ガルパンにハマったので、勢いで書きました。

オリキャラ。オリ展開。注意してください。

1 / 1
マリー様にお菓子を食べさせたいパティシエの幼馴染くん

 

 

 

 

 

 「んー! じゃあそろそろ終わりにしようかしら」

 

 ケピ帽を被る女が、戦車の上で優雅に腰掛けながらそう言った。

 

 彼女の名前はマリー。

 BC自由学園、戦車道チームの隊長を務める少女である。

 

 陽の光を反射する金色ロングヘア。透き通るような端正な顔立ち。見る者の視線を奪う美貌を、彼女は備えていた。

 

 「安藤隊、射撃訓練はそこまで!」

 「押田隊、機動訓練はもういいだろう!」

 

 同じくケピ帽を被る、二人の女が声を張り上げた。

 彼女たちはどちらもマリーの副官を務め、BC自由学園が誇る副隊長コンビである。

 

 二人の呼び掛けで、戦車のエンジンが次々と止まり、中からぞろぞろと生徒が姿を現した。

 グラウンドには土と熱が漂い、訓練の余韻が残っている。

 

 「フィードバックは頼んだわね、二人とも。今

日は外せない用があるから」

 

 マリーが軽やかに言い残すと

 

 「分かり──」

 「分かりました、マリー様!」

 

 黒髪の女が、もう一人の金髪の女を押し退け、嬉々として言い放つ。

 

 それを聞いたマリーはぴょんと軽やかに戦車から飛び降りる。そしてスカートの裾をさっと整えると、更衣室へと向かっていった。

 

 彼女の背中が見えなくなったところで、金髪の女──押田は深く息を吐いて、周囲の生徒を見渡した。

 

 「マリー様が不在のため、フィードバックは私と安藤君がする。着替えが済んだ後、B棟の101教室に集合せよ」

 

 言い終わった後、みんなから疲れきったような「はーい…」という返事が返ってくる。

 今日はマリーの都合でスパルタ訓練だったのだ。

 

 「──して、押田君」

 「何だい、安藤君?」

 

 押田は、安藤と呼ばれる女に向き直った。

 

 「マリー様は毎週決まって、ああして早退しているが、何故なのだろうか?」

 「これは驚きだな。マリー様と付き合いが短い故、受験組はご存知無いのか」

 「む。その程度で優位に立てたと思える簡単な脳ミソで羨ましいよ、エスカレーター組は」

 「なんだと!?」

 

 BC自由学園は、大きな派閥争いがあった。エスカレーター組と受験組で派閥が形成され、生徒たちは皆、仲がとても悪かった。

 

 「この英国の──っと、まただな」

 

 怒りを露にしようとした安藤だったが、咄嗟に矛を納め、帽子をとった。

  

 「すまない。またやってしまったよ、押田君」

 「こちらこそすまない、安藤君」

 

 

 二人はわざとらしく謝り合った。

 

 

 「──で、マリー様はどこへ向かっておられるのだ? 私たちは同行しなくても良いのか?」

 「大丈夫だ。マリー様はいつものように菓子を食されに行っただけだ」

 「菓子? そんなもの学園に蓄えがあるではないか!」

 「いや、只の菓子ではないらしいのだ、マリー様にとって──」

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 

 学園を出て、街の外れへ足を向けると、そこには小さな洋菓子店がぽつんとあった。

 フランス語で書かれた看板が掲げられ、外壁には繊細な模様がいくつも描かれている。  

 まるで寓話の一頁のようにメルヘンな外観のお店。

 

 マリーはその店に用があった。

 がしかし、正面口から入ろうとせず、裏口へまわる。関係者意外立ち入り禁止と書かれたボードを無視して、ためらいもなく扉を押し開けた。  

 入った瞬間、甘い砂糖とバターの香りが鼻をくすぐり、マリーはとたんに笑顔になった。

 

 「ルイ! 来たわ!」  

 「ん。おはよう」

 

 中はキッチンであり、ステンレスの台にはボウルやペティナイフ、開きかけのレシピ本が散らばっていた。

 そしてその奥で、椅子をベッド代わりに眠っていた男が、身を起こした。

 

 彼の名はルイ。  

 この洋菓子店の一人息子であり、父の跡を継ぐため修行中の若きパティシエだ。

 

 彼とマリーの関係を一言で表すのならば、幼馴染である。

 ルイの父がマリーの家に菓子を卸していた縁で、幼いころから屋敷で遊んでいた。そんな近しい仲だった。

 

 「もう“おはよう”じゃなくってよ」

 

 ファー付きのセンスを、ルイに向けるマリー。

 

 「ん。そうか。夕方か……昨日からずっと徹夜で作ってたから~」

 

 ルイは蛇口をひねってコップに水を注ぎ、ごくりと飲み干す。

 ひと息つくと、カッと目を開かせ、ようやく正常に戻った。

 

 「よし、回復」

 「じゃあ始めましょう。私、とっても楽しみにしていたのよ!」  

 「そうか」

 

 少し照れたように頭をかきながら、ルイは大きな冷蔵庫を開けた。

 冷気を纏いながら、かわいらしい装飾を施した皿に並んだお菓子を取り出す。

 

 「まずは、いつもの」

 

 そう言って差し出したのはマカロン。

 

 淡いパステル色の小さなお菓子たちが、皿に整然と並べられていた。表面は光を受けて煌めき、中心のクリームがちらりと顔を出している。  

 ピスタチオ、フランボワーズ、シトロン。

 それぞれの甘やかな香りがキッチンを満たしていた。

 

 「ふふっ、小さくてかわいい」

 

 マカロンを一つ、手に取るマリー。

 

 「私、マカロンのこういうところが好きなの。まるでパリの街並みのようにカラフルで、見ているだけで心が踊るわ♪」

 「そうだな」

 「それじゃあ早速」

 

 マリーが目を輝かせながら、マカロンを一つ、ぱくりと食べた。

 

 「ん~♥️ 噛んだ瞬間に、マカロンの甘い世界観が広がる~。外はさくさくと、でも中は甘いクリームがとろけて、まるで包囲殲滅戦のようだわ。外郭を砕けば、内側から甘味が溢れてくる。もうここからは逃げられないのね」

 

 マリーは目を細め、頬を押さえながら言った。

 

 「C'est très bon(とっても美味しいわ!)」

 「…ありがとう」

 

 ルイはフランス語を理解していなかったが、なんとなく褒められた気がしたので、礼を言っておくことにした。

 

 「でも、マカロンはあまり自信無かった」

 「そうなの? こんなに美味しいけれど」

 

 ひょいとまた一つ、マカロンを口にしながら、彼女はルイを見た。

 

 「只の試作品だ。店のショウケースに並べも出来ねぇよ…。まあそんなことどうだっていい。次のは?」

 「もちろん頂くわ!」

 

 次に出されたのは、モンブランだった。

 

 栗色、いや栗のクリームが渦を描くように重なりあい、山を築かせている。その頂点には栗の実がちょこんと飾られていた。

 

 「モンブランね!大好きよ! もう好きすぎて、モンブランになら抱かれても良いくらいだわ」

 「何言ってんだ」

 

 フォークをマリーの前に置くと、彼女はすぐに手に取り、一口いった。

 

 「~この濃厚なマロンペースト。このマロンクリーム。栗の甘みが存分に出ているわ。王道ね。余計なことをせず、栗本来の旨味だけで勝負しているのね、ルイ!」

 「…ああ。そっちの方が好きだろ?」

 「ええ!」

 

 フォーク片手にマリーは、とろけそうな笑顔を向けた。

 

 「Quel Bonheur!(とっても幸せよ!)」

 

 だからフランス語は分からない。

 

 「最後の菓子は………」

 

 ルイが冷蔵庫を開け、中に手を伸ばすが、唐突に静止した。なにやら、取り出したくない様子だった。

 

 「どうなさったの?」

 「いや……今から出すのって失敗作なんだよな。だから、その…」

 「もう! いいから出しなさい」

 

 マリーが皿をフォークで叩き、催促する。ルイはしぶしぶ、中からケーキを出した。

 

 「これはなに?」

 「オペラっていうお菓子。難易度の高いお菓子で、挑戦してみたんだが、駄目だった」

 「オペラね。知っているわ」

 

 皿の上に置かれたそれは、ケーキと呼ぶには値しない何かだった。

 層は崩れ、クレームは飛び散り、チョコもバラバラ。

 本来はキラリと輝くグラサージュが特徴のオペラの面影は無く、まるで地面に一度落としたような無様な姿であった。

 

 「…下手くそだろ。そもそも原型が無ぇ」

 

 くぐもった声で、ルイは言った。

 

 「だから食わなくても──」

 「いただきます!」

 

 マリーはフォークを突き刺し、クリームとともにスポンジを救い上げ、一口、頬張った。

 

 「ん! これは生地の層に、ほろ苦いコーヒーとバタークリームの味。舌の上で、苦味と甘味が混ざりあっているわ。あ。最後にはカカオの少しビターな味わいもひょっこりと顔を出したわ。まるで縦深戦ようね。苦味が戦線を押し広げていて、層の奥へと甘味が進んでいる。美味しいが幾重にも重なっているわ~」

 

 マリーはそう言うと、幸せそうにオペラを食べ続けた。

 

 ルイはその光景を眺めながら、ふと口に出す。

 

 「そんなに旨いか?」

 「ええ! 最高に美味しいわよ」

 「…そうか」

 

 短い返事の後、ルイは少しだけ言葉を探すように、沈黙した。

 開いたままのレシピ本を指先でいじりながら、やがてぽつりと呟いた。

 

 「俺さ。本当はさ、そこまでお菓子作りって好きじゃないんだよな」

 「ほうなの?」

 

 ほっぺたにケーキを詰めながら、返答するマリー。

 

 「ほん…そんな風には見えないわ」

 「本当だよ。技術も優れてないし、どっちかっていうと食う方が好きだし…」

 「じゃあどうしてお菓子作りをしているの?」

 

 マリーが小首を傾げると

 

 「そうだな──」

 

 息を整え、ルイは椅子に腰かけ

 

 

 「マリーが食べてくれるから」

 

 

 静かに、そう呟いた。

 フォークのカチャカチャ音だけが静かに響く。

 

 そして食べ終わり、マリーはふわりと笑った。

 

 

 「そうなの! 私もルイのケーキだから、最高に美味しいのよ!」

 

 

 彼女は口にクリームをつけながら、満面の笑みで言い放った。

 

 

 「…ふっ。そうか。じゃあまた今度も作る」

 「ええ。楽しみにしているわ!」

 

 

 そうして二人は笑いあった。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 そして数時間後。

 

 「もう帰るんだな」

 「ええ。また試合が迫っていて、明日も朝から練習なの」

 

 マリーは鏡の前でえりを直し、帽子の角度を整える。

 

 「戦車道か」

 「ええ」

 「もう隊長さんだもんな、マリーも」

 「まったく大変なのよ。みんな仲が悪くて、嫌になってしまうわ」

 「ははは…また観に行くよ」

 「絶対よ!」

 「ああ」

 

 そう言葉を交わし、マリーは店の出口へ歩き出す。

 

 ドアの前で足を止め、ノブに手をかけようとした瞬間、くるりと振り向いて

 

 

 

 「Je craque pour toi !」

 

 

 

 とルイにフランス語で言った。

 

 だからフランス語は分からないって。

 

 

 「なんて?」

 「………別に。"またね" って言ったのよ!」

 「そうか」

 

 そうして、マリーはそそくさと帰っていった。

 

 

 「さあて! もう一つくらい、ケーキ作るかな」

 

 

 こうして今日も、この店は甘い香りに包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 







以上です。ありがとうございました

ガルパンを最近やっと全話観まして、久しぶりにアニメにハマりましたね

好きなキャラは西隊長とローズヒップ、マリー様です
というか好きなキャラしかいねぇ!

もっとガルパンの小説を書きたいと思った(小並感)






  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。