ガンダム一年戦争外伝 オデッサの最下層 -Underdogs' Chronicle-   作:Ginさん

49 / 92
第48話 宇宙(そら)を駆けるフランケンシュタイン (Frankenstein in Space)

制限時間48時間。

 

プロスペクター・ステーションの最下層

 

汚れたドックの中で、火花と怒号が飛び交っていた。

 

 

【移植手術】

 

「おいコーチ! 本気かよ! ザクの足にリック・ドムのスラスターなんて入るわけねえだろ!」

 

“ビッグX”准尉が、分解された愛機(ザクII J型)の前で悲鳴を上げた。

 

「入れるんじゃない。被せるんだ!」

 

カツオ・イトウは、切断機(プラズマ・カッター)を構え、ザクの脚部装甲を豪快に切り裂いていた。

 

「J型の脚部は、重力下での歩行用サスペンションで埋まっている。

 宇宙じゃ不要だ。……中身をくり抜いて、そこにドムの熱核ロケットエンジンを直結する!」

 

「中身をくり抜く!? 俺のザクが骨抜きになっちまう!」

 

「安心しろ、ビッグX」

 

ハンス・シュタイナー中尉が、溶接マスクを被ったまま言った。

 

「骨(フレーム)の強度は、外側に貼り付ける『ジムのシールド』で補強する。

 ……見た目はブクブクに太った不格好な足になるが、推力は今の3倍だ。

 ついでに赤く塗装するか?」

 

「は?3倍!?……機体が分解しちまう!」

 

 

【冷却のジレンマ】

 

作業開始から30時間。

 

最大の難関が立ちはだかった。

 

「……ダメだ。排熱が追いつかない」

 

“教授”ビタム曹長が、シミュレーション結果を見て頭を抱える。

 

「ドムのエンジンと、ザクのジェネレーター。それに、バックパックには

 連邦の『ジム・コマンド(宇宙用)』のランドセルを無理やり接続した。

 ……熱量がJ型の空冷システムの限界を超えている」

 

宇宙空間は真空だ。

 

空冷は効かない。

 

機体内部の熱を逃がすには、冷却剤を循環させるか、強制的に放熱板で捨てるしかない。

 

「……水冷化するパイプも、ラジエーターのスペースも足りない」

 

ハンスが腕を組む。

 

「……詰んだか」

 

カツオは、ジャンクの山を睨みつけていた。

 

視線の先にあったのは

 

大破した宇宙船の「燃料パイプ」と、ボールの「作業用アーム」だった。

 

「……外に出しましょう」

 

カツオが呟いた。

 

「冷却パイプを、装甲の内側じゃなく、外側に這わせるんです。まるで血管のように」

 

「装甲の外だと? 被弾したら一発で冷却液漏れだぞ!」

 

「被弾しなければいい。……それに

 このボールのアームを『放熱板』兼『サブ・マニピュレーター(隠し腕)』として

 背中に背負わせれば、強制排熱も可能です」

 

「……狂ってやがる」

 

ビッグXが呆れた。

 

「だが、採用だ。……ここまで来たら、とことんバケモノにしてやろうぜ!」

 

 

【覚醒】

 

残り1時間。

 

OSの調整は、カツオの独壇場だった。

 

「連邦の規格とジオンの規格。電圧も信号もバラバラだ……。まともに統合しようとしたらバグる」

 

カツオは、キーボードを叩きながら、ある決断をした。

 

「……統合しない。互いに『喧嘩』させたまま、そのパワーをぶつけ合わせる!」

 

カツオは、リミッターを解除し、各パーツが最大出力を発揮するようにプログラムを書き換えた。

 

操縦性は最悪になる。

 

だが、爆発的なパワーだけは保証される。

 

「……できた」

 

 

【フランケンシュタインの産声】

 

約束の48時間が経過した。

 

ジャンク屋のマダム・ヤンが、葉巻をくわえてドックに現れた。

 

「時間だ。……さて、鉄屑になったか、それとも……」

 

ヤンは、ドックの中央に立つ『それ』を見て、葉巻を落とした。

 

 

ブオォォォン……!!

 

 

重低音と共に起動したその機体は、もはやザクとは呼べない異形だった。

 

 

頭部: お馴染みのザクIIだが、額には追加センサーが増設されている。

 

胴体: 剥き出しの冷却パイプが血管のように這い回り

   胸部にはジムの増加装甲が溶接されている。

 

背面: ジム・コマンドのバックパックに加え

   ボールのアームが不気味な「第三の腕」として生えている。

 

脚部: リック・ドムの巨大なスカート付きスラスターを無理やり履かされ、異常に太ましい。

 

 

「……なんだい、こりゃあ」

 

ヤンが口を開けた。

 

「ツギハギだらけの、フランケンシュタインじゃないか」

 

コックピットハッチが開く。 中には、ビッグXが座っていた。

 

「……笑うなよ、ババア。こいつの名前は……」

 

ビッグXは、カツオとハンスを見た。

 

彼らは、油まみれの顔でニヤリと笑っている。

 

「……『ザクII・高機動・最下層(アンダー・ドッグ)・カスタム』だ!」

 

ビッグXがスロットルを吹かす。

 

 

ブオオオォォォッ!!

 

 

背面のバーニアと脚部スラスターが一斉に火を噴き、ドックの床が焦げる。

 

その推進力は

 

最新鋭のゲルググやジム・スナイパーIIすら凌駕するほどの『暴力的な加速』を予感させた。

 

「……合格だ」

 

ヤンは、ニヤリと笑った。

 

「見た目は最悪だが、中身は最高にイカれてる。……気に入ったよ」

 

ビッグXは、カツオとハンスと一緒にフィストバンプした。

 

ヤンは、端末を取り出した。

 

「だが、修理代のツケは残ってる。……さっそく『初仕事』をしてきてもらおうか」

 

ヤンが提示したのは、ステーション周辺に出没する、正体不明の『幽霊船』の調査だった。

 

それは、新生「穴熊部隊」と、魔改造ザクの最初の試練となる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。