護って!いちごちゃん!〜いちごパンティは見えてるか〜   作:ろくさん

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第16章:決戦! いちごパークを取り戻せ! その4

 

「ヨウくんっ!!!!」

 

魂の絶叫が夜明け前のいちごパークに響き渡った。 砕かれた滑り台の残骸。 愚弄(ぐろう)された自分の象徴(イチゴ)。 踏みにじられたみんなの場所。 怒りが憎しみが絶望がそして公園を護るという決意が渾然一体となりいちごの中で爆発した。 彼女の身体から放たれる禍々しいほどのピンク色のオーラが周囲の空気を歪ませる。

 

『(来た! 最大のトリガー! 行け! プリティストロベリー! 奴らに本当の『スクラップ』を見せてやれ!)』 ヨウくんの声も興奮と怒りで震えている。

 

その声に応えるかのように上空で待機していたヨウくんのドローンが急降下してきた。 それはただの偵察機ではない。 いちごの目の前でドローンは複雑に変形を開始した。 ローターが格納され機体側面からアームが展開する。 そしていちごの周囲に目に見えないエネルギーフィールドを展開した。 一瞬だけ重機の騒音や作業員たちの怒号が遮断され静寂が訪れる。 攻撃を防ぐためのものではない。 神聖な儀式(変身)のための結界(けっかい)

 

ドローンの下部ハッチが開きそこからゆっくりと銀色のポリ袋が降下してくる。 いやそれはただのポリ袋ではなかった。 内側から淡い光を放ちまるで生きているかのように微かに脈打っている。 ヨウくんがこの決戦のために用意した最後の切り札。

 

「プリティストロベリー!」 インカム越しではない。 ビルの屋上からヨウくん自身の声が直接響いてきた。 いつもより大きく感情が乗っている。 「これがお前の怒りと覚悟に応える最後の切り(イチゴ)だ! 受け取れ!」

 

いちごは瓦礫(滑り台の破片)と泥と油にまみれながらも決意に満ちた表情でその光るポリ袋を両手で恭しく受け取った。 温かい。 不思議なエネルギーが手のひらから伝わってくる。

 

「(……いくよ)」

 

いちごはもう躊躇(ためら)わなかった。 (ドクーガ作業員重機)が見守る(あるいはオーラの圧力で動けない中)彼女は怒りと決意を剥き出しにしたまま汚れたパンティ(安っぽいガラクタと罵られたヤツ)のゴム紐に指をかけた。 光で隠す必要などない。 これが私の覚悟。 これが私の怒り。 全て見せてやる。

 

彼女は汚されたパンティを一気に引きずり下ろした。 汗と泥と油で湿った布地が肌から離れる。 一瞬の完全な「丸出し」の状態。 だがそこに羞恥はない。 ただ燃え盛る怒りだけがあった。 彼女は脱いだパンティ(ガラクタ)を憎しみを込めて丸めると砕かれた滑り台の残骸に向かって叩きつけた。 (お前もガラクタなんかじゃない!)

 

そして。 光るポリ袋を引き裂き中から現れた新品のイチゴ柄を両手で広げた。 それはいつもと同じ純白の生地に鮮やかな赤いイチゴ。 だが明らかに違う。 内側から生命力のような強い光を放っている。 ヨウくんが持てる技術と情熱()の全てを注ぎ込んだ究極のイチゴパンティ。

 

いちごはそれを素早く装着した。

 

清潔な真新しい布地が彼女の火照った肌に吸い付くように触れた。 その瞬間。

 

「なっ!?」 「ぐおおおお!?」 「なんだこのエネルギーは!?」

 

いちごの身体が爆発的なエネルギーを放った! 光ではない。 純粋な衝撃波と熱波。 光源はプリティストロベリー。 いや彼女が今まさに装着した「究極のイチゴ柄」のパンティその一点から凄まじい怒りのエネルギーが奔流となって周囲に叩きつけられたのだ。 地面が砕けアスファルトがひび割れる。 近くにいた作業員たちが木の葉のように吹き飛ばされ重機の窓ガラスが衝撃で粉々に砕け散った。 毒島大牙さえもその圧倒的な力の奔流に腕で顔を庇い数歩後ずさる。 エネルギーフィールドがなければいちご自身もその力に耐えられなかったかもしれない。

 

「馬鹿な……! こんな力が……!?」 大牙が愕然と呟く。

 

衝撃波と熱波の中でいちごの身体が変貌していく。 汚れたコスチュームが熱で蒸発するように霧散する。 物理法則を超えた現象。 そして再構築される。

 

変身の「核」は今履き替えたばかりの究極のイチゴ柄パンティ。

 

(……っ!!!)

 

いちごはオーラの中で信じられない「感覚」に身を捩った。 履いたばかりのパンティが灼熱を超えプラズマのように輝き始める。 布地が意思を持ったかのように彼女の身体と完全に融合し変形し締め付け変異していく。 怒りのエネルギーがパンティを通して物理的な力へと変換される。 「ガラクタ」と呼ばれた存在が究極の破壊と再生の力へと昇華する。

 

「あああああああっ!」

 

パンティのサイドライン。 その布地がありえないほどの張力で物理的に吊り上げられていく。 腰骨を遥かに越え彼女の脇腹のラインに沿って鋭角的に上へ上へと。 まるで身体そのものが作り替えられるような激しい感覚。 皮膚にくい込み灼けるような激痛すら感じるほどの圧迫感。 だがそれは痛みではなく怒りの奔流そのものだった。

 

「(食い込んで……る……!存在ノ限界マデ!)」

 

純白のイチゴ柄の布地が彼女の太ももの付け根その柔らかい内側に限界を超えて深く深く食い込んでいく。 それはもはや「パンティ」というより肌と一体化した「第二の皮膚」であり「怒りの装甲」だった。 極限まで切り詰められた超ハイレグスタイル。 怒りの紋章。 Kawaii(カワイイ)Justice(ジャスティス)の最終にして最強最悪の形態。

 

その変異した「イチゴ柄」を中心(コア)として。 残りのコスチュームが一瞬で再構築された。 プラズマ化した光の糸が周囲の空間エネルギーを吸収しながら身体に巻き付き形を成していく。 夜明け前の空が一瞬白夜のように明るくなった。

 

胸元のリボンは鋭利な刃物のようにシャープな形状に。 スカートはほとんど存在しないかのように短く切り詰められたチュチュに変わりその下から食い込むハイレグのラインが挑戦的に晒されている。 手には肘上までのロンググローブ。 指先からピンク色のプラズマが(ほとばし)りパチパチと音を立て周囲の空気を焦がしている。 足は膝上までの鋭いピンヒールのロングブーツ。 ひび割れたアスファルトを溶かすほどの高熱を帯びている。 そして頭。 イチゴのカチューシャではなく天を突くように伸びたシャープな「ウサギの耳」。 周囲の恐怖と絶望の感情の波だけを正確に拾い上げている。

 

エネルギーの奔流が収束していく。 いちごはゆっくりと立ち上がった。 吹き飛ばされ気絶した作業員たち。 計器類がショートし沈黙した重機。 そして唯一人呆然と立ち尽くす毒島大牙を見下ろす。 彼女の姿は怒りをその食い込むハイレグのラインにまで宿した苛烈な「執行者」だった。 破壊された公園に降臨した復讐と断罪の女神。

 

「プリティストロベリー……バニー」

 

その声は地響きのように低く重く絶対的な怒気に満ちていた。 さっきまでの必死だった少女の声ではない。

 

「ば、馬鹿な……! 何者だ……貴様は……!」 大牙は生まれて初めて感じる純粋な恐怖に打ち震えていた。 目の前の存在はもはや人間ではない。 神か悪魔かあるいはそれ以上の何か。 彼の築き上げてきた富も権力もこの絶対的な力の前に無力だった。

 

「(……対象『恐慌』状態最大レベル。……完璧な変身(データ)だ。……エネルギー出力理論限界値を大幅に超過。……新素材(イチゴニウム?)の可能性……!)」 ビルの屋上でヨウくんが新PCの発する熱風に顔を歪めながらも歓喜に打ち震え記録を続けていた。 彼の目も狂気に近い輝きを宿していた。

 

「あなたに名乗る名前はありません」

 

いちご(バニー)は冷たく大牙(ドクーガ)を見下ろした。 その目は憐れみのかけらもなかった。

 

「あなたはただ……ここで消えなさい」

 

「あ……あ……」

 

大牙は後ずさろうとするが腰が抜けて動けない。 目の前の「バニー」が放つプレッシャーが彼を地面に縫い付けている。 高級スーツが泥と油で汚れていた。

 

「ひっ!」

 

いちご(バニー)はゆっくりとその男に歩み寄った。 ピンヒールが砕けたアスファルトを踏む音が響く。 ザクッザクッという音が断罪へのカウントダウンのように聞こえた。 一歩近づくごとに大牙の顔から血の気が引いていく。

 

(こいつらにまずやることは!) いちご(バニー)は周囲を見渡した。 まだ息のある作業員たちが起き上がろうとしている。 そして沈黙しているとはいえ巨大な重機軍団。 放置すれば再び動き出すかもしれない。

 

「まずは掃除(そうじ)からですね」 いちご(バニー)は呟くと目にも止まらぬ速さで動き出した。 ピンク色の残像だけが残る。

 

「ぐはっ!」「ぎゃっ!」 作業員たちが次々と悲鳴を上げ再び地面に沈んでいく。 いちご(バニー)は手加減を忘れ急所を的確に打ち抜き無力化していった。 数秒で十数人の屈強な男たちが完全に沈黙した。

 

そして彼女は重機軍団に向き直った。 ブルドーザーショベルカークレーン。 鉄の怪物たち。

 

「ガラクタは……あなたたちの方です!」

 

いちご(バニー)は叫ぶとブルドーザーに向かって突進した。 そしてその巨大なブレード(排土板)をプラズマを纏った(こぶし)で殴りつけた。 ゴオオオオオン!!! 金属が紙のように歪みひび割れ粉々に砕け散った。 ブルドーザーが爆発したかのような衝撃。

 

次にショベルカー。 いちご(バニー)はその巨大なアームを掴むと軽々と持ち上げた。 そしてそのまま振り回し隣のクレーン車に叩きつけた。 ガッシャアアアアン!!! 金属同士がぶつかり合う轟音。 ショベルカーのアームはへし折れクレーン車は横転した。 レッキングボールが地面に転がり虚しく揺れている。

 

わずか数十秒。 あれだけ威容を誇っていた重機軍団はスクラップ同然の鉄屑(てつくず)と化していた。 破壊描写は派手だがオペレーターが乗っていないことを確認してからの無力化だった。

 

「…………」 大牙は信じられない光景に完全に言葉を失っていた。 彼の計画も野望も文字通り目の前で粉々に打ち砕かれたのだ。

 

いちご(バニー)はゆっくりと大牙に向き直った。 その目はまだ怒りに燃えている。 「残るはあなただけですね」

 

「ま、待て……! 頼む……! 金だ! 金ならいくらでもやる!」 大牙は生まれて初めて心の底から命乞いをした。 プライドも何もかも捨てて。

 

「お金で……」 いちご(バニー)は冷たく言った。 「……この公園(みんなの宝物)は買えません」

 

彼女は大牙の目の前に立つとゆっくりと右足のヒールを高々と振り上げた。 空中で静止するブーツ。 食い込んだハイレグのラインが怒りのエネルギーで脈打っている。 ブーツの先端にピンク色の破壊光が収束していく。

 

(私の『イチゴ』を安っぽいガラクタと言った!) (この公園をゴミだと言った!) (まとめてスクラップだと笑った!) (その罪! その手で(つぐな)いなさい!)

 

いちご(バニー)の狙いは大牙が地面についたままの右手。 計画を指示し破壊を命じたその手。

 

「さようならあなたの汚れた『野望()』」

 

「ぎゃあああああああああああああっ!!!!」 中居の時と同じゴキッという鈍い破壊音。 大牙の絶叫が夜明け前の空に響き渡った。

 

いちご(バニー)は冷たく見下ろし言い放った。 「二度とこの公園(みんなの宝物)に手を出さないことです」

 

大牙は砕かれた右手を抑え恐怖と屈辱に震えながら後ずさった。 「お、覚えていろ……! 必ず……必ず……!」 彼は捨て台詞を吐くと駆けつけた部下(運転手)に助けられながら這うようにして車に乗り込み逃走していった。 その背中は敗北者のそれだった。

 

「…………」

 

大牙たちが去り破壊された重機の残骸だけが残る。 夜が明け朝日が昇り始めた。 朝焼けの光が破壊された公園をそして怒りの変身を終えたいちご(バニー)を照らし出す。 いちご(バニー)はゆっくりと変身を解いた。 光と共に元のプリティストロベリーの姿へ。 コスチュームの汚れも破れも全て浄化され朝日の中で白く輝いていた。

 

「……プリティストロベリー!」 「ありがとう!」 「公園を護ってくれて!」 鈴木さんたち市民がいちご(プリティストロベリー)に駆け寄り感謝の言葉を口にする。 彼らは一部始終を見ていたのだ。 その目には恐怖ではなく尊敬と感謝の色が浮かんでいた。

 

いちごは少し照れながらも笑顔で応えた。 「みんなの公園ですから!」 朝日の中で彼女の笑顔がひときわ輝いて見えた。

 

やがてパトカーや消防車救急車が到着した。 ヨウくんがビルの屋上から降りてきて警察に完璧な証拠映像(ドクーガ側の不法侵入器物損壊暴行未遂のみ)と状況説明を行った。 事件はドクーガ側の全面的な敗北で決着した。 破壊された重機や気絶した作業員たちの処理は大変そうだったがそれは警察の仕事だ。

 

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