。 そして雨の中を再びあのアパートへと駆け出した。 水たまりが派手に跳ね上がりコスチュームの裾を濡らす。
アパートの前に着くと管理人室から鈴木さんが心配そうに出てきた。 「あ、あの……君は……?」 彼は突然現れた
「鈴木さん! 大丈夫です!」 いちごは彼を安心させるように力強く言った。 「あの迷惑な人は私がちゃんとお仕置きしますから!」
「え? え? お仕置きって……」 鈴木さんが困惑している間にいちごはアパートの階段を駆け上がった。 二階通路の突き当たり二〇三号室。 ドアの前には焦げ臭い匂いが充満していた。 ドア自体も
(……やっぱりここで燃やしてるんだ!) いちごは確信した。 彼女はドアを強くノックした。 ドン!ドン!ドン!
「Hello? Who is it?」 中から陽気なだが警戒するような男の声が聞こえた。 イジュウ・シャーだ。
いちごは構わずさらに強くドアを叩いた。 「開けなさい! プリティストロベリーです!」
「……Pretty? What?」 ドアスコープから覗く気配がする。 数秒の沈黙の後ガチャリとドアの鍵が開いた。
ギィ……とドアが開き中からシャーが顔を出した。 彼はまだあのアロハシャツ姿だった。 そして目の前に立つプリティストロベリー(いちご)の姿を見て目を丸くした。
「Oh……Wow」 シャーは驚き次に面白そうな表情になった。 「Japanese Cosplay? Very Cute!」 彼は全く悪びれる様子もなくヘラヘラと笑っている。
「Cuteじゃありません!」 いちごは怒鳴り返した。 「あなたさっきゴミを不法投棄しましたね! しかも分別しないで!」
「Garbage? ああゴミね」 シャーはあっけらかんと言った。 「捨てましたよ? 何か
「問題だらけです!」 いちごはシャーを睨みつけた。 「ここはあなたの国じゃありません! 日本には日本のルールがあるんです!」 「ゴミは決められた日時に決められた場所に分別して捨ててください!」
「Rule Rule Rule……」 シャーはやれやれという顔で肩をすくめた。 「スズキサンと同じこと言いますねあなた」 「だから言いました日本のルールは
「(……やっぱり話が通じない!)」 いちごは歯噛みした。 この男には常識や協調性というものが全く欠けている。
「それに!」 いちごはシャーの背後ベランダの方を指差した。 「あなたベランダでゴミを燃やしてますね!?」 「煙も匂いもひどいです! 火事になったらどうするんですか!」
「Fire?」 シャーはこともなげに言った。 「
「(BBQとゴミ焼却を一緒にするなー!)」 いちごは心の中で絶叫した。 (もうダメだこいつ!) (言葉で言っても無駄!)
いちごはシャーを押しのけ部屋の中に踏み込もうとした。 ベランダに出て燃えているゴミ(証拠)を確保し無理やりにでも火を消さなければ。
「おっと!」 シャーはいちごの動きを予測していたかのように素早くドアを閉めようとした。 いちごの身体がドアとドア枠の間に挟まれる。 「ぐっ……!」
「Hey! 勝手に入らないでください!」 シャーの声色が初めて怒気を帯びた。 「ここはワタシの
「(プライバシー!? ルール無視して火事起こしそうな人が!?)」 いちごは怒りで力がみなぎった。 彼女は挟まれた身体をこじ開けるようにドアを押し返した。 ミシミシとドアが軋む。
「Wow! Strong Girl!」 シャーは驚いたようだが面白がっている。 彼はさらに力を込めてドアを閉めようとする。 狭い玄関先でプリティストロベリーと迷惑外国人との押し合いへし合いが始まった。
「離して! 火を消さないと!」
「Non Non! これはワタシの
二人の力が
その時だった。 シャーが足元の何かにつまずいた。 「Whoa!?」 彼はバランスを崩しいちごの方へ倒れ込んできた。
「きゃあっ!」 いちごは咄嗟にシャーを受け止めようとした。 だがシャーの身体は意外に重い。 二人ともつれ合うように部屋の中へとなだれ込んだ。
ドッシャーン! 玄関脇に積み上げられていたゴミ
「(……い、痛い……! く、臭い……!)」 いちごは涙目になった。 顔面にシャーの汗臭い
「Ouch……Sorry Sorry」 シャーはいちごの上から身体を起こしながらも全く反省していない口調で言った。 彼は自分の足元に転がっていた空き
いちごはようやくシャーの下から這い出した。 コスチュームはゴミ袋の
「(……最悪……! また汚された……!)」 いちごは怒りで唇を噛んだ。 だが今は怒っている場合ではない。 ベランダの火を消さなければ。
いちごは立ち上がりリビングを抜けベランダへと続く窓に向かった。 シャーはまだ床に落ちた空き缶を拾い残念そうに眺めている。
窓の外。 ベランダでは七輪の上でゴミ
「(やっぱり燃やしてる! しかもプラゴミを!)」 いちごは窓の鍵を開けようとした。 だが鍵はかかっていなかった。 シャーは不用心にも開けっ放しにしていたのだ。
ガラッ! いちごは勢いよく窓を開けベランダに飛び出した。 燃え盛る七輪に近づく。 熱気が顔を炙る。
(どうやって消そう!? 水!?) ベランダの隅に使い古しのバケツが置いてあるのが見えた。 中には汚れた水が溜まっている。 おそらく雨水かあるいは……。
(構わない!) いちごはバケツを掴み七輪の炎に向かって中身をぶちまけた。 ジュワッ! という音と共に黒煙が一層激しく立ち昇る。 だが炎の勢いは弱まった。
「Hey! What are you doing!?」 シャーがリビングから慌てて追いかけてきた。 「My Fire! 消さないで!」
「危ないでしょ! 火事になったらどうするの!」 いちごは叫び返した。 まだ
シャーはいちごの行動に本気で腹を立てたようだった。 彼はベランダに置いてあった別のもの――水やりのための長いホースを掴んだ。 そして蛇口を捻る。
「(え?)」
「Japanese Cosplay Girl! 頭を冷やしなさい(Cool down)!」 シャーはホースの先端をいちごに向け思い切り水を噴射してきた。
「きゃあああああっ!」 冷たい水の奔流がいちごの全身を直撃した。 コスチュームが一瞬でずぶ濡れになる。 水圧で身体がよろめいた。 だがそれだけではなかった。 シャーが使った水。 それは綺麗な水道水ではなかった。 ベランダの隅にある雨水タンクに溜まった泥や木の葉が混じった汚水だったのだ。
いちごの純白のコスチュームが汚水によって茶色く染まっていく。 ベトベトになったスカートが肌に張り付き下着のラインがうっすらと透けて見えた。
「(……う、うそ……!)」 いちごは自分の惨状を見て絶句した。 またしても汚された。 今度は泥水で。
「Hahaha! どうだ! これで少しは
いちごは怒りで全身が震えていた。 だがまだ足りない。 変身するための決定的な「侮辱」が。
シャーはいちごのずぶ濡れの姿を値踏みするように眺めた。 特に雨水タンクの泥水で汚れて透けてしまったスカートの下。 そこに浮かび上がるラインと微かな柄。
「Oh……?」 シャーは目を細めた。 そして何か面白いものを見つけたかのようにニヤリと笑った。
「Kawaii……」 彼はまずそう呟いた。 だがそれは褒め言葉ではなかった。
「……Pantsu……Strawberry?」 シャーは片言の日本語で確認するように言った。 そして首を横に振る。
「Non Non Non」 彼はまるで出来の悪い生徒に教え諭すかのように人差し指を振った。 「Strawberry is cute But……」 シャーは軽蔑するように言い放った。
「Very
(…………) (…………Childish?) (…………Not Cool?) (…………Not International Standard?)
いちごの頭の中でシャーの言葉が反響した。 (この……!) (この男……!) (ゴミを不法投棄して!) (ベランダで火事起こしかけて!) (私を泥水まみれにしておいて!) (私のイチゴ
(ふざけるなああああああああっ!!!!)
いちごのアホ毛が怒りで限界まで逆立った。 彼女の全身から凄まじいピンク色のオーラが雨粒を弾き飛ばしながら立ち上る。 ベランダ全体がその熱量で陽炎のように揺らいだ。
「(……来た! トリガー成立! しかも
「ヨウくんっ!!!!」
いちごの絶叫が雨空に響き渡った。 (※泥水まみれパンティ透け状態で絶叫している)
その声に応えヨウくんが電柱の陰から飛び出してきた。 彼の手にいつもの銀色のポリ袋が握られていた。
「(プリティストロベリーッ!)」 ヨウくんが叫ぶ。 (※声には出ていない興奮している)
「(新しい! イチゴパンティだよッ!!)」
銀色のポリ
「(……な、なんだアレ……!? Flying Pantsu!?)」 シャーが空飛ぶポリ袋を見て呆然としている。
いちごはそのポリ