必要なのは勇者としてのシステム。
何度も蘇り、何度でも死に、永遠に戦い続けさせられる世界の奴隷だ。
俺の意志など、どこにもない。
だから、俺は全てから逃げるために世界の果てを目指すことにした。
「……ああ、もう無理だ。このクソったれが……」
俺は呻きながら、剣を突き立てた地面に額をべったりと付けた。
指先から力が抜け、今にも崩れ落ちそうだ。
灼熱の太陽が頭上で燃え盛り、視界はゆらめく陽炎で歪んでいる。
息をするたびに、喉の奥が焼けるような痛みが走る。
「誰か……誰か助けて……」
か細い声がする。視線の先には、背中に致命傷を負った少年が横たわっている。
彼の胸元は、鮮やかな赤に染まっていた。
ああ、あいつもか。俺は重々しくため息をついた。
まただよ。なんでどいつもこいつも俺なんかに助けを求める?
「待っていろ……」
俺は“勇者”と呼ばれている。
人々を魔王から救い、世界に平和をもたらした偉大な英雄。
少なくとも、俺以外の人間の認識ではそうなっている。だが、本当は……。
「まだ生きているか?」
「勇者…様…?」
少年はかすかに目を開き、俺の方を見た。
その瞳には、純粋な信頼とほんの少しだけ恐怖が混じっている。
そうだ。人々は俺を信頼する。勇者がいれば、何とかなる。そう思い込んでいるんだ。
だから、俺はこうして何度も何度も、救いを求める手を伸ばされる。
「落ち着け。すぐに手当てをする」
「う、うん……」
俺は無理やり立ち上がり、少年の方へ歩み寄る。
足はがたがただ。頭がクラクラする。でも、俺は歩く。俺は勇者だから。
少年のそばにしゃがみ込んで、傷の手当てを始める。
だが……どうにもならない。
「これは……」
深すぎる。
魔物の爪が内臓をえぐり取っていた。
傷を塞いだところで無理だ。間に合わない。
「……すまない、この傷の深さでは……」
せめて、死ぬ前に恨み言ぐらい言わせてやろう。
そう思って、俺は助けられないことを少年に告げる。
「勇者様は……悪くない……」
だが、俺は赦された。赦されてしまった。
「そうかな?」
俺は力なく笑う。そうだ、俺は悪くない。 ──ズキリと胸が痛む。
悪いのは、この世界だ。 ──本当に?
この俺は勇者であるが故に
この世界が俺を必要とする限り。俺はそんなこと欠片も望んでいないのに。
だと言うのに、彼らは違う。
生きたいと望む彼らは理不尽にも一度死ねば、それで終わりだ。
代われるものなら、喜んで俺が代わりに死にたい。
死なせてくれ。
「勇者様……」
少年の息が、次第に弱くなっていく。
俺は何もできない。ただ、彼の手を握ることしか。
「ああ……」
「ありがとうございます……」
少年の瞳が、静かに閉じた。
握られていた手の力が、ふっと抜けていく。
俺は、その手を離した。
そして、代わりに相棒の剣を手に取る。
「ありがとうか……くそったれが……」
俺は怒りの味がする血を吐き捨て、少年を殺して逃げていった魔物の跡を追う。
地団駄を踏むように、地面を蹴って走る。
怒りが、俺の全身を駆け巡る。なんで、なんで俺だけが死なない!
生きたいと願う奴を殺すぐらいなら、俺を殺せ!
「ここだな。八つ当たりに付き合え」
魔物の巣穴に着くと、俺は一切の戦術を捨てて、ただひたすらに突っ込んでいく。
蹴散らし、切り裂き、粉砕する。
自分の命が、どうなってもいい。どうせ、勇者は死んでも復活する。
だから俺は、ただただこの怒りをぶつけたいだけだ。
そして、最後の最後に残った巨大な魔物の腕と俺の体は刺し違える。
「くそっ、一応…仇、取れたんだけどな……」
意識が遠のいていく。またか。
抱く感情は恐怖ではなく諦観。
おおよそ、死にゆく人間が抱くものではない。
「全然、気が晴れないな……」
こうして、俺は死んだ。そしてまた、
勇者だから。
これが、俺の日常だ。
何度目だろう。もう数え切れない。死ぬのなんて、もう慣れてしまった。
痛みも、恐怖も、あまり感じない。
それどころか、死ぬことの方が、楽だとさえ思うようになった。
俺の心は体と違い、とっくの昔に──死んでしまっている。
──次に目が覚めたとき、俺はまたもや王城のベッドの上にいた。
柔らかいベッド。清潔なシーツ。窓から差し込む優しい光。
まるで、悪夢から覚めたかのよう。
「……またか」
だが、あれは夢ではない。現実だ。この世界に確かに生きた少年は死んだ。
俺はため息をついて、ベッドから起き上がる。
体に何の傷もない。もちろんだ。
世界は、勇者である俺を元通りに“修理”してくれるのだから。
「勇者様! お目覚めですか!」
扉が開き、若い侍女が飛び込んできた。
彼女の顔には、安堵と喜びが溢れている。
「勇者様がお戻りになられて、本当によかったです! 皆、心配しておりましたよ!」
「ああ」
俺は無愛想に答える。だというのに、彼女は気にしない。
彼女はただ、俺が“勇者”であることだけを信じている。
勇者であるならば、他のことは
「王様がお呼びです。すぐにでも拝謁を……」
「分かった」
俺は彼女と会話を断ち切るように、部屋を出た。
長い廊下を歩く。壁には、俺の武勲伝が描かれている。
魔物を退治し、人々を救い、遂には魔王を打倒した偉大な英雄としての俺。
壊れた鏡を見ているようで吐き気がする。
「おお、お前か、勇者よ! 無事で何よりだ!」
玉座の間に到着すると、王がにこやかに迎えてくれた。
「ああ」
「今度の活躍、聞いたぞ。見事だった! あの恐ろしい魔物達を、単身で滅ぼすとは!」
「……あの魔物は、俺が来る前に村を襲った。村人の多くは死んだ。無駄な行為だ」
王の笑みが、微妙に歪む。
俺の態度に怒っているのかもしれない。
だが、俺を処刑したところでどうせ復活するのだ。
俺の心が壊れるまで、利用した方が得だと思っているのだろう。
「……そうか。だが、結果としてお前が魔物を討ち取った。それは事実だ。決して無駄ではない。世界は、お前を必要としているのだ」
必要とされている。
そうだ、俺はそう言われ続けてきた。
必要とされているから、戦い続ける。死んではいけない。
勇者が消えれば、人々は困る。
だが、本当はどうなんだろう。
それが本当に俺である理由はあるのだろうか?
「はい、王の言う通りです」
俺は王の横に立つ、顔なじみの教会の大司教に目をやった。
彼は白髪を交えた髪を優しく撫でながら、慈愛に満ちた笑みを浮かべて俺を見つめている。
「勇者様。神の御力が、あなたと共にありますように」
「…………」
「世界は、あなたの力なくしては回りません。どうか、私達のために、戦い続けてください」
戦い続ける。そうだ、俺は戦い続ける。
何度死んでも、何度蘇っても。この世界が俺を必要とする限り。
だが、俺にはもう、そんな気力は残っていなかった。
「……ああ、分かっている」
俺はぶっきらぼうに答えた。
王と大司教は、それで満足したようだ。
その日、俺は王城を抜け出して街をぶらぶらと歩いた。
人々は俺に気づくと、敬意を込めて頭を下げる。
感謝の言葉をかける。子供たちは、輝く瞳で俺を見つめる。
俺なんぞに。
「勇者様だ!」
彼らはそう言って、駆け寄ってくる。
「勇者様、冒険の話をしてください!」
「僕も、勇者みたいに強くなりたい!」
「いつも、私達を守って下さって、ありがとうございます、勇者様!」
「……俺なんか、大したことないさ」
俺は無理やり作った笑顔でそう言って、子供達の頭を撫でた。
彼らは純粋に喜ぶ。そのことに、俺は少しだけ罪悪感を覚える。
この子達に、俺の本当の姿を知られたらどうなるだろうか?
失望するだろう。憎むだろう。
そして、そんな勇者ではない俺を彼らは必要としていない。
必要としているのは、偉大な英雄としての“勇者”だけだ。
きっと、俺が消えれば、また新しい“勇者”が現れるのだろう。
あるいは、この世界自体が新しい“勇者”を創造するのかもしれない。
ならば、なんで俺が?
その夜、俺は自分の部屋で、静かに考えていた。
窓の外では、満天の星空が瞬いている。
美しい夜だ。だが、俺の心は、ただただ空虚だった。
どうやら、この世界は
必要としているのは、ただの記号に過ぎない“勇者”という存在だけだ。
俺自身の人生や感情など、どうでもいい。
ならば、俺はどうすればいいんだ。
俺は、窓から外を眺めた。王城の庭には、美しい花々が咲き誇っている。
平和そのものだ。
だが、その平和は俺の犠牲と、救えなかった奴らの犠牲の上に成り立っている。
俺の無限の死と再生という、呪われた循環によって。
もう、嫌だ。
もう、俺は死にたくない。蘇りたくない。戦いたくない。
誰かを救いたいなんて、とっくの昔に思っていない。
ああ、いや、違う。きっと、救いたいとは思っているはずだ。
だが、そのためなら、俺が死ぬのは当然だなんて、信じられない。
誰かが死ぬのは、悲しいことだ。
だとしても、もう疲れた。
だから、もう、やめたい。
「……逃げよう」
俺は、ふと呟いた。
逃げよう。この世界から。
この“勇者”という役割から。
誰にも見つからない場所へ行こう。
「そうだ、逃げよう」
俺は死ねば、また蘇る。なら、蘇るたびに、また逃げればいい。
いつかはこの世界も、人々も俺を追うのを諦めるかもしれない。
そうだ、逃げよう。どこまでも、どこまでも逃げ続けよう。
「どこでもないどこかに。誰でもない誰かに……」
そう決意した俺は、初めて、安堵のため息をついた。
それは、長い長い戦いの最初の終わりなのかもしれない。
必ず、この世界から逃げる。その決意は、俺の心に奇妙な平静をもたらした。
それは、戦いを前にした緊張とは違う、一種の諦めと、それに伴う解放感だった。もう、誰かを守れずに後悔する必要はない。もう、王や大司教の期待に応える必要はない。ただ、俺は俺で、どこかへ消えればいい。だが、その“どこか”が、簡単には見つからなかった。
逃げるのならば、王や民……いや、世界すら追って来られない場所でなければ意味がない。
数日後、俺は王城の図書館にいた。
埃の匂いと古い羊皮紙の匂いが混ざり合った空間。
静寂の中、俺はひたすら古書を読み漁っていた。
地図、歴史書、伝承……。
世界の果て、あるいはこの世界の“外”へ出られる可能性を探している。
侍女達が『勇者様、お疲れです』と心配そうに声をかけてくるが、俺は『ああ』とだけぶっきらぼうに返す。彼女らの善意すら、今の俺には重荷に感じられていた。
「……これだ」
やがて、俺は一際古びた一冊の文献にたどり着いた。
それは、世界の創生について記された神聖な書物だった。
その文献の隅に、興味深い一節があった。
『世界は、始原の理にして終焉の理である“境界”によって支えられている。境界は、世界を内側へと向かわせる力、すなわち“収束”と、外側へと広がろうとする力、すなわち“拡散”の均衡によって保たれている。この均衡が崩れれば、世界は自壊するか、あるいは虚無に消えるだろう』
文献は続く。
『伝承の一部では、この“境界”と称される場所が、物理的な場所として存在したと記されている。
世界の縁。旅人の果て。
その言葉が、俺の心に突き刺さった。
もし、そんな場所が本当に存在するなら、そこに逃げ込めば、この世界の法則からも、人々の視線からも逃れられるかもしれない。
蘇りのサイクルも、そこでは通用しないのではないか?
「……もっと調べるとするか」
俺は、その文献をこっそりと自分の部屋に持ち帰った。
夜、寝静まった城でランプの光を頼りに、地図とにらめっこした。
文献には具体的な場所は記されていない。
ただ、『太陽が二度昇り、月が三度沈む土地』という、詩的な表現があるだけだった。
馬鹿げた記述だ。だが、俺には他に道がない。
俺は、王の地理学者に、そんな場所があるか尋ねてみることにした。
もちろん、目的は隠す。ただの好奇心だと言い張るつもりだ。
翌日、俺は地理学者の部屋を訪れることにした。
俺が訪れると、白髪の老人が山のような書類と地図に埋もれていた。
「おや? 勇者様、珍しいお立ち寄りですね。何かお探しですか?」
「ああ。少しだけ、興味が湧いたものがあってな。太陽が二度昇り、月が三度沈む土地というのは聞いたことがあるか?」
地理学者は、興味深そうに俺を見上げる。
そして、考え込むように自分の白い髭を撫でた。
「太陽が二度昇り、月が三度沈む土地……うーむ。それは、伝承の類ではございませんかな。確かに、古い文献に、そのような記述があることを耳にしたことがあります。ですが、それは地理学的な事実というよりは、比喩表現であるかと……」
「どんな比喩だ?」
「ええ。例えば、昼と夜が非常に短い極地のような場所を指すとか。あるいは、幻想郷のような、現実から切り離された異界を指す言葉として、詩人などが好んで用いたとか……」
「物理的な場所として、可能性は全くないのか?」
地理学者は、何かを思い詰めるようにしばらく俺を見つめていた。
そして、ため息をついて奥の棚から、一枚の古びた地図を取り出す。
それは王が所持している公式のものとは違う、何かの写しか、あるいは勝手に作られたもののようだった。
「これが、ありますかね。私がまだ若い頃に興味本位で手に入れたものです」
地図は、ぼんやりと描かれているし、大陸の輪郭も今のものとは微妙に違っていた。
「これは、大昔の神話の時代の地図の写しです。信憑性は低い。ですが、この地図の東の果て、“忘却の海”の向こう側に、“世界の涙”と呼ばれる島が記されています。ここに関する伝承は、ほとんど残っていません。ただ、『時の流れが異なり、生と死が織りなす繭が浮かぶ島』とだけ、記されているのです」
「時の流れが異なり……」
俺の心臓が、高鳴った。
これかもしれない。
「その島への道順は?」
「ありません。この地図自体が、誰が作ったのかも不明です。ただ、この島に行き着いた者は、誰一人として帰ってこなかったと伝えられています。まあ、本当に帰って来れないのなら伝承も残らない訳でして……ですから、これもまた、行き着くことのできない場所、という比喩である可能性が大きいかと」
「分かった。協力してくれ」
「は?」
地理学者はポカンと口を開ける。
だが、俺はそんなことは気にしない。
「この島の場所を、もっと正確に特定したい。どんな伝承でも、どんな言い伝えでもいい。それに関する情報を、全部集めてくれ」
「勇者様、まあ、待ってください! そんな、伝承の追っかけを……」
俺は、老人の肩を握った。
藁にすがるように力を込める。
「俺は、伝承を追いかけているんじゃない。自分の道を探しているんだ」
老人は俺の目の奥にある、これまでに見たことのないような固い決意を見抜いたのか、黙って頷いた。
そこにはどこか、迷子になった子供を見るような優しさがあった。
「……分かりました。全力を尽くしましょう」
それから数週間、俺は地理学者と共に、文献の山に埋もれた。
侍女たちは、俺の変わりようにさらに心配そうな視線を送って来た。
王は俺に会いたがったが、俺は理由をつけて断り続けた。
俺の心は、もはやこの王城にはない。
遥か東の果て、忘却の海の向こう側にあるという、幻の島に飛んでいた。
そうして、ついに俺はたどり着く。
地理学者が見つけ出したのは、ほんの短い一節だけ。
それは、ある遭難した船乗りの航海日誌の断片だった。
『……我らは、嵐に襲われ、知らぬ海に流された。何日も何日も、太陽も星も見えない闇の航海だった。やがて、我らは、不思議な光景を目にする。東の空から、太陽が昇る。そして、西の空に沈む。だが、光が消える間もなく、再び東の空から太陽が昇ったのだ。仲間達は、神の怒りか悪魔の仕業かと怯え、叫んだ。その夜、月は三度空に昇り、そして沈んだ。まるで、世界が一日のうちに、何度も生まれ変わり死んでいくかのようだった。我らは、世界の果てに迷い込んでしまったのだ。船は、異常な潮流に乗せられ、進むことも戻ることもできず、やがて、巨大な渦に呑み込まれていった……』
世界の果てに迷い込む。太陽が二度昇り、月が三度沈む。巨大な渦。
「これだ。これに違いない…!」
俺は、その日記の断片を握りしめた。
そして、城を出ると決める。
深夜。俺は、誰にも告げずに、部屋を出た。
荷物は最小限にしたが剣だけは手放せなかった。
古い友人だ。これが、最後の旅路になるかもしれないのだから。
俺は息を殺して、夜の王城を抜け出す。
運が良いのか悪いのか、誰にも見つからなかった。
まるで、世界そのものが、俺の逃亡を許してくれているかのようだった。
街の港場で、東へ向かう船を探した。
そして、一隻の、ボロい交易船を見つける。
「勇者様…!?」
「船に乗せて欲しい。金ならある」
船長は、勇者である俺の顔を見ると、当然ひどく驚いた。
だが、俺がありったけの金を積むと黙り込む。
「目的地は?」
「“忘却の海”の近くまで行ける場所」
「“忘却の海”? あんな古い伝説染みた場所になんで、また」
「できれば、海賊がよく出るところがいい」
俺は適当に理由付けをする。
まるで、海賊の討伐に赴くように告げた。
そうすると、船長は怪訝な顔をしたが、勇者様が言うならと頷いた。
「……へい。じゃあ、“食い尽くす者達の海峡”までお連れしやしょう。そこは、まさに地獄だが、お望みの場所に近いかもしれませんぜ?」
「望むところだ」
俺は、それだけ告げると船の隅に座り込む。
これから先、何が待っているのか。俺には分からない。
だが、もう後戻りはできない。
船は港を出て、東へと進んだ。
故郷の陸地は、次第に小さくなり、やがて水平線の下に消えていく。
俺は、もう、戻れない。その事実が逆に俺の心を軽くしていった。
“食い尽くす者達の海峡”。
その名の通り、海は荒れ狂い、海賊の船が頻繁に出没する危険な海域だった。
俺の乗った船は、幾度か危険な目に遭ったが何とかしのいでいった。
「海賊の相手は全て俺がやる。下がっていろ、死ぬぞ?」
「へへへ、流石は勇者様。あの荒くれ者の海賊が、小便漏らすガキみたいでさぁ」
俺は甲板で嵐に耐え、海賊の襲撃の剣を払う。
船乗り達は、俺の剣の腕に驚き、流石は勇者様だと敬意を払うようになった。
その視線は前までのものと同じだったが、どういう訳か今は煩わしくは感じなかった。
数週間の航海の末、俺は船長に目的地まで着いたことを告げられた。
「ここが、“食い尽くす者たちの海峡”の出口、東の果てでさぁ。これ以上先へ行けば、この船は、二度と戻って来れない……波が荒すぎるし、海図にもない岩礁も無数。それに……」
船長は、海の向こうを指さす。
「古い古い伝承でさぁ。あの向こうには、何かが
「ありがとう」
俺は、剣以外の全ての荷物と有り金を船長に渡した。
ここまでの危険な航海につき合わせた謝礼だ。
「危険だが、無事に引き返すんだぞ」
「……勇者様は、何をしにここへ?」
今までずっと抱いた疑問を零す船長。
それに対して、俺は微笑みを返す。
「果てを見に来た」
「……ご無事で」
船長は、何か言いたそうだったが、それだけ言って頭を下げた。
俺は船長から貰った、脱出用の小さなボートに乗り換える。
たった一人で。食料と水だけを、少し積み込んだ船。
この荒海の中に行くにはあまりにも頼りない。
ボートは、すぐに波に揺さぶられ、今にも沈みそうになった。
だが、俺は持ちこたえる。
何度死んでも、何度蘇っても、この世界の法則に縛られてきた俺にとって、この物理的な苦痛なんて、なんでもない。
そもそも、ここで死んでもどうせ蘇るんだ。
恐怖など抱きようがなかった。
「あれから何日たった…? いや……どうでもいいか」
何日も、ボートで漕ぎ続けた。
やがては、食料も水も底をつく。
体は、衰弱の一途を辿る。
だが、俺は死んだところで蘇るのだ。
諦めなければ、どこまでも行ける。
俺の意志だけは、まだ燃えていた。
「あれは…!」
そして、その日。俺はついにそれを見つける。
東の空から、太陽が昇った。そして、西の空に沈む。
だが、光が消える間もなく、再び東の空から太陽が昇ったのだ。
「……見つけた」
俺は、虚ろに呟く。それから、夜が来た。
そして、月が三度、空に昇り沈んでいった。
まるで、世界が一日のうちに、何度も生まれ変わり、死んでいくかのようだった。
そして、船乗りの日記通り、巨大な渦が俺のボートを呑み込んだ。
暗闇と、水の圧力、そして今までの疲労。
俺の意識は海の底へと飲まれていった。
「ここは…?」
やがて俺は波の音に目覚めた。
柔らかい砂の感触。
頭を振り、顔を上げると、そこは見たこともないような白い砂浜だった。
空は、紫とオレンジに染まっていて、二つの月が、奇妙に輝いていた。ここは、どこだ?
「いや、ここが……」
俺は、ゆっくりと起き上がる。そして、辺りを見渡す。
そこには、見渡す限りの白い砂浜と、不思議な形をした岩が続いていた。
その向こうには、巨大な水晶のような樹々が立ち並ぶ森が見えた。
「……“世界の涙”か」
俺は立ち上がり、森の方へ歩き出した。
ここならきっと。ここなら俺は、とうとう。
──そこに、俺以外の足音がする。
俺は、振り返った。そこには、一人の少女が立っていた。
長い銀髪が、風になびいている。
その瞳は、夜空のような深い青色をしている。
彼女は、俺をじっと見つめている。
その瞳には、驚きも好奇心もない。
ただ、静かな諦めのようなものが浮かんでいた。
「……誰だ?」
俺は、問いかけた。少女は、静かに首を傾げる。
「私? 私は、ここにいるもの。あなたは?」
「俺は勇者……だった者。今はただの旅人だ」
「旅人……そっか。久しぶりだね。ここに来るのは」
少女はそう言って、俺に近づいてきた。
彼女は、素足で白い砂の上を歩いている。
その姿は、まるで、この島の一部のようだった。
「あなたは、ここで何をしに来たの?」
「……逃げてきたんだ」
「逃げて?」
「ああ。この世界の、何もかもから。責任も、役割も、期待も。全部、捨ててきた」
少女は、うん、と頷く。
「そういう人、たまにいるわ。ここにたどり着くのは。でも、みんなすぐに
「いなくなる?」
「ええ、消えるの。ある日、忽然と。まるで、最初からいなかったかのように。理由は色々だけど」
少女はそう言って、俺の手を取る。
その手は、ひどく冷たかった。
「あなたも、そうなるかもしれないわ。でも、それでいいのなら」
「ああ、それでいい。俺はもう、誰からも期待されたくないし、誰からも必要とされたくない。消えてもいい」
「……そう?」
少女はそう言って、不思議そうに俺を見つめた。
「私にはそうは見えないけど。まるで、溺れて藁を掴む人みたい。何かに必死に手を伸ばしている」
その言葉が、俺の胸に、突き刺さった。
まだ、俺に何か未練があるというのか?
こんな世界に、こんな人生に、こんな勇者に。
それとも……。
「あなたは、まだ何かを捨てきれていないんじゃない?」
少女はそう言って、微笑む。
その微笑みは優しく、そしてどこか悲しげだった。
「さあ、行きましょう。あなたが、本当に消えたいのなら、この島の中心まで行かなきゃ。そこは、すべての始まりで、すべての終わりの場所。あなたの
少女は、俺の手を引いて、水晶の森へ歩き出した。俺は、抵抗せずについていく。
森に入ると、奇妙な音が聞こえてきた。
まるで、無数の魂が囁き合うような不気味で、そしてどこか美しい音だった。
水晶の樹々は、月明かりを受けて、きらきらと輝く。
「ここは、“時織りの森”と呼ばれているの」
「“時織りの森”?」
「ここでは過去と未来とが、混ざり合っているの。あなたの過去も、未来も、ここに眠っているかもしれないわ」
俺は呼び止められたように立ち止まる。
そして、水晶の樹の幹に、手を触れた。
すると、ふと、あの時の光景が頭に流れ込んでくる。
──ああ、そうか。あの時、あの少年を助けられなかったのは、俺が諦めていたからだ。
俺は、もう疲れ果てていて、誰かを救うことなど、諦めていた。
ただ、楽になりたいとだけ思っていた。だから、あの少年は死んだ。
だから、ここに来たのだ。
俺は、ゆっくりと樹から手を離す。
「……何を見たの?」
少女が、静かに尋ねた。
「……取りこぼした過去だ」
「そう、不思議だね」
「何がだ?」
少女は、不思議そうに、首を傾げた。
「あなたは何もかもから逃げたいと言う割に、背負い続けている。きっと、それは──」
「違う!」
俺は、怒鳴った。
少女は、驚いたように、少し身を縮こませる。
「あ……すまない」
俺はその姿を見て、恥じ入る。
見ず知らずの少女に怒鳴り散らすなんてどうかしている。
「……あなたが守ろうとしたのは、誰かの命だったの? それとも、“勇者”としての自分の役割だったの?」
「……なに?」
「あなたは勇者なんていう、呪われた役割を背負わされて、ただ、義務感で動いていただけと思っているけど、本当に? 心の底から嫌だったの? 勇者という役割に本当に何も見いだせていなかったの?」
俺は言葉を失った。
そうだ……そうかもしれない。
俺はもう誰かの涙や悲しみを見ていたくなかった。
ただ、その中で失敗を重ねて、自分が摩耗していただけ。
「あなたは、まだ、自分に嘘をついているの。あなたは、まだ自分自身と向き合えていないわ」
少女はそう言って、俺の手を放した。そして、森の奥へと歩き出す。
「あなたが本当の安らぎを欲しいのなら。今から行く場所で、あなたは最後の選択をすることになるわ。自分を偽って生き続けるのか。それとも、願い通りに消えるのか。あなたが決めるのよ」
森の奥には、さらに深い闇が広がっている。
でも、その闇の向こう側にこそ光が見える気がした。
俺の本当の終わりが。あるいは、本当の始まりが。
俺はため息をついて、少女の後を追うことにした。
森の奥は驚くほどに静かだった。
先程まで聞こえていた魂の囁きも、ここまで来るとぴたりと止んでいる。
水晶の樹々だけが月明かりを反射して、無機質な光を映している。
俺は、少女の銀髪の揺れを追いかけるように、足を進めた。
「まだ、名前を聞いてないな」
俺はふと口にした。自分でも、なぜそんなことを言ったのかはわからない。
しかし、少女は振り返らずに、静かに答えてくれた。
「私は名前がないの。ここに居る者は、みんな自分の名前を忘れてしまう。過去の自分を捨て去るから。あなたも、そのうち忘れるかもしれないわ」
「俺は、忘れないよ」
「そう? でも、私はあなたが勇者で旅人としか聞いていないわ。あなたの本当の名前は、何だったのかしら?」
「俺は……俺は?」
俺は息を呑む。
そうだ、俺は何という名前だったっけ?
あまりにも長い間“勇者”とだけ呼ばれ続けて、本当の名前は記憶の隅に押しやられ、薄れてしまっていた。
母が呼んでくれた、あの温かい響き。
幼い頃、親友からからかわれ、笑っていたあの名前。
それは、もう、どこかへ行ってしまった。
「……忘れた」
俺はついに認めた。
「そうよね。でも、大丈夫。ここは名前なんて必要ないところ。あなたが、あなたでいられるだけだから」
少女はそう言って立ち止まった。
その先には巨大な、水晶の洞穴が口を開けている。
洞穴の入口からは、虹色の霧がゆっくりと立ち上っていた。
「ここが、“世界の涙”の中心よ。ここに入れば、あなたは本当の自分と向き合うことになる。あなたが本当に望んでいるものが、何なのか。あなたが、本当に消えていいのかどうか。全てが分かるわ」
「……入ったら、どうなるんだ?」
「それはあなた次第よ。あなたの心が、あなたを決めるの。あなたが自分を見つけ出せれば、あなたはここから旅立てる。本当にあなたが望む場所へ。あなたの本当の自由を手に入れて。でも、もし、あなたが自分を見つけだせなければ……」
少女はそこで言葉を切り、悲しそうに微笑む。
「あなたは、この島の一部になるの。水晶の樹となり、囁きとなり、この不思議な時間を、永遠に彷徨うことになる。それは死とは違うわ。ただ、存在し続けるだけ。永遠の、牢獄ね。それを救いと言う人もいるけど」
俺は、洞穴を覗き込んだ。
今度は虹色の霧の向こうが、真っ暗な闇に見えた。
俺の終わりか。あるいは始まりか。
「怖いな……」
俺は小さく呟いた。
勇者になって久しく感じていなかった、消滅への恐怖が今になって思い出される。
「怖いよ。でも、それがこの島のルールなの。私は、ここにいるわ。あなたの選択を見守っているわ」
少女は洞穴の入り口のそばに座り込んだ。
まるで俺の旅立ちを、見送るかのように。
「さあ、行きなさい。あなたの、最初で最後の戦いが、待っているわ」
俺は深呼吸し、そして洞穴へと足を踏み入れた。
虹色の霧に身体を包まれると、俺の感覚は消え去った。
体がない。意識だけが、浮遊しているような感覚。
そして、過去の光景が次々と頭に流れ込んでくる。
──ああ、そうか。俺は村の子どもだった。
魔物に襲われた村で母に守られ、生き延びた。母は死んだ。俺は一人になった。
──教会に拾われた。勇者の素質があると。厳しい訓練の日々。
仲間と、笑い合った日々。誰かを守れる人になりたいと心の底から願った。
──初めての戦い。魔物を斬り、血を浴びた。手は震えた。でも、人々は喜んでくれた。
英雄だと。嬉しかった。自分は必要な存在なんだと。
──仲間が死んだ。一人、また一人。俺は一人になっていく。でも、戦いは続く。
俺は、誰よりも強くなった。感情を殺し、心を殺す。ただ、戦う機械を目指した。
──“勇者”と呼ばれるようになった。人は俺に、期待する。頼る。
俺はそれに応え続けた。それが、俺の役割だと思った。
──初めて死んだ。そして、蘇る。ああ、そうか。勇者は、死なないのだと理解した。
人々は俺を神のように見る。でも、俺はただの人間だった。痛い。怖い。疲れた。
──あの少年が死を見たとき、俺はもう限界だった。助けたいと思った。
でも、出来なかった。役目を果たせなかった。
なぜなら俺は、心のどこかで諦めていたからだ。
勇者と言われても、俺は全てを救えない。
──俺は逃げたいと思った。勇者の役目から、この世界から。
俺に向けられる、親愛と信頼の眼差しから。
──だから“世界の涙”に来た。ここで、終わりにしよう。
消えよう。俺はもう疲れ果てた。
過去の光景が消える。
俺は暗闇の中に、一人取り残された。
『それは、あなたの本当の願いですか?』
声がした。
どこからともなく、俺の心の中に響いた。
『あなたは、本当の本当に、消えたいのですか?』
「……ああ。そうだ。俺はもう疲れた。誰も救えない。自分すらも」
『では、何故あなたは、今まで戦い続けてこられたのですか? 何故あなたは、全てを救えないと思いながら、少年の手を握ったのですか? なぜ、あなたは諦めたと言いながら魔物に、怒りを燃やしたのですか?』
「それは……」
それは、本当にただの義務感だったのですか?
役割だから、やらなきゃいけない、と思っていただけだったのですか?
声が俺の脳を、心を、揺らす。
「……分からない」
『分からない? それは嘘でしょう。あなたは知っている。心の奥底で知っているはずです。あの少年を見た時、あなたの胸に去来したものは何だったのですか? 思い出したものは何だったのですか? 悲しみ。怒り。そして、救いたいという願い。その、欠片だったのではありませんか?』
「……救いたいなんて……俺はもう……そんなこと思えない……疲れた」
否定する。否定する。否定する。
とっくの昔に忘れた、忘れていたかった。
『いいえ、思っていますよ。あなたは、ただ、それに気づかないだけ。それを、受け入れるのを、怖がっているだけ。救えないことが怖いから。報えないことが怖いから。あなたは、ただ自分の本当の願いから逃げているだけだ』
俺の虚構は打ち砕かれた。暗闇の中で、俺の魂はただ震えていた。
そうだ。俺は勇者の責務に疲れて逃げたんじゃない。
救えずに死んでいく人を見続けるのが嫌で、逃げ出したんだ。
他でもない俺が、誰かを救い続けたいと願っていたから、それが辛かったんだ。
『さあ、選びなさい』
声が、静かに告げる。
『消えて全てから解放されるのか? それとも生きて戦い続けるのか? 本当のあなた自身として。痛みも、悲しみも、過去も、全てを受け入れて、生きていくのか』
俺は暗闇の中で、考えた。
消えたい。本心で、そう思っていた。
この、苦しみから解放されたい。何も感じなくなりたい。
きっとその願いも嘘じゃない。
でも、もし、本当にここで消えてしまったら……一番最初に抱いた願いはどうなる?
俺はあの少年の、最後の笑顔を思い出した。
あの子は、俺を信じてくれた。
俺が心の底では諦めかけ、救えなかったというのに。
あの子はどこまでも純粋に、俺を“勇者”だと思ってくれていた。
──ありがとう。
その言葉まで俺は忘れようと言うのか?
あの子の感謝まで裏切るのか?
俺はあの笑い合った仲間達まで裏切るのか?
俺は母が命を懸けて守ってくれたこの命を、ただ疲れたと言うだけで捨てるのか?
「……くそッ」
俺は、泣いた。久しぶりに心から泣いた。
熱いものが、頬を滴り落ちていく。
まるで、凍り付いていた何かを溶かすように、ゆっくりと。
「俺は…俺は…ただの人間だ…! 怖いし、痛いし、弱い……でも……それでも」
俺は立ち上がった。
体が自分の下に戻ってきている。
「あの子は、俺を信じてくれた。誰かが、俺を信じてくれている。それだけで、俺は、戦ってこれたんだ……だって俺は──」
大きく息を吸いこむ。
「──勇者だから!」
俺は、叫んだ。
「痛みも、悲しみも、願いも、全部背負って生きたい!! 俺は逃げない! もう、逃げない! 俺は、俺だ! 勇者の役目があるから戦うんじゃない! 俺が救いたいから、俺がそう願っているから戦うんだッ!! 俺は、俺という勇者として、生きていく!」
『それがあなたの答えですね? あなたの人生に祝福を』
声は、そう言って静かに消えた。
そして、虹色の霧が、晴れていく。
気づくと、俺は洞穴の入口に立っていた。
少女が変わらずにそこにいた。彼女は、優しい笑みを浮かべて俺を見つめていた。
「……戻ってきたのね」
「ああ」
「どうするの? ここから居なくなる? それとも、ここに残る?」
「……行く」
俺は、短く答えた。
「元の場所へ帰るの?」
「……分からない。でも、どこかへ行く。俺はもう、ただの勇者という記号じゃない。俺は、俺だ。俺は、俺自身のために人を助ける。誰かの期待に応えるためじゃない。俺が、救いたいから」
「そうね」
少女は、立ち上がって俺のそばにやって来る。
そして、冷たい手で、俺の頬に触れた。
「あなたは、本当の自分を見つけられたのね」
「君はどうなるんだ?」
「私? 私はここにいるわ。これからも、ここを彷徨う人を見送るために。それが、私の役目だから」
「役割、か……」
「ええ。でも、あなたの悩みだったものとは違うわ。これは、私が自分で選んだの。あなたも、そうでしょ?」
少女は悪戯っぽく笑う。
俺はそれに対して、軽く微笑み返す。
「ああ……そうだ」
「なら、大丈夫。あなたはもう、大丈夫」
少女は、そう言ってふっと笑った。
その笑みは、まるで最初から光に満ちているかのようだった。
「ありがとう」
俺はその笑顔を胸に刻みつける。俺は彼女に軽く会釈して、背を向けた。
二つの月が、奇妙に輝く空を見上げる。これから、俺はどうなるのだろうか。
故郷に戻るべきだろうか。城に戻るべきか。それとも、どこか別の場所へ?
俺には分からない。
だが、それでも心は澄み渡っていた。
白い砂浜に戻ると、そこには一隻の小さなボートが、静かに波に揺られていた。
「……なんだ、これは」
俺は不思議に思いながら、ボートに乗り込んだ。
すると、ボートは誰が漕ぐでもなく、ゆっくりと海の上を動き出した。
どこへ向かうのか、俺は知らない。でも、それはもうどうでもよかった。
「どこでもいい。どこかで誰かが困っているのなら、それを助ける。それだけだ」
俺は、星空を見上げた。二つの月が、輝いている。
相も変わらず、不思議な美しい夜空だ。
「たとえ、世界が俺個人を必要としていなくとも構わない。誰かを救いたいっていうのは、俺の、俺だけの願いなんだから」
俺は、ボートの縁に腰かけ、風に吹かれながら、水平線の向こうを見つめた。
夜明けが、近づいている。新しい太陽が、昇る。新しい世界が、始まる。
俺の、本当の人生が。
「さあ、また今日から」
そうして俺はこれからも──
「勇者を続けていこう」
──勇者を
To be continued.
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