護って!いちごちゃん!〜いちごパンティは見えてるか〜 作:ろくさん
(私が! このプリティストロベリーが!)(クマも! あの人も! そしてみんなも!)(まとめて! 護ってみせる!)(絶対に!)
消防車の冷たい金属の陰。 いちごの中で覚悟が決まった。 恐怖はない。 あるのは燃えるような使命感だけだ。 彼女は素早く制服を脱ぎ捨て純白の
変身完了。 いちごは消防車の陰から飛び出すタイミングを窺った。 広場では依然として混乱が続いている。 パニックになったクマが巨体を揺らしながら走り回り警察官や猟友会の人間を翻弄していた。 麻酔銃を撃つチャンスがない。 野次馬たちは規制線のさらに外側へと後退しているがまだ危険な距離だ。 そして元凶である鳩山ピースケは「クマさん落ち着いて! 僕だよ!」などと的外れな呼びかけを続けながらクマの後を追いかけ回し状況をさらに悪化させていた。
(……行くしかない!) いちごは地面を強く蹴った。 消防車の陰から閃光のように飛び出す。 一直線に暴走するクマの真正面へ。
「「「!?」」」 突然現れた魔法少女の姿に警察官も猟友会もピースケもそしてクマ自身も一瞬動きを止めた。
「そこまで!」 いちigoはクマの数メートル手前で両手を広げ立ちはだかった。 その声は凛としており不思議な説得力を持っていた。 「もうやめて! 大丈夫だから! 誰もあなたを傷つけないから!」 彼女はクマの目を見つめ必死に呼びかける。 動物と話す能力などない。 だが心で伝えようとした。 あなたは悪くない。 ただ迷い込んだだけ。 もう争う必要はないのだと。
グルル…… クマの動きが止まった。 充血していた目がわずかに理性を取り戻したように見える。 いちごの放つ尋常ならざるオーラと優しい声に混乱が少しだけ収まったのかもしれない。
(……通じた……?) いちごは息を呑んだ。 このまま落ち着かせることができれば……!
だがその希望は一瞬で打ち砕かれた。 「待て!」 ピースケがいちごとクマの間に割って入ったのだ。 彼は両手を広げクマを庇うようにいちごの前に立ちはだかる。 その目は敵意と
(……は!?) いちごは呆気に取られた。 (この人私がクマを助けようとしてるのがわからないの!?) (というか私のこと敵だと思ってる!?)
「違う! 私はこの子を落ち着かせようと……!」 いちごが説明しようとする。
「黙れ!」 ピースケは聞く耳を持たない。 彼は自分の「正義」に反する者は全て「悪」だと信じ込んでいる。 「動物への暴力は許さん! たとえ相手が非力な
グルオオオ……! その時いちごたちの背後で再びクマが唸り声を上げた。 せっかく収まりかけていた混乱がピースケの乱入によって再燃してしまったのだ。 クマはいちごだけでなくピースケをも「敵」と認識し始めたようだった。 じりじりと後退りし再び突進の体勢に入る。
「(……まずい! クマがまたパニックに!)」 いちごは焦った。 ピースケの相手をしている場合ではない。 クマを止めなければ!
「どいてください!」 いちごはピースケを押しのけクマに向き直ろうとした。
「させるか!」 ピースケはいちごの腕を掴み引き留めようとする。 「この子が怖がっているだろう!」 (怖がらせてるのはあなたでしょ!) いちごは心の中で絶叫した。
二人がもみ合いになる。 いちごはピースケを振りほどこうとするが彼は意外にしつこく食い下がってくる。 「暴力反対!」「動物を愛せ!」などと叫びながらいちごの動きを封じようとする。 その間にもクマは苛立ちを募らせ鼻息荒く地面を掻いている。 突進は時間の問題だ。
『(桃瀬さん!
だがその躊躇が命取りになった。 グルオオオオオオオオッ!!!! クマが咆哮を上げついに突進を開始した。 狙いはいちごともみ合っているピースケその人だった!
「危ない!」 いちごは咄嗟にピースケを突き飛ばした。 ピースケは尻餅をつき呆然と迫り来るクマを見上げている。
いちごはクマの前に立ちはだかった。 真正面から受け止めるのは不可能だ。 (いなすしかない!) 彼女は突進してくるクマの巨体をギリギリでかわしその勢いを利用して体勢を崩させようとした。 アトラクションショーで練習した対大型怪人用のアクション。
だが相手は着ぐるみではない。 本物の野生動物だ。 その動きは予測不能だった。 クマはいちごにかわされる寸前その巨大な
「きゃあっ!」 いちごは咄嗟に身をかがめたが避けきれない。 ザンッ! という鈍い音。 衝撃が走りいちごは数メートル吹き飛ばされ地面に叩きつけられた。
「(……いっ……!)」 受け身は取ったが全身を強打する。 息が詰まる。 幸い爪による
ビリビリッ! いちごは自分の身体を見て息を呑んだ。 純白のコスチューム。 その脇腹からスカートの裾にかけてがクマの爪によって無惨にも引き裂かれていたのだ。 破れた布地がだらりと垂れ下がりそこから白い肌と下着の一部が覗いている。
「(……うそ……! スカートが……!)」 いちごは顔面蒼白になった。 最悪の事態。 またしても衆人環視の中でのコスチューム破損。 そして下着の露出。
「「「…………」」」 広場の空気が凍りついた。 警察官も猟友会もそして尻餅をついたままのピースケも呆然といちごの姿を見つめている。 クマだけが「敵」を排除したと判断したのか少し落ち着きを取り戻し再びケヤキの木の方へと戻ろうとしていた。
『(……記録。コスチューム破損確認。レベル3。……
いちごは羞恥と痛みで立ち上がれずにいた。 破れたスカートを押さえようとするが傷ついた脇腹が痛む。 (……最悪……また見られた……!) (……しかもクマにやられた……!) 涙が滲んできた。
その時だった。 尻餅をついていたピースケがゆっくりと立ち上がった。 彼は目の前で起こった衝撃的な
「…………ほう」 ピースケは興味深そうに呟いた。 その目には先ほどの狂信的な光はなく代わりに別の種類の奇妙な「納得」の色が浮かんでいた。 彼はゆっくりといちごに近づいてきた。
「(……な、なに……?)」 いちごは警戒した。 この男まだ何かする気なのか。
ピースケはいちごの目の前で立ち止まると破れたコスチュームと露出したパンティをじっくりと観察した。 そしてまるで長年の疑問が解けたかのように深く頷いた。
「……なるほど」 彼は静かに言った。 その声には奇妙なほどの落ち着きがあった。 「……そういうことか」
「(……え? なにが……?)」 いちごは混乱した。
ピースケはいちごを見下ろし諭すように言った。 その表情は真剣そのものだった。 「君のような『不自然』な存在がいるから彼ら(動物)は苦しむのだ」
「(……は? 不自然……?)」
ピースケはいちごのイチゴ柄パンティを指差した。 その指には
「なんと浅はかで人間中心的なデザインだろう」 彼は心底残念そうな顔で首を振った。
「(……やっぱり来た!)」 いちごは身構えた。 「子供っぽい」「ダサい」いつもの罵倒が来る。
だがピースケの指摘は予想の斜め上を行っていた。
「イチゴ……ね」 彼はまるで汚物でも見るかのように眉をひそめた。 「それは
「そのパンティ(イチゴ柄)を身につけるということは!」 「君自身が自然への
(…………) (…………農薬?) (…………人間の業?) (…………自然への冒涜?) (…………穢れ?) (…………私が暴力?)
いちごの頭の中でピースケの
(……この) (……この
いちごのアホ毛が怒りで限界まで逆立った。 彼女の全身から凄まじいピンク色のオーラが立ち上る。 脇腹の傷の痛みも羞恥心も吹き飛んでいた。 地面のアスファルトがその熱量で陽炎のように揺らぎ始めた。
「(……来た! トリガー成立! しかも『存在否定』レベルの侮辱! これは過去最高値を大幅に更新するブーストが!)」 木陰のヨウくんが新PCの発熱を気にしながらも興奮に打ち震え記録を続けていた。
「ヨウくんっ!!!!」
いちごの絶叫が混乱する広場に響き渡った。 (※スカート破れパンティ丸見え存在否定され状態で絶叫している)
その声に応えヨウくんが木陰から飛び出してきた。 彼の手にいつもの銀色のポリ袋が握られていた。
「プリティストロベリーッ!」 今度ばかりはヨウくんも感情を抑えきれないのかわずかに声量を上げて叫んだ。
「その『穢れ(けがれ)』を
銀色のポリ
「(……な、なんだアレ……!? またパンツか!? しかも今度は木陰から!?)」 ピースケが空飛ぶポリ袋を見て呆然としている。
いちごはそのポリ