ガンダム一年戦争外伝 オデッサの最下層 -Underdogs' Chronicle-   作:Ginさん

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第22話 狩人、再び (The Hound's Restart)

E-2エリアのドックは、久しく聞くことのない高出力の整備音に満ちていた。

 

カツオとアキラの陸戦型ジムは、凍傷を負った獣が治療を受けるように

 

徹底的なオーバーホールを受けていた。

 

【連邦側(ホッジポッジ隊)】

 

「……信じられません、少尉!」

 

管制トレーラーで再会した“メガネ”タカシ軍曹は、安堵よりも非難の色を濃くしてカツオに詰め寄った。

 

「ドクトル・オーウェンと帰投した後、AIで少尉たちの生存確率をシミュレートしました。

結果は、8.7%。……無謀すぎます! 合理的な判断ではありません!」

 

「生きててよかった、なんて言えないわよ!」

 

“紅一点”リツコ伍長も、目の下に隈を作りながら叫んだ。

 

「こっちがどれだけ心配したと……!」

 

「……すまない」

 

カツオ・イトウ少尉は、それしか言えなかった。

 

「コーチがムチャすっから、俺まで面倒に巻き込まれたんだぜ!」

 

アキラ伍長が、配給されたばかりのレーションをかき込みながら、悪態をつく。

 

「だが……」

 

アキラは、新品同様に関節部が調整され

 

弾薬を満載された自分の陸戦型ジムを見上げた。

 

「……弾も燃料も気にせず撃てるってのは、いい気分だ。

今度こそ、あの『顔に傷のある野郎』に借りを返せるぜ」

 

カツオは、彼らから少し離れた場所で

 

バリス大尉から渡された新たな「殲滅」命令書を握りしめていた。

 

(ハンス・シュタイナー中尉……。あんたは、俺の『情け』すらも、利用したのか)

 

雪原での対話、プロへの敬意、そして「無駄死にさせたくない」という自分の判断。

 

それら全てが、ハンス・シュタイナーという男の手のひらで踊らされていたかのような

 

屈辱感が込み上げていた。

 

(俺は、彼を……プロを、E-2の消耗品と同じ末路に導くのか……?)

 

 

【ジオン側(穴熊部隊)】

 

その頃、空白地帯を「南下」する四機のジオンMS。

 

吹雪の雪山は、すでに彼らの背後、遥か北にあった。

 

目の前に広がるのは、赤茶けた大地と

 

不気味なほど静かな、旧時代の軍事演習場跡地だった。

 

「……中尉、なぜ南へ?」

 

“教授”ビタム曹長が、旧ザクのコックピットから問いかける。

 

「あの観測所で東部方面軍の通信を傍受した限り

東へ向かえば、補給を受けられる可能性があったはずです」

 

「東は罠だ」

 

ハンス・シュタイナー中尉は、ザクタンクのキャタピラで乾いた大地を踏みしめながら、即答した。

 

「あの『コーチ』が、俺たちの情報を東部方面軍に渡したに決まっている。

東へ行けば、奴らの予測通りの『掃討作戦』に巻き込まれるだけだ。

……あのガキは、俺に『仁義』を切ったつもりだろうが

同時に連邦軍の『猟犬』でもあることを忘れてはならん」

 

「だがよ、中尉!」

 

“ビッグX”准尉のJ型が、苛立たしげに割り込む。

 

「南に何があるってんだ! 見渡す限り、クソみてえな荒野じゃねえか!」

 

「ああ。地上にはな……」

 

ハンスは、古い地質図をコックピットのモニターに映し出した。

 

「だが、地下にはある。

……南は、連邦軍が『資源価値なし』として放棄した、旧時代の核実験場跡地だ。

汚染地域(デッドゾーン)であり、地上からの追撃は困難。そして、その地下には……」

 

ハンスは、地図上の一点を指さした。

 

「……我々が使うべき『道』が残っている。旧体制時代の、大陸間弾道ミサイル(ICBM)用の

巨大な地下トンネル網だ」

 

 

【連邦側(ホッジポッジ隊)】

 

E-2エリア、作戦室。

 

カツオは、タカシのAIと共に、ハンスの進路を再分析していた。

 

「なぜ南だ? 南には何もない。ただの荒野だ。……いや、違う」

 

カツオの目が、ハンスとの心理戦を再開していた。

 

「何もないからこそ、南なんだ。

タカシ、そのエリアの古い地質図、地下構造図をAIでスキャンしろ!

旧体制時代の軍事施設、特に『地下』のものだ!」

 

「……検索中。……出ました! 少尉、これは……!」

 

タカシが、驚愕の声を上げた。

 

「旧時代の……地下弾道ミサイル用の、巨大な地下トンネル網です。

ハンスは、また地下に潜るつもりです!」

 

カツオは、モニターに映し出された複雑な地下迷路を見つめた。

 

(やはり、あの人は『穴熊』だ……。戦闘ではなく、工兵として生き延びようとしている。

俺の裏をかいたのも、俺を殺すためじゃない。生きるためだ!)

 

カツオの目に、迷いを振り切ったような光が宿った。

 

彼は、バリス大尉の執務室に向かって走り出した。

 

「バリス大尉!」

 

カツオは、作戦室に飛び込み、叫んだ。

 

「ハンスの目的地が判明しました! 追撃ルートは、地上ではありません。

我々も、地下から追います!」

 

バリスは、コーヒーを飲んでいた手を止め、カツオの顔を見た。

 

(……やっと『狩人(ハウンド)』の顔に戻ったか、コーチ)

 

バリスは、ニヤリと笑った。

 

「許可する。今度こそ、『穴』の出口を塞いでこい。……いや、穴の中で、狩り尽くしてこい」

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