アルガス転生 〜家畜に神はいない(俺以外)〜   作:葛葉狐

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エンドロール:『デュライ白書の真実』補稿

 

ラムザ・アトカーシャ

 

変後、摂政宮オヴェリアの忠実なる護衛騎士として「央天騎士隊」を率いた。幼帝オリナスの成人後、オヴェリアが摂政を退き、また15歳下のオリナスが新たな正妃を迎えるためーー白い結婚を解消したのちは、配所の離宮へ移ったオヴェリア王女の王配へと迎えられる。その後も数少ない王家の分家として、オヴェリアともども外務外交に重きを占めたという。

 

ディリータ・ハイラル

 

変後は王都反乱鎮圧の功により異端者認定は恩赦される。大規模騒乱を引き起こした上、既に墓に入っていることになっていたアルマの赦免助命へ己の栄典を全て擲ち、王宮馬術師の身分に留まりながら、アルマとともにその生涯を王宮内のつつましい離れで送ったという。

 

オヴェリア・アトカーシャ

 

摂政宮として十年余をイヴァリース統治に捧げたのち、オリナスの成人を見届けると摂政を辞任。形式上結んでいた婚姻も白紙に戻すと、保養地の離宮に封地を得て引退した。

のちに護衛騎士として長年の忠誠を尽くした央天騎士隊長ラムザを夫に迎える。その夫婦仲は良好であったと伝わる。

 

アルマ・ハイラル

 

変後は、聖アジョラの依代として王都へ惨劇をもたらし、かつ貴族籍上はとうに死亡している人物として、処断が相応と見なされていたがーーディリータの功績返上とオヴェリアの口添えにより、生涯王宮内から出ない事を条件として助命された。王宮侍女の末席へ加えられ、敷地内の離れを特別に与えられてディリータと一生を過ごしたという。

 

ダイスダーグ・ベオルブ

 

幼帝オリナスを補佐するラーグ公の懐刀として、ゴルターナ公との合議制統治にその後も携わる。離宮における王母ルーヴェリアの急逝時には深い関与が疑われたが不明。直後に発生した弟の突然の出奔後は、北天騎士団長を引き受けその後も長く務めたという。幼帝オリナスを殊の外可愛がり、頻繁に遠乗りに連れ出していたという。

 

ベストラルダ・ラーグ

 

幼帝オリナスの外伯父にして後見人として、オヴェリア=ゴルターナラインとの合議制にて引き続き国を治める。

妹にして王母のルーヴェリアの急逝時にはゴルターナ公との不和再燃が憂慮されたが、暗殺や権力闘争と騒ぎ立てることはせず沈黙を保ち、その後も大過なく国を治めたという。

 

ザルバッグ・ベオルブ

 

負傷からの回復後、聖騎士として引き続き北天騎士団長を務める。オリナスの成人直後、避暑地にて王母ルーヴェリアの訃報が流れると、ほどなく謎の出奔を果たす。その後の行方は分かっていないが、王室御料地の深い森にて、美貌の貴人に手を引かれていたという目撃証言が残る。

 

ミルウーダ・エルムドア

 

王都の混乱の回復後、ランベリーには戻らず摂政補佐官エルムドア侯爵の秘書を務める。異端審問会が背後にいることもあって人心の機微を放置しがちだった侯爵をよく補佐し、のちに侯爵の夫人として迎えられた。

豆のスープを得意料理としたと伝わる。

 

シャザイアとシャザイナ

 

王都の混乱の回復後、王都にて自流派の道場をひらく。全員謝罪流という謎の流派名以外はよく伝わっていないが、サダルファス流の亜種とも言われる。その門下生は強いとされ王都でも名を広め、たとえ平民であっても一目置かれ尊敬されたと言われる。

 

ウィーグラフ・フォルズ

 

変後は副官である妹を侯爵の元へ送り出し、ランベリーに戻って不在の侯爵の代わりに領主代官を務める。翌年発生した飢饉は予測済みで東国より米を輸入し既に対策を済ませていたが、領内へ雪崩れ込む飢民、流民、難民をすべて救わんとしたため領内予算は常に火の車だったという。元配下である屯田兵らの尽力もあり、元々豊かだったランベリーの石高は倍に増えたが、領民も倍以上に増えたという。

 

ギュスタブ・マルゲリフ

 

変後は三日間眠り続けたのちに覚醒、ランベリーへ戻って城のパン焼き主任を務めた。飢饉が発生するとなるべく大勢を救わんとする代官ウィーグラフに同調、材料をかさ増しした激マズパンを大量生産した。食って心が死ぬか食わずに体が死ぬか、とまで評されたパンは食したすべての人間から非難轟々だったが、代わりのメニューとして豆のスープを提供すると全員黙ったという。

 

メスドラーマ・エルムドア

 

変後は副官ミルウーダという強力な助勢を得て摂政補佐に邁進、荒れた王都の復興と苦しむ人々の救済に全力を注いだ。当事者かつ黒幕ということで皆が教会へ距離を置く中、窮民救済には異端審問会を通じてグレバドス教会へも全面協力を依頼し、一連の事件で後退していた教会への信用を民に取り戻させるのに一役買った。心のなさが逆に役立ったと唯一評価されている。後にミルウーダを妻に迎えた。

 

ゴラグロス・ラヴェイン

 

変後は、爆弾を投げ過ぎて街を必要以上に破壊した責任を取らされ、また豆のスープだけで数ヶ月過ごした。

ランベリーに戻ったのちは飢饉に遭遇するが、輸入したコメを食べ慣れない民たちのために「米粉パン」「かやくごはん」などの新メニューを考案し、パン焼き主任よりも好評を得たため、お前に食わせるパンは無いと言われさらに豆のスープだけで数ヶ月過ごした。

 

アグリアス・オークス

 

オヴェリアへの忠節は変わらず、最も信頼する臣下として護衛騎士・側近として仕えた。

オヴェリアの摂政退任後は長年の忠節に報いるとして陞爵を得、実家へ戻り家督を継ぎ結婚、幸せに暮らしたという。

 

ガフ・ガフガリオン

 

筆頭上級異端審問官付きの専属傭兵として異端者狩りに名を轟かせる。聖地育ちのエリートの審問官にはわからない、異端者の逃げ場や溜まり場には長年の傭兵暮らしから鼻が効くため、優秀な猟犬として悪党たちに恐れられたという。

 

ラッド

 

変後もガフガリオンの元に留まり傭兵を続ける。どういうわけか、その正体は絶世の美女とも、また呪いで姿を変えられたカエルとも噂されつつもーー本人は至って堅実に傭兵稼業を続けたという。

 

シモン・ペン・ラキシュ

 

ゲルモニーク聖典を託した後はオーボンヌ修道院の復興に従事。王都での変事の詳細を耳にした後、突如オーボンヌ修道院長を辞職、そのまま姿を消す。

身辺整理は済ませてあったが、修道院外へと出て行く姿を見た者はいない。

 

ベイオウーフ・カドモス

 

変後はライオネルへ戻り、王都で摂政を務めるオヴェリア王女の代わりに領主代官を務めたという。ライオネル城へ戻って最初の仕置き初めは自身の結婚式であり、周囲の祝福の中、無事人の身に戻ることができたレーゼと華燭の典を挙げた。

レーゼを人身に戻すため討伐した狂える鉄巨人は、ライオネル城の中庭へと飾られ、長らく異端審問の象徴としてーーライオネル民の恐怖の対象となったという。

 

レーゼ・カドモス

 

変後はライオネルへ戻りベイオウーフと結婚。幸せな家庭生活を送ったと伝わるが、城中庭に飾られた狂える鉄巨人像はレーゼも討伐に参加しており、また島から城内まで運んだのもレーゼ、と知られたため周囲からは恐れられていたという。

 

ザルモゥ・ルスナーダ

 

変後も変わらず異端者討伐へ精を出し続け、傭兵ガフガリオンとのコンビにより歴代筆頭上級異端審問官で最高となる異端者討伐数を叩き出す。余りに全国を飛び回り続けたため、ライオネルの異端審問会本部の会長室は埃が積もっていたという。

 

ルーヴェリア・アトカーシャ

 

幼帝オリナスの母として後見を行うが、変後は政治に口を出さず実兄ラーグ公に任せるようになったという。オリナスの成人・正妃との婚姻後、ほどなくして避暑先の離宮で急逝。若すぎる国母の死に、暗殺も疑われたが両陣営は静観し政争には至らなかった。盛大な国葬が行われたが、のちに王室御料地へ迷い込んだ子供により、深い森の中で騎士の手を引く姿を目撃されている。

 

ダスクマルダ・ゴルターナ

 

摂政宮オヴェリアの後見人としてその後も、幼帝オリナス後見人ラーグ公との合議によりイヴァリースを長く統治する。オヴェリアの摂政退任後も、元老院のまとめ役として元老院議長に転じ、数少ない王族の一人として王政へ影響力を保持し続けたという。オヴェリアとは直接血の繋がらない従妹にあたるが、祖父孫ほどの歳の差があることもあり、後見人としてだけではなく祖父のように優しく接し続けたという。

 

イズルード・ティンジェル

 

解体された神殿騎士団と実父に騙されていた己にしばらく志を見失っていたが、やがて自らが新生神殿騎士団長を名乗り、小規模ながら神殿騎士団を再設立する。人心の離れた教会へは風当たりも強く、与えられる任も騎士とは程遠い雑用ばかりだったが、挫けることなくただ人助けに邁進したという。しかし聖歌隊の手伝いだけは断固拒否したという。

 

ラファ・ガルテナーハ

 

変後も大公の養子として積極的に各勢力との橋渡し役となり、大公の名誉回復につとめる。

その後はかつての故郷であるガルテナーハ一族の村跡地へ代官として赴き、大公の支援のもと村を再建し離散した一族を呼び集め、一族中興の祖と言われたという。

 

マラーク・ガルテナーハ

 

変後も大公の養子として護衛魔術師の任にあたる。さまざまな魔術を習い覚え、また魔術師エリディプスの示した特異な魔法の研究も行い、魔法研究家としての成果を世に示したがーーそれは己が継承する秘伝「裏真言」を隠すためであったとも言われる。晩年はラファの再建した故郷ガルテナーハ村へ移り住んだという。

 

バルク・フェンゾル

 

変後も大公の収集した無数の武器の修繕、機構復活に務め、武器博物館の館長として当地の名物とされていたという。騎士団出動の折は自ら整備した古代兵器にまたがり一番駆けをするのが常で、「武器王」バリンテン大公の名をふたたび世に知らしめたという。

 

ゲルカラニス・バリンテン

 

変後も摂政宮体制への従順な態度を変えることはなく、その治世に協力し続けたと伝わる。オヴェリアの摂政退任後は、後退していた教会勢力を取り纏めて現政権との橋渡し役となり、引き続きイヴァリースの平和に貢献し続けたという。

 

メリアドール・ティンジェル

 

しばらくは弟と同じく失意に沈んでいたが、やがて弟の提唱する新生神殿騎士団設立に参加。人心が離れた教会の信用回復に尽力する。弟と同じく任を選ばず献身に励むが、心境の変化でもあったものか、得意とした剛剣技を用いることは二度となく改めて聖剣技を学び直したという。

 

シドルファス・オルランドゥ

 

変後も南天騎士団長として、王都にて犠牲者を多く出した南天騎士団の動揺を抑え、内乱抑止に努める。その後も国許でベスラ要塞に詰め、あまり王都へは上らなかったという。それは巨大な水源の喉元にあるべスラの地政的重要性をよく理解していたからだと後世では評価されている。

 

 

* * *

 

 

“姦雄”アルガス・サダルファス

 

変後、ランベリー領主代行へと転じたウィーグラフに代わり、ランベリー近衛騎士団長となる。度重なる悪名の流布・サダルファス道場生の外聞の悪さなどから、『ランベリーの僭主』とまで呼ばれ、ついには実家からも廃嫡されたという。

オヴェリアの摂政辞任に伴い補佐官を解かれたエルムドア侯爵が自領へ帰還すると、近衛騎士団長職を辞し、城下で妻とともに小さな花屋を経営したという。

 

ティータ・サダルファス

 

度重なる悪名に廃嫡されたアルガスに代わり、サダルファス男爵家の嫡子として迎えられる。しかし本人はアルガスを婿に迎える事を強く主張したため、家督継承は事なきを得たらしい。アルガスが城を辞したのちはともに城下町で花屋を営んだ。

その花屋には店内にとても大きなーー『花時計』なる古代の装置が置かれており、その巨大な円盤には、十二種類の花の名とともに花の色に対応した石が埋め込まれており、回転する二本の針がその間を行き来し時を刻んでいたという。

店主夫人は花時計について訊ねられると、嬉しそうに「結婚指輪」と答えていたという。

 

 

 

* * *

 

 

 

 ……読者諸賢もよく知る通り。

 王都ルザリアの変後。その調査にあたったオーラン・デュライは、五年の時を費やしてーーこの一連の“隠蔽された”変事についての真実を、一冊の本へとまとめあげた……。

 

 ーー頻発した『奇跡』の舞台裏とは。

 ーー各地の宗教画でうやむやにされた人物の正体は誰か。

 ーー皆が目撃しながら異端審問により沈黙を強いられたあの怪物は何なのか。

 ーールカヴィの正体とは、はたして何だったのか。

 

 それが『デュライ白書』である……。

 

 ……教会や異端審問会への事実上の虚偽告発である、この『デュライ白書』は、翌年。

 次代の教皇を定めるクレメンス公会議の場において、オーラン本人により公開された……。

 

 オーランの狙いであったはずのーーその内容の真贋は問われることなく。

 「清廉な席上に汚泥をぶち撒ける行為」と非難され、彼はすぐさま捕らえられた。

 そしてーー

 世の平和の為。ルカヴィの実在を否定してきた教会、ひいては異端審問会はーー次代の教皇決定を見守るために参集した、敬虔なグレバドス教信者たちの眼前で。

 重罪人オーランへと……ひとつの重すぎる判決を下す。

 

 すなわちーー

 「公開『デュライ白書』全文朗読刑」

 である……。

 

 教会の対応は早かった……。

 すぐさま教皇庁前へ一本の棒杭を設置し、オーランを広場へ向け縛り付けると。

 今から刑の執行を行う、と突然告げられた広場の大勢の信者たちを前に。

 声のよく通る評判の良い公示人を十名も集め、地の文、モノローグ、各人の台詞パートまで細かく分担したうえでーーそして『デュライ白書』が綴る真実の物語とやらを、数時間に渡り臨場感たっぷりに公演してみせたのだ。(ちなみに内容の大筋は本書とほぼ同一である)

 自分の書いた物語を公衆の面前で朗読されるオーランの悲鳴が轟き渡る中。朗読会場は大盛り上がりであったという。

 ーーやがて。

 朗読劇が大反響のうちにフィナーレを迎え。

 観客たちから「なろう」「異世界転生もの」「アルガスじゃなくてARUGAS」「ハイ出た教会黒幕説」「王家に怒られるで」「おもしろかった」「また書いてください」などと口々に感想を寄せられ。

 瀕死のオーランはーーこの言葉を残したという……。

 

 "許してクレメンス……。"

 

 その後。オーランは自室から出ずに生涯を送った……。

 (おもしれー作家として執筆依頼はまあまあ来た)

 

 その後、真実の暴露を恐れた教会により。

 この本は数百年にわたり二次創作本としておもしろがられることとなる……。

 

 しかし。私は真実を知ることができた……。

 

 ーー今こそ。

 ここまで綴ってきた真実の物語とともに。

 彼の名誉を回復しよう……。

 彼の(おもしれー)生き様を、若い世代へ伝えるためにも……。

 

 ーーそして。

 長い物語という旅路に付き合ってくれた、親愛なる読者諸賢に……。

 最後に、この言葉を贈ろう……。

 

 

 

 ヤツ(アルガス)とヤツ(ディリータ)の妹はここにいてはいけなかったッ!

 花でも売って暮らしていれば良かったんだよッ!

 

 

 

     歴史学者 アルガス・デュライ

     『ブレイブストーリー』作者

 

                 fin.

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