ガンダム一年戦争外伝 オデッサの最下層 -Underdogs' Chronicle- 作:Ginさん
E-2エリアから南下すること70キロ。
ホッジポッジ隊が到達したのは、草木一本生えない
赤茶けた大地が広がる旧時代の核実験場跡地だった。
大気には、MSのセンサーを微弱に乱す、低いレベルの残留放射能が漂っていた。
【連邦側(ホッジポッジ隊)】
「……うへえ。気味の悪いとこだぜ」
“大食い”アキラ伍長が、陸戦型ジムのコックピットで悪態をついた。
「古い放射線警告の看板だらけだ。こんなとこで戦って、俺たち大丈夫なのかよ、コーチ?」
後方の管制トレーラーから、“メガネ”タカシ軍曹の声が飛ぶ。
『AIの分析によれば、残留放射線はMSの装甲(放射線シールド)で十分に防護可能です。
ですが、精神的な
「タカシ。ハンスの位置は」
カツオ・イトウ少尉は、心理的な動揺を見せず、冷静に問いかけた。
『AIで、旧地熱発電所の送電網と、この地域の地下軍事施設をクロスリファレンスしました。
……ありました! 少尉!』
タカシが、データを陸戦型ジムのモニターに転送する。
『旧大陸間弾道ミサイル(ICBM)サイロ、第3バンカー。
ここの地下動力源が、古い地熱ラインと繋がっています。
ハンスは、ここの電力を利用して、地下トンネル網への『扉』を開けようとしています!』
「……見つけた」
カツオの目が、再び『狩人』の目に戻った。
あの雪山での迷いはない。
(ハンス中尉。あんたは、俺の『情け』を利用した。その代償は、払ってもらう)
「アキラ、行くぞ」
カツオは、E-2で新たに支給されたビーム・ライフルの安全装置を解除した。
「今回の任務は『殲滅』だ。……だが、殺すのはMSだけだ。
パイロットは、可能な限り無力化し、捕獲する」
「……チッ。相変わらず甘いぜ、コーチ」
アキラも、満タンの100mmマシンガンを構えた。
「だが、あの『顔に傷のある野郎』だけは、俺にやらせろよ!」
二機の陸戦型ジムが、赤茶けた大地を蹴り、第3バンカーへと向かった。
【ジオン側(穴熊部隊)】
同時刻。第3バンカー。
そこは、地表に巨大なミサイル発射口が大きく開き
その脇に、地下トンネル網へと続く、重厚な鉄の搬入ゲートがそびえ立つ場所だった。
「……中尉。ダメです、この搬入ゲート、電力が完全に死んでます」
“教授”ビタム曹長が、旧ザクで制御盤を操作しながら報告する。
「慌てるな、教授」
ハンス・シュタイナー中尉は、ザクタンクの通常マニピュレーターで
制御盤の奥にある古い地熱ケーブルを引きずり出していた。
「ゲートの
……俺の『工兵』としての勘がそう言ってる」
(ザクタンクの掘削アームは失ったが、この『指先』の感覚は、誰にも奪えん)
ハンスは、剥き出しのケーブルを
ザクタンクの補助バッテリーに接続する、危険な直結作業を開始した。
「中尉! あんな所で何やってんだ!」
“ビッグX”准尉が、ザクII J型で周囲を警戒しながら苛立たしげに叫ぶ。
「さっさと開けて、こんな気味の悪い場所とはおさらばしようぜ!」
「……ビッグX。お前とルーキーは、南西の稜線を警戒しろ。……来るぞ」
「来る? 何がだ」
「俺たちの『
ハンスは、作業の手を止めずに言った。
「奴は、俺が観測所を放棄して南下した意味を、必ず突き止める。……奴は、そういう男だ」
ハンスの予測は正しかった。
ビッグXと“ルーキー”クェン兵長の旧ザクが稜線に移動した直後
二機の陸戦型ジムが、砂塵を巻き上げて姿を現した。
『中尉! 来やがった! あの『
ビッグXが、ヒート・ホークを起動させる。
『ルーキー! 教授! ゲートを開けるぞ!』
ハンスは、直結させたケーブルに、ザクタンクの全出力を流し込んだ。
バチバチバチッ!!
凄まじい火花が散り、数十年ぶりに起動したモーターが、地響きのような唸りを上げた。
ゴゴゴゴゴ……
重厚な地下搬入ゲートが、ゆっくりと、だが確実に開き始めた。
その奥には、漆黒の地下トンネル網が広がっていた。
「アキラ! ゲートが開く! 奴らを地下に行かせるな!」
カツオの陸戦型ジムが、ビーム・ライフルを発射した。
閃光が、J型のシールドを掠める。
「させるかよ、コーチ!」
ビッグXが、カツオの射線を塞ぐように前に出た。
「ここは雪山じゃねえ! 存分に動ける地上だ! あの借りは、ここで返す!」
「うるせえ! 俺が返してもらうんだよ!」
アキラの陸戦型ジムが、マシンガンを乱射しながら、ビッグXに突進する。
「中尉! ゲート、開きます!」
ルーキーが叫ぶ。
「よし! 教授、ルーキー、先に地下へ入れ!」
ンスは、ザクタンクのキャタピラを反転させた。
「ビッグX!30秒だ!30秒だけ、奴らを食い止めろ!」
「30秒!?冗談じゃねえ!ここで一生釘付けだ!」
ハンスと、彼を追うカツオ。
ビッグXと、彼を憎むアキラ。
二つの因縁が、今、地下への入り口で激突する。