護って!いちごちゃん!〜いちごパンティは見えてるか〜   作:ろくさん

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第14章:撃つな撃つな! クマより迷惑な動物愛護 その3

 

(……お仕置きタイムです!)

 

いちごは怒りに震える手で新品のイチゴパンティ(ポリ袋入り)を掴み取った。 地面に叩きつけられた身体の痛み。 クマに引き裂かれたコスチュームの惨状。 そして今浴びせられた存在そのものを否定するかのような侮辱。 「不自然」「人間の業」「穢れ」「暴力」。 怒りが沸点を超え思考が灼熱の溶鉱炉のように燃え上がっていた。

 

「(……な、なんだアレ……!? またパンツか!? しかも今度は木陰から!?)」 鳩山ピースケはまだ(くう)を飛んできたポリ(新品)に気を取られ呆然としている。 彼はいちごの中で何が起ころうとしているのか全く理解していない。 目の前の少女が自らの「穢れ」を浄化し「自然の摂理()」に反逆する力を得ようとしているなど想像もしていないだろう。

 

(……不自然?) (……人間の業?) (……穢れ?) (……私が暴力?)

 

侮辱の言葉がいちごの怒りの炉をさらに激しく燃え上がらせる。 (……上等じゃない!) (……見せてあげる!) (……私の『イチゴ柄』に込められた!) (……穢れなんかじゃない『想い』の力を!)

 

いちごは意を決した。 彼女は握りしめたポリ袋を怒りを込めて一瞬で引き裂いた。 ビニール片が混乱する広場の地面に散らばる。 中から現れたのは汚れなき純白の生地に鮮やかな赤いイチゴが散りばめられた新品の「それ」だった。 曇天の下でも自ら発光しているかのように白く輝いている。

 

「(……これが私の!)

 

いちごの瞳が赤く燃えているように見えた。 (ここで履き替える!) (この偽善者の目の前で!) (パニックになったクマの前で!) (ヨウくんのカメラの前で!) (みんなが見てる前で!)

 

羞恥心が鎌首をもたげる。 破れたスカートの下晒された下着。 それを今度は自ら脱ぎ捨て新しいものを履く。 衆人環視の中で。 だがピースケのあの独善的な目が脳裏をよぎり羞恥心を焼き尽くした。 これは「儀式」なのだ。 怒りを真の力に変えるための神聖な「変身(チェンジ)」なのだ。 私の「存在」を肯定するための戦いなのだ。

 

(見てなさい……!)

 

いちごは震える手で。 今まさに晒されているクマの爪跡と泥で汚れたイチゴ柄パンティ。 そのゴム紐に指をかけた。 怒りの形相のままもはや隠すことすら意識せず衆人環視の中。

 

「き、貴様……! まさかここで……!? やめろ! 自然への冒涜だ!」 ピースケがようやく事態を察し顔を引きつらせて叫んだ。 彼の歪んだ倫理観が目の前の光景を拒絶している。 周囲の警察官や猟友会の人間も呆気に取られている。

 

「(桃瀬さん! 覚悟を決めろ! 行け! 周囲の視線ごと力に変えろ!)」 ヨウくんの声が骨伝導イヤホンから鋭く響いた。 いちごは頷く。 もう迷わない。

 

彼女は汚されたパンティ(自然への冒涜で穢れたヤツ)を一気に引きずり下ろした。 汗と土とわずかな血で湿った布地が肌から離れる。 広場の冷たいアスファルトの風が彼女のあらわになった聖域を撫でる。 完全な「丸出し」の状態。 周囲の視線が突き刺さる。 だが今のいちごにはそれすら怒りの燃料だった。

 

(……恥ずかしいなんて感情はもうない!) (こいつへの怒りに比べれば!) (むしろ見せてやるわ! これが私の覚悟よ!)

 

彼女は脱いだパンティ(穢れたヤツ)を憎しみを込めて丸めると。 まだ「冒涜だ!」と叫んでいるピースケの顔面に向かって全力で投げつけた。 「ひげっ!? な、なんだこの生臭い匂いは!?」 ピースケは避けきれずパンティ(使用済み・土と汗とクマ成分?付き)の直撃を顔面に食らい奇声を上げた。 (※後でヨウくんが「サンプルNo.13(動物愛誤汚染・クマDNA付着?)」として回収する)

 

そして。 新品のイチゴ柄を両手で広げ足を通し。 一気に装着した。

 

清潔な真新しい布地が彼女の火照った肌に吸い付くように触れた。 力が全身にみなぎる感覚。 怒りが「穢れなき」決意へと変わる。 装着と同時。 新品のパンティから淡いピンク色の光ではなく。 まるでマグマのような灼熱(しゃくねつ)のオーラが溢れ始めた。 変身の予兆。 怒りのエネルギーが周囲の空間を歪ませる。

 

その瞬間。

 

「なっ!?」

 

「うおっ!?」 「あ、熱い……!?」

 

いちごの身体が爆発的なエネルギーを放った。 光ではない。 純粋な熱波と衝撃波。 光源はプリティストロベリー。 いや彼女が今まさに装着した「イチゴ柄」のパンティその一点から凄まじい怒りのエネルギーが奔流となって周囲に叩きつけられたのだ。 近くにいたピースケが「ぐわっ!」と叫び数メートル吹き飛ばされる。 パトカーの窓ガラスがビリビリと震え遠くの野次馬たちもその衝撃に息を呑んだ。

 

「熱波!? 馬鹿な!?」 「なんだこの力は!?」 ピースケも他の人間たちも信じられない現象に目を焼かれ腕で顔を覆った。

 

木陰でヨウくんの新PC(カメラ)だけが特殊耐熱フィルター(Ver.8・対高エネルギー対応)越しにその神々しい「変身(換装)」の一部始終を記録していた。 PCの内部温度が危険領域に達し強制冷却システムが最大稼働している。 (……変身シーケンス突入。生体エネルギー反応計測不能熱量反応最大。……換装時のパンティ食い込み角度と出力の関係性……心理的要因(存在否定)によるブースト効果……理論限界値を突破……! PCが()たない!)

 

灼熱のオーラの中でいちごの身体が変貌していく。 クマに引き裂かれたコスチュームが熱波で灰燼(かいじん)と化すように霧散する。 物理法則を超えた現象。 そして再構築される。

 

変身の「核」は今履き替えたばかりのイチゴ柄のパンティ。

 

(……っ!!!)

 

いちごはオーラの中で信じられない「感覚」に身を捩った。 履いたばかりのパンティが灼熱を帯びる。 まるで溶けた鋼鉄が肌に直接焼き付けられるように。 布地が意思を持ったかのように彼女の身体に合わせて変形し締め付け変異していく。 怒りのエネルギーがパンティを通して物理的な力へと変換される。 「穢れ」を焼き尽くし「存在」を肯定する力。

 

「あ……あああっ!」

 

パンティのサイドライン。 その布地がありえないほどの張力で物理的に吊り上げられていく。 腰骨を遥かに越え彼女の脇腹のラインに沿って鋭角的に上へ上へと。 まるで身体の一部が強制的に改造されるような激しい感覚。 皮膚にくい込み灼けるような痛みすら感じるほどの圧迫感。 だがそれは痛みではなく怒りの増幅装置だった。 「存在」を主張する証。

 

「(食い込んで……る……!魂マデ!)」

 

純白のイチゴ柄の布地が彼女の太ももの付け根その柔らかい内側に限界まで深く深く食い込んでいく。 それはもはや「パンティ」というより肌と一体化した「第二の皮膚」であり「怒りの装甲」だった。 極限まで切り詰められた超ハイレグスタイル。 怒りの紋章。 Kawaii(カワイイ)Justice(ジャスティス)の最も苛烈(かれつ)灼熱(しゃくねつ)の形態。

 

その変異した「イチゴ柄」を中心(コア)として。 残りのコスチュームが一瞬で再構築された。 熱波と光の糸が周囲の空間エネルギーを吸収しながら身体に巻き付き形を成していく。 広場の空気が陽炎のように歪む。

 

胸元のリボンは鋭利な刃物のようにシャープな形状に。 スカートはほとんど存在しないかのように短く切り詰められたチュチュに変わりその下から食い込むハイレグのラインが挑戦的に晒されている。 手には肘上までのロンググローブ。 指先からピンク色のスパークが散りパチパチと音を立て周囲の空気を焦がしている。 足は膝上までの鋭いピンヒールのロングブーツ。 高熱でわずかに溶けたアスファルトをしっかりと踏みしめる。 そして頭。 イチゴのカチューシャではなく天を突くように伸びたシャープな「ウサギの耳」。 周囲の人々の恐怖と畏敬(いけい)の念その感情の波だけを正確に拾い上げている。

 

熱波が収束していく。 いちごはゆっくりと立ち上がった。 地面に(うずくま)り恐怖に震えるピースケと再び警戒態勢に入ったクマを見下ろす。 彼女の姿は怒りをその食い込むハイレグのラインにまで宿した苛烈な「執行者」だった。 混乱する広場に降臨(こうりん)した破壊と再生の女神。

 

「プリティストロベリー……バニー」

 

その声は静かだった。 だが広場の喧騒を一瞬で凍りつかせるほどの冷たさと怒りを秘めていた。 さっきまでの必死だった少女の声ではない。

 

「な、なんなんだ……いったい……貴様は……自然の敵か……?」 ピースケは熱波で焼かれた目をしばたかせながらかろうじていちご(バニー)のシルエットを捉えた。 さっきまでのただのコスプレ少女とは明らかに違う。 圧倒的な存在感。 神々しさすら感じる。 だがそれ以上に恐ろしい気迫。 自分の信じてきた「動物愛護」が根底から覆されるような絶対的な力。 本能が最大級の危険信号(アラート)を発していた。 彼はもうクマのことなどどうでもよくなっていた。

 

「(……対象『恐慌』状態へ最大レベルで移行。……完璧な変身(データ)だ。……PC冷却完了。解析再開)」 ヨウくんが通信機をそっと閉じた。 カメラは回し続ける。 ピースケの恐怖に歪む表情も再び威嚇(いかく)を始めたクマの動きも克明に記録している。

 

「あなたの言う『自然』とは……」

 

いちご(バニー)は冷たくピースケ(動物愛誤クレーマー)を見下ろした。 その目は憐れみのかけらもなかった。

 

「あなたの『理想』を押し付けるための『言い訳』です」

 

「あ……あ……」

 

ピースケは起き上がろうとするが腰が抜けて動けない。 目の前の「バニー」が放つプレッシャーが彼を地面に縫い付けている。 「動物は友達!」と書かれたプラカードが虚しく転がっていた。

 

「ひっ!」

 

いちご(バニー)はゆっくりとその男に歩み寄った。 ピンヒールがわずかに溶けたアスファルトを踏む音が響く。 コツコツという音が断罪の足音のように聞こえた。 一歩近づくごとにピースケの顔から血の気が引いていく。

 

(この男に物理的な『お仕置き』は当然!) (だがそれだけじゃ足りない!) (こいつの武器は『歪んだ正義感』と『迷惑な妨害行為』!) (だったらそれを奪い去り!) (二度と誰も危険な目に遭わせられないように!) (その『口』と『足』ごと黙らせてやる!)

 

いちご(バニー)の狙いはピースケ本人。 彼女はその男の目の前に立つとゆっくりと右足のヒールを高々と振り上げた。 空中で静止するブーツ。 食い込んだハイレグのラインが怒りのエネルギーで脈打っているように見える。 ブーツの先端に怒りのエネルギーがピンク色の破壊光となって収束していく。

 

(私の『イチゴ柄』を穢れと言った!) (私の『存在』を暴力だと言った!) (その歪んだ『愛誤(あいご)』ごと!) (粉砕(クラッシュ)してあげる!)

 

「さようならあなたの迷惑な『理想郷(ユートピア)』」

 

「ま、待て! やめ……! 動物たちが! 動物たちが泣いている!」 ピースケが最後の抵抗()として動物たちの名を叫んだ。 だが遅い。 いちご(バニー)の心はもう凍り付いていた。

 

いちご(バニー)のヒールがピースケの胸元その一点を目掛けて正確に振り下ろされた。 空気抵抗すら感じさせない速度。 まるで隕石(いんせき)の落下のように。

 

「ストロベリッシュ・バニー……!」

 

「ラブ&ピース・クラッシュ!!」

 

ゴッ!!!! という人体を打つ音とは思えない鈍く重い破壊音が広場に響き渡る。 ピースケの身体が「く」の字に折れ曲がった。 「あがっ……!」 短い悲鳴にならない声を上げ彼は白目を剥き完全に意識を失った。 その表情には恐怖と苦悶そして自らの信条が崩壊する絶望が張り付いていた。 幸い(?)骨は砕けていないようだ。 いちご(バニー)が寸止めで衝撃波だけを叩き込んだらしい。

 

「…………」

 

広場が死んだように静まり返った。 誰も声を出せない。 目の前で繰り広げられたあまりにも苛烈な「お仕置き」。 警察官も猟友会も呆然と立ち尽くしている。

 

いちご(バニー)は気絶したピースケを一瞥するとすぐさま次のターゲットに向き直った。 暴走寸前のクマ。 グルルル…… クマはいちご(バニー)の放つ圧倒的なプレッシャーに怯え後ずさりしている。 だがパニック状態は解けていない。 いつまた暴れ出すかわからない。

 

(……この子もかわいそう) いちご(バニー)の目に一瞬だけ憐れみの色が浮かんだ。 (……でもみんなを護るためには……!) 彼女はクマに向かってゆっくりと歩み寄った。 威嚇(いかく)せず敵意を見せずただ静かに。

 

クマは後ずさりしながらもいちご(バニー)から目を離さない。 警戒心を解いていない。 いちご(バニー)はクマの数メートル手前で立ち止まった。 そして。 驚くべきことに。

 

彼女はその場でくるりと一回転しニチアサアニメ『スウィートハート』の決めポーズを取ったのだ。 バニー形態のままで。 食い込むハイレグを惜しげもなく晒して。 だがそこに性的(セクシー)な意味合いは一切ない。 ただ純粋なヒーローとしての「型」。 彼女が信じる「正義」のポーズ。

 

「…………?」 クマは困惑したように首をかしげた。 目の前の存在(バニー)が何をしたいのか理解できない。 だがそのポーズには不思議な「安心感」があったのかもしれない。 クマの唸り声が少しだけ小さくなった。

 

(……今だ!) いちご(バニー)はその一瞬の隙を見逃さなかった。 彼女はポーズを解くと同時に地面を蹴った。 目にも止まらぬ速さでクマの(ふところ)に飛び込む。 そしてクマが反応するより早く。 その太い首筋にある一点急所(きゅうしょ)をロンググローブに包まれた手刀(しゅとう)で正確に打ち抜いた。 トンッという軽い音。

 

「……グル……?」 クマは一瞬何が起こったのかわからないという顔をした。 そして次の瞬間。 巨体がぐらりと傾ぎ。 ドシン! という重い音を立ててその場に崩れ落ちた。 完全に意識を失っている。 だが苦しそうな様子はない。 安らかに眠っているようにも見えた。

 

「…………」

 

広場が再び静まり返った。 暴走していたクマが魔法少女の一撃()で眠らされた。 あまりにも現実離れした光景。 誰もが言葉を失い立ち尽くしていた。

 

いちご(バニー)は眠るクマの巨体をそっと撫でた。 「……ごめんね。もう大丈夫だよ」 そして彼女は猟友会のリーダーに向き直った。 「今のうちに麻酔をお願いします。山にちゃんと返してあげてください」

 

「あ……ああ……わかった」 リーダーは呆然としながらも頷いた。

 

ウー、ウー、ウー…… その時ようやく遠くから救急車とさらなるパトカーのサイレンが近づいてきた。 (※ヨウくんが傷害事件(ピースケ)およびクマ捕獲成功の連絡を通報済みだった)

 

「……ふぅ」 いちご(バニー)はその光景を見届けると静かに変身を解いた。 (※実際は変身の光と共にハイレグの食い込みが元のパンティのラインに戻りチュチュも元のスカート丈に戻った。破れた箇所も修復されている)

 

そして元のプリティストロベリーの姿に戻ると駆けつけた警察官や救急隊員に(ヨウくんが編集した監視カメラ映像と共に)状況を説明した。 「……正当防衛です。(ピースケ)が先に襲いかかってきたので。クマは……私が説得しました」と。 (※一部事実だがかなり脚色されている)

 

数十分後。 現場検証とピースケの搬送クマの搬送(※大型ケージが用意された)が続く広場の隅。 いちごはヨウくんから受け取った制服(カバン)をなんとか羽織り(※下はコスチュームのまま)人目から隠れていた。 コスチュームの汚れは少ないが精神的な疲労はピークだった。 身体が鉛のように重い。

 

「ぷはー。疲れた……なんかもうクマとお話するの無理」 いちごはぐったりと近くのベンチに座り込んだ。

 

「お疲れ桃瀬さん」 ヨウくんがスポーツドリンク(※近くの自販機で買った)を差し出した。 彼の目は興奮で爛々と輝いていた。 新PCの画面には「戦闘データ解析完了」「生体エネルギーパターン記録成功」「心理的トリガーパターン分析完了」「対大型生物用制圧術(プリティストロベリー流)確立」の文字が踊っている。

 

「わありがと……」 いちごは力なくドリンクを受け取った。 ヨウくんのもう片方の手には見覚えのあるジップロック(サンプルNo.13)が握られていた。 (※さっきいちごがピースケの顔面に叩きつけたパンティ・土と汗とクマ成分?付き)

 

「(……また回収した……! しかもアイツの顔面……!)」

 

「(……動物愛誤汚染(ピースケDNA・クマDNA付着?)サンプルか。これも貴重なデータだ。……付着した野生動物由来(ゆらい)未知(みち)微生物(びせいぶつ)によるパンティ繊維(せんい)への影響(えいきょう)……変身(へんしん)エネルギーへの触媒(しょくばい)効果(こうか)……非常に興味深い(きょうみぶかい)……)」 ヨウくんがボソリと呟いた。

 

「『興味深い』言うなー!」

 

いちごはスポーツドリンクのボトルをヨウくんに叩きつけようとして思いとどまった。 (……あ。パソコン新しくなったんだった) (……殴ったらまた弁償させられる……!) (……でも!) 「ねえヨウくん! 私あのピースケさん殴っちゃったけど大丈夫かな……?」 いちごは自分の(ではなくヒール)を不安そうに見つめた。 衝撃波で気絶させた感触がまだ残っている気がした。 少し後味が悪い。

 

「……いや」 ヨウくんは初めて断言した。 「あれは『お仕置き』として妥当な範囲内だ」 「彼の行為は公務執行妨害(こうむしっこうぼうがい)であり市民を危険に(さら)す重罪だ。それ相応の代償(ペナルティ)は必要だ」 彼はメガネの奥で静かに言った。 「君は間違っていない。むしろ気絶程度で済んだのは慈悲(じひ)と言える」

 

「(だ、脱臼……じゃなくて慈悲……?)」 いちごは少しだけ青ざめたがヨウくんの言葉に救われた気もした。 (……そうだ。私は間違ってない) (……悪いのは全部あいつだ)

 

「さあ帰ろう桃瀬さん」 ヨウくんが立ち上がる。 「今日のデータは過去最高レベルをさらに更新するほど有益(ゆうえき)だった。君の『弁償(べんしょう)』はチャラどころかマイナスだ。つまり僕に貸し(かし)がある状態だ」

 

「(……え!? 貸し!? やっぱり報酬(ほうしゅう)払ってくれるんじゃなかったの!?)」 いちごは愕然(がくぜん)としたがもはや反論する気力もなかった。

 

ご近所の平和(とクマの命)は今日もかろうじて護られたのだった。 いちごの破れたコスチュームと心の傷そしてヨウくんの膨大な新データと共に。

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