ガンダム一年戦争外伝 オデッサの最下層 -Underdogs' Chronicle-   作:Ginさん

25 / 92
第24話 30秒の攻防 (The 30-Second Skirmish)

ICBMサイロ、第3バンカー。

 

カツオの予測通り、戦闘は二つの局面に分かれた。

 

地下への入り口でハンスの逃走を阻止しようとする「本命」のカツオ。

 

そして、雪辱戦に燃え、ビッグXに襲いかかる「本能」のアキラ。

 

 

【連邦側(ホッジポッジ隊)】

 

「待ってたぜ、この時をよォ!」

 

“大食い”アキラ伍長は、E-2エリアで補充されたばかりの100mmマシンガンを

 

ザクII J型に向かって掃射した。

 

ダダダダダッ!

 

「こいつ、弾を惜しまんな!やはり、あの時の『遭難』は、こいつらの補給切れが原因か!」

 

“ビッグX”准尉は、シールドで巧みに弾丸をいなしながら、ヒート・ホークを起動させる。

 

「だが、雪山とは違うぞ、ガキ! ここは俺たちの『庭』だ!」

 

「うるせえ! 俺の腹も、マシンガンも『満タン』なんだよ!」

 

アキラの陸戦型ジムは、恐怖を怒りで上書きし、ビッグXに格闘戦を挑む。

 

二機のMSが、赤茶けた大地の上で激しく火花を散らした。

 

アキラの狙いは、明らかに「殲滅」だった。

 

だが、ビッグXの狙いは、ハンスに命じられた「30秒の時間稼ぎ」だった。

 

 

【ジオン側(穴熊部隊)】

 

その30秒の間に、カツオの陸戦型ジムは

 

ビーム・ライフルの照準を、開き始めた重厚なゲートの「隙間」に合わせていた。

 

(ハンス中尉……! あんたは、俺の『情け』を利用した! その代償は、払ってもらう!)

 

カツオは、心理学者ではなく、冷徹な『狩人(ハウンド)』として、引き金を引いた。

 

ビームが、ゲートの奥に滑り込もうとしていた“教授”ビタム曹長の旧ザクを捉える。

 

「教授!」

 

ハンス・シュタイナー中尉が

 

ザクタンクの巨体を、ビームの射線上に割り込ませた。

 

ジュッ……!

 

高出力のビームが、ザクタンクの非戦闘用の装甲を、溶かしながら貫通する。

 

「ぐっ……!」

 

ハンスは、機体への衝撃に耐えながら、叫んだ。

 

「教授、ルーキー! 構うな、行け!」

 

二機の旧ザク(教授、ルーキー機)は、中隊長の犠牲を見て

 

ためらいながらも漆黒の地下トンネル網へと姿を消した。

 

(二機、逃した……!)

 

カツオは、即座に次のビームをチャージする。

 

「コーチ殿! あんたの相手は俺だろう!」

 

ハンスのザクタンクが、被弾した機体で

 

カツオの陸戦型ジムに体当たり(タックル)を仕掛けてきた。

 

カツオは、ビーム・ライフルを捨て、ビーム・サーベルで受け止める。

 

(なぜだ! なぜ、あんたが殿(しんがり)を!)

 

カツオは、ハンスの『合理的でない』行動に混乱した。

 

 

「……30秒、経ったぞ!」

 

ハンスが、ザクタンクのコックピットで叫ぶ。

 

「ビッグX! 撤退だ!」

 

アキラと組み合っていたビッグXは

 

アキラの陸戦型ジムを蹴り飛ばし、即座に戦闘を中断。

 

ゲートへと向かった。

 

「チッ! 命拾いしたな、デブ!」

 

「待て! この野郎!てめえ、俺をデブって言うな!」

 

アキラが、体勢を立て直し

 

ビッグXの背中にマシンガンを撃ち込もうとする。

 

「させるか!」

 

ハンスのザクタンクが、アキラの射線を遮るように、最後の抵抗を見せる。

 

(ビッグXを逃がす……!)

 

カツオは、ハンスのザクタンクをビーム・サーベルで抑え込んだまま、決断を迫られた。

 

「アキラ! ゲートを狙え! 閉じるぞ!」

 

カツオは、アキラにハンスたちの『退路』を断つよう命じた。

 

「……うるせえ、コーチ!」

 

アキラは、カツオの命令を無視した。

 

「あいつ(ビッグX)は、俺の『獲物』だ!」

 

アキラのジムは、ハンスのザクタンクを飛び越え

 

ビッグXを追って、地下トンネル網へと突入した。

 

「アキラ!? 待て! 馬鹿野郎!」

 

カツオの制止が、アキラの耳に届いたかは分からなかった。

 

 

ビッグXと、それを追うアキラが、地下の闇に消えた。

 

ハンスは、その光景を見届け、ビーム・サーベルで押さえつけられたまま、静かに言った。

 

『……コーチ殿。あんたの負けだ』

 

「……何?」

 

『あんたは、部下の【狂気】をコントロールできなかった。

 ……そして、俺は、部下の『プライド』を守ることができた』

 

ハンスは、ザクタンクの操縦桿を離した。

 

「……俺の『仕事』は、終わった」

 

ハンスは、コックピットのハッチを、物理的に開いた。

 

投降』の意思表示だった。

 

カツオは、ビーム・サーベルを突きつけたまま、言葉を失った。

 

目の前には、宿敵ハンス・シュタイナー。

 

だが、耳には、アキラが消えた漆黒の地下トンネル網から響く

 

不気味な反響音だけが聞こえていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。