護って!いちごちゃん!〜いちごパンティは見えてるか〜 作:ろくさん
「お仕置きです!」
プリティストロベリー(いちご)の宣戦布告が駅前ロータリーに響き渡った。 噴水の水音さえ一瞬止まったかのように錯覚するほどの静寂。 通行人たちは足を止め固唾を飲んで事態を見守っている。 拡声器を持ったヒステリックな女と突如現れた魔法少女。 あまりにも非現実的な対決。
平等院カチコは最初呆気に取られていた。 だがすぐに怒りで顔を醜く歪めた。 「……貴様……! 何様のつもりだ!」 「私に説教か! この男社会の犬め!」
カチコは拡声器をいちごに向け最大音量で怒鳴りつけた。 キィィィン! という耳障りなハウリング音がいちごの鼓膜を襲う。 「ぐっ……!」 いちごは思わず耳を塞いだ。 物理的な攻撃ではない。 だが鼓膜と精神に直接ダメージを与える音響兵器だ。
「(桃瀬さん! まず拡声器を無力化しろ! あれが扇動の源だ!)」 少し離れた場所物陰に隠れたヨウくんから冷静な指示が飛ぶ。 彼は
(わかってる!) いちごは耳を押さえながらカチコに突進した。 狙いはただ一つ拡声器。 あれを奪うか壊すかすれば彼女の「武器」はなくなる。
「来るな!」 カチコは怯んだように見えた。 だがそれは罠だった。 いちごがカチコに接触する寸前。 彼女の左右からぬっと巨体が現れた。 カチコの支援者「親衛隊」の中年男性二人だ。 彼らはいちごの両腕をがっしりと掴み動きを封じた。
「なっ!? 離して!」 いちごは必死にもがく。 だが男二人の力は強い。 プリティストロベリーの力をもってしても簡単には振りほどけない。 (くっ……! こいつら見た目より力が……!)
「フン! 愚か者め!」 カチコは勝ち誇ったようにいちごを見下ろした。 「暴力には屈しない! これが『
「さあ! 皆の者! この『男社会の
(まずい! 五対一!?) いちごは焦った。 腕を掴まれ身動きが取れない。 このままでは……!
「やめなさい!」 その時人混みの中から凛とした声が響いた。 見るとさっきカチコに「媚びるな」と罵倒された女子高生グループだった。 リーダー格の子がいちごを助けようと親衛隊に詰め寄っている。 「多勢に無勢じゃない! 卑怯よ!」
「なんだ小娘! 引っ込んでろ!」 親衛隊の一人が女子高生を突き飛ばそうとする。
「(させない!)」 いちごは最後の力を振り絞った。 掴まれていた両腕に力を込め男二人を強引に引き剥がす。 そして突き飛ばされそうになった女子高生の前に滑り込み盾となった。 ドン! という鈍い衝撃。 親衛隊の男が尻餅をついた。
「大丈夫!?」 いちごは女子高生を振り返った。 彼女は目を丸くして頷いている。
「……貴様……!」 カチコの顔が怒りでさらに歪む。 「小娘を庇うか! やはり貴様は『敵』だ!」 彼女は拡声器を再び構えた。 「親衛隊! 構わん! あのコスプレ女を排除しろ!」
「(くっ……!) いちごは女子高生たちを背後にかばいながら親衛隊と対峙した。 多勢に無勢。 しかも相手はカチコと違いただの
いちごはアトラクションショーの殺陣の動きを応用し男たちの攻撃を捌き始めた。 腕を掴まれれば関節を極め足を払われれば跳躍してかわす。 だが五人を同時に相手にするのは厳しい。 じりじりと後退させられていく。
「(桃瀬さん! 敵の連携が甘い! 各個撃破を狙え!)」 ヨウくんの声。 (わかってるけど!)
いちごは最も近くにいた
少しずつだが確実に敵の数を減らしていく。 だがその分カチコ本体への警戒が薄れた。
「隙あり!」 カチコは拡声器を鈍器のように使い横薙ぎにいちごの側頭部を殴りつけてきた。
「(しまった!)」 いちごは咄嗟に腕でガードする。 ガツン! という硬い衝撃。 拡声器の角が腕に食い込み激痛が走った。 バランスを崩しよろめく。
その隙を見逃さず残りの親衛隊がいちごに組み付いてきた。 羽交い締めにされ完全に動きを封じられる。
「捕まえたぞ!」 「このアマ!」 男たちの荒い息遣いと汗臭い匂いがいちごを包む。 (……最悪……!)
「フハハハ! 愚か者め!」 カチコが高笑いする。 彼女はいちごの目の前に立ち拡声器の先端をいちごの
いちごは悔しさに唇を噛んだ。 羽交い締めにされた身体が屈辱に震える。 (……負けちゃう……?) (こんな奴らに……?)
カチコはいちごのコスチュームを値踏みするように眺めた。 そして心底軽蔑したように唾を吐きかけるように言った。
「それにしてもその格好……」 「実に嘆かわしい」 カチコはいちごの短いスカートフリルたっぷりのデザイン胸元のリボンを指差しながら続ける。 「これぞまさに『男性の
「ち、違う……!」 いちごはかろうじて声を絞り出した。 「これは私の……!」
「黙れ!」 カチコは拡声器でいちごの頬を軽く叩いた。 「自覚がないだけマシか? いやそれこそが罪深い!」 「貴様のような存在が! 女性全体の地位を
(……私が……女性の地位を……?) いちごは混乱した。 カチコの言葉は歪んでいる。 だがそのあまりの断定的な口調に一瞬心が揺らぎそうになる。 (……私のこの格好は間違ってるの……?) (……ただ『可愛い』が好きで『ヒーロー』が好きで着ているだけなのに……)
カチコはいちごの動揺を見てさらに畳み掛ける。 彼女はいちごのスカートの裾に目をやった。 戦いの衝撃でわずかにめくれ上がり中の生地が見えている。
「……そしてその下着!」 カチコはまるで汚物でも見るかのような目でいちごのパンティ(本日は白地に小粒の赤イチゴ)を指差した。
「(……!)」 いちごの心臓が凍りついた。 (……また……!) (……パンティ……!)
「……イチゴ柄……?」 カチコの声には驚きとそしてそれを上回る軽蔑が込められていた。 「……信じられん」 彼女は天を仰ぎ嘆くように言った。
「これが! この国の! 女性たちの! 現実か!」 拡声器を通して彼女の絶叫が響き渡る。 「こんな!
「…………」 (…………幼稚?) (…………非主体的?) (…………媚びへつらう象徴?)
いちごの頭の中でカチコの甲高い声とその言葉が反響した。 さっきまでの混乱や動揺は消え去っていた。 後に残ったのはマグマのように熱く静かに燃え上がる純粋な「怒り」だけだった。
(……この) (……この女あああああああっ!!!!)
(私の『可愛い』を!) (私の『好き』を!) (私の『ヒーロー』の
いちごのアホ毛が怒りで限界まで逆立った。 彼女の全身から凄まじいピンク色のオーラが立ち上る。 羽交い締めにしていた親衛隊の男たちがその熱量とプレッシャーに「うおっ!」「あつっ!」と声を上げ手を離した。
「(……来た! トリガー成立! しかも『女性の尊厳』に関わる最上級の侮辱! これは過去最高のブーストが期待できる!)」 物陰のヨウくんが新PCのキーボードを打つ指を興奮で震わせながら記録していた。
「ヨウくんっ!!!!」
いちごの絶叫が初夏の駅前ロータリーに響き渡った。パンティ侮辱され羽交い締めから解放された状態で絶叫している。
その声に応えヨウくんが物陰から飛び出してきた。 彼の手にいつもの銀色のポリ袋が握られていた。
「プリティストロベリーッ!」 ヨウくんが叫ぶ。
「新しい! イチゴパンティだよッ!!」
銀色のポリ
「……な、なんだアレ……!? 」 カチコが空飛ぶポリ袋を見て呆然としている。
いちごはそのポリ