ガンダム一年戦争外伝 オデッサの最下層 -Underdogs' Chronicle-   作:Ginさん

40 / 92
第39話 継ぎ接ぎの青い巨星 (The Patchwork Blue Giant)

「雲の上の廃村」の上空に、不快なローター音が響き渡る。

 

雲海を割って現れたのは、ジオン公国軍の識別塗装を塗りつぶし

 

代わりに下品な「笑うドクロ」のマーキングを施した

 

三機のジオン軍戦闘ヘリと一機の輸送機(ファット・アンクル)だった。

 

 

【ハイエナの要求】

 

『村の連中、聞こえるかァ!』

 

先頭のヘリから、拡声器でしわがれた声が降ってくる。

 

『俺たちは「ハイエナ隊」だァ!テメェらが隠し持ってる物資、燃料

 そしてMSの予備パーツ……全て置いて、さっさと失せな!

 抵抗すれば、この村ごとミンチにするぞ!』

 

「……また来やがったか」

 

村の長、バトが舌打ちをする。

 

「あいつら、味方の敗残兵を狩って、物資をブラックマーケットに流してるクズどもだ。

 ……だが、今回は数が多い」

 

バトは、広場に駐機していた愛機――カツオが整備したばかりの「()()ぎグフ」へと走った。

 

「野郎ども! 対空砲火用意! ……俺が出る!」

 

カツオは、バトの背中を追った。

 

「バトさん! OSの書き換えは終わっていますが、実戦テストはしていません!

 急激な機動は……」

 

「構わん!」

 

バトはコックピットに飛び乗った。

 

「テストなら、今からやる殺し合いがそれだ!」

 

 

【蘇った古強者】

 

ズオォォォ……!

 

継ぎ接ぎグフが、重低音を響かせて起動する。

 

「……ん?」

 

バトは、起動シークエンスのあまりの滑らかさに、一瞬違和感を覚えた。

 

『警告する! 武装を解除しろ!』

 

上空のハイエナ隊が、威嚇射撃としてガトリング砲を村の広場に撃ち込んできた。

 

バババババッ!

 

「舐めるなよ、若造が!」

 

バトは、スロットルを一気に踏み込んだ。

 

 

ドォォン!

 

 

グフが跳んだ。

 

右腕はザク、左足はジム。

 

重量バランスが狂っているはずの機体が

 

まるで氷の上を滑るように、空中のヘリに向かって躍り上がった。

 

『なっ!? なんだこの機動は!』

 

ヘリのパイロットが驚愕する。

 

(……軽い!)

 

バト自身が一番驚いていた。

 

今までは、ジムの足の遅れを意識して操作しなければならなかった。

 

ザクの腕の重みに振り回されていた。

 

だが今は、思考した通りに機体が追従する。

 

(あの連邦の小僧……!

 異種パーツの重量差を、スラスター噴射のタイミング補正だけで相殺したのか!)

 

グフは空中で身をひねり、ザクの右腕に握られたヒート・ロッドを振るった。

 

バチィィィン!!

 

赤熱した鞭が、先頭のヘリのローターを絡め取り、瞬時に切断する。

 

『うわあああ!』

 

ヘリが黒煙を上げて墜落する。

 

「ハッ! 見ろ! まるで新品だ!」

 

バトは、コックピットの中で笑った。

 

「これが、かつて『青い巨星』と言われていた本来の力か!」

 

 

【穴熊の参戦】

 

一方、村の集会所。

 

武器を預けていたハンスたちは、爆音と歓声を聞いていた。

 

「……へえ。あのジジイのグフ、いい動きするじゃねえか」

 

“ビッグX”准尉が、窓から身を乗り出して口笛を吹く。

 

「あれは、コーチの整備のおかげですね」

 

“ルーキー”クェン兵長も目を輝かせる。

 

だが、上空の輸送機(ファット・アンクル)から、新たな影が投下された。

 

パラシュートと共に降りてきたのは、二機の『ザク・キャノン』だった。

 

空からの砲撃支援型。

 

地上に降り立てば、村など一撃で火の海だ。

 

「……チッ。大砲持ちかよ」

 

ハンス・シュタイナー中尉が、バトに預けていた「起動鍵」の保管庫を睨んだ。

 

「おい、コーチ!」

 

ハンスは、広場でグフの戦いを見守っていたカツオに怒鳴った。

 

「俺たちの『鍵』と『弾』をよこせ!

 大家が頑張ってるのに、店子が寝てるわけにはいかんだろう!」

 

カツオは、一瞬迷ったが、すぐに保管庫のロックをハッキングで解除した。

 

「……ハンス中尉! 借りは返しましたよ!」

 

カツオは、ビッグXたちのザクのキーと、弾倉を投げ渡した。

 

「上出来だ!」

 

ビッグXがキーを受け取り、猛ダッシュで自分のJ型に向かう。

 

「久しぶりだぜ!『狩られる側』じゃなく、『狩る側』に回るのはよォ!」

 

 

【最下層の防衛線】

 

村の入り口に着地したハイエナ隊のザク・キャノンが、180mmキャノン砲を構える。

 

『ヒヒッ! あのグフだけ倒せば、あとはゴミだ! 村ごと吹き飛べ!』

 

ズドン! 砲弾が発射された――その瞬間。

 

横合いから飛び出したザクII J型(ビッグX機)が

 

ショルダータックルでキャノンの砲身を強引に跳ね上げた。

 

砲弾は逸れて、雪山に着弾して雪崩を起こす。

 

『なっ!? 伏兵か!?』

 

「よう、兄弟。行儀が悪いぜ」

 

ビッグXのJ型が、ヒート・ホークを構えて立ちはだかる。

 

その背後には、二機の旧ザク(教授、ルーキー機)が、マシンガンを構えて展開していた。

 

「この村は、俺たち『穴熊』の新しいシマだ」

 

ハンスの声が、教授の機体のスピーカーから響く。

 

「ハイエナ風情が、俺たちの安眠を妨げるな!」

 

上空では、バトの継ぎ接ぎグフが、残るヘリをヒート・ロッドで威嚇し

 

地上では歴戦の「穴熊部隊」が、ザク・キャノンを包囲する。

 

カツオは、その光景を地上から見上げていた。

 

かつて殺し合った者たちが、今、一つの村を守るために、阿吽の呼吸で共闘している。

 

「……すごい」

 

カツオの隣で、あの眼帯の男が、ポカンと口を開けていた。

 

「連邦の整備と、ジオンのパイロット……。あんなボロい機体で、最新鋭を圧倒してやがる……」

 

最下層の村で、捨てられた者たちの『意地』が、空と大地で炸裂していた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。