ガンダム一年戦争外伝 オデッサの最下層 -Underdogs' Chronicle- 作:Ginさん
ICBMサイロの入り口。
カツオ・イトウ少尉は
ハッチを開けて投降したハンス・シュタイナー中尉を拘束するため、自機から降りていた。
だが、カツオの意識は、
アキラ伍長が消えていった、漆黒の地下トンネル網に囚われていた。
【地下 アキラ vs ビッグX】
「待てコラァ! 顔に傷のある野郎!」
アキラの陸戦型ジムは、MS用のヘッドライトだけを頼りに
暗黒のトンネルを猛進していた。
壁は鋼鉄とコンクリート。
天井は低く、閉所恐怖症を誘発する。
カン! カン! カン!
自分の機体が立てる金属音だけが、不気味に反響する。
『……アキラ! 戻れ! これは命令だ! アキラ!!』
カツオからの通信が、ノイズ混じりに入る。
「うるせえ! コーチはそこで、ジジイと『お話』でもしてろ!」
アキラは、通信を一方的に遮断した。
「あいつは、俺の『獲物』だ!」
だが、いくら進んでも
先行するはずのザクII J型の姿も、二機の旧ザクの姿も見えない。
(どこだ……? どこ行きやがった……?)
焦りが、怒りを上回り始めたその時。
アキラのジムは、巨大な『十字路』に到達した。
トンネルが、上下左右、四方へと分岐する、巨大なメンテナンス・ハブだった。
「……は?」
アキラは、呆然と操縦桿を握りしめた。
どの穴から、排気熱が出ている?
どの穴に、足跡が続いている?
この暗闇と、入り組んだ構造の中では
陸戦型ジムに搭載されている寄せ集めの旧式センサーなど、無力に等しかった。
アキラは、ついに【迷子】になったことを悟った。
「……クソッ」
その時。
アキラの機体の、背後の闇。
十字路の『天井』に張り付いていた
“ビッグX”准尉のザクII J型が、ヒート・ホークを起動させた。
グォォォ……!
赤い光が、アキラのコックピットを照らす。
(うっ…上!?)
「死ねよ、デブが!」
ビッグXのヒート・ホークが、アキラ機の背中に振り下ろされた。
【地上 カツオとハンス】
「……」
カツオは、ザクタンクから降りてきたハンスに
無言で手錠をかけた。
ハンスは、一切抵抗しなかった。
『少尉! アキラ伍長との通信が、完全にロストしました!』
管制トレーラーから、リツコ伍長の悲鳴のような声が飛ぶ。
カツオは、ハンスの胸倉を掴んだ。
「……なぜだ、ハンス中尉! なぜアキラを地下に誘い込んだ!
あんたの目的は、教授たちを逃がすことだけだったはずだ!」
ハンスは、作業服のまま、カツオを静かに見返した。
「……言ったはずだ、コーチ殿。あんたの負けだ、と」
「何?」
「あんたは、『心理学』で俺の行動を読み、『仁義』で俺の心を揺さぶった。
……だが、あんたは、自分の部下の、最も単純な『怒り』すらコントロールできなかった」
ハンスは、アキラが消えた闇を指さした。
「ビッグXは、単なる時間稼ぎじゃない。
奴は、真の『
あの怒りを、あんたの部下(アキラ)に向けるよう、仕向けたのさ」
「……!」
「あんたは『合理的』な俺を捕らえた。
だが、あんたの『非合理的』な部下は、俺の『非合理的』な部下に殺される」
ハンスは、カツオの耳元で、静かに告げた。
「それが、『
『少尉! 地下、十字路付近で、大規模な爆発反応!』
タカシ軍曹のAIが、地響きを感知した。
カツオは、ハンスを突き飛ばし、自分の陸戦型ジムに向かって走り出した。
「アキラ!」
『……ザザ……』
通信機が、一瞬だけ繋がる。
『……コーチ……? クソ……。ヒート・ホークが……左腕が……』
ドゴォォォン!!
二度目の爆発音と共に、通信は完全に途絶えた。
地下トンネルの入り口から、黒い煙が逆流して噴き出してくる。
カツオは、自分の『