護って!いちごちゃん!〜いちごパンティは見えてるか〜 作:ろくさん
すっかり秋の空気に入れ替わった十月下旬の午後。 いちごパークは穏やかな日差しと子供たちの歓声に包まれていた。 空は高く澄み渡り色づき始めた木々の葉が風にそよぎ心地よい影を落としている。 金木犀の甘い香りはもう薄れたが代わりに乾いた落ち葉の匂いが微かに漂っていた。
公園の中央には以前よりも少しだけ立派になったイチゴ型の滑り台が鎮座していた。 あの夜明け前の激闘で無惨に破壊されたシンボル。 しかし町内会長の鈴木さんたちの呼びかけと多くの市民ボランティアそして匿名の多額の寄付(※ヨウくんがドクーガ関連の不正データを匿名でリークし得た報酬の一部らしいがいちごは知らない)によって見事に修復されたのだ。 真新しい赤いペンキが秋の日差しを浴びて眩しく輝いている。
「きゃー!」 「わーい!」 子供たちが順番待ちの列を作り歓声を上げながら滑り台を滑り降りてくる。 その笑顔は太陽のように明るい。
ベンチに座り桃瀬いちごはその光景を眩しそうに眺めていた。 隣にはいつものようにヨウくんが無表情で座っている。 彼の膝の上には最新型のノートPCが置かれているが今日は電源が入っていないようだった。 珍しく彼もただ公園の風景を眺めている。 穏やかな時間が流れていた。 あの激しい戦いがまるで遠い昔のことのように感じられる。
「……公園護れてよかったねヨウくん」 いちごは心からの笑顔で隣の相棒に話しかけた。 修復された滑り台を見るたびに胸が温かくなる。 あの時諦めなくてよかった。 戦ってよかった。
「ああ」 ヨウくんは短く頷いた。 視線は公園の入り口道路の方に向けられている。 警戒を怠っていない。 「……だが
「うん!」 いちごは力強く頷いた。 少しだけ不安はある。 大牙のあの冷たい目は忘れられない。 でも今の彼女にはもう迷いはない。 「いつでも来なさいって感じだよ!」 彼女は拳を握りしめた。 アホ毛がぴょこんと元気に立つ。 「この公園も町も私が絶対に護ってみせるんだから!」 その瞳にはプリティストロベリーとしての強い光が宿っていた。
ヨウくんはいちごのその決意に満ちた横顔を一瞥した。 そして視線を自分の膝元のPCバッグへと落とした。 バッグの中彼の手のひらには小さなジップロックが一つ握られていた。 中身はもちろんあの最終決戦でいちごが脱ぎ捨てた究極のイチゴパンティ(サンプルNo.15)。 『(……そして私のデータ収集も……完璧だった)』 ヨウくんは内心で呟いた。 (最終決戦時の最大出力エネルギーパターン。換装時の詳細な生体反応。……解析すればプリティストロベリーのさらなる強化そして未知のエネルギー『イチゴニウム(仮称)』の謎に迫れるかもしれない……) 彼の
穏やかな時間が流れる。 公園の時計が午後四時を告げた。 そろそろ部室に戻る時間だ。 二人はベンチから立ち上がり公園を後にした。 夕焼けに染まる帰り道。 他愛ない会話をしながらいつもの部室へと向かう。 戦いの後の平和な日常。 それはとても尊くかけがえのないものに思えた。
埃っぽく雑然としたオタ研部室。 相変わらずカビと古い紙と電子部品の匂いが混じり合っている。 いちごは自分の席に着くと早速買ってきたばかりの『月刊スウィートハートファン』最新号を開いた。 付録のポスターに目を輝かせている。 ヨウくんは自分の席で新PCを起動し何かの解析作業を再開した。 いつもの放課後の風景だ。
(……やっぱり部室が一番落ち着くなあ) いちごはポスターを眺めながら思った。 外の世界でどんな戦いがあろうともここだけは変わらない
コンコン。 突然部室の古びたドアが控えめにノックされた。
「「?」」 いちごとヨウくんは顔を見合わせた。 来客? この部室を訪ねてくる者など普段は誰もいない。 (まさか……先生の見回り!? 宿題やってないのバレる!) いちごは慌てて雑誌を隠し教科書を開いた。
「はーい! どうぞー!」 いちごが少し緊張しながら返事をすると。 ギィ……といういつもの軋む音と共にドアがゆっくりと開いた。
そこに立っていたのは二人の少女だった。 いちごたちと同じ学園の制服を着ている。 新入生だろうか。 二人とも明らかにこのカオスな部室の雰囲気に
先に中に一歩踏み込んできたのは背の高い方の少女だった。 腰まで届く長い金髪。 その両サイドは見事な縦ロールのツインドリルになっていた。 お人形のように整った顔立ち。 大きな青い瞳がきょろきょろと不安げに部室内を見回している。 だがその胸は制服の上からでもわかるほど豊かに主張していた。 モデルのような抜群のスタイル。 育ちの良さそうな雰囲気を漂わせている。 彼女はいちご(とその後ろのヨウくん)を見つけるとスカートの裾を少し持ち上げ深々とお辞儀をした。 その動きは完璧に洗練されている。
「ご、ごきげんよう!」 少し上擦った可愛らしい声。 「わたくし現代文化研究会に興味を持ちまして……! あの入部を希望いたしますの!」 彼女は顔を上げ期待に満ちた目でいちごを見つめた。 頬が興奮でわずかに上気している。 「み、水玉リンと申しますわ! どうぞよろしくお願いいたします!」
(みずたま……りん……?) (すごい名前……! そしてすごい縦ロール……!) いちごは呆気に取られていた。 まさかこんなお嬢様然とした子がこのオタ
リンはいちごの隣に座るヨウくんの姿を捉えるとさらに頬を赤らめた。 (まあ……! あの方が会長のヨウ様……!) (噂通りクールでミステリアス……!) (そして……あんな
「……あ、はい! ようこそオタ研へ!」 いちごはようやく我に返り慌てて笑顔でリンを迎えた。 (……なんかすごいキラキラした子が入ってきたぞ……!)
リンが感激したようにいちごの手を取ろうとしたその時。 リンの後ろに隠れるようにしていたもう一人の少女がひょこりと顔を出した。 リンとは対照的に非常に小柄な少女だった。 身長はいちごよりさらに低い。 肩までの長さの黒髪をサイドテールに結んでいる。 大きな黒縁メガネ。 口数は少なそうだがそのメガネの奥の瞳は強い意志と驚くほどの観察眼を宿しているように見えた。 彼女は部室内を値踏みするようにじっと見回している。 壁一面のポスター積まれた漫画本散乱したフィギュアそして……ヨウくんが解析中の
「…………」 少女は何も言わない。 ただじっと観察している。 その手には飲みかけの奇妙な色の紙パックジュース(ドリアンミックス味?)が握られていた。
「あ、あの……?」 いちごが戸惑いながら声をかけると。 少女はようやく視線をいちごに戻した。 そして小さな声でしかしはっきりと名乗った。 表情はほとんど変わらない。
「……縞田アリス……よろしく」 「……イラストレーター志望」 「……人体の動きに興味がある」 彼女はそれだけ言うと再び部室内の観察に戻ってしまった。 特にいちごの身体のライン関節の動きアホ毛の揺れ方などを穴が開くほど見つめている。 (……なんかこの子も変わってる……!) いちごは若干引き気味だった。
アリスは観察に飽きたのかおもむろに自分の制服のブラウスのボタンに手をかけた。 「……ん。関節が見えない」 そして何の躊躇もなくボタンを外し始めたのだ。
「えええええ!?」 いちごが悲鳴を上げる。 リンも「まあ! 大胆ですわ!」と目を輝かせている。
「ちょっ! 何してるのアリスちゃん!?」 いちごが慌てて止めようとする。
「……動きの確認」 アリスは淡々と答えた。 「……服があると肩甲骨の動きがわからないから脱ぐ」 彼女にとってはごく自然な行動らしい。 「……あとで自撮りする」
「(……だ、脱ぐ!? 自撮り!?)」 いちごは頭がクラクラした。 (この部活ヤバい奴しか来ないの!?)
一方ヨウくんは。 この新たなカオスな状況を冷静に観察していた。 水玉リンの暴走しがちな妄想癖。 縞田アリスの唐突な脱衣癖と鋭すぎる観察眼。 (……なるほど) 彼の口元に初めて微かな笑みが浮かんだように見えた。 (……これは……) (……新しい『データ』の宝庫かもしれない……!) 彼の指が素早くキーボードを叩く。 ファイル名『新入部員観察記録』。
いちごはまだ混乱の真っ只中にいた。 妄想お嬢様と脱ぎたがりイラストレーター。 そしてデータ収集マニアの変態会長。 (……私の平穏な
だが彼女はすぐに気を取り直した。 (……でも!) (……賑やかになるのはいいことかも!) (……友達が増える……のかな?) いちごは少しだけ期待を込めてリンとアリスに向き直った。 アリスは既にブラウスを脱ぎ捨てタンクトップ姿で自分の肩の動きを確認している。 リンはいちごとヨウくんを交互に見ながら何やら意味深な笑みを浮かべていた。
「えっと……二人とも! 改めてようこそ!」 いちごは精一杯の笑顔を作った。 「これからよろしくね!」
プリティストロベリーと(自称)妖精。 そして新たに加わった(であろう)二人の個性的な
(エピローグ 終了 / 本編 第一部 完)
第一部完!!
たぶん続かない。
お馬鹿なエロコメが書きたくなったら、思った以上の大作になってしまいました。。
続きが読みたい方は「わっふるわっふる」と書き込んでください。