護って!いちごちゃん!〜いちごパンティは見えてるか〜   作:ろくさん

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第11章:駅前絶叫! 私だけの女性権利(ジャスティス) その3

 

(……お仕置きタイムです!)

 

いちごは怒りに震える手で新品のイチゴパンティ(ポリ袋入り)を空中で完璧にキャッチした。 羽交い締めにされていた身体は解放されたが周囲にはまだ五人の親衛隊そして元凶である平等院カチコが呆然とこちらを見ている。 駅前ロータリーの喧騒が嘘のように静まり返っていた。 誰もがいちごの手元その銀色のポリ袋に注目している。

 

(……幼稚?) (……非主体的?) (……媚びへつらう象徴?)

 

侮辱の言葉がいちごの怒りの炎をさらに燃え上がらせる。 (……上等じゃない!) (……見せてあげる!) (……これが私の『可愛い』!) (……これが私の『正義』!)

 

いちごは意を決した。 彼女は握りしめたポリ袋を怒りを込めてビリビリに引き裂いた。 濡れたビニール片がアスファルトの上に散らばる。 中から現れたのは汚れなき純白の生地に鮮やかな赤いイチゴが散りばめられた新品の「それ」だった。 曇天(どんてん)の隙間から差し込んだ一筋の光を受けて神々しいまでに白く輝いている。

 

「(……これが私の……!)

 

いちごの瞳が燃えている。 (ここで履き替える!) (この女の目の前で!) (こいつらの目の前で!) (ヨウくんのカメラの前で!)

 

羞恥心が鎌首をもたげる。 さっき無理やり見られたパンティ。 それを今度は自ら脱ぎ捨て新しいものを履く。 衆人環視の中で。 だがカチコのあの歪んだ軽蔑の目が脳裏をよぎり羞恥心を焼き尽くした。 これは「儀式」なのだ。 怒りを真の力に変えるための神聖な「変身(チェンジ)」なのだ。 私の「好き」を貫くための戦いなのだ。

 

(見てなさい……!)

 

いちごは震える手で。 今まさに晒されている白地に小粒赤イチゴのパンティ。 そのゴム紐に指をかけた。

 

「き、貴様……! 何をする気だ!?」 カチコがいちごの異様な行動に気づき金切り声を上げた。 親衛隊たちも戸惑いながらじりじりと距離を詰めようとする。

 

「(桃瀬さん! 光で隠されている! 今だ!)」 ヨウくんの声が骨伝導イヤホンから鋭く響いた。 いちごは頷く。 今しかない。

 

彼女が握りしめた新品のイチゴパンティから淡いピンク色の光が溢れ始めた。 まるで内側から発光しているかのようだ。 周囲のアスファルトがその光を浴びて蛍光ピンクに染まる。

 

「ひ、光った!?」 「なんだ!?」 親衛隊たちが怯んで足を止めた。 カチコも拡声器を構えたまま呆然としている。

 

その光を目眩ましにするように。 いちごは素早くしかし確実な動きで。 今履いているパンティを一気に引きずり下ろした。 汗ばんだ肌から布地が離れる感覚。 湿った生暖かい風が彼女のあらわになった聖域を撫でる。 完全な「丸出し」の状態。 硬いアスファルトの感触が足裏に伝わる。

 

(……恥ずかしいけど!) (……負けない!)

 

彼女は脱いだパンティ(幼稚で非主体的なヤツ)を憎しみを込めて丸めると。 カチコの顔面に向かって全力で投げつけた。 「ひぎゃっ!?」 カチコは避けきれずパンティ(使用済み)の直撃を顔面に食らい悲鳴を上げた。 (※後でヨウくんが「サンプルNo.10(フェミ汚染・カチコDNA付着)」として回収する)

 

そして。 新品のイチゴ柄を両手で広げ足を通し。 一気に装着した。

 

清潔な真新しい布地が彼女の火照った肌に吸い付くように触れた。 力が全身にみなぎる感覚。

 

その瞬間。

 

「なっ!?」

 

「うおっ!?」 「ま、眩しい……!」

 

いちごの身体が爆発的な光を放った。 さっきまでの淡い光ではない。 駅前ロータリー全体が白夜になったかのような強烈な閃光。 光源はプリティストロベリー。 いや彼女が今まさに装着した「イチゴ柄」のパンティその一点から凄まじいピンク色の光が奔流となって溢れ出したのだ。 通行人たちもバスの運転手も皆目を覆っている。

 

「目が! 目があああ!」 「光が……!」 カチコも親衛隊たちも光の中で身を捩らせうめき声を上げる。

 

物陰でヨウくんの新PC(カメラ)だけが特殊フィルター(Ver.5・対市街地高輝度対応)越しにその神々しい「変身(換装)」の一部始終を高フレームレートで記録していた。 PCの冷却ファンが最大回転数で唸りを上げている。 (……変身シーケンス突入。生体エネルギー反応過去最大値を記録。……換装時のパンティ食い込み角度と出力の関係性……精神的要因(イデオロギー対立)によるブースト効果……極めて高い……)

 

光の中でいちごの身体が変貌していく。 汚れたコスチュームが光の粒子となって一度霧散する。 物理法則を超えた現象。 そして再構築される。

 

変身の「核」は今履き替えたばかりのイチゴ柄のパンティ。

 

(……っ!!!)

 

いちごは光の中で信じられない「感覚」に息を飲んだ。 履いたばかりのパンティが熱を帯びる。 まるでそれ自体が命を持ったかのように彼女の身体に合わせて変形し締め付け変異していく。 怒りのエネルギーがパンティを通して全身に流れ込む。 カチコの歪んだ言葉への反発力が力へと変わる。

 

「ぁん……っ!」

 

パンティのサイドライン。 その布地がありえないほどの張力で物理的に吊り上げられていく。 腰骨を遥かに越え彼女の脇腹のラインに沿って鋭角的に上へ上へと。 皮膚にくい込むほどの圧迫感。 だがそれは痛みではなく力への昇華だった。

 

「(んんぅ食い込んで……くる……!)」

 

純白のイチゴ柄の布地が彼女の太ももの付け根その柔らかい内側に深く深く食い込んでいく。 それはもはや「パンティ」というより肌に張り付いた「第二の皮膚」であり「装甲」だった。 極限まで切り詰められた超ハイレグスタイル。 怒りの紋章。 Kawaii(カワイイ)Justice(ジャスティス)の最終形態。

 

その変異した「イチゴ柄」を中心(コア)として。 残りのコスチュームが一瞬で再構築された。 光の糸が周囲の光を吸収しながら身体に巻き付き形を成していく。

 

胸元のリボンは戦闘機のようにシャープな形状に。 スカートは短く切り詰められたチュチュに変わりその下から食い込むハイレグのラインが惜しげもなく晒されている。 手には肘上までのロンググローブ。 指先まで力がみなぎる感覚。 足は膝上までの鋭いピンヒールのロングブーツ。 アスファルトをしっかりと踏みしめる。 そして頭。 イチゴのカチューシャではなく天を突くように伸びたシャープな「ウサギの耳」。 周囲の雑音の中からカチコの恐怖に満ちた心臓の鼓動だけを正確に拾い上げている。

 

光が収束していく。 いちごはゆっくりと立ち上がった。 地面にへたり込み目を押さえているカチコと親衛隊たちを見下ろす。 彼女の姿は怒りをその食い込むハイレグのラインにまで宿した苛烈な「執行者」だった。 周囲の喧騒が戻り始めたが誰も彼女に近づこうとはしない。 神々しくも恐ろしいその姿に圧倒されていた。

 

「プリティストロベリー・バニー!」

 

地を這うような冷たい声。 さっきまでの必死だった少女の声ではない。 怒りと決意そして揺るぎない自信に満ちた声。

 

「な、なんなんだ……いったい……貴様は……悪魔か……?」 カチコは光で焼かれた目をしばたかせながらかろうじていちご(バニー)のシルエットを捉えた。 さっきまでのただのコスプレ少女とは明らかに違う。 圧倒的な存在感。 神々しさすら感じる。 だがそれ以上に恐ろしい気迫。 自分の信じてきた「正義」が根底から覆されるような感覚。 本能が警鐘を鳴らしていた。

 

「(……対象群『混乱』および『恐慌』状態へ最大レベルで移行。……完璧な変身(データ)だ。親衛隊の一部は逃亡を開始)」 ヨウくんが通信機をそっと閉じた。 カメラは回し続ける。 逃げる親衛隊の背中もドローンカメラがしっかりと追尾している。

 

「あなたの言う『女性の権利』は……」

 

いちご(バニー)は冷たくカチコ(フェミさん)を見下ろした。 その目は憐れみのかけらもなかった。

 

「誰かを傷つけるための『言い訳』です」

 

「あ……あ……」

 

カチコは起き上がろうとするが腰が抜けて動けない。 目の前の「バニー」が放つプレッシャーが彼女を地面に縫い付けている。 ピンク色のタスキがアスファルトの上で虚しく汚れていた。

 

「ひっ!」

 

いちご(バニー)はゆっくりとその女に歩み寄った。 ピンヒールがアスファルトを打つ硬質な音が響く。 コツコツという音が断罪の槌音のように聞こえた。

 

(この女に物理的な『お仕置き』は……) (……いやコイツにはそれだけじゃ足りない!) (こいつの武器は『言葉』と『拡声器』!) (だったらそれを奪い去り!) (こいつの歪んだ『正義』をへし折ってやる!)

 

いちご(バニー)の狙いはカチコ本人ではない。 彼女が振りかざしてきた「拡声器」そのものだった。 彼女の歪んだ主張を増幅し周囲を扇動してきた元凶。 いちごはその拡声器の前に立つとゆっくりと右足のヒールを高々と振り上げた。 空中で静止するブーツ。 食い込んだハイレグのラインが美しい軌跡を描く。 ブーツの先端に怒りのエネルギーがピンク色の光となって収束していく。

 

(私の『可愛い』を幼稚と言った!) (私の『好き』を男に媚びてると言った!) (私の『正義』を否定した!) (その(スピーカー)ごと黙らせてあげる!)

 

「さようならあなたの歪んだ『主張(ノイズ)』」

 

「ま、待て! やめ……! それは! 私の……!」 カチコが命乞いとも懇願ともつかない声を上げた。 だが遅い。 いちご(バニー)の心はもう凍り付いていた。

 

いちご(バニー)のヒールが拡声器のスピーカー部分その一点を目掛けて正確に振り下ろされた。 空気抵抗すら感じさせない速度。

 

「ストロベリッシュ・バニー……!」

 

「サイレンス・クラッシュ!!」

 

バッキイイイイン!!! というプラスチックと金属回路が粉々に砕け散る甲高い破壊音が響き渡る。 拡声器は一撃で粉砕された。 破片が周囲に飛び散る。 スピーカー部分は完全に陥没し無惨な姿を晒していた。 カチコの「武器」は完全に沈黙した。

 

「あ……あ……わたしの……わたしの声が……!」 カチコは喉を押さえ言葉にならない声を漏らしている。 武器を失い完全に無力化されたのだ。

 

だがいちご(バニー)の「お仕置き」はそれだけでは終わらない。 彼女は崩れ落ちたカチコの前に再び仁王立ちした。 そしてヨウくん(PC)に向かって頷いた。

 

ドン! ドン! ドン! チキ! ヨウくんのPCから再びアッパーな戦闘BGMリミックスが鳴り響く。 今度は勝利のファンファーレのように。 いちご(バニー)はマイク(エアマイク)を握り最後の「アンサー」を叩きつけた。

 

「『女性の権利』? いい言葉ね!」 「だけどあなたは『自分のため』!」 「誰かを(おとし)め傷つけて!」 「そんなの絶対『正義じゃない』!」

 

「『可愛い』は自由! 『好き』も自由!」 「誰にもそれを『邪魔させない』!」 「これが私の『Kawaii Justice』!」 「覚えておきなさい!」

 

ラップ(というより勝利宣言)が終わると同時。 いちご(バニー)は最後の決めポーズをビシッと決めた。 その衝撃波()で粉々になった拡声器の破片がさらに細かく砕け散った。

 

「…………」

 

駅前ロータリーが静まり返った。 通行人たちも言葉を失いその光景に圧倒されていた。 さっきまでカチコを支持()していた親衛隊たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていた。

 

「……あ……あ……」 カチコは口をパクパクさせている。 反論の言葉が出てこない。 完敗だった。 自分の信じてきた「正義」が目の前で粉々に打ち砕かれたのだ。

 

やがて。 「「「うおおおおお!!」」」 誰からともなく拍手が起こった。 さっきカチコに罵倒された女子高生グループが手を叩いて叫んだ。 「すごい! かっこいい!」 「そうだそうだ!」 ベビーカーの母親も安堵の表情で頷いている。 通行人たちからも大歓声が沸き起こった。

 

その時遠くからようやくパトカーのサイレンが近づいてきた。 (※ヨウくんが無許可での集会演説および騒音迷惑行為で通報済みだった)

 

「……ふぅ」 いちご(バニー)はその光景を見届けると静かに変身を解いた。 (※実際は変身の光と共にハイレグの食い込みが元のパンティのラインに戻りチュチュも元のスカート丈に戻った)

 

そして元のプリティストロベリーの姿に戻ると駆けつけた警察官にドンと音を立てて粉々になった拡声器の残骸とへたり込むカチコを指差した。

 

「お巡りさん! この人です! 迷惑演説してました!」 「あと器物損壊(拡声器破壊)は……正当防衛……というかお仕置きです!」

 

「(……え? なにこの子? え? 拡声器? 粉々? お仕置き?)」 警察官は混乱していた。

 

数分後。 現場検証とカチコの事情聴取(※かなり抵抗したらしい)が続く駅前の隅。 いちごはヨウくんから受け取った制服(カバン)をなんとか羽織り人目から隠れていた。 コスチュームに大きな汚れはないが精神的な疲労はピークだった。

 

「ぷはー。疲れた……なんか口喧嘩って疲れる」 いちごはぐったりとベンチに座り込んだ。

 

「お疲れ桃瀬さん」 ヨウくんがイチゴミルクを差し出した。 彼の目は興奮で爛々と輝いていた。 新PCの画面には膨大なデータが表示されている。

 

「わありがと!……ていうか!」 いちごはイチゴミルクを受け取りながらヨウくんのもう片方の手を睨んだ。 そこには見覚えのあるジップロック(サンプルNo.10)が握られていた。 (※さっきいちごがカチコの顔面に叩きつけたパンティ)

 

「(……また回収した……!)」

 

「(……フェミ汚染(カチコDNA付着)サンプルか。これも貴重なデータだ。……イデオロギーが付着したパンティの変身への影響……非常に興味深い……)」 ヨウくんがボソリと呟いた。

 

「『興味深い』言うなー!」

 

いちごはお茶の(イチゴミルクだった)をヨウくんに叩きつけようとして思いとどまった。 (……あ。パソコン新しくなったんだった) (……殴ったらまた弁償させられる……!) (……でも!) 「ねえヨウくん! 私の格好ってやっぱり男の人に媚びてるのかな?」 いちごは少し不安そうに尋ねた。 カチコの言葉がまだ心のどこかに引っかかっている。

 

「……何を言っている」 ヨウくんは初めてPC画面から目を離しいちごを真っ直ぐに見た。 その黒縁メガネの奥の瞳は真剣だった。

 

「君のコスチュームは『機能美』の結晶だ」 「空気抵抗可動域防御力そして何より……」 ヨウくんはわずかに口角を上げた(ように見えた)。 「……僕の『理想(データ)』を完璧に具現化したものだ」 「そこに他者()の視線が入り込む余地などない」

 

「(……よ、よくわかんないけど……)」 (……ヨウくんが言うなら……いっか!) いちごは単純なのですぐに元気を取り戻した。

 

「そっか! よかった!」 彼女は笑顔でイチゴミルクを飲んだ。

 

ご近所の平和(と駅前の静寂)は今日もかろうじて護られたのだった。 いちごのコスチュームの是非と共に。

 

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